【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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251:一緒に踊りましょう(side:王殺し)

 ……敵の数が多いな。

 

 うじゃうじゃと群れを成して襲い来る害虫共。

 ムカつく傭兵と共闘するだけでもストレスなのに。

 こうも休みなく敵が襲って来れば更にストレスが溜まる。

 良い事と言えば、害虫共を好きなだけ殺せる事だけで。

 一匹を殺せばその分だけ追加の報酬も出るのだ。

 金が出るのであれば、多少の事には目を瞑る……が、多い。

 

 脳波コントロールにより、”鎌鼬(カマイタチ)”を操る。

 どんな硬度の装甲をしたメリウスでもバターのように容易く溶断するブレードが高速で回転するそれら。

 凄まじい勢いで迫ったそれが襲い来る敵をズタズタに引き裂いていく。

 汚いオイルをぶちまけながら死んでいく敵……様子がおかしい。

 

 先ほどから、狙った数だけ敵を始末できていない。

 此方の動きを予測したように動いている。

 数体がかりで襲ってきて、此方の特殊兵装を警戒しながら動いていた。

 空中でライフルの銃口を私ではなく兵装の方に向けて牽制している。

 最初の内は、そんな敵を優先して潰していた。

 特殊兵装で始末できないのなら、私自身がとどめを刺しに行くだけで。

 他の無能とは違い。私は特殊兵装を使用している間も自由に動ける。

 それを知らない鉄くずを、私は背後から近寄って腕に仕込んだニードルガンで仕留めた。

 

 ニードルガンは物理兵装で。

 短距離での攻撃を想定した武装である。

 特殊兵装にエネルギーを回さなければならない以上。

 それ以外の武装に貴重なエネルギーを回す訳にはいかない。

 小型化に成功した上で数もそれなりにはあるが。

 あまり多用していれば、すぐに私自身の手札は無くなってしまう。

 

 特殊兵装に意識を集中する敵を墜とし。

 仲間を陽動に使って攻撃を仕掛けて来る敵は、敢えてランドセルに残しておいた一基で仕留める。

 暗殺において全ての手札を相手に見せるのはバカのする事で。

 最小限の動きで相手を殺し、如何に損害を少なく出来るかがそいつの力量を表す。

 他にもこの機体には”ギミック”が仕込まれているが……今はまだ、使う必要は無いだろう。

 

 交戦開始から時間が経って。

 撃墜数は既に三十を超えている気がした。

 コックピッド内で、ヘッドギア式のゴーグル越しに外の景色を眺める。

 ボール型のコントロール機に手を置きながら、ボタンを操作して索敵をする。

 青いマーカーは最初とは違ってかなり数が減っていた。

 ほとんどが赤いマーカーであり、それだけ敵が残っている事を示している。

 敵の技量はAランク程で、他の傭兵にとっては大きな脅威に感じるだろう。

 いや、基本的な技量も脅威だが……奴らは戦闘をしながら成長している。

 

 索敵を終えて、背後から迫った敵の攻撃を躱す。

 一気に下へと機体を移動させて、通過しようとした敵のコックピッドにニードルガンの照準を向けて――鎌鼬を移動させた。

 

 死角から放たれた弾丸を鎌鼬のブレードで潰す。

 二基の鎌鼬は完璧に敵の弾丸の軌道を妨害して、私は敵の胴体部にニードルガンを放つ。

 しかし、意識が一瞬逸れた事によって、敵はブーストにより緊急回避をする。

 ニードルガンの弾丸は空を切り、私は姿勢を戻しながら舌を鳴らした。

 

 ……イラつく。

 

 ただの害虫が、私の攻撃を避けた。

 ただのラッキーならそれでいい。

 しかし、あの動きは明らかに”ワザと”としか思えない。

 

 私の前に弱点を晒して。

 私が油断した瞬間に殺そうとしてきた。

 まるで、狩人を逆に狩ろうとする肉食獣のような動きで……最高にムカつくよ、お前ら。

 

 鎌鼬を全て、ランドセルに戻していく。

 そうして、敵の攻撃を紙一重で回避しながら。

 コントローラーのボタンを数回押して鎌鼬の出力を上げた。

 どうせ、終わりが見えない戦いだ。

 囮となる他の雑魚が踊っている間に、船に戻ってエネルギーの補給も出来る。

 だったら、出力を上げて奴らが対応できないほどに鎌鼬で切り刻んでやろう。

 

 左右から放たれた弾丸を回転によって回避。

 ランドセルに戻された鎌鼬にエネルギーが一気に供給されていく。

 コアから発せられる熱が高まり、私は笑みを深めながら生を実感していた。

 

 

 これだ。これがあるから――止められない。

 

 

 現実世界では何の価値も無い下層民でも。

 この世界では、Sランクの傭兵として自分の名は広まっている。

 親からも捨てられて、誰からも愛されなかった私でも――この世界では”愛される”。

 

 金を持った馬鹿から奪った情報電子装置。

 色仕掛けで騙されたカスが、私に幸せを届けてくれた。

 真面な食事も出来なかった私は、死ぬ気でこの世界で生きた。

 戦って、戦って、戦って、戦って……私は手に入れた。

 

 弱者を切り捨て、強者を殺してきた私はこの世界で”人生”を手に入れた。

 好きな物を好きなだけ買える。

 食べたい物を腹がはち切れるほどまで食べられる。

 飽きれば捨てて、欲しい物は何だって手に入る。

 素敵な人生。幸福な生活――誰も私の邪魔を出来ない。

 

 幸せだ。幸せなのだ。

 

 襲い来る敵を静かに見つめる。

 スローモーションに感じる世界。

 ゾーンにでも入ったように、敵の動きがゆっくりに見える。

 命が無い機械共から確かな殺気を感じて。

 奴らが向けて来る銃口を見ていた。

 そうして、私は三日月のように口を歪めながら――言葉を送った。

 

 

「Let's Dance」

《――》

 

 

 勢いよく鎌鼬が射出される。

 そうして、更に速度を速めたそれが敵に襲い掛る。

 弾を放とうとした敵のライフルを持つ腕ごと斬り飛ばして。

 回避行動を取ろうとした敵の胴体部を切り裂いていく。

 そうして、視覚外からブーストによって迫って来た敵のコアへと二基の鎌鼬が迫る。

 すぐ近くで敵の装甲が切り裂かれて、金属を削り取っていくような音が響いて。

 敵はそのままコア事潰されて、私の脇を通り抜けてから爆発した。

 

 私は機体の腕を振るう。

 そうして、赤黒いエネルギーを迸らせるそれらを操る。

 まるで、楽団を指揮する人間のように――私は強く笑った。

 

「踊れッ!! 屑鉄共ッ!!」

 

 機体のスラスターを一気に噴かせて戦闘の嵐の中を進む。

 凄まじい勢いで鎌鼬が動いて、私の道を阻む屑鉄を排除していく。

 瞬きの合間に、迫ったそれらが壊されて飛び散ったオイルが機体に掛る。

 ブーストによって穢れたそれらを振り払い。腕を振りながら、私はこの場にいる全ての敵を葬ろうとした。

 

 一機、二機、三機、四機、五六七八九十――楽しいなッ!!

 

 鉄を削り取っていく音。

 人の生き血のように飛び散るオイル。

 壊れた残骸が宙を舞い。

 死んでいったそれらが派手な音を立てて綺麗な閃光を私に見せる。

 

 楽しい、楽しい――楽しいさッ!!

 

 これが私だ。

 これが私の人生だ。

 これら全てが私の人生を彩るもので。

 私こそがこの世界の主人公であり――私こそが”世界の主役”だ。

 

 黒く染まる汚い空に、私の赤が塗られていく。

 軌跡を描いていく赤を追うように、敵の群れが迫って来る。

 しかし、私はそれらを置き去りにして飛翔する。

 邪魔する障害を打ち払いながら、私は大きな声で笑って空を飛ぶ。

 

 

 瞬間、心に強い警鐘が鳴る。

 

 

 スラスターを動かして逆噴射をする。

 体全体に強いGを感じて、全身の骨が軋むような感覚を覚える。

 しかし、咄嗟の判断によって私は生かされた。

 目の前を高濃度のエネルギーが通過していって、射線上にいた味方を数体消滅させた。

 塵も残さずメリウスを消滅させた何か。

 センサーを向けよとする間にも攻撃を仕掛けてきて。

 私は機体を操作して、バーニアを噴かして回避する。

 左へ避ければ、その回避を予測したような攻撃が飛ぶ。

 上半身を逸らしながらギリギリで避ければ、下から敵の気配を感じる。

 残しておいた鎌鼬で迫って来た敵を迎撃させて。

 その隙に姿勢を戻そうとして――上空から嫌な気配を感じた。

 

「――ッ!! 速いッ!?」

 

 攻撃の方向が一瞬して変わっている。

 凄まじい機動力で飛翔するそれは、私の真上にいた。

 長大な銃の先端に赤黒いエネルギーが集約されて――放たれた。

 

 機体に付けられたバーニアを噴かせる事によって緊急回避をする。

 またしても体全体に強烈なGを感じて、私は強く歯を食いしばった。

 しかし、完全には避けきれずに肩が少し掠めてズクズクに溶けた。

 破壊されたそれが宙を舞い、機体全体が激しく揺れた。

 警告音が鳴り響いて損壊状況をAIが伝えて来るが無視する。

 

 赤黒いエネルギーの塊が通過していき、またしても仲間を数名殺られた。

 連続する爆発音を聞き、振動するコックピッドの中で敵を見据える。

 高揚感を抱いていた心が静かになり、思考が再びクリアになっていく。

 目の前には元は白かったであろう外套を纏う灰色の機体が浮遊している。

 見かけは中量型のメリウスであるが、あの機動力は軽量型の上位レベルだ。

 銃の形状は機体ほどの大きさだが、一瞬だけアレが変形しているように見えた……双銃か?

 

 目に見える情報を一瞬で頭の中で整理していく。

 あの外套は対エネルギー兵器に特化したものであり、表面についた煤汚れからすぐに分かった。

 青い単眼センサーを光らせながら、奴は私をジッと見つめている。

 

 相対した瞬間に分かった――こいつは強い。

 

 他のガラクタとは違う空気を纏っている。

 恐らくは、あの中には本物の人間が乗っているだろう。

 

 上等だ。売られた喧嘩は買う。

 例え自分よりも強い奴であろうとも私は勝ってきた。

 どんな奴であろうとも、私の目の前に立ち塞がる奴は誰であれぶっ潰す。

 口角を上げながら、私は周りに鎌鼬を集合させる。

 そうして、腕をゆっくりと奴に向ける。

 それを合図として、鎌鼬は敵へと向かって行った。

 奴は機体を操作して、私から距離を離していく――逃がすかよ。

 

 スラスターを噴かせて奴を追う。

 他の雑魚とは違う奴であり、奴を倒せば報酬を更に上げる事も出来るだろう。

 私は自分の唇を舌で軽く舐めてから獲物を追っていく。

 奴は背面飛行をしながら、手にした巨大なブラスターを二つとも私に向けて来る。

 襲い来る鎌鼬の攻撃を紙一重で避けながら、奴は連続した攻撃を放ってくる。

 凄まじい熱量のそれが空間を歪めながら私に殺到して。

 それをバーニアの噴射によって避けながら、私はたらりと汗を流す。

 

 心臓の鼓動は早まって、命の危機を感じる。

 奴のエネルギーの熱が此処まで伝わってきているようでコックピッド内はひどく蒸し暑い。

 

 

 この緊張感。強いプレッシャーは――堪らないッ!!

 

 

 現実では味わえないスリルを全力で楽しみ。

 そうして、自分が殺されるかもしれない未来を予見しながら私は舞った。

 敵の攻撃をギリギリで避けて、特殊兵装で敵を襲う。

 奴はダンスでも踊る様に、空中で戦う敵や味方を避けながら。

 襲い来る私の兵装を往なし、時には蹴りつけてその軌道を強制的に変えさせた。

 

 瞬きをする暇は無い。その一瞬で眼前に光が迫りくるのだ。

 ギリギリで避けたつもりでも装甲を撫でていて。

 胸部装甲を赤熱させながら、私は笑みを深めた。

 雑魚狩りでは味わえない。強者を相手に戦う事で得られる――極上の経験。

 

 それを存分に味わいながら、私はスラスターの出力を上げる。

 エネルギー残量が凄まじい勢いで減る中で。

 私は出会った強者との戦闘(ダンス)に全力を注いだ。

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