【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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160:名付きの兄妹

 兵士たちに周りを固められながら歩いていく。

 城から車で移動して、途中で降車してから歩いて行った。

 ガチャガチャと奴らの装備の擦れる音が聞こえる。

 逃走は不可能であり、切り札を此処で使っても意味は無い。

 爆弾を解除する様に言わないのは何故か。

 恐らく、爆弾を俺が無暗に使わないとディアブロは考えているのだろう。

 その考えは正しく、奴と対等に交渉出来るような人質でもいなければ使おうとは思わない。

 周りに目を向ければ、逃走用のルートは幾つか存在する。

 港へと走っていくなり、ファストトラベルを使えば逃げられるだろうか……いや、無理だな。

 

 幾ら国として正式な認可が下りていなくとも。

 此処は奴らの領土であり、領域権限くらいは持っている筈だ。

 無暗にファストトラベルが出来ない事は、此処に来るまでの道のりで理解していた。

 考えれば分かることだ。何処にでも瞬間移動できる力を、誰にでも使わせる筈は無いと。

 出来たとしても記録をしっかりとつけて監視をする。

 俺やサイトウさんはそれを避けて態々、港から入国したのだ。

 まぁ現時点では、その努力も無駄であったと嫌でも分かる。

 簡単な変装では見破られるのは時間の問題だと思っていた。

 しかし、肉をつけたり身長を変えるような完璧な変装ではいざという時に動けない。

 此処には法や秩序が存在しないからこそ、俺たちは動きやすいように最低限の変装で来た。

 が、結果的には思っていたよりも奴らはすぐに俺たちの変装を見破って来た。

 ローブでしっかりと顔を隠していた筈なのに、それは何故なのか?

 

 俺は移動しながら頭を働かせる。

 写真で確認したというが、そんなことをされて気づかない筈がない。

 俺が見落としたのならまだ分かるが、サイトウさんが気づかない筈が無いのだ。

 彼女は俺よりも勘が鋭く、周りの変化にもいの一番に気づくほどだ。

 そんな彼女の警戒網を潜り抜けて写真を撮れるものなのかと聞かれれば、俺は絶対にあり得ないと答える。

 

 考えれば、不可思議な事だらけだ。

 想定よりも早い段階で変装を見破られたのもそうだが。

 俺の切り札である爆弾を看破したのも驚いた。

 信号を出している訳でも、不自然なほどにローブが盛り上がっている訳でもない。

 ただの勘、それも前もそんな事があったという理由で俺の切り札を見破ったのか。

 俺は奴のその言葉だけは嘘だと確信していた。

 

 奴は確証があって俺の切り札を見破った。

 いや、もっと言うのであれば――俺の切り札の情報を持っていた。

 

 情報を知っている人間は限られる。

 そして、サイトウさんが抵抗する事無く捕まったという事実。

 それを合わせれば、彼女が何か考えがあって情報を奴に渡したのだと確信した。

 情報を渡したのは、恐らくは俺とディーノから離れた時だろう。

 向こうから接触してきたのか、彼女から誘い込んだのかは分からない。

 しかし、確実に彼女は俺の情報を渡した。

 

 何故、情報を渡す必要がある?

 

 俺を裏切るつもりか。いや、それはあり得ない。

 彼女には何かしらの目的があって、俺を利用しようとしている節がある。

 彼女から受けた恩は忘れていないし、利用しようとしても俺は構わない。

 肝心なのは、彼女が目的の為に俺を動かしていてその目的はまだ達成されていないということだ。

 目的が達成されるまでは、彼女も俺を悪い様にはしない筈だ。

 それに裏切っているのであれば、あのタイミングで俺は死んでいるだろう。

 死なずとも自由を奪われて拘束される筈だ。

 

 自分の手足を見れば分かる。

 腕には錠を嵌められておらず、足も自由に動かさせていた。

 監視として兵士数名はついているが、完全に自由は奪われていない。

 その事から、ディアブロの言っていた取引が嘘ではないと分かる。

 治安部隊を消したいという奴の言葉は……恐らく、本心だろう。

 

 ディーノは別の部屋に隔離され。

 サイトウさんも別の場所へと連れていかれてしまった。

 兵士たちは黙々と足を動かして、俺を何処かへと連れていく。

 俺は何も言うことなく足を動かしていって――兵士が足を止めた。

 

 あの黒いタワーにやって来た。

 見上げるほどに高いタワーであり、鉄骨が突き出している事から遠目から見たあのタワーだと分かる。

 タワーの周りには分厚い防壁が設置されていて、その前には重武装の兵士が立っている。

 強化外装であり、歩兵にとってこれほど強力な武器は無いだろう。

 機械の駆動音を響かせながら、重武装の兵士が近づいてくる。

 警備をしているそいつに兵士の一人は端末を翳した。

 スコープのようになった重武装の兵士のメットから短い機械音が響く。

 何かの確認を取ったようであり、重武装の兵士は強化外装用のライフルを下げる。

 そうして、防壁の向こうにいる人間に通信を繋いで開けるように指示していた。

 

 ゆっくりと展開された防壁が開いていく。

 地面に吸い込まれるように壁の一部が消えて。

 解除された壁があった場所を通って、兵士たちは俺を中に誘導した。

 

 中を見れば、それなりの広さで。

 駐車場と思わしきそこには無数の車が止められていた。

 高級車や普通乗用車では無く。

 軍用の軽装甲車や護送車ばかりだ。

 周りには武装した兵士が立っていて、冷たい目で俺の事を見つめていた。

 

 他には幼い子供がチョークで地面に何かを書いて遊んでいたり。

 兵士から指示を受けて武器の整備をしている髭面の男がいる。

 無数の車が置かれて、簡易的なテントが張られたそこを通り過ぎていく。

 壊れた自動ドアの先を通っていけば、荒れ果てたフロントが目に映る。

 中へと入れば、壁などに無数の落書きがあった。

 スプレー缶で吹き付けたようなものであり、統一感はまるでない。

 明らかに塗料ではない赤黒い液体がしぶきのように散っている場所もある。

 簡易的な椅子を立てて、そこに座っている兵士たちは煙草を吹かせて休憩していた。

 

 此処は兵士の詰所のような場所か?

 いや、でも子供もいたな……宿舎か?

 

 ディアブロに忠誠を誓っている兵士やその家族の為に使われている施設なのか。

 恐らくは、そのような施設なのだろう。

 彼らからは敵意は感じないが、人を観察するような視線を感じる。

 まるで、よそ者が来たと冷ややかな目で見つめているようで。

 俺は警戒心を上げながら、周りを注意深く見ていた。

 

 フロントを抜けて真っすぐに進めばエレベーターの扉があった。

 扉にも落書きがあり、下品な言葉が書かれている。

 少しだけ塗料臭い一階から上へと行く為にエレベーターに乗るのか。

 兵士がボタンを押せば扉はゆっくりと開いて、俺は軽く背中を押された。

 促されるままエレベーターに乗り込んで、閉まりゆく扉を見つめていた。

 

 兵士三人と俺一人が乗ったエレベーターは動き出す。

 よく分からないタワーに連れてこられて、碌な説明も受けていない。

 聞いているのは治安部隊を消して欲しいという奴からの願いだけで。

 一緒に任務に当たる二人の人間の情報も、サイトウさんたちを何処へ連れて行ったのかも教えてくれない。

 物は試しと兵士に声を掛けてみた。

 しかし、兵士はチラリと俺を見ただけで何も答えない。

 恐らく、何を質問しても奴らは何も答えないだろう。

 ディアブロからそう命令されているだろうから、無駄な事はしないでおこう。

 

 俺は静かに息を吐く。

 そうして、黙り込んでから上へと進むエレベーターの中で外に視線を向けた。

 ガラス張りのエレベーター内から見える景色はあまり良いとは呼べない。

 あちらこちらで煙が上がっていて、街並みも歪であった。

 王という指導者を失って、三つの陣営がしのぎを削っているのだ。

 今も何処かで殺し合いでもしているのだろうと思った。

 火事が良くある事だと酒場の人間が言っていたから、強ち間違いでも無い筈だ。

 混沌が広がる異様な街並みを見つめながら、俺はゆっくりと目を細めた。

 

 そんな歪んな景色を眺めていればチンと音が鳴る。

 視線を扉へと向ければ、ゆっくりと開かれて行った。

 

 

 その先には、二人の人間が立っていた。

 

 

 両者ともに銀髪で。

 違いがあるとすれば、男か女か。

 

 男の方は邪悪な笑みを浮かべながら俺を見ている。

 その赤い瞳はギラギラとしていて。

 細みながら鍛えられた肉体から繰り出される一撃は危険な気がした。

 暴力的、そう見えなくも無い雰囲気を纏っている。

 迷彩柄の軍服は着崩されており、改造された物だとすぐに分かった。

 首から無数のドッグタグをぶら下げながら、危ない雰囲気の男が俺を睨んでいた。

 

 一方、彼の隣にいる女は静かだ。

 細い眼は俺を見つめているが、敵意や殺気は感じない。

 長い髪を三つ編みにして肩に垂らして。

 黒と白を基調とした服装で、腰には赤いスカーフを巻いていた。

 男が二十代後半に見えるが、この女は幼げな顔立ちで。

 歳は若く見えて十代後半でも不思議ではないと思えた。

 

 男の身長は170センチより少し上で、女は160あるかないかくらいか。

 顔つきと同じ銀髪に赤目をしている事から血縁関係だろうと予想した。

 嫌な予感がしながら見ていれば、兵士に背中を押されて強制的に外へ出される。

 

 此処はタワーの十階で、周りに目を向ければ一階よりはまだ綺麗な方だった。

 黒い床に灰色の壁と、少しだけ散乱している空薬莢。

 ガラスの窓の一部は割れていて、遠くから見えていた鉄骨が真っすぐ外に伸びていた。

 

「おい、何無視してんだよぉ」

 

 俺が周りに目を向けていれば、男はいら立ちを露わにする。

 俺はゆっくりと男に目を向けた。

 男は舌を鳴らしてから、ゆっくりと俺の前に立つ。

 そうして、目を大きく開きながら下から睨みつけて来た。

 

「随分と名が知れ渡ったらしいじゃねぇか。いい気になってんなぁ。テメェ。そうだろ?」

「……お前は誰だ」

「――ぷ」

 

 俺がお前は何者なのかと聞けば、女が笑う。

 ぷっと噴出した女に振り返った男。

 女は顔を真顔に戻して真っすぐ前を見ていた。

 男は俺へと視線を戻すが、怒りで血管が浮き出ている。

 頬をぴくぴくとさせながら、男は俺の肩に手を置いた。

 

「お前は、誰だって? は、はは。そうか。そうだったなぁ。名乗ってなかったもんなぁ。じゃ仕方ねぇわな……俺はカルロ。こいつは妹のメイだ。もっと分かり易く言うんだったら”血の猟犬”だぁ。思い出したかぁ?」

「……メイ。もしかして、アンダーヘルの?」

「ん? 何で私?」

 

 彼の妹であるメイという名には聞き覚えがある。

 それはアンダーヘルの殲滅任務の時に戦った傭兵が言っていたから。

 赤髑髏の傭兵は口が悪く、男と女であることは覚えていた。

 そして、男の方が女の名を呼ぶ時にメイと言っていた。

 つまり、彼女は赤髑髏のデカールの傭兵の片割れだ。

 という事は、この男は――首を横にずらす。

 

 男は勢い良く右の拳を振るってきた。

 間一髪で避けてから、男へと冷めた目を送る。

 男はびきびきと血管を浮き出しながら、狂気的な笑みで俺を見つめた。

 凄まじい形相であり、怒っているのか笑っているのかも判別できないほどだ。

 

「おい、おいおい、おいおいおいッ! 俺を無視すんじゃねぇよカスがァ!! 何で、妹は覚えていて! この俺を覚えていないんだァ!? 此処でうっかりお前を殺しちまいそうなんだァ!! 理由を教えろやァ!!!」

 

 叫びに近い声で男は怒る。

 耳をキンキンさせながら、俺は肩に触れた手をチラリと見る。

 俺の肩を掴みながら男はギリギリと力を強めていった。

 力が強く肩から痛みが発せられていて、今にも罅が入りそうだ。

 俺は彼を静かに見つめながら、ハッキリと理由を答えた。

 

「いや、お前は名乗ってないだろ。あの島での戦いで、メイって呼んでいたのが偶々聞こえたから彼女の名前は覚えていただけだ」

「……あ、そっか。良かったね兄貴。またまた勘違いだよ」

「……あぁ? あ、あぁ……あぁぁ?」

 

 肩から手を放して腕を組んで考え始めた男。

 過去の記憶を思い出そうとしているようで。

 俺はそんなカルロを黙って見つめていた。

 

 やがて、彼はぽんと手を叩く。

 

「あ、俺が勝手に言ってたのか。ワリィ」

「……いや、別にいい」

「――けどよォ!! お前が俺たちをぶっ殺した事は勘違いじゃねェ!! 今すぐ俺と戦えやァ!!」

 

 けろっとしたかと思えば、再び鬼の形相で俺の胸倉を掴んできた。

 情緒が激しい奴であり、妹へと助けを求める視線を送った。

 すると、彼女は指で髪をいじって俺の視線を無視した。

 

「兄貴ってぇ思い込みが激しくてぇ。面倒臭いから。よろしくー」

「……クソ、今日は厄日か」

「あぁ!? ヤクビって何だァ!? 薬でもキメルつもりかァ!?」

「うるせぇ!!」

 

 耳元で叫ぶアホを引き離そうとする。

 しかし、奴は俺へと顔を近づけながらずっと怒鳴っていた。

 面倒臭い男を引き離しながら、俺は何で此処へ連れてこられたのかと聞く。

 すると、妹の方はチラリと俺を見てから大きくため息を吐いた。

 

「……まだ気づかないの? 治安部隊を一緒にぶっ殺しに行くメンバーは後二人……頼もしくて格好いい名付きの傭兵は、アンタの前に何人いますかぁ? ひとーり、ふたーり」

「……だと思ったよ。俺を監視する役目もあるんだろ」

「そうそう。何かしようとしたら半殺しにして良いって言われているから。ダルマにされたくなかったら言う事聞きな?」

 

 薄い笑みを浮かべながらメイは忠告する。

 恐らく、ダルマにするという言葉に嘘は無いだろう。

 アンダーヘルに所属して、名付きである二人だ。

 俺たちのように危険な行為は日常茶飯事であり、誰かを殺す事にも躊躇いが無い筈だ。

 

 妹のメイはカツカツと靴を鳴らして近づいてきて――がすりと兄を蹴る。

 

 思い切り蹴った事で兄は転がっていく。

 体を思い切り壁にぶつけて止まって、何をするのかと叫ぶ兄。

 妹は冷めた目で兄を一瞥してから、俺へと目を向ける。

 そうして、指をくいくいっと動かしてついてくるように指示した。

 

「おふざけは終わり。仕事の時間だよ。クソ兄貴」

「……おぉ、仕事なら仕方ねぇな」

 

 先ほどまで騒がしかった男はすんと静かになる。

 そうして、ボリボリと頭を掻きながら妹の後をついていく。

 俺は少しだけ困惑しながらも、兵士からの圧に負けて追いかけた。

 

 足音が静かに響いて、開いた窓から冷たい風が吹く。

 火薬の臭いがほのかに漂う廊下を進みながら、俺は妹に質問した。

 

「治安部隊を潰せと言われた。具体的には何をするんだ」

「段階的に行動する。幾つかの段階に分けての行動。先ずは第一段階目から。私たちの国の領海に侵入して我が物顔で巡航している治安部の船が幾つかある。メリウスも載せた船だからそれなりに大きいよ。私たちはその船に奇襲をかけて派手に潰す。これが第一段階」

「……そんな事をして何の意味がある」

「威嚇、牽制、警告。意味なんて色々……これで相手が退くならそれで終わり。ただ、アイツ等はそう簡単には退かないと思う。難癖付けて、この島に上陸しようとしてくる筈。それを防ぐ事が第二段階目」

「……どうやって防ぐんだ?」

 

 歩きながら質問すれば、メイは足を止める。

 そうして、面倒な者を見る目で俺を睨んできた。

 

「あのさ。本当に何も聞いていない訳? 一から十まで私が説明しないといけないの? 正直、クソだるいんだけど」

「……教えてくれ。でないと、お前たちの枷になる」

「……はぁ、だる」

 

 メイは重いため息を吐きながら、壁に背を預けた。

 そうして、チラリと兵士に視線を送った。

 彼女からの無言の圧を受けて、兵士たちは足早に去っていった。

 兵士とメイとの間には明確な格差があるようで、彼女の方が権限的には上なのか。

 

 カルロとメイ、そして俺だけになった空間。

 メイはゆっくりと口を開いた。

 

「三つの陣営がこの島でのさばってるのは知ってるよね? 一つは私たちの親であるディアブロの派閥。最も力を持っていて、島の人間からの信頼も厚い。そして、アンタらが持ってきた首だけ男の派閥ともう一つ派閥が存在する……この二つの派閥が、私たちにとってはうざったいの」

「……彼らが手引きして治安部隊を招き入れると?」

「そう。まぁ証拠はまだそんなに無いけど。機会を見計らって奴らは治安部隊をこの島に入れるつもり……ボスは、奴らの計画を強引に進めようとしている。自分を餌にして、治安部隊を狙ったタイミングで誘い込もうとしているの」

「――待て。防ぐのが目的じゃないのか?」

 

 明らかに矛盾している。

 治安部隊を入れたくないから防ぐ筈だ。

 それなのに、今の口ぶりからして進んで招き入れようとしている。

 

 メイはニヤリと笑う。

 そうして、俺に人差し指を向けて来た。

 

「防ぐよ。ディアブロの懐には入れさせない。この島に一歩でも入れば、私たちが駆除するから。勿論、アンタもそれをする」

「……泥沼だ。奴らは数が多い。終わりが無いぞ」

「終わりならあるよ。この計画にはきちんとした終わりがあるから……あ、悪いけど。最終段階の内容は話せないから。ボスから言われてんの」

 

 メイは説明を終えて再び歩き出した。

 カルロはボケっと突っ立って外を見ている。

 彼女は兄を小突いてから、一緒になって歩いていく。

 俺が止まっていると、メイが気が付いて振り返る。

 

「……ま、考えたって仕方ないでしょう。傭兵なら、受けた仕事を果たすだけ。そうじゃないの?」

「……分かっている」

「そ、ならいいよ……昼飯がまだなの。空腹で死にそうだから、さっさとついてきて」

「あぁ? メイよぉ。お前、さっき菓子パンを六つも食って――うごぉ!」

 

 どすりと思い一撃を鳩尾に喰らったカルロ。

 奴は腹を押さえながら、顔を土気色にしていた。

 そんな兄を無視して凶暴な妹はずかずかと歩いて行った。

 髪からのぞく耳は少しだけ赤く。

 寒さからなのか、恥じらいからなのか……表情が見えないからそっとしておくことにした。

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