【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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023:闇に触れた者の末路

 メラルド・カースランドの動向を調べる事暫く。

 奴は決まった時間に一人で何処かに出かけていた。

 護衛も付けずに命を狙われるような役職の人間が一人で出かけるのだ。

 俺は不審に思って奴の後を付けた。すると、人気のない裏路地に入っていくのが見えて。

 ゴミが捨てられ浮浪者たちが寝転がる道を進んでいけば、一つの教会に行きついた。

 

 寂れた廃教会であり、あんな所に出入りすのは何かある。

 俺は気配を殺しながら、こっそりと窓から中の様子を覗いた。

 すると、中では多種多様な人間たちが何かに祈りを捧げている。

 言葉も無しに何時間も祈りを捧げている様子の民衆たち。

 あのろくでなしのメラルドでさえも、その時ばかりは黙って祈りを捧げていた。

 

 廃れた教会に集まり祈りを捧げている集団。

 目的は何なのかと見ていれば、たっぷりと祈りを捧げた奴らは先頭に立っていた男から何かを受け取っていた。

 小さな袋に入った何かを一粒取って口に入れる民衆たち。

 メラルドも嬉しそうにそれを口に入れていて。

 俺はアレは何なのかと見ていた。

 

 取りあえず、この状況を写真に収めておこう。

 

 俺は無言で音もなく写真を撮った。

 そうして、それをゴウリキマルさんへと送信する。

 もう此処でやれる事は無く。俺はすぐに帰った。

 

 |||

 

 あの教会での写真を送って調べてもらった結果――面白い事が分かった。

 

 あの集団は、この世界で誕生した新興宗教らしく。

 不死教という死という概念を克服しようとしているカルト集団だった。

 現世人である俺たちのように死んでも復活できる存在に憧れて。

 神である創造主に祈りを捧げて、自分たちも同じ存在になろうとしていた。

 祈りの時間の終わりに飲んでいたものは”不死の薬”と呼ばれるもので。

 病に罹ることが無くなるとされる怪しげな薬の様だった。

 

 メラルドは死を恐れている。

 酒を飲んで女遊びに興じるのも死が怖いからで。

 傭兵として生と死の間で踊っていたのだから、人よりも死が怖くなったのだろう。

 未だにメリウスに乗って戦えるのは、信仰のお陰だったらしい。

 何時の時代も宗教は厄介だと思いながら、俺はその宗教に関してもう少し詳しく調べてみた。

 

 仮想現実世界で情報屋をやっているという男。

 俺はSNSでそいつとコンタクトを取って、その宗教に関して調べてもらった。

 少々厄介なネタらしく、男は金を弾んでくれるのなら調べてみると言った。

 俺はメラルドの依頼を熟して金は有り余っていたので、男の望みにも応えると約束した。

 

 それから男から入る情報を頼りに俺は活動して――危険な臭いをお互いに感じ始めた。

 

 男の情報によれば、不死教は世界各地で広まっているらしく。

 国の官僚や警察組織にも入信している者がいるらしい。

 あの不死の薬とやらは合法な品では無いようで。

 依存性の高い成分を含んだ上に、服用したものの闘争本能を刺激する成分も含まれているらしい。

 巷では暴力事件が多発しており、その逮捕者のほとんどがその薬を服用していたようだ。

 男には医療関係の知り合いがいたようで、それを更に詳しく分析してもらった。

 

 すると、その薬には――未知の成分が存在した。

 

 医療従事者にも分からない謎の成分で。

 現実世界では存在しないとされるものだと男は語った。

 精神面に働きかける薬のようで、少量なら害は無いそうだが。

 長い時間を掛けて投薬を続ければどうなるかは分からないと教えてくれた。

 

 薬の危険性が分かり、男は自らの仮説を説明した。

 恐らく、不死教の幹部たちは何かの薬の開発をしている。

 その実験を信者たちで行っていて、並行して各勢力に根を張り巡らしているのだろうと。

 奴らは何かに備えているようで、薬の開発はその計画の第一歩だと睨んでいた。

 もっと詳しく調べてみると連絡を受けて――男は消えた。

 

 定期的に連絡を取り合っていた男からの連絡が一週間前に途絶えた。

 最後の連絡では、不死教の人間が自分の存在に勘づき始めていると言っていた。

 男はやばくなったら逃げると言い残して、お前も帝国領から離れた方が良いと助言してくれた。

 俺の周りもきな臭くなっていて、誰かが俺の行動を監視している。

 殺気はしないものの、背後から常に気配を感じていて……潮時だろう。

 

 メラルドの言っていた兵力の不足を補う方法。

 アレも調べてもらったが、幾つかの企業と接触していたことが分かった。

 候補を絞って五社の企業の情報を調べてみて、メリウスの開発を行っている企業は存在せず。

 会社が保有する土地について調べてみて、明らかに無駄に広い土地を保有していおきながら何もしていない企業が一社だけあった。

 表向きの説明では大規模なレジャー施設の開発を計画していて、森林地帯を保有しているとあったが、恐らく嘘だろう。

 現地に行って調べてみれば、その土地への侵入は不可能で。

 バリケードの他に、武装した警備員まで多数配置していた。

 あそこは確実にメリウスの実験場か。もしくは、何かの試験場だろう。

 メラルドの元で集められる情報はそれだけで、俺は奴の元から去る準備を始めた。

 

 ご丁寧に去ることは告げずに勝手に消えようと考えていた。

 荷物を持って、ホテルの受付に鍵を返却して。

 ファストトラベルで帰ろうとして――領域権限が発動されていた。

 

「――ッチ」

 

 どうやら既に逃げ道を塞ぎに掛かっているようだ。

 俺はタクシーを止めて荷物を手荒に詰め込んだ。

 そうして、運転手に隣街まで向かうように指示をした。

 

 恐らく、飛行船乗り場に行けば捕まる。

 俺の顔は覚えられていて、管理官への指示は既に終わっているだろう。

 飛行船が使えず、ファストトラベルも封じられたのなら陸路で逃げる以外に道は無い。

 タクシーを捕まえたのは、徒歩よりはマシだろうと考えただけで。

 俺は平静を装いながら街の様子を見ていた。

 

 ぽつぽつと雨が降り出した街。

 民衆は慌てて店に入り雨宿りを始めて。

 車の行き来も激しくなっていき、段々とスピードが緩くなっていく。

 そうして、完全に車が止まれば後ろにも車が止まって。

 前方を見れば、前の方でレインコートを着た職員が検問をしていた。

 

「……あぁ、此処までで良い。ありがとう」

「え? お客さん。外は雨だけど――お客さーん!?」

 

 多めの金を渡して、荷物を持って外に出る。

 コートの襟を立てながら、裏道へと滑り込んで。

 パシャパシャと水を足で弾きながら歩いて行った。

 車も使えなくなって、検問まで敷いて逃げ道を塞いできた。

 俺は通信を完全に遮断して歩いて行った。

 

「……外部との連絡は駄目だ……ログアウトも後が面倒だし……」

 

 周りを確認しながら、俺は裏道を進んでいって――前方を塞がれた。

 

 誰なのかと前を見れば、ザックス君である。

 彼はぶるぶると震えながら雨に打たれていて。

 ガチガチと歯を鳴らしながら俺を見ていた。

 彼へと声を掛けようとして――横から誰かが現れた。

 

 傘を差しながらニコリと笑う黒スーツの男。

 丸眼鏡を掛けたスキンヘッドの男は手に銃を持っている。

 その銃口はザックス君の頭に向けられていて――頭に強い衝撃を感じた。

 

 ぐらりと視界が揺れて、地面に倒れる。

 背後から現れたのは別の男で。

 無表情の男は俺の目を布で覆い手錠を嵌めてきた。

 俺はやられたと内心では思いながらも、卑怯な手を使った敵に笑みを向けた。

 

 布越しにスキンヘッドが笑みを向けていると分かる。

 ザックス君のうめき声が聞こえて地面に倒れる音がした。

 そうして、パシャパシャと水音を立てながら男が近寄ってくる。

 

 目の前に立った誰かは俺を見下ろしていた。

 そうして、俺の耳元に顔を近づけて粘度の高い声で言葉を発してきた。

 

「ゲームオーバー……簡単にはぁ、死なないでくださいねぇ?」

「……くた、ばれ」

 

 笑みを浮かべながら奴へと言葉を贈る。

 そんな俺の頭をもう一度殴りつけてきて――俺は意識を闇へと落とした。

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