【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?   作:オタリオン

95 / 302
094:成長を促す意味とは(side:マクラーゲン)

 戦場に出て、マサムネさんを守る。

 彼から頂いた恩に報いる為に、私は”白百合”と共に空を舞う。

 

 青いメリウス。そして、控えていた敵の群れが私を追う。

 四枚羽を動かしながら飛行して、背後から放たれる銃弾を避ける。

 操縦レバーを引きながらペダルを二回踏む。

 減速して機体を回転させて方向を変え、加速して相手の呼吸を乱す。

 

 減速と加速、それを交互に行えば自然と相手は混乱する。

 この機体には近接格闘用の武器しか積んでいない。

 だからこそ、相手の呼吸を乱して隙を作るしかない。

 

 態と速度を緩めれば、周りを敵が取り囲む。

 ブーストによって速度を速めて回り込んだ。

 それを見ながら、敵のライフルの位置を確認する。

 センサーから敵のライフルの位置を。

 システムの演算機能によって風向きを計算する。

 

 それを視界の端で確認すれば、敵は一切の迷いなく弾を放つ。

 私は一点へと加速して進む。

 眼前に敵の弾丸が迫って――それを叩き切る。

 

 一刀のもとに敵の弾丸を切り飛ばす。

 放たれた弾丸を最小限の動きで切り伏せた。

 相手から動揺が見て取れる。

 その動揺は命取りであり、加速して接近して両断した。

 

 敵の機体が激しくスパークする。

 私が敵から離れれば、その機体は大きな音を立てて爆ぜた。

 陣形を立て直して、距離を詰めさせないようにしようとしている。

 その動きを読んで機体を加速させた。

 連続ブーストにより一気に敵との距離を詰めて、固まっていた敵の一体を切り伏せた。

 

 銃口を此方へと向けて仲間の援護をしようとした敵。

 しかし、それは一手遅かった。

 飛んできた弾丸を紙一重で回避。そして、敵へと接近してそのコアを貫く。

 ブレードを抜けば、バチバチと火花を散らせながら相手は墜ちていく。

 

 休むことなく相手へと戦いを挑む。

 弾丸が飛べば斬り、背後を取ろとすれば機体を回転させ応戦。

 敵の群れを相手にしようとも、私がやる事は変わらない。

 

 マサムネさんが戦線を離脱した今。

 この方々の相手を出来るのは私しかいない。

 肩にマウントさせていた長刀を取り出す。

 二刀流となり静かに相手を見据える。

 青い機体のメリウスは動きを変えて、私をかく乱しようとしてきた。

 

 彼らを護衛する敵は――突撃してくる。

 

 やぶれかぶれではない。

 命を懸けた特攻で、私は愚かな作戦に眉を顰めた。

 私からの攻撃を恐れない彼らへ、私はブレードを向ける。

 そうして四枚羽を動かして前進し、彼らの弾丸を弾いていく。

 自爆特攻だろう。そう考えて、その暇を与えない。

 

 一気に距離を詰める。

 爆発的な加速によって、私は彼らの横を通り過ぎる。

 その合間に、機体を回転させてブレードを振るう。

 鋭い斬れ味と加速力が伴った一撃によって、敵の体は半ばから別たれた。

 そうして、センサーから光を消して墜ちていく。

 

 敵の大半を仕留める事が出来た。

 しかし、安堵してはいられない。

 今の一瞬で青い機体の姿を見失う。

 いや、見失ったのではない。完全に姿が消えた。

 

 噂に聞く光学迷彩と呼ばれるものか。

 私はゆっくりと目を閉じる。

 そうして、敵の気配を探って――下へと降下した。

 

 ペダルを強く踏み下へと降下。

 その瞬間に私のいた場所に敵の弾丸が通過した。

 背後から迫っていた敵は動揺していたことだろう。

 それにくすりと笑いながら、私は像がブレている場所へ向けて加速した。

 方向を一気に変えて曲がり、敵が私の間合いに入る。

 ゆっくりと息を吐いて、私はブレードを振るった。

 

 ギャリギャリと音を立てて、私のブレードが相手の装甲を抉り取る。

 甲高い音を立てて跳ね飛ばしたのは、相手の手であった。

 マサムネさんを捕縛する時に使った何かの装置がついた手で。

 私はそれを眼を細めながら見ていた。

 

 私はコンソールを叩く。

 そうして、相手へと通信を試みた。

 すると、アッサリと通信は繋がった。

 

「……これ以上は無意味です。撤退しなさい」

《……見逃すと? 後悔しますよ》

「また出会うのであれば、またお相手しましょう。何度でも」

《……撤退だ》

 

 私の言葉を受けて、相手は撤退を始めた。

 通信はその時に切断されて。

 私は去り行く敵を見つめながら、味方へと通信を繋いだ。

 作戦は終了であり、イサビリたちは無事に帰還した。

 

 基地に帰投後、負傷者の手当てを優先。

 飛べるものは、墜落した仲間を手早く救出するように指示する。

 私が指示を出せば、彼らは忠実に従って動き出す。

 私はそれを見ながら、自らも墜落した仲間の救出に向かった。

 

 地上には帝国軍人はいない。

 一時的に撤退しているか身を潜めている。

 この隙に仲間を救出しておかなければならない。

 幾つか表示された救難信号を頼りに動きながら、私は大破した敵の新型を静かに見つめていた。

 

 

 

 基地内に帰投して、私はイサビリを呼んだ。

 彼女は無事であり、何処も怪我をしていなかった。

 彼女たちが持ち帰った情報にはすぐに目を通した。

 すると、私が知らない情報が山のようにあった。

 

「……これらの情報は驚くべきものですね。ファルコンⅢというのは、マサムネさんが堕とした新型でしょう。帝国は秘密裏に、新型の開発に力を入れているようですね。今後もアレと同じかそれ以上の物が戦場に出てくるでしょう……それよりも、帝国軍が公国の首都に攻撃を仕掛けようと計画していると……まずいですね」

「……計画書などは見つかりませんでしたが。恐らくは事実かと」

 

 計画を実行に移すまで二ヶ月。

 イサビリはその二ヶ月後に首都で何かが行われるのではないかと私に言ってきた。

 私は顎に手を当てて考えた。

 

 考えて考えて考えて――思い出す。

 

「……東源国の上浦白狼=天子(カミウラハクロウテンジ)様が公国に入国します。予定通りであれば、首都にてエルドリュース・オーレリア大公様と会談をする筈です……まさか、それを狙って?」

 

 あり得る話ではある。

 三大国家の内の二人の頭首が揃うのだ。

 一気に敵の士気を落とすか、単純に火種を生みたいのであればこれ以上の標的は無い。

 

 だが、公国の首都まではかなりの距離がある。

 どうやって彼らは公国領へと侵入するのか?

 

 ファストトラベルは使えない。

 アレは現世人だけの特権である。

 そして、現世人であっても帝国に属する人間はその一切が首都への侵入を拒まれる。

 もう一つ言うのであれば、メリウス自体を持っている事が不可能。

 危険物の類も持ち込もうとすれば、我々がすぐに気づく。

 

 首都へと入る事は不可能だ。

 そして、会談が行われる日ともなれば尚のこと無理だ。

 そんな中で彼らはどうやって首都へと攻め込むのか……分からない。

 

「……あの新型もマサムネさんに使われた新兵装も謎。新兵装に関しては特殊兵装の類だとは思いますが、どの記録にもそのような技術は載っていません。恐らくはゴースト・ラインが生み出したものか。あるいは……」

 

 敵が火種を生み出して、戦争を継続させるのが目的だとして。

 ゴースト・ラインには何の得があるのか。

 混沌の世界を作り出したいのか。疲弊した国々に変わってこの地を治めようとでも言うのか。

 何方にせよ、そんな事がしたいのであれば時間が掛かり過ぎる。

 例え、帝国が首都への攻撃を成功させて戦争が継続したとして、また終わりの見えない戦いが続くだけだ。

 混沌も世界の支配者への道も、時間が掛かり過ぎる。

 

 ならば、彼らには別の目的があると言える。

 その目的に最も深く関わっている人間は――マサムネさんだ。

 

 鉄槌もあの青いメリウスたちも、マサムネさんを標的にしていた。

 それはまるで、マサムネさんだけが目的だと言わんばかりで。

 彼らの計画の邪魔になるからこそ、彼らは彼を狙っているのだと思っていた。

 

 

 しかし、それは違うように感じる。

 

 

 今までの彼の戦いを見て感じた違和感。

 アレほどの技術があり、魔神すらも復活させた力があるのなら。

 力技であろうとも、マサムネさんを倒す手立てはあるのではないか?

 

 彼らはマサムネさんを倒すように見せて――彼を成長させているように感じる。

 

 何故、マサムネさんを成長させる必要があるのか。

 何故、そんなまどろっこしい手を使わざるを得ないのか。

 

 現在持っている情報では、全ては分からない。

 しかし、彼から話を聞くことは出来る。

 彼は私たちに話していない情報を持っている。

 隠すのが下手な彼が、隠している情報。それを聞くしか道はない気がする。

 

 私はイサビリを下がらせる。

 そうして、一人になった自室で息を吐く。

 机の上には写真が飾られていて、その写真には軍服を着こなす壮年の男性がいた。

 

「……お父様。私は、良い軍人になれるでしょうか」

 

 写真の中の父は答えない。

 しかし、その笑みがまるで私を元気づけているようで。

 私は笑みを浮かべながら受話器を取ってある場所に連絡を繋いだ。

 

「……公国空軍第08大隊、アリア・マクラ-ゲン中佐です。陸軍省軍務局長のレグルス・アンバー少将に繋いでください」

《少々お待ちを》

 

 父とは旧知の仲のアンバー少将。

 こんな時であろうとも、やはり緊張はしてしまう。

 私は薄く笑みを浮かべながら、少将はどういう対応をしてくるのかを考えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。