聖杯さんが囁いてくる   作:エヴォルヴ

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実はですね、明日花君はこの物語が終わった後についても内定が決まってます。具体的には大規模な聖杯探索に放り込まれる予定です。頑張ろうね明日花君。聖杯さんも一緒に来てくれるし大丈夫だよ。天使だろうが悪魔だろうが原罪全部ぶち込んでぶっ殺す感じで頑張ろうね。皆を助けてハッピーエンドを迎えて帰ろうね。うん、本当に大丈夫。具体的にはヒートライザ、コンセントレイト、ランダマイザ、チャージがオートで発動しているくらい大丈夫。毎ターン発動してる感じだから大丈夫。


ちなみにサマエルを召喚する時と魔弾の射手を召喚する時の仮面は見た目が違います。サマエル召喚時はミラー状になっていて模様が刻まれている黒い仮面、魔弾の射手召喚時は某恩讐の炎(ケツイ)に似ている仮面です。


聖杯さんが溜め息吐いてる

 雨を降らせる聖杯にも負けず、風を吹かせる聖杯にも負けず、冬の聖杯にも夏の聖杯にも負けず。そんな聖杯に私はなりたい。聖杯はありますよろしくお願いします。どこまで行っても僕は風花お姉ちゃんには勝てないわけですが聖杯はあります。聖杯です。ご飯がたくさん出てくるという聖杯ももしかしたら聖杯さんなのかもしれない、そう思うと僕の料理スキルの向上は聖杯さんのお蔭かもしれないのでやっぱり聖杯はありますよろしくお願いします。

 

 お兄ちゃんとお姉ちゃん達の体がようやく治ってということもあって、タルタロスデスマーチが開催されましたが、門番は正直あんまり強くなかった。

 

『上を見ていると、どうしてもそうなるだろうな』

 

(だよねぇ。油断したらダメだと思うけど)

 

『慢心が油断を呼ぶように、油断は慢心を生む。そうなれば────分かるな?』

 

(うん。それは嫌だ)

 

 あの時みたいなことがまた起こらないとも限らない。僕のせいで皆がいなくなるのは、嫌だ。絶対にダメなことだ。強くならなくちゃいけない。魔弾の射手についても、サマエルについても……何となくだけれど、これが僕本来のペルソナって感じがしないから。────僕のペルソナであることには変わりないんだけど、こう……これが最終形態、って感じがしないというか……うん、とにかくそういう感じ。

 

『使いこなしてみせろ』

 

(うん)

 

「聖、どうした?」

 

「なんでもない。ちょっと考え事してただけだよ。ほら、今日は満月で七夕でしょ?」

 

 ご飯何にしようかな、と考えていたのは事実だし、声をかけてきた桐条お姉ちゃんにそう言って返す。

 

「そうか。……そういえば七夕といえば天の川だな」

 

「色々お話あるよね。彦星と織姫、ヘラとヘラクレスとか」

 

「ああ。……思えば私達のペルソナはギリシャ神話やローマ神話などが多く混ざっているな」

 

 えーと、風花お姉ちゃんはルキア、汐見お姉ちゃんはオルフェウス、岳羽お姉ちゃんはイオ、伊織お兄ちゃんはヘルメス、真田お兄ちゃんはポリデュークス、桐条お姉ちゃんはペンテシレア……確かにギリシャ神話とかローマ神話が多いかも。汐見お姉ちゃん、色んなペルソナ使ってるけどメインはオルフェウスだ。

 

「聖は神話について調べたことはあるか?」

 

「あるよ。アステカ神話とか」

 

「日本ではマイナーなところだな。私も神の一柱しか知らないが……どんな話だ?」

 

「えーと……簡単に言えば世界が何度も生まれ変わるお話かなぁ」

 

 世界は何度も滅亡して、その度に生まれ変わっている────みたいなお話だったと思う。その中でも代表的な神様といえば……

 

「第一の太陽テスカトリポカ、第二の太陽ケツァルコアトル、第三の太陽トラロック、第四の太陽チャルチウトルクエ、第五の太陽トナティウ。これらが代表的な神様かなぁ。太陽が神様らしいよ」

 

「なるほど、破壊と再生の神話か。しかし、神が支配しているというのに、どうやって滅んだんだ?」

 

「一回目は巨人が支配していた世界。巨人をジャガーが喰い殺したことで世界が滅んだみたいだね」

 

 ジャガーは南米で神獣扱いされている、なんて話を小耳に挟んだ時、なんでジャガー? って思っていたけど、調べてみればテスカトリポカがジャガーに変身できるんだって。そんなテスカトリポカ、色んな権能を持っていて、当時のキリスト教宣教者の人達からは悪魔として見られたみたい。

 

 夜の空、夜の風、北の方角、大地、黒耀石、敵意、不和、支配、予言、誘惑、魔術、美、戦争や争い────これ全部テスカトリポカが司るものらしい。凄いね。

 

「ちなみにテスカトリポカは、ナワトル語で鏡を意味するtezcatlと煙ることを意味するpocaでテスカトリポカなんだって」

 

「煙る鏡────なるほど、当時の儀式に使われた鏡は黒曜石を使っていたものだったな」

 

 さすが桐条お姉ちゃん。色んなことを知ってるね。

 

「ちなみにこれは創造神話の方ね。建国神話もあるんだよ」

 

「珍しい……わけでもないか。建国神話と創造神話が別々にある神話はいくつもあるからな」

 

 マグカップに入れたコーヒーとココアを混ぜたカフェラテもどきで口の中を湿らせつつ、寮の共有スペースで時間を消費する。今日は学校が休み────というわけではないけれど、夏休みが近付いているのもあって自由登校。僕は提出物を全部出しているし、登校しなくてもいいのでこうして寮にいる。桐条お姉ちゃんは今夜の影時間のための準備をするために待機してるそうだ。6月に使えるようになったテウルギアの調整か何か……らしい。僕にはよく分からないや。

 

『お前の場合、全力でテウルギアを使えば自滅するようなものだからな』

 

(え、何それ聞いてない。こわ……)

 

『お前という器に対して、ペルソナの力が収まり切らん。サマエルならまだしも、テウルギアに対応しているのがなぜか魔弾の射手だからな』

 

(何でだろうね?)

 

『知らん。サマエルに書き換えもできるだろうが……間違いなく訝しまれるだろうな』

 

 魔弾の射手の姿が変わっていた時点でもうお察しな気がしなくもないけど…………魔弾の射手といえば……

 

(聖杯さん、僕の仮面あるでしょ? 魔弾の射手に切り替えると見た目が変わるのは聖杯さんの趣向?)

 

『さてな。だが、立場によって外面(ペルソナ)を切り替えるのが人間というものだろう?』

 

 はぐらかされた……でも言わんとしていることは理解できる。理解できるといっても何となくだけど。外出する時、学校にいる時、友達と一緒にいる時、皆全然表情が違う。これがペルソナの切り替えということなんだと思う。思うん、だけど……

 

(僕、どこにいてもそこまで変わってなくない?)

 

『自分を剥き出しにできる人間は早々いない。誇るがいい』

 

(誇っていいことなんだ、それ)

 

『意志を曲げず、超越する者こそ、神すら凌駕するのだ。ベルベットルームの案内人共もそれを期待している』

 

 つまり、聖杯さんもベルベットルームの人達も、人間が頑張って輝くところが見たいということなのかな? それがたまたま僕や汐見お姉ちゃんだった……みたいな感じ? 

 

(ということは汐見お姉ちゃんにも聖杯さんが……?)

 

『それはない』

 

(だよね)

 

『まぁ、あのワイルドもまた難儀な道を歩んでいるようではあるがな』

 

 よく分からないけど、聖杯さんがそう言うなら、汐見お姉ちゃんは大変な道を歩いているに違いない。それを支えてあげられるのは、近くにいる僕達や、ベルベットルームの人達、あとは学校や地域の人達とか……結構いるね。いいことだと思う。

 

「ところで聖、今日の夕食は決まったのか?」

 

「そうめんと野菜を豚肉で巻いたやつにするよ」

 

 そうめんだけだと力が出ないだろうし。

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 七夕の夕食を終えて聖杯さんの許可を貰ってチオビタを飲み終えた頃、影時間がやってきた。影時間が始まったのとほぼ同時に、僕達は作戦室に集合。ペルソナを召喚した風花お姉ちゃんのことを見ている。改めて見てみると、風花お姉ちゃんのペルソナ、綺麗だよね。

 

『ペルソナはその者と言ってもいい。貴様がそう思うのであれば、山岸風花はそういう人間なのだろうよ』

 

(うーん……でも盲目的で神託を待ち続けてる受け身な人ってわけでもないよ? 料理音痴ではあるけど)

 

『ムドオンカレーを作らないだけマシだろう』

 

(ねえ、だからそのムドオンカレーって何?)

 

「────見つけました! 市街地に大型シャドウの反応! 場所は……白河通り沿いのビルです!」

 

 聖杯さんと心の中で話をしていると、風花お姉ちゃんが大型シャドウの反応をキャッチして声を上げる。……やっぱり満月の日に大型シャドウが現れるのは間違いないみたい。でもどうして満月の日なのかな? 満月に何か理由があるのかな? シャドウが月に愛着があるとか? ……まさかね。

 

「白河通りか。ふむ、なるほどねぇ……」

 

「白河通り沿い……あ、ケーキとかパフェが美味しいお店あるところ?」

 

 大型シャドウの出現場所を聞いて、意味ありげに呟いた幾月理事長。僕はというと、白河通り沿いには美味しいスイーツが食べられるお店があることしか知らない。僕が入ったお店は女子会プランとかやってた。お茶会セットみたいなのが用意してもらえるらしく、口コミも悪くない。双子の男性────心は乙女らしい────が、僕が行くといつも「あら、いらっしゃい坊や」、「今日はメロンパフェがオススメよ」、「「それじゃ、ごゆっくり」」って歓迎してくれるお店。バレエでもやってたのかな、あの二人。身のこなしが軽やかなんだよね。

 

「え、聖君、あそこ行ったことあるの?」

 

「? あるよ? ケーキとかマカロンとか美味しいお店、あそこに集中してるし。あとフルーツバイキングとかやってるお店とか」

 

 ………………え? 何? 何、この雰囲気。なんだか凄く微妙な雰囲気が作戦室に漂ってるんだけど……

 

「あー……言いにくいんだがな、聖……」

 

「ホテル街だぞ、あそこ。中学生が一人で行くような場所じゃねぇって」

 

「ホテル街……?」

 

 ホテルが乱立してる区画っていうこと、なのかな? 宿泊レジャー施設みたいな……ということは、あそこで大体の娯楽全てが完結するってこと……? 遊園地レベル100みたいな場所だったのかな。そういうことだとしたら、どうして皆が僕のことを「マジかこいつ」みたいな目で見てくるのだろう? 

 

「一応聞いておくが、夜に行ったことはないだろうな?」

 

「夜に行くと目がチカチカするから行かないよ?」

 

「……聖の知識の偏りは後で矯正するとして……汐見、編成はどうする」

 

「ううん……何が起こってもおかしくないし、フルメンバーで行きたいですね」

 

 え、何? 本当に何なの? 説明を、説明を要求したいです聖杯さん。

 

『ラブホテルとは何か分かるか?』

 

(愛ホテル? 何かチェーン店にありそうだよね)

 

『…………はぁ』

 

(聖杯さん? なんで溜め息吐くのさ?)

 

『だから貴様は色欲が何なのかを理解できんのだ』

 

(????????????????????????)




久しいな御子の忍び…
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