【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
黒と白のエネルギーが激しくぶつかり合う。
ブレードが奴の槍にかち当たり、激しいスパークを起こしていた。
凄まじい衝撃であり、常人であればこの余波だけで気を失うかもしれない。
甲高い音が鳴り響き、目の前で火花が散っていた。
綺麗だ。綺麗で、ずっと見ていても飽きはしない。
互いの出力を限界まで高めて、互いの得物を相手に向け続ける。
俺は青白くセンサーを光らせる奴を見つめながら、両手のエネルギーブレードを動かす。
限界まで出力を上げる事により、機体は手足のように動く。
風を切り裂き、奴の機体をバラバラにしようとブレードが四方八方から襲い掛る。
奴はその全ての斬撃に対応してきた。
激しいスパークが連続して起こり、空間が激しく振動する。
腕を振るう事に、相手の得物にかち当たる度に空気がびりびりと振動した。
殺意と殺意が触れあい。互いの想いがぶつかり合う。
激しいエネルギーのぶつかりが周りに影響を及ぼして、遠く離れた海面は嵐でも来たように荒れ始めた。
敵も味方も来ることは出来ず。俺たちは空中で激しい攻防を続けた。
敵も味方も気にしていられない。
俺たちは目の前の敵だけを視界に入れながら宙を舞う。
限界まで速度を高めながら、空中で連撃を繰り出す。
奴が半身を逸らして躱して、槍の穂先を俺に向けて来た。
俺はそれを片手のブレードで受け止めた。
バチバチと激しいスパーク音が響き、俺はその穂先の方向を強制的に変えた。
突き抜けた槍の衝撃が、遠く離れていた敵や仲間を貫通する。
アレだけの距離。ただの一突きで殺した――驚異的だ。
それを情報として頭に入れながら。
バーニアを噴かせて機体を勢いよく回転させる。
スラスターの鳴き声を聞きながら機体を回転させて、再び振りかぶったブレードを奴に叩きつける。
影を置き去りにするほどの速さで振り下ろした一撃
加速により勢いが加わり、奴の肩にブレードが当たる。
甲高い音が鳴り響いて、確かな手応えを全身で感じた。
バチバチとエネルギーが激しく反応していて、奴の装甲が赤くなっていく。
突風が吹いて、奴の肩で止まったブレードが弾かれた。
大きく腕を上げられて、奴はそのまま鋭い蹴りを放ってきた。
奴の重い一撃を浴びた事によって機体が強制的に後ろへと後退させられた。
一気に奴から引き離されて、体に強い負荷を感じた。
俺はバーニアを噴かして姿勢を制御してピタリとその場に止まる。
そうして、武器を構えながら静かに敵を見た。
すると、僅かながらに奴の肩には小さな”亀裂”が生まれていた。
――勝てる。殺せる。この機体なら、神を仕留められる。
本能で理解した。
あの数瞬の間の攻防で、相手を殺せる事を確信した。
俺はブレードを払いながら、奴へと再び肉薄する。
奴も機体を動かして、再び高機動戦闘状態に突入した。
上へ上へと上がりながら、俺たちは互いの得物で相手を殺そうとする。
脳内には相手の戦闘情報が常に送られてきて。
その一つ一つを分析しながら、俺は相手の行動パターンを予測していった。
目では捉えきれない。
相手の動きは一秒ごとに加速している。
攻撃のモーションも一定ではなく、フェイントもあった。
此方を下に見ている人間の戦闘スタイルではない。
格下には思っているだろう。だが、まるで油断が無い。
常に相手からプレッシャーを感じながら、俺は武装の動きを更に加速させた。
コアから発せられる熱が高まり、全身にエネルギーが駆け巡る。
鼓動を早めるコアを感じながら、俺は両手を残像が見えるほどの速さで振るう。
自らの影を置いていくほどの速さの斬撃で、当たれば相手も無事には済まない。
金属を打ち鳴らす音が連続して響き、ビリビリと機体の手が痺れる。
その攻撃を奴はたった一つの槍だけで捌いていった。
攻撃、攻撃、攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃――受け流す。
相手は防戦一方ではない。
隙を見つければ攻撃を仕掛けて来る。
それを間一発で受け流しながら、俺はカウンターを決めようとした。
しかし、相手もカウンターに慣れてきている。
胴を狙った攻撃を奴は上へと上昇する事によって回避。
そうして、機体を俺の上部で回転させながら上から刺突を浴びせて来た。
雨のように降る刺突であり、それら全てを眼で捉える事は不可能。
俺は奴の行動パターンを一瞬で弾きだして、予測により全ての攻撃をブレードで弾いた。
空気を激しく震わすほどのそれを受けても、ブレードは壊れはしない。
奴の武装を”真似て”作られたものだ。普通の武装だろうと侮れば奴であろうとも死ぬ。
上へ上へと昇り続けて、気が付けば辺りが暗くなる。
黒に塗り潰された空間には酸素は存在しない。
凍てつくような冷たさが機体の外では広がっている。
無数の光の星が見えてきて、俺は奴の機体へと大振りの攻撃を仕掛けた。
すると、奴はそれを槍で受け流してそのまま攻撃を仕掛けて来た。
火花が散って、奴の輝く槍が眼前に迫る。
横から迫りくる必殺の一撃。喰らえば即死で。何も感じない筈の心を締め付ける。
それを見つめながら、俺はスラスターとバーニアを一気に噴かせた。
限界まで噴かせる事によって、瞬き程も無い時間でぐぅんと機体を上に上げる。
全身を圧迫する程の力。強烈なGを全身で感じる。
そうして、無数の光の点が輝く闇の世界へと奴よりも先に突入した。
《無重力空間を検知。システムを更新。パターンC》
AIが宇宙空間に入った事を検知してシステムを上書きする。
宇宙空間に適応できるように機体を一瞬で整えて。
スラスターやバーニアの出力。そして、姿勢制御用のバランサーなども変更された。
俺はブレードの武装を変更して、再び両手装備のブラスターに変える。
ガチャガチャと音が小さく鳴り響き、ブレードから黒い大きなブラスターに形状が変わる。
俺は此方へと向かってくる奴に対してブラスターの照準を向ける。
そうして、連射モードに切り替えて奴に対して攻撃を仕掛けた。
ターゲットサイトから奴をロックオンして。
間髪入れずに弾を放った。
勢いよく白いエネルギーの塊が奴へと向かう。
奴はそれを槍で弾き飛ばす。
高濃度のエネルギー弾が後方へと飛んで、激しい閃光を起こしながら爆ぜた。
俺はそれを見つめながら、連続してエネルギー弾を放った。
ガンガンガンと連続して鈍い音が聞こえて、一射ごとに機体が揺れる。
実弾ではないのにリコイルが凄まじい。レバーでも握っていれば手が痺れて動かなくなるだろう。
しかし、俺は機体を人間のようにレバーで動かしていない。
完全なる脳波コントロールであり、俺の思考は機体にすぐに反映される。
望むような動きをしてくれる第二の体に感謝しながら。
俺は横へと移動する奴へと弾を放ち続けた。
限界を知らない。いや、奴に限界は無い。
宇宙空間で奴は自由に機体を動かしている。
流れるように横へとスライドしながら、一瞬で迫りくる全てのエネルギー弾を避けていった。
避けて、避けて、弾いて――化け物だな。
オーバードの力は想像以上だ。
あの一撃で決めるつもりだったが、与えられたダメージは小さな亀裂だけだ。
それだけじゃない。奴はまだ力を隠している。
奴の攻撃から感じるのだ……まだまだ余力があると。
油断はしていない。が、力を全て出していない。
何を隠している。何を考えている。
理解不能。いや、神の考えなど俺に分かる筈がない……だが、それでもいい。
力を出さないのなら好都合だ。
力を出さぬままに、奴を殺せばいい。
神を殺せば、さぞ綺麗な花が見られる事だろう。
俺は目を細めながら、奴へと攻撃を続けた。
すると、奴の動きが変わる。
横へのスライドを止めて突撃してきた。
スラスターを一気に噴かせて此方へ向かってくる。
俺は奴に照準を合わせながらエネルギー弾をお見舞いする。
奴は槍を高速回転させる事によって盾の変わりにして全てを弾く。
俺は機体を後ろへと下がらせながら、連射モードから単射モードに切り替える。
手数を増やしても有効打にはならない――理解した。
一撃の威力を高めて奴を仕留める。
ブラスターにエネルギーをチャージしながら、俺は迫りくる奴を視界に入れて――機体をズラした。
直感で、バーニアを噴かせて機体の位置を大きくずらした。
すると、一瞬遅れて元いた場所に高濃度の黒いエネルギーが流れていった。
凄まじい勢いでそれが放たれて、宇宙に浮いていたゴミ諸共消し去る。
意識が一瞬そちらに向いて――心の中で強い警鐘が鳴り響く。
胴体部に来る。奴の致命の一撃が。
それを理解した瞬間。いや、理解する前に機体が独りでに動いた。
ブラスターを前方に放ち、敵の槍の威力を下げる。
それにより、直撃を寸での所で回避した。
しかし、がりがりと音を立てながら胴体部の装甲が削られた。
柔らかく脆い物を指で掬うように、胴体部が抉られて。
オイルをまき散らしながら、敵の一撃を回避した。
そうして、機体を一気に奴から引き剥がしながら奴に向けてもう片方のブラスターの弾を放つ。
高められたエネルギーを一気に放った。
一直線に白い光が奴へと向かって飛んでいく。
必殺の一撃だ。防ぐ事は決して出来ない。
それを俺は理解していて――奴が腕を振るう。
その瞬間に、背後から高濃度のエネルギーが放たれた。
それは俺の放った白いエネルギーとぶつかる。
二つの相反するエネルギーがぶつかり合い。
空気を激しく振動させて、強い光が迸った。
まるで、超新星の如き光で――それが消えた。
そこには何も無い。
俺が放った一撃は霞のように消えていて。
奴の機体は宙に浮きながら、”傷一つ”無かった。
そう、肩の亀裂も――綺麗さっぱり”消えていた”。
「……自己再生か」
ノイズの走る声でぼそりと呟く。
すると、機体内にくつくつと笑う男の声が響いた。
いや、違う。機体内に響いているんじゃない。
俺の脳内に直接響いている。
この声は。この男は――オーバードのパイロットだ。
《神の真似をする愚か者……レプリカ如きで、対等になったと思う傲慢さ……万死に値する》
奴がゆっくりと槍を上に掲げた。
すると、奴の周囲に無数のエネルギーの塊が出現した。
一つ一つが凄まじい濃度の黒いエネルギーで。
掠めただけでも死ぬと分かるほどの威力を内包している。
それが十、二十、三十……まだ、ある。
絶望的だ。絶望的なまでに奴の力は圧倒的だ。
しかし、勝算がゼロという訳では無い。
確かに奴の機体にダメージが入った。
自己再生も間に合わないほどの速さで。
此方の攻撃を当て続ければ――確実に殺せる。
頭の中で、奴に有効的な戦い方を計算する。
万を超えるプランを立てながら、最良の一手を考えて――通信が入る。
相手はコマンダーからで、俺は通信を繋いだ。
遠く離れた場所であるからか。
流石のこの機体でも完全には相手の声を拾えない。
ノイズ交じりの声を聞きながら、俺は何がああったのかと聞いた。
《――泥が――世界――満たさ――すぐに――奴――頼む》
「……まさか」
ファーストという男から聞いていた。
第三波に突入すれば、”泥”が世界を満たそうとすると。
不浄の泥が全てを飲み込む時、この世界は終わりを迎える。
それを阻止する為に、奴を全力で倒す必要がある。
――”計画”は最終フェーズに突入した。
俺がやるべき事は最初から決まっている。
奴を倒す事がベスト。しかし、出来ない場合も考えている。
その場合に備えて、用意されたプランの為に準備を整える必要がある。
奴はくつくつと笑いながら、俺に対して高濃度のエネルギーの塊を向けている。
勝てるか。殺れるのか――関係ない。俺はただの道具だ。
勝つ為のプランは決まっている。
ならば、その為に俺は動くしかない。
常に考え続ける。考えて考えて、奴を指定の”ポイント”に導く。
俺は自らの役割を再認識する。
そうして、ブラスターを構えながらスラスターを噴かせて移動を始めた。
漆黒の舞台で、渦を巻く闇を操る奴は指揮者のように腕を振り下ろす。
スライド移動をしながら、奴に対して銃口を向け続ける。
すると、奴の動きに反応してその場に停滞していたエネルギーが一気に襲い掛って来た。
一瞬だ。眼前に、闇が存在する。
飲み込まれそうなそれを見ながら、俺はアクセラレート・システムをコマンド無しで起動した。
時間が遅くなり、ギリギリで奴の攻撃を回避する。
そうして、奴をチラリと見て――怖気が走った。
見ている。奴が真っすぐに――俺を見ていた。
時間はほぼ止まっているような速度だ。
それなのに、奴は動きを止める事なく俺を見ていた。
青白い光は、やがて血のように赤い色へと変わる。
不気味な赤い光を発しながら、奴は俺を見つめていた。
背筋が凍り付く。ドクドクという意味不明な音が聞こえてくる。
奴はくすりと笑いながら、指を俺の方に向けて来た。
《踊れ――
奴の声に反応して全てのエネルギーが動き出す。
死の気配を常に感じながら、俺はブラスターからエネルギー弾を放つ。
相殺しきれないそれらを紙一重で避けながら――俺は神の前で踊り続けた。