【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
スラスターから音が鳴り響いて機体全体が激しく揺さぶられる。
敵の接近を知らせるアラートがけたたましく鳴り、カタカタと振動するレバーを両手で操作した。
振りかぶられたチェーンブレードが空を切り。
甲高い音を奏でながら、耳元で嫌な音を立てていた。
高速で回転するチェーンが敵の命を刈り取る音を奏でて、奴のセンサーが強く光る。
コックピッド内でそれを見ながら、俺は機体を回転させて奴へと蹴りを放つ。
爆発的なスラスターの噴射によって遠心力が載った一撃だ。
金属同士がかち合う音が響いて、奴の胴体部が少し凹んだ。
敵は少し後方へと機体を弾き飛ばされて――サブアームが振られる。
ダメージを受けることなどお構いなしで。
人が乗り込んでいない無人機は果敢に攻め込んできた。
咄嗟にショットライフルの弾丸を放って、敵の攻撃の機動を強制的に変える。
サブアームの持つブレードに弾が当たり、奴の攻撃の機動が僅かにズレる。
頭部をガリガリと掠めてディスプレイに少しノイズが走るが問題ない。
すぐに機体を操作して後方へと下がり、敵との距離を離しながらエネルギーを充填している有人機に向かう。
レーダーを常に確認して二機を意識の中に入れておく。
そして、敵のエネルギー充填率を計測しながら、襲い来る無人機たちをギリギリで避けていく。
左右から襲い掛かって来た敵を回転によって往なす。
キャノン砲が放たれて眼前に弾が迫る。
が、速度を落とすことなく機体を一気に下へと下がらせる。
急激な進路の変更によって体に凄まじい力が加わる。
機体内の調整が間に合わないほどの動きであり、体から嫌な音が鳴った気がした。
俺は笑みを深めながら、シールド越しに敵を見つめる。
全ての敵を躱していく。
次々に流れていく敵の残影を見ながら、全ての障害を越えていく。
避けきれなかった弾が装甲に当たり甲高い音を立てた。
線香花火のように火花を散らせながら、新品の機体に傷が増えて良く。
せっかくの新車が台無しか。いや、そんな事は無い。
傷が増えるほど、塗装が剥がれるほどに乗ってやってこそ――機体は喜ぶものだろう。
ペダルを強く踏みつける。
更なる速度の限界を超えて機体が飛翔する。
邪魔をする敵の全てを視界に捉える。
高速移動をしながら、襲い来る敵の対処をしていく。
最短で最速で、一つ一つを荒々しく片付けていった。
進路を塞ぐ敵にはショットライフルをお見舞いする。
機体に無数の穴をつけたそいつに対して体当たりをした。
強引に肩からぶつかれば、装甲の脆い敵の機体はバラバラに飛び散った。
噴出したオイルが機体に掛かり、センサーが少し汚れたが風によって弾き飛ばされた。
弾を撃ち、破壊し、体当たりし、ぶっ壊し、速度を速めて――突っ込んでいく。
あの有人機は既に視認できている。汚れ切った機体のセンサーで敵を見つめながら。
俺は両手のショットライフルの銃口を敵へと向けた。
エネルギー充填率は危険なほどに高まっている。
奴のレーザー砲が次に放たれれば俺たちの負けだろう。
だが、そう簡単に――王を取らせたりはしないッ!!
危険度が跳ね上がっていく度に、敵へと接近しながら妨害を行う。
射程圏内に入った瞬間に両手のショットライフルの弾丸を見舞う。
発車の衝撃がコックピッド内に伝わり、弾が奴へと殺到する。
無数の弾がガスガスと有人機のボディーに当たり、奴の機体に傷が入る。
しかし、分厚い装甲に守られた奴は以前変わりなくエネルギーを充填させ続けた。
一瞬、船へと狙いをつけていた敵のセンサーが俺に向いた気がした。
そうだ。意識を此方に向けろ。
俺を見なければ、お前はすぐに――スクラップになっちまうぞ。
奴へと接近しながら、連続してボタンを押す。
オートで次弾が装填されて、弾が炸裂音と共に発射される。
空の薬莢が煙と共に排出されて、機体の後方へと流れていく。
俺は奴からのヘイトを俺自身に向けさせる為に、連続して弾を放ち続けた。
スラスターを噴かせて、レーザー砲を持つ敵へと攻撃を続ける。
ターゲットサイトで敵をロックオンしながら、距離を縮めながら連続で放つ。
指が痛くなるほどに攻撃を続けて、奴の厚い装甲を穿とうとする。
鼻から何かが垂れて口に入り、鉄錆の味が口内に広がる。
久しぶりの戦闘に気持ちが高ぶって、強い興奮を覚えていた。
何時から、俺はこんなに戦闘を楽しむようになった?
そんな事は知らない。
過去の俺があの狂った爺さんに戦闘に関する教育を施されたことが関係しているのか。
何も分からない。分からないからこそ――この力で、障害を破壊する。
奴の脇を掠めていき、スラスターをの向きを調整する。
そうして、高速で背後を振り向きながら奴の機体全体に攻撃を行った。
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も――何度もだッ!!
「――敵影ッ!!」
警告音を聞く前に、機体を一気に動かした。
背後から迫った敵の攻撃をギリギリで避ける。
しかし、完全には避ける事が出来ず。
肩をギャリギャリと削りながら、敵はセンサーを強く発光させた。
破損状態を確認して……まだいけるな。
動力炉は問題ない。
エネルギーの残量もまだいける。
少しスラスターへのダメージが増えて危ないが……どうという事は無い。
センサーを強く光らせながら、四つの武器を持つ敵から強い敵意を感じる。
無人機の筈なのに、まるで意思を持っているような感じだった。
アレは他の無人機とは違う……まさか。
無人機の事を考えていれば、敵は一気に距離を縮めて来た。
俺は敵の攻撃から逃れる為にスラスターを噴かせて一定の距離を保った。
俺自身も機械だったからこそ分かる。
この無人機も意思を持っており、何かを俺に伝えようとしていた。
しかし、戦闘中に奴の真意を測ることなど出来ない。
相手は無人機とはいえ、かなりの手練れであった。
俺の攻撃を難なくブーストで回避して、奴は肉薄してくる。
迫りくる一撃目のチェーンブレードを回避して、二撃目をショットライフルの銃身で受ける。
チェーンが甲高い音を立ててギャリギャリと銃身を削っていく。
耐久力のある武器であっても、こんな攻撃を長くは耐えられない。
火花を散らせながらもう少しで銃を両断しようとしている無人機の出力自体は雷切よりも上かもしれない。
鍔迫り合いをすれば押されるのは自分であり、胴体を切り裂こうとした敵の攻撃をブーストによって飛んで回避した。
上へと上昇した推力を利用して、ショットライフルを敵の武器から離す。
そうして、弐式の”隠し腕”を起動した。
右腕に格納されていた小型の隠し腕が展開されて。
腕の先に付けられたランチャーからスタン弾が放たれる。
奴のセンサーの正面部分にスタン弾がかち当たり、火花を散らせながら大きく爆ぜた。
バチバチと電流が走り、相手のセンサーが激しく点滅していた。
無人機はセンサーを誤作動させながら、周囲にやたらめったらに攻撃を仕掛けていた。
それを一瞥して、俺は再びエネルギーを充填させている敵へと接近する。
グングンとスピードを上げて接近して――敵のセンサーが俺に向けられる。
強い殺意。怨念に近いそれが俺に向く。
心がかつてないほどの警鐘を鳴らしていた。
俺は歯を食いしばりながら、操縦レバーを更に押し込む。
《――死ね》
「――ッ!」
敵の狙いが変わった。
巨大なレーザー砲の噴射口からエネルギーが噴射して、その銃口が俺へと向けられる。
いや、最初から俺を狙うつもりだったのか。
照準が俺へと定められて、エネルギーが一点に集約していく。
回避行動は間に合わない。
攻撃を仕掛ける――いや、意味は無い。
いくら敵の装甲にダメージを与えていたとしても、この距離で狙いを外すさせる事は不利な賭けだ。
スローモーションの世界の中で、奴の攻撃が放たれる瞬間を見つめる。
死ぬ。
確実に死ぬ。
その瞬間が迫っている。
氷を心臓に刺されたように、全身に怖気が走る。
俺は大きく目を見開きながら、スローモーションのように動く世界で抗おうとした。
背筋を悪寒が走って、冷たい死を予見させる。
俺は強く歯を食いしばって――まだだッ!!
諦める訳にはいかない。
こんな所で死んでいる暇なんて無い。
俺は生きる。生きて――仲間を守り抜くッ!!!
強い感情、それに呼応するように機体が赤く光を発した。
心臓の鼓動が早まり、レバーを通して俺の熱が機体に伝わる。
その瞬間に、機体に変化が訪れた。
コアの稼働スピードが跳ね上がり、コックピッド内に強い熱が伝わって来る。
確かな高揚感を覚え、機体の動きが一瞬だけ羽のように軽くなった。
まるで、熱せられたサウナの中にいる様で――俺はペダルを踏んだ。
強く踏みしめれば、機体は一気に加速した。
体がシートに強く押しつけられて、歯が砕けそうになるほど奥歯を噛む。
レバーから離れそうになる手を根性で食い止める。
そうして、放たれた極太のレーザーを紙一重で回避した。
耳元でレーザーから発せられる不気味な音を聞きながら、俺は強引に機体を操作する。
――いや、ギリギリ右肩を掠めてたかッ!
機体の全体図を見れば右肩がオレンジ色になっていた。
けたたましいほどに鳴り続ける警告音は、まるで地獄のオーケストラの音色の様だ。
少しだけ機体が傾くが根性で持ち直して、俺はレバーを操作してレーザーを回避した。
奴はレーザーを動かすが、俺はその軌道の先を読んで動く。
這うようにレーザーを回避して、俺は機体を回転させながらショットライフル二丁を敵に向ける。
音速を超えて奴の機体に接近し――ゼロ距離に捉えた。
視界が上下逆さになった状態で、敵の白く発光するセンサーが俺へと向けられていた。
俺は笑みを深めながら、目を細める。
もう何処にも逃げ場は無い。お前は此処で――墜とすッ!!
奴を静かに見つめながら、俺は自らの闘争本能に従うようにボタンを強く押した。
がすんと音が鳴り、少しの反動と共にショットライフルから弾が放たれた。
ほぼゼロ距離からの射撃であり、敵の装甲には無数の穴が空く。
機体の各部からスパークを起こしながら、敵はふらふらと浮かんでいた。
綺麗な面にも罅が入り、男前に磨きがかかった様だ。
それを一瞬の交差で確認して、俺は機体を加速させた。
センサーから敵の状態を確認する。
破損状態から言えば、まだ中破状態だろう。
しかし、万全な状態ではないからあの長大なレーザー砲は使えない筈だ。
エネルギーの消費量はばかデカい筈で、あれを放つだけでも膨大な計算を要する筈だ。
アレだけのダメージなら、コアからのエネルギー供給率も下がった筈だ。
もう、アレが猛威を振るう事は無い――しかし、それは勘違いだった。
奴はあっさりとレーザー砲をパージした。
巨大な砲台は持ち主を失って海面に落下していった。
何をしている。アレを使って船を沈めるつもりじゃなかったのか。
いや、使えない事を速やかに判断して切り離した……まだ、終わりじゃないな。
奴は徐に両手を広げたかと思えば、装甲が派手な音を立ててはじけ飛んだ。
余分な外装が取り除かれて、奴の機体の本来の姿が露わになる。
軽量型の機体であり、アレこそが奴の本来の戦闘スタイルか。
シャープな見た目の機体で、カラーリングは青を基調としている。
背中の大型のスラスターからは赤黒いエネルギーが発せられていて。
殺意は収まるどころか湯水のような溢れ出していた。
記憶の中に、奴の機体と似ているものがある。
乗っていた人間の声とも酷似していて、違いがあるとすればあのパイロットからは幼さを感じた。
しかし、目の前の機体に乗るパイロットからそれを感じない。
一皮剥けたか。奴自身のポテンシャルは相当に高いのだと此処に来て理解する。
確かアレは、U・Mの母艦が出航する時に妨害してきた敵だ。
あの時は、今よりも楽に攻撃が当たった。
優秀ではあるが、まだ未熟なパイロットだと思ったが……今はそうは思えない。
敵意を剥き出しにし、相手の命を奪う事に全力を注ぐ男。
その声に反して、奴の闘争心は並みはずれたもので。
過去の奴と今の奴は、まるで別人だと分かる。
……やっぱり、こいつはゴースト・ラインの幹部で間違いない。
これほどの手練れならそうとしか考えられないだろう。
スラスターからおぞましい色のエネルギーを噴射しながら、奴は沈黙していた。
船がジャンプするまでにはまだ時間がある。
第二ラウンドの始まりであり、俺は幹部とその横に並び立つ無人機を見つめた。
その時に、レーダーが接近する何かを捉えた。
かなり早い速度で接近しており――上空を飛行している。
視線を向ければ、肉眼で視認できるほどの距離を飛行していた。
雲を切り裂き飛来するそれは、空中で外装を切り離した。
カーゴ状になったそれが装甲を展開すれば、中から何かが放り出された。
上空へと飛び上がりながら、奴はそれを両腕へと装着する。
ガシャリと音を立てて取り付けられたそれ。
奴はそのまま機体からエネルギーを勢いよく噴射させて俺へと向かってきた。
不穏な音を奏でながら赤黒いエネルギーをスラスターから吹かせる敵。
それが一気に距離を縮めてきて――あれほどの出力が出せるのかッ!
特別製のコアを積んでいるのだろう。
俺はスラスターを噴かせて敵に突っ込む。
互いに得物を向けながら、急速に距離を縮めた。
迎え撃つ――が、心が最大級の警鐘を鳴らした。
一瞬の判断によって機体に回避行動を取らせる。
真っすぐ進んでいた機体を右へとずらした。
すると、有人機が装着した装備から赤黒い光が迸る。
それは長く平たい形状となり――ショットライフルを両断した。
咄嗟にガードすれば、鋼鉄のライフルがバターでも切る様に溶断される。
ズクズクに溶けたそれを捨て去り、俺は紙一重で敵の攻撃を回避した。
機体を動かしながら、何とか呼吸を整える。
汗を流しながら、敵を見つめればチェーンブレードの機体と並び立ちながら腕を下に向けていた。
赤黒いエネルギーを刃物のように形成し、アレで敵を攻撃するのか。
一撃必殺であり、チェーンブレードの敵同様に捕まれば命は無い。
確実に敵の命を狩る為の武装であり、俺は舌を鳴らした。
「捕獲が目的じゃない。こいつらは……ただ、相手を殺す事が目的か」
《――殺す。殺す。殺す。殺すッ!!》
《――》
強い殺意を感じた。
奴の背部の大型のスラスターからエネルギーが噴射されて。
チェーンブレードの無人機と連携するように向かってきた。
俺は腰に付けたサブウェポンを装着する。
円状に広がったエネルギー障壁であり、これで敵の攻撃を防ぐ。
何発防げるかは賭けだが……やるしかないだろう。
残り時間を確認すれば、あともう少しだった。
果たして、残り時間まで敵を引き付ける事が出来るのか。
俺はペダルを強く踏みながら、敵から距離を取る。
そうして、ブーストして接近してくる敵にショットライフルの弾丸を放つ。
殺る事は出来ない。ただの牽制目的で――奴らは縫うように回避する。
蛇のように動く奴らは一瞬で俺へと肉薄してきた。
無人機がチェーンブレードを振るう。
俺はショットライフルを構えて弾を放った。
すると、奴は攻撃を途中でやめて横へと回避する。
続いて、警報が鳴り響き俺はそちらへ視線を向けることも無くシールドを展開した。
一瞬の鍔迫り合い。エネルギー同士の衝突が起こった。
バチバチという危険な音をほんの一秒足らず聞き、すぐに機体を下へと降下せた。
一瞬遅れて、バリアが破られた。
奴の危険なエネルギーブレードがさっきまでコアのあった部分を切り裂いていく。
ほんの少しの判断ミスも許されない。
操縦をミスれば最期であり、俺は気を引き締めた。
レバーを汗ばむ手で強く握る。
そうして、高機動の機体二機を相手取った。
距離を離してもすぐに肉薄されて、攻撃を仕掛けて来る。
ライフルで牽制し、シールドで命の危機を回避。
耳元で聞こえる甲高い音と、シールドから放たれるスパーク音。
その音が何度も何度も鳴り響いて、その度に心臓の鼓動が早まっていく。
敵の行動をセンサーで捉えていれば遅い。
相手の動きを予測し、未来を見た上で行動しなければ墜とされる。
視線が忙しなく動き、全身から汗が噴き出す。
命の危機が迫り、背筋に悪寒が走った。
けたたましいアラートと敵の攻撃時に生じる音。
それらを聞きながら、俺は必死になって敵の攻撃を回避し続けた。
しかし、それでも間に合わない。
チェーンブレードが装甲を撫でる。
軽い一撫でで、装甲がギャリギャリと削られて。
敵のレーザーブレードの余波で、センサーが誤作動を起こす。
ノイズが走る視界の中で、俺は懸命に機体を動かした。
コアはフルで活動しており、コックピッド内は熱気に包まれていた。
回避運動だけで、スラスターを限界まで酷使している。
一瞬でも気を抜けば殺されるのだ。
張り詰めた緊張の糸を緩める隙は無い。
熟達した機体の操縦技術。
迷いの無い判断に加えて、敵の連携の取り方。
全てが完成されたものであるが、それだけではここまで苦戦はしない。
何よりも俺を恐怖させるのは――奴の強い殺意だった。
確実に相手を殺す。
絶対に相手を逃がせない。
その為ならば、自分の命の安全すらどうでもいい。
その気概を有人機のパイロットから感じた。
かつてないほどの強い殺意で、吐き気すら覚えるほどだった。
こいつは本物であり、確かな覚悟がある。
俺は命の危機が迫る中で、静かに口角を上げた。
相手が本気で俺を殺しに来るのなら――俺も本気になるしかない。
「生きるか。死ぬか――シンプルだなッ!!」
《死ねッ!!!》
互いの得物がかち当たる。
相手のブレードをシールドで防ぐ。
そうして、一瞬の硬直の合間に敵にライフルを放つ。
敵は半身をズラして回避して、ブレードの出力を上げた。
シールドごと一刀両断されて、俺も機体を垂直降下させた。
無人機が降下予測地点に先回りしている。
それを感じながら、隠し腕を展開してスタン弾を――横に放つ。
《――!》
「お見通しだ」
敵が俺のスタン弾を学習していたのは分かっていた。
だからこそ、下へと打ち込むの予想して敵は横へとブースト移動をするのを予測した。
真横に来た奴の面に弾がかち当たり、閃光が迸った。
奴の機体は陸に打ち上げられた魚のように震えて、ギギギと音を鳴らしていた。
再び視界を塞がれて、敵は機体の制御を奪われて落下していった。
二発目を喰らえば、流石にシステムに異常が出る様だ――その時、初めて有人機パイロットから人らしい声が聞こえた。
《――セブンさんッ!!》
奴が動揺を露わにして無人機を助けに来ようとした。
俺は発生した隙を見逃す筈も無く、ショットライフルを構える。
弾を放てば、奴は回避行動を取った。
連続して放ちながら距離を詰めて、奴が苛立ちを露わにしながらブレードを振るう。
しかし、そんなあからさまな一撃が当たる筈も無い。
俺は連続して機体をブーストさせて、奴の背後へと回る。
大ぶりの攻撃によって隙が生まれて、奴は背後に立った俺への対処が遅れる。
回避か、攻撃か――その迷いが、お前の敗因だ。
もう体はボロボロであり、息も絶え絶えだ。
たった一度の戦闘で、全身は大雨の中を走ったようにずぶ濡れで。
しかし、こいつを倒す為の力は残してある。
幹部を一人倒しただけでも、旅の安全は跳ね上がる。
俺は弧を描くように口を曲げながら、奴のコアへと向けてショットライフルの銃口を押し付けた。
「あばよ――ッ!!」
《――!》
奴を仕留めようとした時。
視界が塞がれている筈の無人身がブーストして接近し体当たりしてきた。
有人機の仲間ごと俺を弾き飛ばして。
無人機の機体は大きく機体を凹ませながら、バチバチとスパークしていた。
攻撃じゃない。攻撃なら、チェーンブレードを使う。
今のはただの体当たりで、俺よりも耐久性能が低い癖に、何故……?
敵は何をしているのかと声を荒げていた。
俺は困惑しながらも、距離を取って牽制目的で弾を放つ。
敵は散開しながら、此方の様子を伺う。
まさか、奴を庇って……?
破損状態を片手間で確認する。
すると、仲間からの通信が飛んできたのを確認した。
バネッサ先生からの暗号通信であり…………退くか。
俺は格納されているスモークグレネードを全てバラまく。
上空へと放たれたそれらが一気に爆ぜて、周囲一帯を煙で包み込んだ。
すると、敵は動揺を露わにしながら俺に逃げるなと言う。
「逃げるさ。命の取り合いは、今じゃない」
《逃げるな、逃げるな――逃げるなァ!!!》
狂気に染まった声で敵が叫ぶ。
そうして、見えない敵と戦っているように。
煙の中で赤黒いエネルギーが迸る。
俺はそんな奴を見てから、煙から勢いよく出る。
すると、無人機も煙から出て、センサーを俺へと向けて来た。
まだやる気か。そう思ったが、無人機は一切動かなかった。
まるで、仲間の身の安全が最優先であると言わんばかりで……。
襲ってくる気配は無い。
奴は空中で浮遊しながら、俺をジッと見つめていた。
不思議な機体であり、まるで生きているようだった。
「……アレも、俺と同じ……やめておこう」
敵に同情しても仕方がない。
俺は意識を切り替えて、転移装置の起動準備を整えた船へと戻った。
グングンとスピードを上げて、減速することも無く進んでいく。
そうして、勢いよくハッヂが開いた格納部の中へと入り込み、ギャリギャリと地面を削っていく。
脚部から火花が散って、不快な金属音が強く響き渡った。
勢いの乗ったままネットへと機体を突っ込ませれば、ネットを固定していた金具の一部がはじけ飛ぶ。
整備班の人間たちが悲鳴を上げて怒っている。
俺は薄く笑みを浮かべながら彼らを一瞥して、ゆっくりと後方を確認した。
ハッヂが閉じられていく中で、敵が迫ってくるのが見えた。
完全にハッヂが閉じられて――船体が激しく揺れた。
敵が総攻撃を仕掛けてきている。
このままでは全員が海の藻屑となるだろう。
俺は心の中で間に合ってくれと強く祈った。
すると、すぐに船内にバネッサ先生の声が響く。
《――飛ぶぞッ!! 衝撃に備えろッ!!》
彼女の声と同時に、船が再び大きく揺れた。
そうして、視界が歪んだような感覚を覚えた。
しかし、それも一瞬であり……次の瞬間には視界は正常になっていた。
俺は荒くなった呼吸を整えながら、ヘルメットを脱ぐ。
暑苦しかったが、ヘルメットを脱げば少しだけ涼しくなって。
俺は長いようで短い戦闘が終わったのだと感じた。
「あんなのが、まだ、いたのか……世界は、広いな」
口角を上げて笑う。
そうして、彼女を守る使命も簡単ではないと再認識した。
困難な道のり、簡単には達成できないミッション……それでも、今度こそ成し遂げて見せる。
俺は決意を新たにしながら、拳をギュッと握る。
そうして、心臓に手を当てながら静かに目を閉じた。