【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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185:復讐鬼

 慌ただしく動いているスタッフたちをかき分けて。

 何とか俺が乗ってきた船に戻る。

 その間にも島全体が揺れていて、バランスを崩したスタッフが尻餅をついていた。

 怒声や悲鳴が聞こえるエリアで、指示を出す人間もいた。

 冷静な人間がスタッフ達を移動させながら、脇を通り過ぎていった俺たちをチラリと見る。

 静かに頷いてからそのスタッフは視線を逸らして走っていく。

 

 俺は"仲間"からのアイコンタクトを受け取る。

 そうして、タラップから船に乗り込もうとすれば、重装備の兵士が待つように言ってきた。

 その手には特殊なライフルが握られている。

 強行突破をすれば危険であり、俺たちは思わぬ足止めを喰らう。

 しかし、このまま此処で悠長にはしていられない。

 二名の兵士に足止めされて、俺は緊急事態だからと押し通ろうとした。

 すると、兵士の一人が耳に手を当てて誰かと会話を始めた。

 

「……はい、はい……な!? ですが……分かりました……通ってください……お会い出来て光栄です。ご武運を」

「……ありがとう」

 

 綺麗な敬礼をしながら、彼は俺たちに道を開ける。

 もう一人の兵士は困惑しながら、敬礼をする兵士を見ていた。

 俺は彼に会釈をしてから船に乗り込んだ。

 船内には灯りが灯っていて、船は既に稼働していた。

 カツカツという鉄を叩く音を靴で響かせながら、俺はゴウリキマルさんを安全な場所へ導く。

 途中で、船内との通信が可能になったからか端末が震えた。

 俺は端末を取り出しながら、表示を見てバネッサ先生である事を認識した。

 通信に出て今はどういう状況なのか、何者からの攻撃なのか聞く。

 彼女に問いかければ、敵は無人機であり、その中には有人機も存在すると言う。

 

《敵の狙いはゴウリキマル君だ……我々を焙りだす為なのか。有人機は後方に控えている。もしも出撃するのなら、気をつけなさい……纏う空気が、真面じゃない……トロイ君たちは既に船に乗船している。君はすぐにでも出撃できるように格納庫を目指してくれ》

「分かりました……ゴウリキマルさんは、この部屋で身を隠していてください」

「分かった……無理はするなよ」

 

 彼女は足を止めて俺の手をギュッと握った。

 俺も足を止めて彼女へと視線を向ける。

 そうして、彼女に笑いかけながらしっかりと頷いた。

 

「はは、分かっていますよ……行ってきます」

 

 片手で扉のロックを解除した。

 横へとスライドして部屋の扉が開かれた。

 頑丈な作りの部屋であり、狙われやすいブリッジよりも此処の方が安全だ。

 彼女の手を離して俺は駆けていく。

 後ろから彼女の視線を感じながら、俺は愛機を目指して駆けた。

 

 

 

 機体の格納エリアに着く。

 そこには、俺やサイトウさんの機体以外にトロイのファイヤボルトなども格納されていた。

 彼らの機体を一瞥してから、俺は自分の機体へと向かう。

 

 カツカツとケージの階段を駆け上がりながら、俺はコックピッドを目指す。

 上へ上へと駆け上がり、コックピッドへと着くとハッジは自動で展開された。

 俺は体を滑り込ませるように機体内へと侵入し、パネルを叩いて機体の状態を確認した。

 自動でバッヂが閉じられて、AIから声を掛けられる。

 俺は笑みを浮かべながらAIの言葉に答えた。

 

 エネルギーの充填率は問題ない。

 武装も登録されていて、システムに不備は無い。

 大体の状態を確認していれば、通信が繋がされた。

 相手はヴォルフさんであり、今の状況を簡潔に伝えてきた。

 

《意識は戻ったようだな。病み上がりで申し訳ないが、敵が攻撃を仕掛けてきた。迎撃部隊が敵を引き付けている間に、お前たちには出航してもらう……マサムネ。お前の力が必要だ。その船の中で最も機動力があるのは雷切だ。敵の包囲網を突破して、機械たちの墓場を目指せ……時間は無かったが、急ごしらえの転移装置をその船に組み込む事が出来た。緊急時用に取り付けたものだから、一度しか使えない。その上、短距離での移動しか出来ないが、それで敵の包囲網を掻い潜る事が出来るだろう。転移装置の起動までには、約五分の時間を要する……島内での使用は危険が伴う。悪いが、切り札は外へと出てから使用してもらうことになるだろう。それまで、何とか船を守るんだ》

「了解」

 

 ヴォルフさんの指示に返答する。

 その間にも島全体の揺れは増していく。

 このまま島内で待機していても沈められるだけだ。

 この島のスタッフたちを守る為にも、島から早々に出航する必要がある。

 敵の狙いはゴウリキマルさんであり、この船が出れば敵の一部が此方に襲ってくるだろう。

 

 トロイたちを出撃させる事も出来る。

 しかし、転移装置が起動する時に船に戻って来れなければ百パーセント死ぬ。

 そうならない為にも、単機で敵の攻撃を引き付ける人間が必要になる。

 敵の攻撃を一手に引き付けるのなら……俺しかいないな。

 

 無人機が相手なら、十中八九が相手はゴースト・ラインで。

 因縁が深い俺が出れば、奴らも躍起になって襲ってくるだろう。

 システムのチェックを済ませて、俺は機体を待機状態から戦闘モードに切り替える。

 全てのモニターに光がついて、周囲の景色を表示させた。

 船が動き出したのを感じながら、俺は機体をゆっくりと動かした。

 

 所定の位置で機体を停止させながら、俺は船が浮上するのを待つ。

 ピリリと音が鳴り、また何者からの通信を繋がされる。

 相手はバネッサ先生であり、俺はすぐに通信を繋いだ。

 通信が繋がって、ブリッジのバネッサ先生から指示を受ける。

 

《船が浮上する。島から出れば、一部の敵が襲ってくるだろう……任せたよ。マサムネ君》

「はい。任されました」

 

 俺は笑みを浮かべながら了承する。

 一つのウィンドウが表示されて、船の周りのスタッフが移動していくのが見えた。

 船はゆっくりと進みだして、船体をゆっくりと浮上させていった。

 船に隣接するエリアが隔壁によって封鎖されて、一つの区画に海水が満たされていく。

 狭くなったエリアには海水がすぐに満たされていって。 

 船は上へと昇っていき、天井部分が螺旋状に展開されていった。

 爆発音が徐々に大きくなっていく中で、船は上へと浮上していき――全面が展開された。

 

 覆い隠されていた天井が開かれて、目の前を塞ぐものが無くなる。

 船は全速力で進みだし、混戦状態の戦場を突き抜けていく。

 空中では無数のメリウスが戦闘を繰り広げていて。

 黒煙に包まれた空の中で、敵味方が入り乱れていた。

 俺たちの船が島から出れば、敵の一部が気づいて攻撃を仕掛けてきた。

 

《オッコ、トロイ、レノアッ! 迎撃開始ッ!!》

《了解ッ!!》

 

 バネッサ先生の指示に答える三人。

 彼らとの通信超しに、銃弾が乱射される音が響いた。

 重く鈍い音を響かせながら、宙を舞う無人機達に弾が勢いよく放たれた。

 外部に取り付けられたカメラから、宙を舞う無人機達が動きを止めるのを確認した。

 精確な狙いで敵を攻撃して、何機かはもろに被弾してハチの巣にされていた。

 迫って来た無人機は接近を止めて、距離を保っている。

 船の防衛装置をフルで起動して、濃い弾幕が展開されていた。

 敵への牽制の役目を果たしてくれる仲間達に感謝しながら、俺はレバーを握る。

 カチャカチャと指の部分のボタンの動作確認をしていれば、格納部にサイレンが鳴り響いた。

 真っ赤な回転灯を一瞥してから、俺は正面を見据える。

 ハッヂが開いていき、俺は脚部を射出部に載せる。

 ガチャリと脚部が固定されて、俺は姿勢を低くさせた。

 

「行くぞ――雷切・弐式ッ!!」

 

 射出部が動き出した。

 急激なGを体全体で感じながら、俺の機体は外へと放り出される。

 そうして、スラスターを点火して俺は宙を舞った。

 すぐに敵が襲ってきて、俺は両手の長距離用ショットライフルを構える。

 

 センサーが機影を捉えて音を鳴らす。

 敵の攻撃を避けながら、銃口を向けてボタンを押した。

 カチャリと音がすれば、ショットライフルから実体弾が放たれて。

 敵の装甲を蜂の巣にして、爆発四散させた。

 散っていく敵の残骸を一瞥してから、俺はスラスターを動かして他の敵の迎撃を開始した。

 

 両手にアサルトライフルを装備して、両肩にキャノン砲を装備した敵たち。

 確実に船を沈める装備をした敵たちに違和感を覚える。

 敵はゴウリキマルさんの持つ鍵を狙っている筈だ。

 それなのに、捕獲用の装備をしていないのは何故か……?

 

 機体を操作しながら、敵の攻撃を回避していく。

 バラバラと弾がバラまかれて、機体の装甲を軽く撫でていく。

 キャノン砲も火を吹いて、すぐ近くで爆ぜる。

 ビリビリと振動が伝わってきて、敵と戦っているのだと俺は実感できた。

 俺は機動力を活かして、敵の背後を取りにいく。

 スラスターから甲高い音が鳴り、連続して機体が大きく揺れた。

 視界が一瞬にして移り変わり、目の前に敵の背部が映る。

 俺はニヤリと笑いながら、ボタンを押して銃弾を浴びせた。

 炸裂音と共にショットライフルから弾が放たれて、ガツンという強い衝撃音と共に敵は大きく前へと弾かれる。

 背中を至近距離で穴だらけにされて、敵はバチバチと機体をスパークさせて――大きく爆ぜた。

 

 爆風を浴びながらも、煙から飛び出して向かってくる無人機を船から引き剥がす。

 奴らがセンサー外からの攻撃に対処できる筈も無い。

 向かってくる無人機をロックオンしながら、機体を操作して接近する。

 変則的な動きで敵の狙いを外させながら、一瞬の隙をついて肉薄する。

 そうして、ゼロ距離からコアを穿つ。

 作業のように、無人機たちの数を一機ずつ減らしていく。

 

 一機、また一機と撃墜して――敵の機動が変化した。

 

 連携を取って攻撃を仕掛けて来る敵が増える。

 前方と背後に周り同時に攻撃を仕掛けてきた。

 敵の射線と行動パターンをAIが瞬時に計算した。

 それを頭に刷り込んで、反射的に機体を回転させて銃弾を回避。

 多少の誤差はあったが、弾がまともに被弾するのを防いだ。

 そうして、回避直後に下へと垂直降下すれば機体全体が激しく揺れた。

 敵のロックオンを知らせる警報を聞きながら、機体を急停止させる。

 その反動で体が押しつぶされるような感覚を覚えたが気にしない。

 敵は急な動きについてこられるような柔軟な思考を持っていない。

 やけくそで撃った銃弾が空を切り、俺は連続ブーストによって空に軌跡を描いた。

 

 迫って来ていた二機の無人機。

 その背後を取りながら、ブースターへと攻撃を放つ。

 無数に散らばった小型の弾がガリガリと敵のブースターを穿つ。

 奴らの周りを飛行しながら、連続して弾を見舞う。

 何度も何度もガスガスと金属を抉る音が響いて。

 敵は残骸を周囲にばら撒きながら、大きな爆発を起こして海面へと突っ込んでいった。

 

 瞬きの合間に、二機をほぼ同時に堕とした。

 しかし、敵はまだまだ無数にいる。

 これほどの無人機を引き連れてきたのなら、敵は船を墜とす気だろう。

 ゴウリキマルさんの安全を確保する為にも、敵の幹部を墜としておく必要がある。

 俺は船の安全を守りながら、レーダーを確認して有人機を探した。

 

 確実に、司令塔がこのエリアにいる。

 そいつが此処で指揮を執って、船を沈めようとしている。

 いや、もっと言うのであれば船どころか島すらも消そうとしていた。

 

 感じる。敵の群れの中で、強い殺意を感じた。

 強い強い、負の感情であり――レバーを操作する。

 

 直線の移動を止めて横へとズレる。

 すると、一瞬遅れて本来通る筈だった軌道に向けて頭上から極太のレーザーが撃ち込まれた。

 全てを焼き尽くすほどの出力であり、敵も味方も関係なく焼き払う。

 オープン回線越しに味方の悲鳴が聞こえた。

 俺は舌を鳴らしながら、迫りくるレーザーを回避した。

 

 赤黒い強烈な光を発する極太のレーザーが収束されて、海面に蒸気が発生していた。

 船の近くに穴が空いて、船が引き込まれそうになる。

 

 大きく傾きながらも、スタッフたちが機転を利かせて船のバランスを取る。

 それによって船は転覆することも無く、危険なエリアから離脱していった。

 何とか持ち堪えて、渦から逃れたが危なかった。

 俺は機体を動かしながら、レーザーを撃った機体を見た。

 青い機体の頭部は横一線の白いライン状の光を発している。

 右腕に取り付けられた巨大な砲塔の先は真っ赤に赤熱していた。

 大きく長大なそれからは空気が発せられて、武器自体が急速に冷却される。

 恐らくはアレが有人機であり、俺は敵へと接近する。

 ショットライフルを二丁向けながら攻撃を仕掛けようとして――回避行動を取った。

 

 横合いから何かが飛び出した。

 それを直感で回避すれば、回転するチェーンブレードを”四つ”装備した敵がいた。

 両手がチェーンブレードと一体化して、両肩から伸びたサブアームからも金切り音を立てるチェーンブレードが生えている。

 赤錆色の機体であり、その双眼センサーは青く発光していた。

 背中から真っすぐに伸びる大きなブースターに加えて、機体の各部に取り付けられた小型のブースター。

 接近戦をメインに作られた機体で、動きからしてブースト性能が高いだろう。

 間合いに入られたら最期であり、敵の機動を予測して動かなければならない。

 

「厄介だな……本当に」

《殺す……殺す……殺す》

 

 ぼそりと呟けば、敵の通信を傍受してしまった。

 有人機に乗った敵は何度も何度も殺意を零していた。

 相当な恨みがあるようであり、俺はその敵に強い危機感を抱いた。

 

《……行きましょう。セブンさん……貴方の無念を晴らしに》

《――》

「……何だ?」

 

 怨念に取り込まれたような男の呟き。

 それに反応するように、チェーンブレードの機体から音が鳴った。

 しかし、その音は人間が発するものではない。

 機械の音であり、感情なんて感じられない筈だ……それなのに、これは何だ?

 

 機械から発せられた言葉から、強い悲しみを感じた。

 まるで、こうなって欲しくなかったと思っているようで――敵のセンサーが青く発光する。

 

 強い発光であり、その手のブレードが甲高い音を奏でた。

 有人機の男は照準を船へと定めながら、また狂ったように殺意を滾らせていた。

 今は相手の感情を考え言える暇は無い。

 あのレーザーを使う男を止めなければ、船が沈められてしまう。

 二度もアレを回避できるとは思わない方がいい。

 しかし、その行く手を阻むようにチェーンブレードの無人機が立ちはだかる。

 

「やるしかないか……お前も、眠りたいんだろう」

《――》

 

 機械の言葉なんて分からない。

 しかし、相手の気持ちは何となく伝わって来る。

 終わらせてほしい。眠りにつきたい。

 相手からその感情を受け取って、俺はスラスターを点火した。

 機動力を武器にして相手をかく乱しようとする。

 そんな俺へと敵は追走してきて、その手のチェーンブレードで斬り刻もうとする。

 あの有人機を食い止められなければ俺たちの負け。

 転移装置の起動までに船を守り通せれば俺たちの勝ち――シンプルでいいじゃないかッ!

 

 更に機体を加速させる。

 コックピッド内が激しく振動した。

 両手のショットライフルを構えながら、敵に放つ。

 敵は迫り来る弾丸をブレードを弾きながら突貫してきた。

 強く光を発光させながら、敵は俺を殺す為に突き進む。

 俺は笑みを深めながらそれを見つめて、レバーを操作して更なる速度の限界に挑んだ。

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