【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
巨大なエネルギーの塊が迫る。
至近距離に迫るそれをギリギリで回避して。
すぐに別のエネルギーが迫って来る。
スラスターから鳴る音は更に高まって、光だけの世界で俺は踊り続けた。
太陽の如き灼熱の塊だ。
触れればじゃない。触れずとも、並のメリウスや星も焼き尽くせるほどの質量で。
迫りくるそれがイザナギの装甲を焼き尽くそうとしてくる。
機体の装甲が地獄の炎のような熱を帯びていた。
その熱を体全体で感じながら、俺は無数の塊を視認しながら避けていく。
そうして、それに集中していれば別の敵が襲ってくる。
偽物を持った分身体が、一斉に俺の元へと殺到する。
危険な光を放つ黄金の槍を宙に浮く、七つの剣で弾いていった。
ギャリギャリと音が鳴り、激しいスパークを起こさせながら連続して攻撃してくる敵の槍を弾いていった。
出力も速度も、更に跳ね上がっている。
一発一発が重く。機体全体がびりびりと振動していた。
桁違いの力であり、此方の斬撃も押しかえられそうだった。
ギリギリだ。ギリギリで戦っている。
少しでも気を抜けば一瞬で殺される。
死の気配を常に感じながら、俺は二つの剣を振るった。
虚空へ向かって放った斬撃が空間を切り裂いた。
開いた時空の裂け目へと機体を滑り込ませて。
奴の背後へと一瞬で回り込む。
そうして、此方を見ていない奴に対してエネルギーを纏わせた斬撃を放った。
奴のがら空きの背中目掛けて放たれた斬撃。
それが奴の背中に命中した。
ガリガリと奴のエネルギーを削り取っていく。
そうして、そのまま俺のエネルギーは――四散した。
奴の翼がばさりと広がった瞬間。
俺の斬撃は空気のように散っていく。
そうして、奴がぎろりと俺を見つめて――強い殺気を感じた。
時空の裂け目の中へと戻る。
そうして、時空の裂け目を閉じて――何かが飛び込んできた。
それはエネルギーの塊で――いや、違うッ!
ただのエネルギーではない。
蠢くようにそれが動いていて、咆哮を上げるように鳴き声を響かせた。
大蛇のように体を動かしながら、それが俺へと襲い掛る。
俺は機体を動かして、時空の間の中を移動していった。
スラスターを噴かせてながら後方を確認する。
すると、奴は時空の間に浮かんでいるあらゆる障害物を飲み込んでいっていた。
小惑星も金属でできた残骸も、目に映るもの全てを飲み込んでいく。
そうして、速度を速めながら俺も呑み込もうとしていた。
肥大化していく大蛇は危険で。
大きな惑星の衝突に匹敵するほどの威力を持っているだろう。
接触した瞬間に大ダメージは必須だ。
厄介な技であり、奴も新しい体に適応し始めている。
俺は紫色の靄に包まれた時空の間を移動していく。
光の速度で飛行しながら、立ち塞がる障害物を避けていった。
時折、奴に対して斬撃も放つ。
しかし、奴は攻撃そのものも丸呑みして、その体を更に肥大化させていった。
俺は舌を鳴らしたい気持ちを抑えながら。
攻撃による消滅を中断した。
幾ら攻撃しても埒が明かない。
消滅させる事が出来ないのであれば、消さなくたっていい。
《もっと、もっと――速度を上げるぞッ!!》
イザナギへと呼びかければ、奴は心臓の鼓動を早めて応えてくれた。
ドクドクと全身にエネルギーが駆け巡っていく。
そうして、スラスターから白い粒子をまき散らしながら俺はただ前へと加速を始めた。
グングンとスピードを速めていく。
後ろから迫る大蛇もスピードを速めて俺を追いかけて来た。
線となっていく光たちが、徐々に細くなっていく。
目に映る障害物たちは、避ける事が出来ないほどになっていって。
それらを機体で破壊しながら進んでいく。
やがて、時空の間の中は渦を巻くようになっていった。
前へと進んでいるのに、俺の機体も大蛇も何かへと引きずり込まれていく。
間となる空間が広がっていって、俺たちはこの空間を形成する核へと移動していた。
中心にて、黒く巨大な太陽が輝いている。
周りに浮かぶ残骸も星たちも、アレを目指して進んでいく。
引力のようなもので、この空間に浮かぶ全てが呑み込まれようとしていた。
光り輝く灼熱の太陽ではない。アレは全てを終わらせるものだ。
全ての星。全てのものの終着点であり、時空の間に迷い込めば何であれアレに飲み込まれてしまう。
一体化し、粉々になり。あの中で再構築されて世界へと送り込まれていく。
魂も、物体も。何もかもが終わる時に、アレと出会う。
大蛇は空気を震わせるほどの咆哮を上げていた。
そうして、俺の元まで来ようとしている。
俺は大蛇を警戒しながら周りを見た。
そこには、無数の青白い光が存在していた。
一つ一つが同じ大きさで。
星の数ほどと言っても過言ではないほどに光の玉が浮遊している。
それらは俺や大蛇の周りに集まって来て、俺たちを核へと導こうとする。
大蛇は暴れまわり、その光自体も取り込んでやろうとしていた。
しかし、それは出来ない。
《――ッ!!!》
取り込もうとした奴の体に、無数の青白い光が灯る。
完全に取り込めなかったそれらが、奴の腹の中で動き回っているのだろう。
もがき苦しむそれを見つめながら、俺はゆっくりと手の平を向ける。
一つの小さな”魂”を手に乗せながら、俺は小さく言葉を零した。
《ごめん……まだ、俺は一緒に行けないよ》
《――》
魂から心が伝わって来る。
そうして、周りを囲んでいた魂たちが道を開けてくれた。
俺は小さく頷きながら、吸い込まれていく大蛇を見つめてその場から去ろうとする。
機体を動かして引き込まれそうになる機体を軌道から逸らして――空間に罅が入る。
遥か頭上の空間に、巨大な亀裂が走った。
俺はそれを見つめながら、まさかと思った。
あり得ない。奴が持つ力ではこの空間に入る事は出来ない筈だ。
奴の持つ力は――天井が音を立てて砕け散った。
そうして、中へとゆっくりと白い機体が侵入する。
純白の機体は黒いエネルギーが纏わりついて異質な形になっていた。
六枚の翼は更に肥大化して、周りを飛ぶ魂たちを一瞬にして四散させていった。
《やめろッ!!》
俺は剣を握って奴へと向かって行く。
このままでは、この場にいる魂たちが傷つけられる。
それだけは絶対にダメだ。だからこそ、俺は後先考えずに奴へと向かって行ってしまった。
《疾く――失せよ》
《――ぐぅ!!》
奴の翼がばさりと動いた。
その瞬間に無数の羽が散らばって、周囲一帯に攻撃を始めた。
何枚かが機体に触れて大きな爆発を起こした。
体が焼け焦げる感覚を覚えながらも、俺は周りに目を向けた。
散らばった羽は何かに触れた瞬間に爆発を起こす。
そうして、青白い光を放つ魂を消滅させていった。
チリチリと燃え残った灰のように消えていく。
俺はそれを見つめながら、七つの剣を動かして散らばった羽全ての迎撃に当たらせた。
一秒でも早く。彼らを守る為に、全てを――ッ!!
周囲一帯をサーチして、光を超えた速度で剣を振るう。
そうして、目に見える全ての黒い羽を消していった。
機体が大きく揺れながら、目に映るものを一つ一つ確実に消していく。
無数に散らばっている魂たちを避けながら、俺は必死になって打ち払っていく。
まだだ、まだだ、まだだ、まだ――ッ!!
強い警鐘が心に響いた。
俺は殺気を感じた場所へと剣を振るう。
それが触れた者を削り取っていった。
そこには黄金の槍を持ったアイツが立っていて――いや、違うッ!
手応えは本物だ。
が、これはオリジナルではない。
瞬時にそれを理解して、俺はすぐさまその場から退避した。
すると、両断された筈のレプリカが強い閃光を迸らせながら爆散する。
そうして、目にもとまらぬ速さで無数の細い糸となり、俺に纏わりつこうとしてきた。
それらを両手の剣で切り裂こうとする。
しかし、一つ一つを斬ったとしても意味はない。
迫りくるそれらを回避しようとするが、それらは想像以上の速度で追ってきた。
避けられない。確実に、絡めとられる――クソッ!!
機体の出力を一気に上げた。
そうして、外への逃げ道となる奴が侵入してきた割れ目を目指す。
一秒。いや、それにも満たない時間。
たったそれだけで脱出できる筈だった。
裂け目へと立ち、一気に出ようとして――足に糸が絡まる。
《ぅあ!》
たった一本の細い糸。
断ち切るのに一秒ほど――それが命取りだった。
追いついた無数の糸が俺の体に絡みついていく。
手足に絡まりついてきてぎちぎちと縛り付けて来る。
容易く切れはしない糸であり、それが何千何万と存在している。
裂け目から出ようとした俺の機体を縛り付けながら、ゆっくりと時空の間へと戻していく。
引き込まれて行った俺が見たのは、ゆっくりと閉じていく裂け目で。
無数の糸が俺の機体を引っ張っていき、奴の前に晒し上げた。
手足を縛られながら、俺は奴を睨みつける。
奴はくつくうと笑っていて――音が鳴り響く。
キィンと響く甲高い音で。
その音を俺は聞いたことがあった。
ゆっくりと視線を糸の先に向けて――驚愕した。
見れば、糸を断ち切ろうとした俺の剣が全て動きを止めている。
そんな馬鹿な。奴が干渉できるのは”肉体”と”大地”そのものの筈。
しかし、奴は俺の前で俺の武装に対して明らかに干渉していた。
それが指し示す意味は、奴自身が”進化”したと言う事で……ここまでか。
必死になって体を藻掻かせる。
羽を広げながら、その場から逃れようとスラスターの出力を一気に高めた。
しかし、幾ら藻掻こうとも拘束から逃れる事は出来ない。
奴はゆっくりと俺の前に立つ。
真っ赤に輝く瞳で俺を見つめながら――槍を振るう。
《――ッ!!?》
肩から斜め下にかけて大きく切り裂かれる。
強い痛みを感じながら、俺は必死になって声を抑えた。
バラバラと装甲の一部が宙を舞う。
露出した機体の一部からバチバチと閃光が迸って。
奴は漂う破片の一部を指で摘まんで、ジッと見つめていた。
《同じ神……だが、貴様は脆い……弱い神など不要……所詮は、半端物だ》
《……俺が半端物だって……そうさ。そうだろうさ……半端だから、弱いから……痛みが分かるんだ》
俺はニヤリと笑い奴に言う。
すると、奴は指で摘まんだ破片を軽く潰す。
そうして、砂のように消えていくそれを捨てながら。
奴はゆっくりと俺の前から離れていった。
そうして、黄金の槍を両手で掴み構えて見せた。
その槍の矛先には、今までのものとは比べ物にならないほどのエネルギーが集まっていく。
決めるつもりだ。
この一撃で、奴は全てを終わらせるつもりだ……もう、ダメなのか。
奴は俺を嘲笑う。
憎悪に満ちた冷たい声で、俺を嘲っていた。
《痛みが分かるから、どうした……弱者の気持ちなど知りたくも無い。そんなものなど無価値だ……お前は人間にも神にもなれなかった出来損ないだ……そんなお前に引導を渡してやる……築き上げてきたもの、信じたもの全てを呪いながら――死ね》
奴が動き出す。
神を殺せるほどのエネルギーを纏わせた槍が迫って来る。
俺はそれを見つめながら、最期まで足掻き続けた。
こんな所で終われない。
こんな所で皆の想いを散らす事はしたくない。
俺はまだ戦える。最期の一欠片になるまで、俺は――ッ!!!
スローモーションに感じる世界。
実際には一秒も無い時間だ。
そんな中で迫りくるそれを強く睨んでいた。
諦めない。諦めてたまるか。
強く願い、足掻き続けて、それが装甲を貫こうとして――大きく弾き返した。
《――な、に》
《――ッ!》
奴の機体ごと槍を弾き返した。
神が大きく後退していって、俺の目の前に浮遊する”光”を見つめていた。
大きい――大きく、強くて、温かな光の玉が目の前に浮遊している。
合計で”五つ”の強い輝きを放つ魂が俺を守ってくれた。
これは、誰だ。これらは何者なのか――心が奮い立つ感覚を覚えた。
これらを見ているだけで力が沸き上がって来る。
これらの光が、俺の心の奥底から勇気を沸き立たせてくれる。
知っている。この光を俺はずっと前から知っていた。
いるんだ。そこに。そこに”彼女”たちが――俺の”大切な友”が、そこにいるッ!!
《何やってんだよバカ……まだ、戦えるか?》
自信に満ちた声。何時も聞いていた相棒の声だ。
《おじさーん。折角、来てあげたんだから格好いい所見せてよね……私もいるからさ!》
太陽のような温かさを持った声。俺を前へと連れて行ってくれる友の声だ。
《こういうのは私は苦手なんだが……まぁいいさ。英雄と肩を並べて戦うのも悪くはない》
落ち着いた声。俺たちを導き、最期まで強い意思を持って戦った勇者の声だ
《マサムネ。臆する事は無い。我々がいる……今度は私がお前を救う番だ!》
強い志を持った声。王として民を想い自らが死ぬその時まで全ての魂の安寧を願った優しき王の声。
《マサムネさん。これからです。これからが――本当の戦いです》
聡明な女性の声だ。軍人として最悪の未来を回避する為に、全てを捧げた賢者の声だ。
聞こえる。聞こえるよ。
仲間の声が、大切な人たとの声が。
いるんだ。そこに、彼女たちがいてくれている。
感じる彼女たちの強い鼓動を。
彼女たちの想いを受け継いだ俺だけが、彼女たちを感じられる。
熱く、強く、大きな鼓動が俺に伝わって来る。
相棒がニヤリと笑う。
そうして、俺の肩に手を置きながら問いかけて来た。
《戦うぞ》
《はい》
――力強く答える。
《戦うぞ!》
《はい!》
――もっと強く応えて見せた。
《戦うぞッ!!!》
《はいッ!!!》
全身全霊で応えて見せた。
すると、コアの鼓動が更に強さを増していった。
溢れてくる。溢れ出したエネルギーが全身に駆け巡っていく。
それを感じながら、警戒している奴をジッと見つめた。
――そうして、俺は相棒と共に大きく笑った。
二つの声が重なった。
その瞬間に全身から白いエネルギーが溢れ出した。
紫色の靄が掛った世界に、強い光が広がっていく。
眩いばかりの輝きが、俺たちの中から溢れ出していた。
それは纏わりついていた糸を焼き払う。
止まっていた剣が再び動き始めて、俺の周りに滞空した。
そうして、俺は仲間たちとと共に空を翔ける。
奴は苛立ちを露わにしながら、黒い羽を動かして時空の間で飛翔した。
無数の魂の鼓動を感じながら、俺は奴が放つ黒いエネルギーを一刀両断する。
溢れ出す力は、俺一人の物じゃない。
仲間たちと俺とで作り上げた”想い”が、無限に等しい力を与えてくれる。
翼が大きく広がっていって。
俺はそれを動かしながら、自由に宙を舞って行った。
俺は独りじゃない。俺には――皆がいるッ!!
何も怖くない。お前なんて恐れない。
心を熱く燃やす。心臓の鼓動を強く打ち鳴らし。
俺は強大な敵を倒す為に――宇宙を翔けていった。