【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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229:溢れ出る破壊の衝動

 何とか間に合った。

 

 オッコのお陰で場所の特定が済んで。

 なりふり構わずにファストトラベルを使ってジャンプした。

 その結果、俺はショーコさんを救う事が出来た。

 

 全力でペダルを踏みながら、告死天使と戦う。

 奴は瞬きの合間に接近してきて、その凶暴な光を放つブレードで斬りかかって来た。

 一分一秒たりとも気を抜けない。気を抜けば最期であり、俺は極限まで集中力を研ぎ澄ませた。

 突撃砲に取り付けられたブレードで奴の攻撃を捌く。

 一太刀ごとの未来を見て攻撃を捌こうとするが、何故か複数の未来が見えて来る。

 一瞬でどれを正解とするかを見極めて、判断できない場合は勘で動く。

 一発でも貰えば致命傷であり、甲高い音が響いて奴のブレードの光が激しく迸った。

 

 纏わりつくようなどす黒い輝きで。

 死臭のように嫌な未来を想起させるそれを見据えながら、俺は宙を舞った。

 ブレードを捌き続けて隙が発生すれば、ショーコさんが背後から攻撃を仕掛ける。

 奴はその攻撃を回転によるブレードの凪で、全ての弾丸を打ち払う。

 そうして、間髪入れずに此方にも攻撃を仕掛けて来た。

 

 隙が無い。何処にもつけ入る隙が存在しないのだ。

 しかし、無いのであれば作ればいい。

 俺は告死天使の攻撃を払いのけて、奴の胴体に目掛けてライフルの弾丸を放つ。

 ガガガと音を立ててバースト射撃により打ち込んだ弾丸が真っすぐに飛ぶ。

 奴はその弾丸の動きを先読みして、ブレードを持った拳を回転させた。

 凄まじい勢いで回転したそれが簡易的なバリアとなり弾丸を打ち払う。

 だが、一瞬出来た隙を俺たちが見逃す筈も無い。

 

 ショーコさんが再び接近して、ブレードをチャージする。

 激しく輝くそれから青い光が伸びて、横に薙ぎ払われた。

 勢いよく迫ったそれは告死天使の脚部を狙って――奴のスラスターから音が鳴り響いた。

 

 左右のスラスターの位置を変えて、出力を微妙に変更した。

 それにより、奴の体は斜めに回転した。

 高速移動中に、機体に掛る負荷を抑えながら機体の姿勢を強制的に変えて。

 奴はブレードを振りかぶってショーコさんを――させるかッ!!

 

 

 未来を見て、ライフルの銃口を向ける。

 告死天使のブレードが振り下ろされる位置に向けて銃弾を放った。

 すると、俺の弾丸が三発とも狙い通りの弾道を描いて飛び。

 奴のブレードに当たり、その軌道を僅かに変えた。

 直撃だった筈のコースを外れて、ショーコさんの肩部を僅かに掠めていった。

 掠めただけだ。しかし、迸る光がガリガリと装甲を削りとる。

 まるで、破砕機で岩を削るように意図も容易く――俺はスラスターの出力を更に上げた。

 

 コアの稼働スピードを跳ね上げる。

 機動力を上げる為、奴との戦いに勝つ為に更なる壁を超えて見せよう。

 AIが俺の命令に従って、限界を強制的に突破する。

 機体全体に熱が伝わり、コックピッド内が熱くなる。

 俺はシールド越しに見せる景色を眺めながら、告死天使と共に空を駆けた。

 

 爆発音のようなものが響いて、音が後ろへと流れていく。

 迫りくる奴の攻撃を回避しながら、俺は機体を回転させて奴に攻撃を仕掛ける。

 奴の機動を予測して、その先へと撃ち込む。

 奴はそれらを回避し、打ち払う。

 そうして、猛烈な勢いで接近しながら果敢に攻め込んできた。

 攻撃を打ち込まれるごとに機体が激しく揺れて。

 ピリピリと操縦レバーを握る手が痺れを起こしていた。

 常に未来を見続ければ脳への負担は相当なものだろう。

 鼻から何かが垂れている気がして、口に入ったそれが口内を不快感で一杯にする。

 血の味が広がって、俺は笑みを深めた。

 

「限界なんて超えてやるッ!! その先へ、俺は行くんだッ!!」

《可能性……それが存在するのなら、見せて見ろ――全てを潰してやろう》

 

 告死天使の言葉を聞きながら、俺は強く勝利を渇望した。

 未来を変える。クソッたれな運命なんて知らない。

 俺は勝って、皆の幸せを――守って見せるッ!!

 

 心からの願いに機体が反応する。

 熱いほどに感じていた熱が心地よくなっていく。

 機体全体をあの白い光が包み込んで、俺が見る未来の景色が一つになっていった。

 それを見ながら俺は笑って、レバーを動かして大空を舞った。

 

 スラスターを極限まで稼働させて。

 景色が凄まじい勢いで流れていく中で。

 告死天使は俺の近くを飛ぶ。

 赤黒い光を纏いながら、奴の持つブレードが不気味な鳴き声を上げた。

 光が膨張し広がっていく。

 全てを飲み込み破壊する光が俺の光を蝕もうとする。

 だが、簡単には染め上げる事は出来ない。

 

 俺たちは宙を駆けながら、互いに衝突し合う。

 光の衝突により、激しい爆発が起きて光が飛び散る。

 奴はブレードを振るい連続攻撃を仕掛けて来た。

 俺はそれら全てを見切って受け流して、光を纏った弾丸を放った。

 奴は俺の弾丸をまた打ち払おうとした――が、そうはいかない。

 

 弾丸の機動が変化して、蛇のように動いて告死天使の機体に迫る。

 奴から驚きの感情を僅かに感じた。

 しかし、奴はその変則的な攻撃にも柔軟に対応して。

 自らの光を纏ったブレードを勢いよく振るって、俺の光を纏った弾丸を打ち消した。

 

 奴の光は”破壊”そのものだ。

 完璧を追い求めて、全てを破壊する光。

 対して俺の光は”可能性”を追求した光だ。

 どんなに強大な敵であろうとも、一パーセントの勝利を掴み取る光。

 

 奴が俺の可能性を全て破壊すると言うのなら――俺は何度でも可能性を出し続けるッ!!

 

 分厚い雲の中を突っ切って、俺たちは青空の中を飛ぶ。

 更に機体は上昇していって、その青の色味が濃くなっていった。

 機体が冷たくなっていき、吐く息は白くなり今にも凍り付きそうだった。

 しかし、体を包み込む白い光が、俺の凍えそうな体や心を温めてくれる。

 強大な敵を前にして止まりそうになる足を前へと押し進めてくれるのだ。

 

 成層圏へと突入し、俺は奴に向けて弾丸を放つ。

 バースト射撃を連続で撃ち込み。

 全ての弾丸の軌道を変えて、四方八方から奴の機体に攻撃を仕掛けた。

 告死天使は機体を操作して、俺の攻撃を撃ち落し続けた。

 

 ――が、それは悪手だろう。

 

 俺は独りじゃない。

 俺には頼れる仲間がついている。

 

 凄まじい勢いで青い光を纏った何かが飛翔する。

 告死天使は俺に気を取られて、接近してくるそれへと対処が遅れる。

 が、驚異的なスピードでその隙をカバーしようとしていた。

 

「させるかよッ!!」

《――ッ!!》

 

 弾丸を放って、奴に攻撃を仕掛けた。

 意識を彼女に向けさせはしない。

 お前の視界に彼女はいれさせはしない。

 バーストを解いて、限界まで弾丸を放ち続けた。

 空薬莢が宙を舞って、飛来する弾丸が猛烈な勢いで告死天使に襲い掛かる。

 奴はブレードを回転させながら、俺の攻撃を捌き続けて――強く青い光が迸った。

 

 限界までブレードをチャージして、今にも爆発しそうだ。

 溢れ出る光が一気に伸びていって。

 ショーコさんは叫び声を上げながら、それを振りかぶった。

 告死天使は回避行動を取ろうとしていた。

 

 ――未来が見える。奴の機体がショーコさんの背後に移動した未来だ。

 

 俺は弾丸をショーコさんに向けて放った。

 言葉で言わなくても伝わる。

 彼女の意思や願い。考えが手に取る様に分かった。

 告死天使の機体が霞のように消えて――ショーコさんはブレードをパージした。

 

 

《マサムネッ!!!》

「オウッ!!!」

《――ッ!!》

 

 

 パージされたブレードがくるくると回転する。

 伸びていった青い光が一瞬で消えて、残ったエネルギーが武装の中で膨張している。

 告死天使の機体は、彼女がいた場所に出現しようとしていた。

 彼女は既にそこにはいない。

 彼女の機体は一気に下へと降下して、俺が放った弾丸が――チャージされたブレードに当たる。

 

 ガガガと音を立ててブレードに命中した。

 膨張したエネルギーが亀裂から溢れ出す。

 切り札を使って難を逃れた筈の奴は、裏を掻かれて回避不能になっていた。

 

 

 お前の負けだ。お前は俺たちの可能性に――淘汰された。

 

 

 膨張したエネルギーが解放されて凄まじい爆発を起こさせた。

 奴の機体を飲み込んで、青い光が周囲に広がっていく。

 機体内のアラートが鳴り響き、ガタガタと機体が激しく揺れて。

 俺は歯を食いしばりながらそれに耐えて、ショーコさんと共に地上へと戻っていった。

 爆発から逃れて、俺たちは成層圏から逃れた。

 空中で滞空しながら、俺は青い光の残滓を見つめた。

 

 綺麗な光であり、破壊の象徴たる赤黒い光をかき消した。

 その光景を眺めながら、俺は荒い呼吸を整えた。

 

《……今度こそ、私たちの……ぅ》

「ショーコさん?」

 

 彼女の様子が変だ。

 体調が悪いと言うよりは、意識が朦朧としているのか。

 今にも気絶しそうな声であり、俺は必死になって彼女の機体を支えた。

 取り敢えず。彼女を地上へ降ろして、近くにいるであろう敵を探そう。

 油断は出来ない。此処には恐らく、ゼロ・ツーが潜んでいる。

 そして、ゴウリキマルさんも近くにいる筈だろう。

 

 ショーコさんを救えた。

 ならば、次はゴウリキマさんを救出しなければいけない。

 俺はショーコさんに声を掛け続けながら、彼女の機体を地上に下ろそうと――

 

 

 

《――ッ!!! ダメッ!!!》

「――え?」

 

 

 

 ショーコさんが突然、声を荒げた。

 そうして、彼女は俺の機体を勢いよく蹴り飛ばした。

 何をするのかと彼女を見つめて――俺は大きく目を見開いた。

 

 ショーコさんが乗る青い機体。

 その中心部から、赤黒い光を放つブレードが生えている。

 彼女の乗る機体はバチバチとスパークしていて。

 胸から伸びるブレードに手を伸ばしていた。

 

 奴の声が、機体に静かに響く。

 

 

《素敵だ。感動的だ――だが、無意味だ》

「――」

 

 

 ショーコさんの機体から、奴がブレードを引き抜く。

 彼女の機体のセンサーは弱弱しく点滅した。

 彼女の機体は激しくスパークしながら、地上へと落下していく。

 彼女は俺に手を伸ばして、彼女の声が小さく聞こえて来た。

 

 

 

《ありが、とう。さよう、なら。愛、して――――…………》

 

 

 

 彼女の声は最後まで聞こえなかった。

 無情な爆発音にかき消されて、不快なノイズが響き渡った。

 彼女の機体は爆炎に包まれて、残骸が宙を舞う。

 

 

 

 生体反応は――ロストしていた。

 

 

 

 死んだ、死んだ、死んだ?

 

 

 何故、何で、どうして、誰が?

 

 

 いない。いない、いないいないないないないないないない――もう、彼女は、いない。

 

 

 

 呆然と目の前の現実を見つめる。

 失ったものが大き過ぎて、俺は何も理解できなかった。

 そんな中で、過去の記憶が、俺の脳内にフラッシュバックした。

 

 

 

『――なれるよ。おじさんは優しいから』

 

 

 

 思い出す。彼女は俺の夢を肯定してくれた。

 

 

 

『……これだけは覚えていて。私はずっっっっっと! おじさんの味方だから!』

 

 

 

 思い出す。彼女は俺にハッキリと自らの心を伝えてくれた。

 

 

 

『一緒に帰ろう。おじさんの居場所はそこじゃないよ』

 

 

 

 思い出す。彼女は俺の居場所を守ってくれた。

 

 

 

 

『あーしもおじさんの仲間。仲間だったら、一緒に行動するもの。あーしの言葉、何か間違ってる?』

 

 

 

 思い出す。彼女は誰よりも真っすぐで、誰よりも輝いて見えた。

 

 

 

『……何の為に……進んだと……分からない、でしょう』

 

 

 

 思い出す。初めて、彼女の本心が聞けた。悲しそうな声だった。

 

 

 

『……本当に、馬鹿だなぁ……馬鹿みたいに、優しいんだから……ああぁ、任務。失敗だ』

 

 

 

 思い出す。彼女の本当の顔が見えた。やっぱり彼女は綺麗だった。

 

 

 

『……そうだね。そうだ……おじさんがいるんだ』

 

 

 

 思い出す。彼女は最期まで己の事を信じてくれていた。

 

 

 

 思い出す。思い出す。思い出す思い出す思い出す思い出す思い出す思い出す――でも、彼女はもういない。

 

 

 

 太陽のように眩しい笑顔を向けてくることも。

 暗い空気を和ませてくれる声も。

 柔らかくて温かな手で、俺の手を握りしめてくれる事も――出来ない。

 

 誰が、やった?

 誰が、殺した?

 誰が、誰が、誰が、誰が、誰が誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰――武器を振るう。

 

 隙をついて殺そうとしてきた敵。

 背後を取って斬りかかって来たそれにゆっくりと視線を向ける。

 ギャリギャリと音を立てて俺のブレードに武器を当てる男――こいつだ。

 

 こいつが殺した。

 こいつが奪った。

 大切なものを、生涯の宝物を。

 想い出を穢して、彼女の命を踏みにじって。

 彼女が変えようとしていた運命を――お前か。

 

 

 瞬間、白い光がどす黒く変色した。

 心からの憎悪。

 激しい感情の高ぶりが心を支配して、目の前の敵を殺せと叫ぶ。

 淀んだ光が俺を包み込み、不気味な鳴き声を上げて目の前の敵を威嚇した。

 

 

 俺は静かに、己の感情を吐き捨てた。

 

 

 

「――ぶっ殺す」

《ふ、ふふ、あははははは!!! それが貴様の、本性かッ!!!》

 

 

 

 黒い感情に支配されて、俺は猛然と奴に襲い掛かる。

 スラスターからけたたましいほどの鳴き声が響いて。

 目の前の敵を殺す為に、俺はこの機体を操縦した。

 

 どうでもいい。何もかもどうでもいい。

 こいつを殺せるのなら――俺の命もどうでも良かった。

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