【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
U・Mの母艦の巡航ルートは不明だ。
ゴースト・ラインの手掛かりを探しながら色々な所を回っているらしいが。
どんな事をしているのかはメンバー以外は分からない。
U・Mの活動を支援している人間からの情報では、とある島へと向かったと聞く。
そこは生前のマイルス・ワーグナー社長が個人的に所有していた島の一つで。
無人島に偽装されたそこに、船を一時的に寄港させるようだ。
流石に、どの島かまでは知らされていない。
ミネルバは、その島での滞在期間は多く見積もっても、一か月ほどだと言っていた。
後は自分で何とかして見つけ出せということだろうが……無茶にもほどがある。
連絡を繋ごうにも古い端末は既に処分した。
以前使っていたコードで連絡を取っても無駄だろう。
定期的に向こうは連絡用の通信機の周波数を変えており、此方がそれを判別して連絡を取るのは不可能だ。
ショーコさんから受け取ったコードは……もう使えないな。
アレは緊急連絡用のコードで、既に破棄されていると思う。
何度も何度も掛けていたら、お互いの位置情報が外部に漏れる恐れがあるからな。
別に特定されても俺自身は良いが、U・Mの情報が漏洩する恐れもある。
それで俺が母艦を見つけるのが先か、敵が見つけて襲撃するのが先か……危険な賭けだ。
それに、ミネルバからも迂闊な真似はするなと注意されているのだ。
俺個人がどうなろうとも奴は困らいないが、東源国に災いをもたらす存在を奴は許さない。
最悪の場合、今の待遇は無くなり追放される恐れもある。
まぁ天子の計画に協力しているから、追放されることは無いだろうが……連絡を取るのは避けよう。
なるべく互いの居場所は外部に知られずに、U・Mの居場所を俺だけが知る方法を考える必要があるが……。
俺はこの世界にあるネットを使って調べてみた。
ネットの海で見ていけば、色々と興味深い情報がある。
ゴースト・ラインの事を調べている人間やそれらの悪と戦う組織について。
U・Mという名前は知られているが、その実態を掴んでいる人間はいない。
憶測や推論でものを語っていて、オカルトのように言う人間もいた。
都市伝説や噂話のように情報で、どれも信憑性は無い。
それらを流し読みしていってから、俺は別の記事を見た。
とある記者がある人物にインタビューをした記事の内容で。
あまり注目されていないようだが、その記事の内容を見て俺は目を大きく開いた。
それはU・Mの元職員であるという人間へのインタビュー記事で。
記者が質問する内容にその人間はほとんど的を得ない回答をしていた。
詩のように、何かに例えるような言い方で。
しかし、彼女の例えたものを俺が実際に見たもので考えれば気が付いた。
その例え全てが暗号のようになっていて、実際に行った作戦と一致している。
例えば、記者が質問した具体的にどういう作戦を行ってきたかという回答で。
この人間は、蜘蛛の群れに追われた騎士は、仲間と共に全てを消し去ったと答えている。
記者は後に調べた結果、この人間は精神疾患を患っていて妄想と現実の区別がついていないと一蹴する。
多くの質問をして、御伽噺の世界のような話をする回答者。
この記事の締めくくりは、今後もこういう人間が増えていくというもので……違うな。
こんな回りくどい言い方をしたのには理由がある。
ハッキリとした言葉で語れば、U・Mの人間に気づかれるだろう。
いや、そらだけならまだいい。ゴースト・ラインの人間に拉致される恐れもあるのだ。
だからこそ、敢えて詩人にでもなったかのように回りくどい言い方をした。
こうすれば、真実を知っている人間にだけ気づかれる。
その作戦を実行した当事者……俺というパイロットにだけ気づいてもらえる。
この人間が答えた内容は、全て俺が見てきたものと同じだ。
蜘蛛の群れは、あの無人機の生産工場で出会った警備用のメリウスで。
全てを消し去るというのは、あの工場を爆破した事だ。
メカニックでも指示者でも気づけないパイロットが見た世界で。
この人間はそれを誰かから聞いたか見たかして、記者に答えていたのだろう。
実際にあの場にいたのなら、トロイやレノア……オッコという可能性もある。
しかし、奴らの話を聞いた第三者が語ったという場合もある。
その場合は、親しい人間か権力的に上の人間かだ。
権力が上の人間であれば、態々、そんなインタビューに答える意味なんて無い。
そもそも、元職員という時点で権力的には下の立場だろう。
親しい人間と言うが、そんな人間は山ほどいる。
……いや、親しいと言うよりも……よく話をする人間か?
雑談から何でも話を聞く人間。
ただの友人という立場ではなく、仕事で……まさか。
俺は大体の見当をつけた。
そんな筈は無いと思ったが、可能性はゼロではない。
まさか、あの人がこのインタビューに答えたのか?
しかし、何故、危険を冒してまでそんな真似を……分からない。
俺はパソコンを操作して、インタビューをした記者を割り出す。
粗方の情報を自動ボッドによって収集し、最後に奴の口座を取得する。
そうして、端末を操作して奴のアドレスを割り出した。
俺はゆっくりと記者へと連絡を繋ぐ。
ワンコール、ツーコールと鳴り響いて……声が聞こえた。
《……何ですか?》
「U・Mの元職員へのインタビュー記事を見た。それに応えた人間の情報が欲しい」
《……誰だ? そもそも、そいつは個人情報だろ。答えられねぇよ》
男はせせら笑いながら答えた。
俺は無言で端末を操作して、男の口座に金を入金した。
俺は男に口座に前金を振り込んだことを伝える。
すると、男は何を言っているのかと思いながらも端末を操作して口座を調べていた。
暫く待てば、口笛が聞こえてくる。
《……前金って事は、まだあるんですか?》
「あぁ、情報を渡せば倍払う」
《……此処だけの話ですよ。口外はしないでくださいね》
「早く言え」
《あぁはいはい……そいつは女で歳は二十代後半から三十代前半。U・Mの元職員ってのはご存じの通りですが。何と、そいつは今、アンダーヘルに身を寄せているんですよ。事情があるらしいんですがね。詳しくは聞けませんでした……インタビューをした時も、厳つい顔の男たちがいて冷や冷やしました。もしも話が聞きたいって言うのならやめておいた方が良いですよ。気分を害されて何をされるか》
「女は今、何処にいる」
《……世界地図の北東に位置する小さな島国。モーランバレスっていう国で、活動していますよ……それで、貴方様は何処の何方で》
通話を切断する。
そうして、約束の金を入金させた。
情報は入手出来て、話をした人間もおおよそ把握できた。
モーランバレスとは、記憶の限りでは豊かな国では無かった気がする。
有名なのは犯罪者が最期に行きつく島国という事で。
”
あそこは無法地帯と化しており、秩序も何も無いと聞く。
昔は国王もいたらしいが、今は処刑されて玉座は空席だと聞いている。
王の補佐役も逃げ出しており、あの国は今や無法者が指揮を取っていた。
確かその男の名は……ディアブロだったか。
俺はゴースト・ラインと関りがあるのではないかと思って個人的に調べていた。
しかし、奴から得られる情報は何も無く。
そもそも関りすら持っていないのだろうと思って放置していた。
だが、アンダーヘルへと身を隠した元職員。
その組織がモーランバレスに存在するのであれば話は別だ。
関りを持っていなかったのではなく、敢えて外へと流れる情報をせき止めていた。
金さえ払えば身内すらも裏切るような連中かと思ったが、案外、絆は固いのか。
考えても分からない事だが、モーランバレスへと行かなければならないだろう。
小さな島国で活動している女。
そのバックには闇組織であるアンダーヘルが関わっている。
あまり関わりたくないと思えるが、U・Mについて知っている人間がいる可能性が高い。
何処の島へと寄港するのか分からない状況で、情報を持っている人間は貴重だ。
危険を冒してでも話を聞きに行く価値はある……それに一つ気がかりがある。
もしも、あの人がインタビューを受けたとして。
何故、そんな回りくどい真似をしたのか。
何か理由があるのは分かるが、その理由の内容までは分からない。
いや、そもそも”追放”されたあの人がどうやって”処罰”を免れた?
追放された人間には記憶処理が施される筈だ。
仲間からそれは確かに聞いていて、ヴォルフさんたちもそうしたと言っていた筈だ。
まさか、俺には黙っていただけで処罰を与えずに野放しに……いや、それは考えられない。
U・Mに関する情報を持った人間をそのまま野に放つ筈がない。
そんな事をすれば敵対組織に拉致された時に、その人間から情報が洩れる恐れがある。
それを防ぐ為に記憶処理をする筈で……だったら、何で記憶を保持している?
記憶を保持した状態で、あの人はインタビューにも応えた。
その結果、俺の目に留まり彼女の元へと行く決意を固めた。
恐らくは、俺を誘っているのだろうが……行くしかないか。
行かなければ、何も分からない。
行って何かが分かるのかは賭けだが、行くしかない。
俺は端末を操作してサイトウさんに連絡を繋ぐ。
《……何?》
「モーランバレスという国へ行きます。そこに、U・Mが保有する島を知る人間がいる可能性があります」
《……分かった。すぐに行く。必要なものは?》
「ある程度、顔は隠した方が良いかもしれません。またミネルバに頼んで変装を……いや、あれは動きづらい。簡単な変装と偽造パスポートを。恐らく、モーランバレスで疑われる事は無いので心配はありません」
《……分かった》
それだけ言ってサイトウさんは通信を切る。
俺は端末をポケットに仕舞ってから、モーランバレスについて調べた。
犯罪件数の多い国であり、内乱は無いものの、犯罪者の温床になっているらしい。
アンダーヘルが身を隠すにはうってつけの場所であり、これ以上の場所は無い。
行くには覚悟がいる。背後から意味も無く刺される恐れもあるのだ。
俺は警戒心を強めながら、パソコンの電源を落とす。
そうして、パソコンを閉じてからゆっくりと息を吐いた。
「……貴方だったら、俺は何と言えばいい……素直には喜べないな」
再会するであろう人物に対して思うところはある。
無事だった事は嬉しいが、彼女にはある疑惑があった。
再会できたらそれを聞く必要のあり……俺は目を細めながら小さく笑う。