【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
残りのミサイルを全て放って、マガジンも交換してしまった。
逆転する手立ては今のところなく。
敵の大きさは五十メートルを既に超えていた。
第一世代型メリウスと同じくらいの大きさであり、吸収した装甲を纏って街を練り歩いていた。
色が違う装甲を身に纏って、装甲の繋ぎ目から液体が漏れ出ている。
吸収と増幅を繰り返しており、まだ成長し続けている。
こいつは一体何なのか。見たことも聞いたことも無い機体に恐怖すら感じてしまう。
奴はずっと街を練り歩いていて、ゆっくりと進行方向を変えた。
「まずい。首都を目指しているのかッ!?」
今はまだスラスターのような推進装置は見つからない。
しかし、時が経てば推進装置すら形作る可能性もある。
ゆっくりと、生き物のように重い体を引きずっている間が勝負だ。
味方が来るまでまだ時間はある。何とかして、この場に奴を留めておく必要がある。
何か、何か手は――あれだッ!
センサーを起動して辺りをサーチする。
すると、転がっている武装の中に使えそうな物を見つけた。
俺はショットライフルを二丁とも肩にマウントさせて。
二人に奴の注意を引くように指示した。
そうして、急いで武器を取りに降下して――触手が迫る。
後ろから追ってくる触手を確認しながら、更に加速して地面に近づく。
目と鼻に迫った地面を見ながら――一気にレバーを引く。
鉛のように重いレバーを引けば、機体はゆっくりと持ち上がる。
そうして、地面スレスレで滑空して――武器を掴んだ。
「……電子ロックは……掛かってない。よし、使えるぞ」
電子ロックが掛かっていない武器で安心した。
俺はそれを両手に装備しながら、パネルを操作して残弾を確認した。
装弾数は十発――残弾四か。
まだ弾が残っていた事は幸運で。
俺はグレネードを構えながら、四方八方から襲い来る敵の触手を避けていく。
機体スレスレに飛んでくるそれを回転しながら避けて。
敵の眼前に躍り出てから、グレネードランチャーの銃口を敵に向ける。
「かませッ!!」
引き金を引いて弾をぶっ放した。
放物線を描いて飛んでいったそれが敵の頭部に命中して――大きく爆ぜた。
《――ッ!!!?》
悲鳴を上げながら体を激しく揺らす敵。
ダメージは与えられたようであり、俺はこれは相手に有効だと判断した。
狙いを付けながら、今度はコアのある位置に撃ち込む。
再び放物線を描いて弾が飛んでいき――三本の触手に防がれた。
俺への脅威度を改めたのか。
二人を放置して俺の方へ顔を向けてきた。
そうして、触手がぐにゅりと歪むと、その手には残骸から鹵獲した武装が握られていた。
俺は危険を察知して、その場から離れる。
遅れて弾が乱射されて、俺の装甲を軽く削っていった。
まだ戦える。しかし、これで容易に近づくことが出来なくなった。
《――マサムネッ!! 俺がこいつの注意を逸らすッ!! 後はそれで何とかしてくれッ!!》
「オッコ、何を――ッ!?」
オッコがスラスターを噴かせて態と接近した。
そうして、近距離からコアのある部分へとライフルの弾をぶち込む。
大口径のスナイパーライフルの威力は凄まじいようで。
その貫通力によって確実にダメージを与えている。
だけど、あんなに接近するのは危険だッ!!
無茶な操縦であり、注意は逸らせているが触手がすぐそこまで迫っている。
俺はオッコに離れるように指示した。
しかし、奴は命令を無視して敵を引き付けていて――ッ!?
オッコの死角から敵の触手が飛ぶ。
気づいていないオッコは攻撃に専念していて――俺はランチャーの弾を放つ。
迫った触手は圧倒的な火力で焼き払われた。
オッコは何をしているのかと俺に怒ってきて。
俺はへらりと笑いながら、ランチャーの銃口を敵のコアへと向けた。
「まだ一発、残ってんだよ」
《――ッ!!!!》
引き金を引いて最後の弾を放つ。
オッコへと注意を向けていた化け物の触手は間に合わず。
吸い込まれるように奴の土手っ腹に撃ち込まれた。
液体金属の中に取り込まれて――ぼこりと腹が膨れた。
ぼこぼこと体が膨らんでいって、俺はやってやったと笑い――機体を掴まれた。
「しま――ッ!?」
触手に掴まれて勢いよく地面に叩きつけられる。
機体全体が揺れて、頭を強く打ち付けた。
コックピッド内が赤く光っていて危険信号を発している。
額が切れたのか血がしたたり落ちていて、片目が赤く染まった。
オッコやレノアが俺を助けようとしている。
しかし、無数の触手に邪魔されてこちらに来れない。
化け物は大きく口を空けながら、俺の機体を頭上に持ち上げる。
死にたくは無かったが、これまでなのか。
こいつに機体事吸収されたら、俺は一体どうなるというのか?
そんな小さな疑問を抱いて、俺は笑って――
《――おじさん。よく出来ました!!》
鈴のなるような明るい声が聞こえた。
その瞬間に遥か彼方より、砲弾が飛んできた。
無数の砲弾が敵の巨体を撃ち抜いて、無慈悲な火力によって機体が焼かれた。
化け物は悲鳴を上げながら、俺の機体を離して。
飛ばされた俺の機体は回転しながら飛んでいき――ガッシリと受け止められた。
《だだだ大丈夫ですか!? マサムネさん!》
「……あぁ天使に助けられたよ」
俺は遅れてやって来たヒーローの笑顔を想像した。
まさか、援軍としてやってくるのが彼女とは思わなかった。
俺は通信を繋いで、駆けつけてくれた味方に話しかける。
化け物がぐずぐずに溶けていって死んでいく。
炎に焼かれながら消えていく化け物を見ながら俺は笑って――
「女子高生は最強って事か?」
《当然しょー!!》
ブイサインでもしているショーコさんを想像しながら。
俺は新たな仲間の到来を心から歓迎した。
戦場で再開するとは思わなかったけど、彼女がいれば心強い。
《――全部隊に連絡。敵勢力の撤退を確認。各部隊は速やかに船へと帰投してください》
「……あいあいさぁ」
手をひらひらとさせながら、俺は重い吐息を吐き出した。
体が重く眠気が襲ってきた。
レノアやオッコが俺の名前を呼んでいるが、どんどん遠ざかっていく。
俺は段々と気持ちよさを覚えていって、そのまま眠りにつくように瞼を落とした。
遠くの方で、ショーコさんが笑っている声が聞こえる。
俺は笑みを浮かべたまま、意識を深く深く落としていった。