すずめのお宿と月の道   作:西風 そら

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イチゴと迷探偵・Ⅱ

   

 

 

「師匠は自分で『恋愛』を実体験する方向にシフトしたんだろう」

「飛躍するな」

「他人の高校生活の思い出なんか聞いたってピンと来ねぇだろ、その時その場の何となくの空気なんか、お前ら人に説明出来るか?」

「まぁねぇ」

 

「何だ新妻先生、相談してくれればいくらでもお勧めの店に……」

「だ――っ! キャバクラの疑似恋愛が少年漫画のヒントになるかっつ――の!」

「そ、そんな事ないぞ、俺のレイナちゃんは俺と居るだけで安らぐって……」

 

 食い下がる雄二郎は無視して福田は続ける。

「現代恋愛の三種の神器は①金、②容姿、③車だ。師匠は①はOKだが②は中の下、よって③で埋め合わせに行っているんだ。免許取ってBMWだのフェラーリだの入手して、恋愛スキルを上げに掛かってんだよ」

 

「少年漫画言う割に、発想がおっさんですよ!」

「福田先生、モータースポーツ漫画描いている癖に、車のチョイスがちょっとアレじゃないか?」

「そんなんで引っ掛かる港区女子に少年漫画のヒロインは務まりませんって」

 

「こ、細かい事言うなや。じゃあGT-Rとかシルビアでいいだろ」

「だから何でそっち方向に振り切るんですか!」

「福田さんの漫画に出て来るヤンキーヒロインならそれでいいですけど」

「何を言う! うちのアケミちゃんはああ見えて清純なんだ!」

 

「だ――っ! ちょっと一旦止まって下さい、話がコースアウトしてます!」

 真城がやっと止めて、男三人ぜぇぜぇ言いながら黙った。

「でもその、当たらずとも遠からずじゃないんですか? 僕も彼女を乗せるイメージで欲しい車種を決めちゃってますし、男性って結構そんな所あるんじゃないですかね」

 

「ふむ……」

 雄二郎はやっと落ち着いて考えを整理した。

 新妻先生は上京した後に免許取得年齢になったし、都会に出てしまうと多くの若者がそうであるように、車を運転したいと思う切っ掛けが無い。

「そう考えると、いきなり免許に興味を持ち出したのも…… ひょっとしたら意中の女性が?」

 

「まっさかぁ」

「分からんぞ、車と女は切り離せない宿命だ」

「じゃあ、一発免許なんて急いでいるのも彼女の為? 車が無いと不便な遠距離住みの女性とか」

「シュージン、妄想が暴走し過ぎ」

 

「ちょっとまて、謎はすべ〇解けた!」

 思い出したように探偵モードに入る福田。けど他社の決め台詞はやめて!

 

「一月初め、アシスタントC君の()()()()の友人がここへ来て、スマホの画像で師匠と盛り上がってたんだろ?」

「うん……」

「たまたま写っていた地元の知り合いに、師匠を一目惚れさせちまうような娘(こ)が居たんじゃねぇか?」

「う~~ん?」

「で、そいつが帰郷する時にくっ付いて行って、直接紹介して貰う。師匠ならやりかねんだろ」

「あ―― あるのかなぁ……?」

 

「仮にイチゴ農家の娘としよう」

「う、うん……」

「師匠は自力で電車……いや、何だったらタクシーでその娘(こ)の所へ通って、イチゴを大量買いしてアピールしていたんだよ」

「あ……」

 何だか現実味を帯びて来た。

 

「うおっ」

 雄二郎がいきなり奇声を上げた。

 

「な、何なんです?」

「思い出したっ。大分前に、新妻先生に新人の原稿コピーを渡されたんだ。『ボクはあんまり惹かれないんですけれど、恩義のある人に頼まれたんで、一応見てあげて下さ――い』って。未熟で賞にも回せないような原稿だったし、珍しい事もあるなと思った」

「それだっ!」

「それが『C君の地方住みの後輩』の作品なんじゃないですか?」

「繋がった、凄い、福田さん」

「ふはは」

 

 盛り上がる一同。

 でも推理が成立した(かも)だけで、エイジが行方不明なのは変わらずなのだが。

 

 

 ***

 

 

「じゃ雄二郎さん、その原稿コピーにC君の地方住みの後輩……もうD君としましょう。D君の連絡先が書いてあるんじゃないですか?」

「そ、そうだな」

「編集部のデスクにあるの? 電話して誰かに見て貰えば?」

「どこに置いたっけか……」

「ゆうじろお――!!」

 

 時刻は零時を回っているが〆切日だ、残っている社員が居る可能性はある。しかしこんな時間まで残業している所に電話が掛かって来て何かを探せなんて言われたら誰だってブチ切れるだろう。

 まったくこの人は肝心な所で~~

 

 と、その雄二郎のスマホがジャンと鳴る。

 慌てて手に取ると、アシスタントC君だった。

 

「今バイト終わったから。この時間だからどうかとは思ったけど、さっき何か切羽詰まってる感じだったんで。あの、大丈夫っスか?」

 

 ぶっきらぼうだけれど人情味のある奴だ、ありがとう!

 D君の連絡先を教えて貰い、時間も時間だが、ダメ元でコール。

 

 ――プルルル、プル・・ゴトッ、ゴトゴトゴトッ

「あっあわわわ、遊栄社のハットリさん!? なななんでしょう!」

 

 そりゃそうだ。上京して原稿コピーを渡したエイジの担当編集から午前零時に直電があったら、色んな想像をしてテンパるだろう。……ごめん。

 

 罪滅ぼしに、事情を少し明かす。

「新妻先生と連絡が取れなくて、色んな人に聞いて回っているんだ。早い時間に連絡した者には伝えていないから、内密に」

「は、はい……」

「率直に聞くと、君を介してそっち方面の誰かと親しくなったとかない?」

 

「え……シチゴウさんかなぁ?」

 

 いきなり情報が出て、一同身を乗り出した。

 

「シチゴウさん、って誰かな?」

 

「あ、住んでいる山奥の屋号で、名前は何だっけかぁ。最近何回か新妻先生が訪ねて来とったみたいス」

 

「ほ、本当か!」

「何でそんな山奥の人と知り合いに?」

 

「最初は僕が連れてったんス。前回あちらへ帰(けぇ)る時に、車に乗せてけって先生に頼まれて」

(マジか!)

 推理の当たった福田はガッツポーズを決める。

 

「先生はどういう理由で……そのシチゴウさんってどういった方で?」

 

「『造形師』さんス」

 

「ゾーケイシ??」

 

 

 

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