「ごめんなさい、怖くて眠れません・・・」
映画を思い出してしまい眠りにつけない、こんなはっずい事言いたくなかった。姉さんの部屋に来た理由は、軽い話でもすれば気持ちも紛れて怖さも減るだろうと思ったからである。それで自分の部屋に戻り無事お休みなさい・・・大体こんなプランだ。
部屋に入ってきて急にこんな事を言われ理解が追い付かないのか始めは困惑した表情を浮かべていた姉さんだが、何か結論に至ったのか次第に和らいでいき優しく慈愛に満ちた顔へと変わった。
気持ちを分かってくれたのかな?本気で怖かったので断られたらどうしようかと不安だったが、受け入れてくれた姉の優しさに涙腺が緩むのを感じる。感謝を伝えよう、後吉富さんは許さん。
「ありがとう、姉さ「つ、つまり一緒に寝たいって事!?嬉しいな、大丈夫だよ不安なんて微塵も感じないほどいっぱい抱きしめてあげるからね」
そう言ってキャーキャーしてる姉さん・・・まぁどこかでこうなるってわかってましたよ、はい。
「時間はまだ早いけどもう寝よう?で、できるだけ長く抱きしめたいとか思ってないよ!?」
「あはは、全然プランと違うー」
頭いいんだよね姉さん・・・いいんだよね??いやいいんだわ、天才だったわ。
「・・・ゆうくん、私は一緒でいいと思う」
「俺はよくないよ」
不貞腐れたように姉さんはベッドに座りこちらを睨んでいる、学校の人達とかが見たらイメージとの違いにビックリしそうだ。まぁ普通にこんな姉さんは珍しいけど・・・それぐらいショックなんだろうか、でも姉と寝るのは流石に。
プクっとしている今の姉さんとは軽い話は出来そうにないので、諦めて外に出ようとすると・・・本棚のある一冊の本に目が留まった。
「演劇の時代?これ昔に読んだことある気が」
気になり本を開こうとすると、目にも止まらぬ速さで姉さんが俺の手から奪っていった。ベッドにいたよねスピードどうなってんの??
「こ、これはダメ!絶対読んじゃダメだよ!」
「・・・な、何で」
「そっ、それは」
そのあまりに必死な姉さんの姿は何かを隠しているようで、演劇の時代。確か昔に読んだときもこんな感じでもう読まないでと言われたような・・・あっ思いだした。
「有馬かなにあこがれて、かぁ」
「やめて!?」
幼少期の姉さんのインタビュー記事、当時のキラキラ輝いた純粋なファン心はどこへ。今や有馬さんに対しアンチ・・・いや厄介ファンか。
「かなちゃんは自分の事を特別な存在だと思ってる、私は天才子役よって。ピーマン体操とかしてるときだって私は沢山練習してた、それに共演したって性格悪いし演技方面も合わないし・・・」
「でも有馬さんのピーマン体操可愛いって思ってたよね?」
「うん、凄く可愛いって・・・いや違うよ!?」
この話になるとマジで姉さんは面倒化する、今までも散々愚痴を聞かされてきたし毎回長い。今回も1時間突破中だ、正直半分くらい強火ファンの熱心な語りにしか聞こえないけど・・・そもそも姉さんは有馬さんに憧れ演劇の世界に入った、だが出会い含めて色々あり要は複雑な感情を抱いてしまっていて。それに俺も有馬さんと一度面識はある。
いつもだとこの愚痴の流れのままピーマン体操鑑賞会(文句という名の愛)が始まってしまう、怖さに疲労まで加わるのは避けたい。今俺はベッドに座り横で姉さんの話を聞いている状態、始まる前に立ち上がり逃げなければいけな・・・いけなかったんだけど。
「かなちゃんは全く・・・ホント全くだよ、ゆうくんもそう思うよね?」
「俺はとにかく眠いです」
熱量の強さにより逃げようにも出来ず、時間は深夜1時を超える始末。ようやく落ち着いた姉さんは時間を見て驚いていた。
「ご、ごめんね!」
「いいよ、むしろ助かったというか」
勢いに映画の怖さとか消し飛んだし感謝してる、でも問題があり眠気により途中から寝そべって聞いていた身体を起こせないことだ。ベッドは温かく姉さんの匂いが鼻をくすぐり・・・そこに何故か安心感を感じてしまう。
このままではここで寝てしまいそうだ、俺は身体を無理やり起き上がらせようとしたが。
「ゆうくんっ」
その前に寝そべってきた姉さんに抱きしめられてしまった、長くサラサラとした綺麗な髪が顔に当たり身体に柔らかい感触が・・・姉さんはスタイルが良くこう言ってはアレだが胸も大きい。それがギュっと押し当てられる、弟なのでそういった感情にはならないけど中2の思春期なので気まずさと恥ずかしさは感じる。
抱きしめて姉さんは幸せそうに笑っていた。
「やっぱり一緒に寝よ?ゆうくんは嫌かな?」
目の前にある姉さんの顔、超至近距離で見つめられて素直に思ってしまった。えっ、顔良すぎないかと・・・余計に恥ずかしい。つい思った自分もこの状況も。
これだから顔が良い人は困るんだ。
「いや、えっと」
「私は嬉しいよ、演技してるときに感じる高揚感とはまた違う・・・純粋な喜びをね。それを感じられるのはゆうくんだけだから」
まるで舞台の台詞みたいな姉さんの言葉、でも本心からそう思って言っていることは見ればわかって・・・もう仕方ないか。
「わかった、いいよ」
断れる人はおそらくいない、それほどの力を姉さんは持っていて・・・いや痛いんだけど。えっ、さっきより抱きしめ強くない?力って物理じゃなく輝き的な意味なんですが!?
「舞台頑張ったご褒美だよね、嬉しいなぁ」
「・・・アァ~!?」
全力で抱きしめられ貧弱な俺の身体は悲鳴を上げた。