結果発表日、亜城木夢叶の仕事場。
三台のスマホをテーブルに置いて、発表時間を待つ、真城、高木、カヤ。
――ピロリン
鳴ったのはカヤのスマホ。
「やった! 秋人さんが勧めてくれた奴、当たったよ」
「おう、良かったな」
「支払いと受け取り方法の指定……郵送か直接画廊に取りに行くか…… うわぁ、本当に当選したんだ、嘘みたい」
「うんうん」
「届け出価格とどの位の開きがあった?」
「う――ん、あれ? こちらの書いた数字しか載っていないねぇ。『届け出額より高く評価を頂きありがとうございました』って」
「へえ」
「相場が出て来ない訳だ。ユーザーの評価が翌年の価格を作って行くのか」
「一つでも当選して良かったね」
などと言っている所に
――ピコン
真城のスマホだ。
「CROWか!?」
「はは、蒼樹さんをサポートした奴じゃないか?…………おわっ!!」
「CROW?」
「CROWなのっ?」
「いやいや、ほら」
真城が見せてくれたのは、『作品No.108番当選(仮)のお知らせ』。
「蒼樹さんの?」
「(仮)って?」
スクロールすると、画面下に【制作者からのメッセージ】。
『入札有り難うございます。希望価格との開きがございましたので、今回はご縁が無かったとさせて下さい。今後とも宜しくお願いいたします』
「あちゃあ」
「そういえば、説明書きにあったわね。低すぎる場合は作者から断れるって」
「そりゃそうか」
と、真城が操作して、メッセージの下にある【返信】をクリックした。多分この為に作られたであろうチャットフォームが開く。
「高木、謝りの文章書いてっ」
「え?」
「そっちの言い値で買いますって。早くっ」
「え、おう……」
『大変申し訳ございません。今一度機会を頂けないでしょうか。そちら様の言い値でご縁を結びたく存じます。どうかご一考下さい』
「本当にいいのか? 幾らって言って来るか分からんぞ」
「蒼樹さんに相談してからの方が……」
「いや、これは俺の。一つだけ自分の欲しい物を書いていた」
「お前の?」
着信音がポンと鳴った。作家がリアルタイムで見ているようだ。
『僕の作品のどこをそんなに気に入ってくれたんですか』
投げ掛けて来られた、人間らしい質問。
今度は真城が自分で返信を打つ。
『キャラクターへの深い思い入れを感じられたから』
高木とカヤは「??」という顔で画面を覗き込む。
相手からの返信がないので、真城は続けて打ち込んだ。
『漢の浪マン(おとこのロマン)。一回しか出て来なかったのにとても心に残るキャラクターでした。彼への愛情を感じます』
少し置いてから返信が来た。
『かなりディフォルメしていたのによく分かってくださいましたね』
『分かりますよ、すぐにパッと分かりました。漢の浪マンがリアルに目の前に現れたらこんな感じなんだ! って。僕はこの漫画も作者も、大好きなんです』
『僕も大好きです、かわぐちたろうさん』
実は販売する気はなかったという制作者は真城の入札価格で承諾してくれ、チャットフォームを閉じてしばらくすると、画廊からの契約成立メールが届いた。
雄二郎の無茶振りから巻き込まれたオークション騒動だったが、思わぬ結果も得られて、こういうのも悪くないなと思えた一同だった。