姉がハイスペックすぎる   作:ガテル

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最終回

 

俺と姉さんは姉弟でありながら恋人繋ぎを続け、雑貨屋へ向かう途中もずっと周りからの焦げるような羨望と嫉妬の眼差しを浴びさせられた。流石にギブアップと言わんばかりに白旗を上げたくなったので、姉さんに声を掛けようと隣を見れば。

 

 

「―――ふふっ、ゆうくんの手温かいね」

 

 

周りの視線など1ミリも入っていない、恐らく今の姉さんにとって世界の人間はただ1人。俺だけなのだろうと、そう思わせられるような太陽のように眩しい笑顔を浮かべていた。そんな顔を見せられてまさかやめようなんて言えるわけもなく、俺は羞恥心と……今まで姉に触れるたびに心の奥底で感じていた安心感や幸せと呼べる感情を必死に押さえつけた。いや断じてシスコンじゃないですけど……

 

そして全然落ち着かぬまま雑貨屋に到着し、売り切れを避ける為に早めに来たおかげかお目当てのクリスマス限定スノードームはまだ数が残っていて。

 

 

「本当に綺麗だね、中のツリーやサンタさんすっごく可愛いなあ……」

 

「かなりデザイン凝ってるね、確かにこれは姉さんが欲しがるのも分かるかも」

 

「実際毎年大人気らしいし残ってたのは運がいいと思うよ、これで去年のリベンジは成功かな」

 

「……ん?リベンジって事は去年も買おうとしてたの?」

 

 

俺としては純粋に疑問に感じての問いだったのだが、何故か姉さんは頬をプクッと膨らませながらちょっと不満そうにこちらを睨んできた。えっ何か俺悪い事したっけ……

 

 

「―――あ、そういえば去年冬休み突入にテンション上がっちゃって暖房も付けずに馬鹿みてえに徹夜でゲームしてたらイブの日に体調壊したんだっけ……」

 

「それで私が付きっきりでゆうくんの看病したんだよ?」

 

「……だから買いに行けなかったんですね、本当に申し訳ありませんでした……」

 

「謝っても許すかどうかは私が決めるね」

 

「ひええ」

 

 

怯える俺を見て、姉さんは耐え切れないと言わんばかりに吹き出しとても嬉しそうに笑っている。何かラスボスの道楽でギリ活かされてる小物幹部の気分だった、更にガクガクと足まで震わす俺だったが……ふと頭に柔らかな感触が。それは何かというと。

 

 

「冗談だよ、怒ってるわけない。だって私はゆうくんの事が一番大事で元気になってくれるのが何よりの喜びなんだからね?」

 

 

優しく微笑みながら俺の頭を撫でてくる姉さん、家族としての曇りなきドストレートな愛情にどう反応していいか分からず黙って撫でられ続けるしかなかった。さっきから調子狂うな……いつものようなハイテンション暴走は一切なく、ただ穏やかにおしとやかで美人の優しいお姉ちゃんだ。学校の人達が抱いてるイメージがまさにこれらしい、俺の知らない姉さん……?

 

いかん、これではこちらが押される一方だ。どうにかして姉さんをいつもの調子に戻すような方法は―――

 

 

「ね、姉さん!この次は服屋に行かない?さっき言ってたよね!?」

 

「えっ、私は先に化粧品を見に行こうとしてたんだけど……ゆうくんが行きたいなら別にいいよ?」

 

「よっしゃ!」

 

「……そっか、ゆうくんがようやくファッションに興味持ってくれたんだあ。私嬉しいよ……」

 

「いや息子の心配するお母さんか」

 

 

ファッションになどこだわるならその分の金は全部ゲームや漫画に使いたいと思う気持ちは一切変わらない、てか別に服が欲しいわけではないのだ。姉さんをいつもの感じに戻す方法を思いつき、そのアイテムが服屋にあるというだけの話。俺からこういう提案をするなど初だが……これでいけるはず。

 

 

「今もだいぶ寒いからさ、その欲しいなって思ったんだ―――姉さんと一緒に巻けるマフラーをね」

 

 

キメ顔でそう告げた、姉さんの事だから「ゆうくんと一緒にマフラー!?ダ、ダメだよお姉ちゃんとそんな密着するだなんて……そういうのはお家じゃなきゃ」と動揺するに決まってる。家ならいいのかよとツッコミを入れるまでがワンセットだ。

 

……だが何故だろう、姉さんの反応は俺の想像と全く違い。

 

 

「うん、いいよ」

 

「え」

 

 

軽くOKしてきた上に、姉ちゃんは俺の耳元に口を近づけ「……お姉ちゃんと一緒にあったまろ?」と小声で囁いてきた。

 

そして俺の顔が真っ赤になったのを見ると、満足そうに深い笑みを浮かべていて……ホント何なんだよお……

 

もうどうしていいか分からなくなってしまった。

 

 

 

 

「―――見てゆうくん、イルミネーション綺麗だよ!」

 

「アッハイソウデスネ……」

 

 

恋人繋ぎのまま一緒のマフラーまで巻くという、もはや言い逃れ出来ないレベルのガチの学生カップルと化してしまった俺と姉さん。姉の化粧品も見終えて外に出ると、辺りが暗くなり始めてちょうどイルミネーションのライトアップが始まっていた。確かに都内でも有名スポットなだけあって、煌びやかで美しいけど俺はそれよりも……隣の姉さんの方が綺麗で魅力的に思えてしまった。

 

皆が言うように実の弟から見ても姉の良さは一応分かっていて、ただ家族だからそれ以外の色々なマイナス要素を当然見えているし知っているのだ。だからいつも複雑な気持ちを抱いていたけど、今の姉さんは何て言うか……完璧な存在であった。

 

調子が狂うし、何よりいつもは誤魔化せていた俺の姉さんに対する素直な好意が浮き彫りにされる感覚は本当に恥ずかしい。いやだから俺はシスコンじゃありませんけど!?

 

 

「本当に何なんだよ、今日のお姉ちゃんは……」

 

「……え?」

 

 

全く、この感じが明日以降も続くのなら色んな意味で気が持たな「ゆうくん!?いい今何て言ったのかな!?」……まさかである、即フラグ回収と言わんばかりに姉さんが芸能人がしちゃいけないような焦りMAXの表情で勢いよく俺の肩を揺らしてきた。

 

 

「ちょっ、いきなりどうしたの……?」

 

「だ、だってゆうくんがついに……ついに言ってくれたからだよ!」

 

「いやついにって何が!?」

 

 

姉さんは長年の悲願が達成されたかの如く、今まで見た事もないような感慨深いとしか表す事の出来ない感情が全身から溢れ出していた。マジで訳が分からない俺はただただ困惑しかないのだが、我が姉は勝手にお祭り騒ぎのご様子だ。

 

もはや考えるのも馬鹿らしくなってきたので、肩の力を抜くように脱力しながら姉さんに喋りかける。

 

 

「……で?ようやく普段の感じに戻ってくれたわけだけど、結局さっきまでの妙に落ち着いた別人っぷりは一体何だったのさ」

 

「私は特に偽ったつもりはないよ……?」

 

「嘘つけ!全然違ったよ!姉さんが取らないであろう台詞のオンパレードだった!」

 

「ゆうくん、人混みに疲れちゃったんだね……早めに家帰る?」

 

「疲れたのは確かだけど!?いやそうじゃなくて―――」

 

 

……無理だ、姉さんに対して変にドキドキしてしまったなど。そんなの口が裂けても言えるわけない。これ以上は危険だし、多くの疑問は蓋をして封印するとしよう。マジでそれがいいや……

 

 

「やっぱやめるよ、それよりせっかくのイルミネーションだしそっちを楽しまない?」

 

「……いいの?」

 

「いいでーす」

 

 

俺は姉さんからイルミネーションへと視界を移し、沢山のリア充カップル共と一緒にそれを見て……だが不思議と隣に姉さんがいると思うと昼間のようなカップルに対する憎しみは沸いてこなかった。

 

 

(ふふっ、お姉ちゃんもいつまでも同じ事の繰り返しじゃないんだよ?可愛かったなあ……ゆうくんの照れる姿♡次はどうやって攻めようかな♡)

 

 

 

こうしてクリスマスイブは幕を閉じ―――

 

 

「……ん?」

 

 

ポケットに入れていたスマホにメッセージの着信音が鳴り、開いてみれば寿さんからメッセージが届いていた。

 

 

「黒川くん、明日のクリスマスなんやけど良かったらうちでパーティーせんか?もちろん―――みなみお姉ちゃんとの2人きりでな?」

 

 

……ヤバい、姉さんと寿さんは一度共闘したけれどアレは本当に特別扱いらしくあの日以降寿さんの名前を出すだけで普通に不機嫌になるのだ。そんな姉にメッセージを知られようものならどうなるか想像も出来ない。

 

急いでポケットにスマホをしまって、至って普通を装いながらイルミネーションへ視線を戻した俺だったが……そんな事で最恐姉を誤魔化せるわけもなく。

 

 

「ゆうくん、行くのかな?」

 

「へっ!?ど、どこにでございますか……?」

 

「―――みなみお姉ちゃん、の所にだよ??」

 

「ふええ……」

 

 

ああ、俺の……姉がハイスペックすぎる。

 

 

 

 






これにて完結です、いくら謝罪しても足りませんが何回か止まりながらも本当にここまでこれて良かったと感じています。応援してくれた皆様のおかげです。

今までありがとうございました!!
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