【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で? 作:オタリオン
何が、起きたんだ。
鉄槌を追い詰めて、最後の攻撃を仕掛けようとした。
その瞬間に奴の機体が激しく閃光して、強い電流が駆け巡った。
コックピッド内で警報が鳴り響いて、俺はそのまま気を失って……今はどうなった?
ゆっくりと事態を理解して瞼を開ける。
すると、コックピッド内は暗闇に包まれれていた。
俺は手を震わせながら、非常用の電力供給レバーを引いた。
三回引けば、機体内に電気が復旧して明かりがつく。
システムが復旧して、ディスプレイに表示されたのは――銃口を此方へと向ける三体の青いメリウスだった。
「――ッ!!」
咄嗟にペダルを踏んで加速した。
一瞬遅れて奴らが携行するガトリングガンが火を噴く。
凄まじい勢いで弾が発射されて、地面を大きく削り取った。
《おはようございます。状況の説明をしてもよろしいですか?》
「あぁ、頼むよ」
《かしこまりました。先ほどの敵メリウスは高強度電磁界を自らの機体を起点として発生させて、近くにいたメリウス全てを機能停止させました。雷切にはEMP対策が講じられていたこともあり、53パーセントの機能の復旧に成功しました。鉄槌の生体反応はロスト。戦場に現れた青いメリウスに補足されて、後3.2秒遅れていれば機体は大破させられていたでしょう》
「他の機能の復旧は?」
《不可能です。至近距離でEMPパルスを照射されたので》
AIと話しながらも、敵からの攻撃を避ける。
機体はずっしりと重くなり、動きが鈍くなっていた。
弾数が多く一発一発の威力が高いガトリングガンを持ち出してきたのだ。
確実に此処で俺を始末する気だろう。
その時にAIから敵の通信を傍受したと聞かされた。
嫌な予感がしたが相手の声を盗み聞く。
すると、敵の一人はげらげらと笑いながら俺に攻撃を仕掛けてきた。
《こいつを殺せば、あたし等は自由だァァ!! 死ね死ね死じまえェェ!! ぎゃはははは!!》
《……サーラ、黙れ》
《言っても聞かねぇでしょう? 自由になるのは本当らしいし、興奮してんだろ》
青いメリウスを駆る中量級のメリウス三機。
片手にガトリングガンを接続し、センサー部分には三つのレンズが取り付けられていた。
眉間の部分から後ろへとアンテナが伸びていて、空いている右手には長い棒のような物が取り付けられている。
高機動型という訳ではない。
何方かと言えばバランスを重視して設計されたタイプに見える。
背中に付けられたランドセルから二つのスラスターが伸びていた。
青く光るセンサーを此方へと向けながら執拗に攻撃を仕掛けてくる。
好きなように喋っているようだが、連携は驚くほどに噛み合っていた。
逃げようとすれば背後を塞がれて。
攻撃を仕掛けようとすれば、邪魔をするように別の一機が弾を放つ。
まるで、此方の動きを読んでいるようで――こいつらも俺と同じタイプか?
未来予知が出来るのか。
分からないが、そうであればかなり厄介だった。
ただでさえ、半分ほどの機能しか回復していないのだ。
この状態で手練れを三人相手に戦うのは無理がある。
鉄槌が死んだか確認はできないが、恐らくはもう生きていないだろう。
後はイサビリ中尉達が無事に帰って来てくれたのなら作戦は完了で――通信が入る。
《マサムネ上等兵ッ!! 中尉が車にてご帰還だッ!!》
「了解」
相手からの攻撃を回避しながら、地上の様子を伺う。
すると、敵の車両を強奪したイサビリ中尉が戦場を疾走していた。
敵は俺たちへと対空砲火をしているからか、誰も地上を見ていない。
このままいけば、安全にこちら側へと帰還できるだろ――そう思っていた。
敵メリウスが攻撃を止めて地上へと視線を向けた。
そうして、にたりと笑ったであろう敵から不穏なセリフを聞く。
《みーつけたッ!! ぎゃははは!!》
「――まさかッ!?」
他のメリウス二機が俺の前に立ちふさがる。
そうして、にたりと笑ったであろう一機が地上に向けて加速した。
銃口を地上へと向けながら突進していて――俺はすぐさま追いかけようとした。
最短距離で行くのであれば、被弾を覚悟しなければならない。
相手のガトリングガンが乱射されて、俺は銃弾の雨の中を突っ切る。
装甲に弾が何発も被弾して、装甲が大きく爆ぜた。
AIから電気系統への異常を検出したと報告されて、俺は舌を鳴らした。
《出力30パーセントに低下》
「間に合えッ!!」
加速して奴を追いかけた。
背を向けながら地上で走るイサビリ中尉達を狙っていて。
俺は奴の背中に銃口を向けながら、弾を発射しようとした。
その時に、奴が此方に振り返る。
そうして、片腕に付けられた棒を向けながら大きな声で言葉を発した。
《なーんちゃってぇ!!》
棒のようなものの先端が赤く発光した。
そうして、網のように一瞬で辺りに広がった。
未来を予知する暇も無かった。
それから逃れようとするが、背後から迫っていた他の二機も棒の仕掛けを発動させた。
一瞬で逃げ道を防がれて、広がった網が一気に伸縮した。
がっちりと機体に絡みついて、機体の動きが完全に停止した。
レバーを引いても押しても反応が無い。
ペダルを踏んでも全くと言っていいほど推力が出ない。
これは何だ。一体俺は何をされたんだ。
混乱の中で、奴らの声が聞こえた。
傍受した声ではない。完全に此方へと通信を繋いで話してきた。
《あーあー。聞こえるぅ? ざんねんだったねぇ。他の雑魚なんて放っておけばぁ、アンタにも少しくらい勝ち目はあったのにねぇ。いやぁ残念残念。はい、じゃさようならー!》
「……何で、地上の仲間が移動していると分かった」
《えぇ? それ聞いて私が教えると本気で思ってんのぉ? うーん、どうしようかなぁ。どうしてもっていうのなら……全力で命乞いをするなら考えなくも無いよぉ!》
「……分かった」
命乞いをしてみろと言われて俺は薄く笑う。
そうして、スッと右手を出してから中指を立てた。
それを見ていた女は笑みを凍り付かせた。
他の二機のパイロットたちはくすりと笑う。
やがて、女はゆっくりとガトリングガンの照準を俺へと向ける。
《死ねッ!!!》
怒りのまま、弾が発射される。
俺はその弾を諸に受けた。
ガリガリと装甲が削られて、これで一巻の終わりかと思った。
その時に、戦場に何かが舞い降りる。
身の丈ほどある長刀を振りかざして。
俺へと攻撃を仕掛けてきた女の銃を一刀両断する。
動揺を露わにする女によって、俺の拘束が緩んだ。
全身から火花を散らせながら、俺は何が起きたのかと助けてくれたメリウスを見た。
背中から延びる羽のようなスラスターが四枚。
純白の機体は穢れを知らず。
すらりと伸びた細長い手足に、引き締まった胴体部分などからは洗練された美を感じた。
チラリとその青いラインの入ったセンサーを俺へと向けてくる。
《マサムネさん。離脱してください》
「マクラ-ゲン中佐?」
俺を助けてくれた白いメリウスはマクラーゲン中佐のものだった。
彼女は俺に逃げろと言うが、彼女を一人には出来ない。
しかし、このまま俺が加勢しても足手まといになるだけだ。
俺は一瞬だけ迷ったものの、彼女の指示度取り撤退を始めた。
《逃がす訳ねぇだろォォ!!》
俺を追いかけようとした敵。
それの前に立ちふさがって彼女は長刀を構える。
気が狂ったように笑う女は空いた手で刃が赤熱するダガーを向けた。
巨大な殺意を向けられた彼女に刃が突き立てられて――像がブレる。
《アァ!?》
像がブレたかと思えば、女の横に彼女が移動していて。
そのまま長刀を振り下ろして女の機体を一刀両断して見せた。
手負いとはいえ、あの一瞬で手練れの敵を落として見せた。
残った二機は動揺しながらも、距離を取って彼女へと攻撃を仕掛ける。
中佐はスラスターから青白い光を迸らせながら。
綺麗な動きでその弾を隙間を縫うように回避する。
流れるような動きで、相手の懐へと入る。
その動きが熟練のパイロットであっても再現するのは難しい。
俺は初めて見た中佐の操縦技術に目を丸くする。
そうして、彼女から言われた通りに戦場を後にした。
鉄槌との戦闘、後から来た三体の敵が使った新しい武器。
まだ頭の理解が追い付いていないことはあるが、俺に戦える力は残っていない。
呼吸がか細くなっていく。
視界が薄くなっていき、俺は今にも気を失いそうだった。
それを何とか堪えながら、俺は離脱していく。
背後から激しい戦闘音が聞こえてくるが、中佐であれば大丈夫だ。
そう確信できるほどの腕を見せつけられて、俺は静かに笑みを浮かべていた。