【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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044:帝国軍の侵攻

 娯楽室にて、座り心地の良い椅子に座る。

 そうして、何の為に置かれたのか分からない歴史書を手に取ってパラパラと捲っていた。

 書かれている内容は、現実世界での出来事についてで。

 遥か昔に起こった戦争の大まかな内容が刻まれていた。

 

 核戦争にも発展した戦争は、主に四つの大国が関係している。

 アラルカ合衆国にソビラト連邦、両國共和国にフランメスク。

 彼らは中立国家である日本で作られた仮想現実世界の構築システムである”マザー”の利権を巡って戦争を起こしたようだ。

 最初は口での言い争いだったものの、ソビラト連邦のバトルロイド開発の第一人者であるブラドレン・アザーロフが自国のバトルロイド統制システムに不正にアクセスし攻撃命令を発信した。

 これにより、宣戦布告も無しに国境を越えてきたソビラトのバトルロイドにより国々は蹂躙されて。

 国民を虐殺された各国のトップは怒り狂い大戦争に発展した。

 血で血を争う闘争の日々であり、終わりを告げたのは核の炎であった。

 

 最初に撃ち込まれたのはソビラトの首都モーセだった。

 仕返しとばかりにソビラトもアラルカに核を撃ち込み――結果、人口の三分の二を失い土地は汚染された。

 

 戦争を起こさせた大罪人ブラドレンは戦犯者として死刑が言い渡されて。

 彼に取材を申し込んだ記者の話によれば、彼は退屈であったと語ったらしい。

 娯楽に飢えて刺激を欲した彼が行ったのは、最もしてはいけない大戦争への扉を開くことで。

 彼は自分が死ぬその時まで笑っていたらしい……何とも不気味な話だ。

 

 多くの人間を不幸にした日。

 人間たちは自分たちの愚かな過ちを後悔して、仮想現実へと夢を馳せた。

 穢れきった現実を忘れて、自然であふれるこの世界に逃げてくるのか。

 どんなに夢を見ようとも人は闘争を忘れることは出来ない。

 その証拠に、この世界にも戦争が起きている。

 マザーは何を思ってこの世界を守っているのか。

 

 マザーのシステムを管理しているのは人間ではない。

 機械たちにより守られており、何人たりともその聖域を穢すことは出来ないのだ。

 愚かな人間は掟とでもいうその仕来りを守り、百年以上もの間、その地に足を踏み入れることは無かったらしい。

 マザーを巡って争い、マザーは何も言うことなく人間との関わりを絶った。

 

「……不幸な話だな。人間の欲で破滅したんじゃない……人間の好奇心で、大勢の人間が死んだんだ」

 

 もしも過去に戻れるのなら、誰だってブラドレンを止めるだろう。

 こいつの行動が無ければ、戦争が起きる事は無かった。

 誰か一人でも、仮想現実への欲望を捨てて手を取り合おうと言う人間がいれば違った。

 

「……ま、俺には関係ないけどな」

 

 本をパタリと閉じてようとして――ちらりと目に映る。

 

 パラパラとページが捲れて、笑っている人間たちの写真が目に見えた。

 気になってそのページを開けば、”大蔵研究所”と書かれた小さな建物の前で何名かの男女が笑っている。

 マザーの開発に関りがある人たちのようで――警報が鳴り響く。

 

 突然、けたたましいアラートが鳴り響いて。

 俺は本をパタリと閉じてから椅子の上に置いた。

 

《緊急事態発生。パイロットは速やかにブリーフィングルームに移動してください。繰り返します、緊急――》

「……行くか」

 

 俺は制服のボタンを閉じてから、急いで走っていった。

 何が起きているのか分からないが、行けば分かるだろう。

 

 娯楽室の扉を開けて――後ろを振り返る。

 

 静かに置かれた本をチラリと見る。

 あの写真が気になって頭から離れない。

 もっと見ていたいとすら思ってしまったのだ。

 アレは俺と何か関係があるのか……いや、今は急ごう。

 

 気にはなったが、今は緊急事態で。

 俺はもう振り返る事は無く。

 ブリーフィングルームへと走っていった。

 

 |||

 

「どういうことだよ。おい」

 

 ブリーフィングルームで説明されたのは、帝国からの大規模な攻撃が公国に向けて開始されたというもので。

 前線は勿論の事、敵の伏兵が北東と南東から首都を目指して進軍しているらしい。

 敵であるのなら兵士も一般人も関係なく殺していき、公国から俺たちに向けて救援要請が出された。

 話を聞いている間に、トロイは声を荒げながら滝のように汗を流していて。

 俺はどうしたのかと考えて――トロイの話を思い出した。

 

 確か、トロイの故郷は公国の南東にある村だと聞いた。

 そうなると、帝国からの侵略軍が向かっている経路と――俺はヴォルフさんにすぐに出撃しようと進言した。

 

 ヴォルフさんは頷き、チームを細かく分けて敵の殲滅に当たるように指示した。

 俺やオッコのチームは南東から攻めてきた敵の殲滅で。

 トロイは指令を最後まで聞かずにブリーフィングルームを飛び出していった。

 俺たちはトロイを追いかけていく。

 走って走って、機体の格納スペースに着くと既にトロイはファイアボルトに乗り込んでいて。

 俺たちも自分たちの機体に乗り込んでいった。

 

 階段を駆け上がって、開いたハッチの中に飛び込む。

 ハッチを閉じてから、パネルを操作してシステムを起動した。

 ディスプレイが光って辺りの景色が投影されて――通信を繋ぐ。

 

《マサムネ。飛行ユニットに搭乗後、速やかに戦線に迎え。座標は飛行ユニットに送信済みだ。激しい戦闘になるだろう。機体の最終チェックは怠るな》

「了解……トロイの事ですけど」

《隊長はお前だ。もしも何かあれば、お前の判断で行動を決めろ》

「……了解」

 

 通信を切断してから、機体の最終チェックを手早く済ませる。

 皆との通信を繋げれば、トロイが焦った声で皆を急かしていた。

 俺はトロイに落ち着くように言いながら、機体の最終チェックを済ませて。

 ケージが開いたのを確認してから、機体を動かして船の射出ゲートまで持っていった。

 

 仲間たちが射出ゲートに入ってから飛行ユニットに跨る。

 そりのような形をして、脚部を固定する為のジョイント機構が取り付けてあるそれ。

 そこへ膝を折る形で跨れば、自動的に機体が固定されて。

 頭上のランプが赤から点灯していき緑に変わる。

 一気に加速した機体がゲートから放たれて、俺たちは大空を飛んだ。

 

 左右を確認すれば、トロイやオッコにレノアたちもいて。

 俺たち六名の小隊は先行して現地へと向かう。

 恐らく、敵の伏兵は無人機であり、かなりの数がいるのだろう。

 勢いを弱めることなく進軍していく帝国軍は厄介で。

 戦場で何が起こっているのか不明な今は、考えても仕方がない。

 

 取りあえずの懸念事項はトロイだろう。

 故郷が襲われて黙っていられないのだ。

 もしも一人にすれば危険だが、こいつを気遣ってやれるだけの余裕があるかは分からない。

 独断で動こうとした時は、何名かをサポーターとして付けよう。

 

 しかし、そうなった時は覚悟を決めなければならない。

 

 俺だって万能じゃないんだ。

 数で押されれば、何時かは弾だって切れる。

 武装を切り替える余裕はなく。

 今の武装はショットライフル二丁のままだ。

 

「現地に到着後。敵との交戦が予想される。俺から指示を出すことが出来ないかもしれない。その時は各自で考えて行動してくれ。くれぐれも、味方を巻き込むような真似はするな」

《了解》

《……了解》

 

 やはり少なからず不安はある。

 しかし、今更何かを言い加えたところで結果は変わらない。

 俺は一株の不安を抱きながらも、目を閉じて意識を戦場に集中させた。

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