【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

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046:天使の皮を被った怪物

《おいおいキリがないねぇ。雑兵だらけかよ》

《ひぃぃ! 来ないでぇ!!》

 

 次から次に襲い掛かる無人機たち。

 死を恐れる事の無い敵は、俺たちの動きを封じる為に特攻まがいの行動までし始めた。

 一体が突撃してきて身を挺して機動力を奪おうとする。

 或いは、手負いの敵が自爆なんかもしてきた。

 恐ろしい奴らであり、早いところ片付けたいが……何だ。動きが……。

 

 無人機たちが動きを変えてきた。

 チラリと後方を見たかと思えば道を空けて、何かが凄まじい勢いで突っ込んできた。

 鋼の塊が突っ込んできて、俺は緊急回避を取った。

 横へと機体を動かせば、元居たところを風を切って何かが通り過ぎていく。

 

「戦闘機……いや、あれはッ!?」

 

 戦闘機のような形状をしたそれが空中で変化した。

 可変式の機体であり、空中に浮遊するそれは二本のブレードを持っていた。

 背中から延びるスラスターのようなものが羽のように広がっていて。

 赤い粒子を放出しながら、真横に伸びたスリットから見える赤いセンサーが俺を真っすぐに見ている。

 黒いカラーリングに、軽量型らしい細身の機体。全長は13メートルくらいか。

 このプレッシャーは……告死天使か?

 

 いや、違う。似ているが、アレは違う。

 

 他の無人機とは違う空気を纏う機体。

 有人機かと思ったが、人が乗っている感じはしない。

 オッコに通信を繋ぎ、すぐに分析を頼んだ。

 

《もうやってるよ……驚いた。アレは特別製だぜ。他の無人機とコアから発せられる波形パターンが違う。気を付けろよ》

《か、帰りたいぃ》

「……俺が試してみる。お前たちは他の無人機の相手を頼む」

 

 仲間に背中を任せながら、俺は突っ込んでいった。

 近接戦闘特化型らしき敵に近距離戦闘を挑むのは愚かか。

 いや、どんな戦いでも俺は勝って見せる。

 

 ブーストして接近すれば、相手はブレードを構えて連撃を放つ。

 上からの攻撃を半身をズラして回避。

 横から攻撃が飛んでくる未来が見えて、スラスターを勢いよく噴かせる。

 その場で回転しながら回避して、ショットライフルを相手の頭部に向けた。

 引き金を引いて――相手の像がブレる。

 

「虚像ッ!?」

 

 ホログラムのようにそこに存在しているようで存在しない敵。

 直後、自分のコアが穿たれる未来が見えた。

 

 俺は一気に頭上へ飛ぶ。

 すると、空間が歪んだのが一瞬だけ見えた。

 

 攻撃をしても当たらない。

 そして、不自然な機動での攻撃。

 初見殺しとでも言うべき攻撃の正体は――実体投射による攻撃のラグか?

 

 俺が目で見ている物は実物を忠実に再現した映像で。

 実際に機体は姿を見せることなく隠れている。

 恐らく、すぐ近くにはいる。ほんの少しズレているだけ……面倒な相手だ。

 

 攻撃を当てたと思っても実際にはそこにいない。

 映像を攻撃しても無意味で、位置をズラして存在する敵を破壊しなければならない。

 となると、確実に殺すためには――胴体を狙った面の攻撃だッ!!

 

 俺はすぐさま攻撃方法を理解する。

 そうして、奴の周りを旋回してかく乱する。

 機動力では互角化もしれないが、無人機には真似できない機動を俺は出来る。

 相手はセンサーを動かして俺を追随してくる。

 しかし、俺は追ってくる敵を無視してその場で逆噴射をする。

 急停止した俺を両断しようとする敵――通常より深く下へ移動。

 

 真上を通る敵を見つめながら、両手のショットライフルを連射した。

 ギャリがギャリと音を立てて敵の装甲が抉れる。

 どんなに像をズラそうとも数でカバーすればどうってことは――ッ!!

 

 ボロボロになった筈の機体。

 激しくスパークしたそれが一瞬だけ見えた。

 しかし、一瞬の油断を突くように奴が接近してきた。

 

 俺は咄嗟に胸部の小型ミサイルを放つ。

 ロックオンされたそれを奴は紙一重で回避して。

 するすると蛇のように迫った奴はブレードを振るう。

 逆袈裟に斬られて機体から火花が散る。

 俺は舌を鳴らしながら、奴から距離を取った。

 

 アラートが鳴り響き、機体の損壊度をチェックする。

 脚部の制御システムに少し異常が出ており、蹴りを放つ余裕は無さそうだ。

 後はエネルギー供給パイプが破損して、エネルギーの消費率が上がった。

 エネルギー残量は五十パーセントを切っている……保って二時間か……いや、高機動戦になれば良いところ一時間か。

 

 残された時間は少なく。

 俺は額から汗を流しながら笑う。

 戦場での緊張感には慣れたつもりだったが、まだこんな体験を出来るとは。

 良い緊張感だと笑いながら、俺はスラスターを噴かせた。

 

 俺を追いかけてくる敵。

 見れば、ボロボロだった装甲は元通りに復活していて。

 再び本体は姿を消して虚像だけが存在した。

 悪足掻きのつもりで俺は背面飛行をしながら、ショットライフルを乱射した。

 

 しかし、破れ被れの攻撃が通じる筈もなく。

 全て回避され、剣で弾き飛ばされてしまう。

 剣の耐久力も高いのか――いや、違うな。

 

 高周波ブレードらしきそれは消耗している。

 ブーストしながら注意深く観察すれば、にゅるりと何かが動いていた。

 俺はそれを見てすぐに液体金属だと当たりを付けた。

 アレは形状記憶型の液体金属を使った新型で。

 どんなに攻撃を喰らおうともすぐに復活すると理解した。

 

 倒す方法は幾つかある。

 圧倒的な火力で薙ぎ払うか。

 精確に奴のコアを破壊するか。

 もしくは、元に戻れないほどまでに奴をボロボロにするか。

 

 圧倒的な火力は無理だろう。

 レノアのプラズマ砲でも、最大火力で焼き払えるかどうかだ。

 元に戻れないほど破壊するのも現実的じゃない。

 アイツの限界を知らないからこそ、そんな賭けに乗れるほど余裕は無いのだ。

 

 

 となると、奴のコアを精確に穿つ必要がある。

 

 

 やってみるしかない。

 俺は街のマップを確認した。

 避難は完了している頃であり、住民たちは地下のシェルターに逃げている筈だ。

 もしも逃げ遅れた人間がいたのなら……その時は、土下座でもしてやる。

 

「――ぅ!」

 

 ペダルを踏みこんでセーフティを解除する。

 シートに体を押し付けられながら、俺は一気に降下して――街の中に侵入した。

 

 火の手を上げる街を進みながら、俺は器用に道を通っていった。

 川からしぶきが上がり、煙が舞い上がる。

 視界不良の中で飛行しながらある物を探して――見つけた。

 

 高さ100メートルに及ぶ巨大な門のような建造物。

 街のシンボルとして存在する白亜の城を見て俺は笑う。

 無事であって良かった。そして――今からする事は許してくれ。

 

 残されたミサイルを全て放つ。

 全弾発射であり、これで全てを撃ち尽くした。

 ミサイルたちは門を支えている一か所へと撃ち込まれて。

 門がぐらりと揺れて倒壊し始めた。

 俺は倒壊する門へと進んでいく。

 

 ぐんぐんと距離を詰める。

 加速して、加速して、更に加速して――っ!!

 

 瓦礫が落ちていく中で小さな隙間を見つける。

 敵が追って来ているのを確認しながら、俺はその穴へと機体を滑り込ませた。

 崩壊していく建物を勢いよく通り過ぎようとして――肩に瓦礫が当たる。

 

「ぐぅ!!?」

 

 バランスを崩す。

 しかし、すぐに手動操作で持ち直した。

 機体を回転させながら、小さな光へと進んで――突き抜けた。

 

 ガラガラと建造物は崩壊して。

 遅れてきた敵は瓦礫に押しつぶされていく。

 悲鳴のようなものが聞こえたかと思ったが気にせず――俺は一気に加速した。

 

 瞬間、敵が瓦礫を破壊して飛び上がる。

 空中へと脱出したと思った間抜けのコアに照準を合わせる。

 ゼロ距離での狙いであり、実体が現れた段階で誤差も認識できた。

 

 ――もう、外さない。

 

「くたばれ」

 

 引き金を引いて乱射する。

 ガスガスと音を立てて弾がはじけ飛んで。

 敵の装甲を抉り取っていく。

 後ろへ下がる敵に銃口を押し付けながら飛行して――地面に激突した。

 

 ゆっくりと姿が現れて、敵が腕を上げようとした。

 そいつの腕を足で押さえつけながら、二丁のショットライフルを向ける。

 そうして俺は笑みを深めながら、残りの弾をぶちかます。

 

 二度三度弾を放って――反応がロストした。

 

 完全に沈黙した敵。

 動かなくなった死体を見ながら、俺は笑みを消す。

 そうして、興奮が急速に冷めていくのを感じながら、俺は無人機たちを引き受けてくれた仲間の元に向かう。

 

「……あっけねぇな」

 

 ぼそりと呟いた言葉。

 自分が発した言葉なのに、自分が言ったように聞こえなかった。

 俺は心の中で首を傾げながら――アラートが鳴り響く。

 

 敵の接近、ロックオンされたことを告げるそれ。

 俺はその場で停止して、後方を見た。

 すると、完全に沈黙したはずのそれがうねうねと蠢いていて。

 近くに落ちた公国兵士の機体や無人機を吸収している。

 

《――ッ!!!》

「ぅ、生きているのかッ!?」

 

 怒りを多分に含んだ奇声が戦場に響き渡る。

 ぐずぐずに溶けた出来損ないが空を飛んで俺を追ってくる。

 アレに近づくのは危険だ。しかし、ショットライフルは近づかなければ最大火力を出せない。

 

 俺は舌を鳴らして焦る。

 仲間たちへとすぐさま通信を繋いで、敵の姿が変わったことを伝えた。

 

《こっちからも確認できてるよ! ホラー映画の怪物かァ!?》

《かかか勝てませんよ!! ににに逃げましょうよぉ!!》

「――出来る限りの事をするぞッ!! アレをこの先へ進ませるのは危険だッ!!」

 

 撤退も視野には入れている。

 しかし、俺の勘がアレを野放しにしてはいけないと告げている。

 勝てるヴィジョンはまるで見えない。

 コアへの一斉放火でも死なず。第二形態となって襲い掛かってくるのだ。

 このままでは危ない……どうする――ッ!

 

 死の気配が濃厚になっていく。

 音を立てて死神が近づいていることが分かった。

 俺は歯を食いしばりながら機体を操縦して。

 起死回生の一打を見つけようと必死になっていた。

 

 そんな時に、司令部から通信が繋がる。

 

《司令部よりマサムネ機へ。十五分後に味方が到着します。それまで現場で持ちこたえてください》

「持ちこたえろだと。待て、味方は――くそ、切れた」

 

 通信状況が悪い。

 味方について聞こうとしたら通信が途絶した。

 俺は言われたとおりの事を仲間たちへと連絡して。

 指令通り味方が来るまで持ちこたえるように命令した。

 無理だとレノアが言う。そんな事は俺も分かっていた。

 

 でも、やれと言うなら――やるしかないだろッ!!

 

 俺はショットライフルのマガジンを交換しながら、敵の触手へと発砲を続ける。

 今こうしている間にも、奴は機体の残骸を吸収して成長している。

 このままではより体が大きくなって手が付けられなくなる。

 俺はその味方とやらが何かを変えてくれることを期待しながら、敵へと応戦を続けた。

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