姉がハイスペックすぎる   作:ガテル

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第4話

 

「・・・着いた」

 

劇団ララライの建物に到着、この劇団は姉さんが所属している所で俺も舞台は何度も見に行ってるけどこういった舞台以外での形で関わるのは・・・まぁ届けに来ただけだから関わるというのは大袈裟か。

 

学校から帰ってくると母さんから姉さんがスマホを忘れたまま行ってしまったと聞いて、自分もちょうどこれから本屋に行く予定があったしララライの建物もその本屋から遠くない。だから俺が届ける事になった・・・まぁ姉さんにはいつも助けられてばかりだし、少しでも返せる機会だ。

 

仮に本屋の予定がなくとも行くのは変わらない、それにスマホは大事だしな。舞台も近いし稽古が長引く可能性もある、そうなったら辺りは暗くなるし余計に無くてはならない物になる。

 

 

「だ、誰かいたら黒川あかねの弟ですって言えばいいよね」

 

 

変な緊張感を感じながら入口のドアを開けようとすると。

 

 

「あれ?君、あかねの弟だよね?」

 

「は、はいそうです」

 

知らない女の人から声をかけられたと焦ったが、よく見ると見覚えのある顔で。舞台で見たことがある・・・つまり。

 

 

「・・・劇団ララライの役者さん?」

 

「うん、そうだよ。名前は吉富こゆきです、よろしくね!あかねの大好きな弟くん!」

 

 

その明るい声と笑顔は役者だなと思わされるもので・・・年上の人なのについ敬語忘れてしまったとか、劇団の人で良かったという安心感。俺の事知ってるなら色々話早いなとか様々なことを思ったが一番気になったのは。

 

 

「大好きな弟くんってなんですか!?」

 

 

 

 

 

「いやー写真で見たり舞台に来てるってのは知ってたけど、ようやくこうやって本人と話せて嬉しいよ」

 

「・・・はぁ」

 

 

あかねの大好きな弟くんという恥ずかしいにも程がある呼ばれ方は誰のせいかと言うと当然姉さんだ、散々話を聞いたせいで劇団員の中でそうなったらしい。

 

スマホ渡しに来ただけなのにこんな事実を知ることになるなんて、頭を抱えてその場にしゃがみ込みたい気分。

 

 

「私は事情で遅れちゃって今から参加するんだ、弟くんはあかねのスマホ持ってきたんだよね。じゃあ一緒に入って本人に渡せばいいか」

 

「俺が入っていいんですか?今稽古中だったら」

 

「時間的にちょうど休憩、大丈夫だよ」

 

 

・・・こういう場所は絶対邪魔できないし、舞台も近いなら尚更だ。俺も休憩中に渡そうと考えてたしちょうどよかった、吉富さんは「有名人登場だね」と言ってるけどマジでどうなってんだよ俺の存在。

 

 

 

中に入ると言う通りみんな休憩中で、吉富さんが姉さんを呼ぶと向こうもこちらに気づき。

 

 

「ゆ、ゆうくん!?どうしてここにいるの!?」

 

「姉さんスマホ忘れたよね、持ってきたよ」

 

そう言って姉さんに渡した、本人も忘れたのはここに着いてから気づいたらしいが舞台が近いしやることは沢山。取りに帰るのは諦めたらしい。

 

「本当にありがとね、わざわざここまで来てくれて嬉しいよ」

 

本屋のついでなんだからね、勘違いしないでよね!とツンデレ発言をする気はない・・・姉さんに対してちょっとだけでも借りを返せた気がして嬉しく感じる。

 

 

「姉さんが心配だったし、家族なんだから普通でしょ」

 

 

・・・特におかしなことを言ったつもりはないのに姉さんは頬を赤く染めてニッコリとしか言いようのない笑顔を浮かべていた、吉富さんも関心したような表情で。

 

 

「あかねの大好きな弟くん流石だね」

 

 

「それやめてください」

 

 

周りの人達も同じような反応してるし、マジでどうなってんだこの劇団での俺の認識は。姉さんをこの場で問いただしたい気分だが休憩時間はそろそろ終わる、稽古があるし俺がここにいるのはマズいだろう。

 

 

帰るつもりでいたのだが。

 

 

 

 

 

「ゆうくん、土曜のときは失敗しちゃったけど・・・リベンジ見ててね。私頑張るよ」

 

 

俺が帰るのを言いだそうとした瞬間。この劇団の代表である金田一さんが戻ってきて・・・叱られると思い一瞬怖かったが予想外、金田一さんは姉さんに今度の舞台の重要シーンである主人公アルガルトとエリザロッテの告白をやってくれと伝えた。

 

 

 

「ワンシーンだけど俺が居てなんて、金田一さんはどういう考えなんでしょうか」

 

理由が分からない俺は吉富さんに聞くと彼女は真面目な表情でこちらを向き、何か凄いワケがあるのかと全身に鳥肌が走った。

 

 

「それはね・・・」

 

「そ、それは?」

 

 

「弟くんがいるからいつにも増してあかねの気合いが入りまくるからじゃないかな!」

 

 

いや確かに姉さんのさっきの言い方や今も何かオーラが溢れ出てるように見えてるけど・・・冗談かと思ったら案外マジらしい、姉さんは若きエース。金田一さんもいつもと違うものが見られるんじゃないかと思ってると吉富さんは言っている。

 

 

「マジか・・・」

 

 

色々カオスに感じるこの状況、でも俺はこれから行われる姉さんの演技が楽しみに感じていた・・・正直前回アレすぎたし。雰囲気壊すから言わない。

 

 

「君のことが本当に好きだエリザロッテ」

 

 

主人公アルガルト役はこの劇団の人、そのキャラの感情が伝わってくる。当然すぎることだが素人と役者の違いだ。やっぱりララライはみんな上手い、俺なんかでもわかる。

 

次は姉さんのば・・・

 

 

姉さんの方を見た瞬間、一瞬息が止まった。俺が台本で読んだときイメージしたエリザロッテ、その姿が見えた気がして・・・

 

 

「私もです、あなたの事が好き。アルガルト」

 

 

姉さんの演技は何回も見ている、素人で知識もない俺でも毎回驚くほどのもの。でも何ていうか今回は台本を読んでるからか俺自身の理解度が違う感じがして・・・入ってくる強さが桁違いだ。

 

アルガルト役の人が「愛してるよ」と言った、そして次の姉さんの台詞に自分の関心全てが向かう。それでこの告白シーンは終わり、「愛してるわ」の一言それだけなのに何で気になって仕方ないんだろう。

 

 

姉さんが口を開き・・・

 

 

「愛してるわ」

 

 

 

 

 

 

「ゆうくん!どうだったかな私の演技・・・顔赤いよ大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫だから」

 

 

何か恥ずかしくて顔見れない、姉に恋しちゃった!なんてぶっ飛び理由ではない。やっぱ改めてこう・・・やっぱ凄いなって思ったというか、上手く感想が纏まらない。

 

吉富さんがニヤケ顔を浮かべながら俺の耳元へ口を近づけ。

 

 

「弟くん、お姉ちゃんに照れちゃった感じ?」

 

 

「照れてませんから!?・・・あっ」

 

 

つい大声を出してしまった、当然それは姉さんにも聞こえてしまい。

 

 

「・・・ゆうくん、照れてるの?」

 

 

「違います」

 

 

「・・・顔まだ赤いよ?」

 

 

「違います」

 

 

「・・・リベンジ成功だねっ」

 

 

違います・・・ホント違うから。

 

 

 

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