聖杯さんが囁いてくる   作:エヴォルヴ

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サイコロを転がす→聖明日花君の出張先が決まる→当初のプロットが崩壊する→プロット破却による脳破壊を癒すためにゲームをする→こっくりさん的な遊びをする→罪と向き合い罰を受ける→心の恐怖を燃やす→体が真実を目指す→叛逆の意志が芽生える→アトラスの新作が出る→私の文章が雑になる→心と体が闘争を求める→タイタンフォールの新作が出る


聖杯さんがナビを開始する

 天田君によるそんな恩人修正してやるドロップキック事件が起きた日から少し経った日曜日でも聖杯は元気です。聖杯はありますよろしくお願いします。蜂にでも刺されたのかと勘ぐってしまうほどに腫れ上がった顔をペルソナ能力によって治療してもらった荒垣お兄ちゃんが、正式に加入した。聖です。聖は元気です聖杯が本体です本体の聖杯はありますよろしくお願いします。加入した、というよりも戻ってきたと言うべきなんだけど。ちなみに事の顛末を聞いた桐条お姉ちゃんは天を仰ぎ、真田お兄ちゃんは衆目を気にすることなく腹を抱えて笑った。笑い事ではないが、思わず笑ってしまったらしい。そんな時でも聖杯はありますよろしくお願いします。

 

 荒垣お兄ちゃんと天田君の仲がこれ以上拗れなくてよかったと思いつつ、僕はラウンジで夏紀お姉ちゃんが持ってきた天幕を借りて何度も着替えをしていた。

 

「うーん……? ヒラヒラ多くない? あとスカート短いような気がするしスースーする」

 

「でもゴスロリ系メイドだったらこんだけ盛っても良きじゃね? ……あ、でももうちょい清楚っぽい感じもアリよりのアリ?」

 

「明日花君、凄く似合ってるよ。可愛い……」

 

「そう? でもやっぱり長いスカートがいいなぁ。足見えると男の子って感じしない?」

 

((全く男の子っぽくないって言ったら怒るかな……?))

 

 文化祭が控えている────とは言ってもまだ先の話だけど────ということで、女装コンテストでどんなのを着るかを選んでいるのだ。最初は月光館学園の女子用制服を着て、ちょっとウィッグとか軽い化粧をするだけだったんだけど、興が乗った夏紀お姉ちゃんがたくさん洋服を持ってきてくれて着せ替え人形になっているわけである。……ここだけの話、結構楽しい。着替える度に風花お姉ちゃんが写真撮ってくれて、どういう歩き方をするべきかとか、どんな動きがいいかとか提案してくれるし。

 

「ところで……汐見お姉ちゃんはどうしたの?」

 

 なんか凄い挙動してるんだけど。ゲッタンってああいう動きするよね?

 

「聖君それわざと……?」

 

「? 何が?」

 

「ぐぅ……! 新しい扉が開かれそうになる……!!」

 

「扉?」

 

 僕が首を傾げたり、覗き込んだりする度にタルタロスでシャドウに攻撃された時よりも苦しそうな声を漏らす汐見お姉ちゃん。なんなんだろうね、この反応の仕方。男衆の方見てみなよ、なんか僕のこと見て笑いそうになったり混乱してるから。コロマルなんてスペースキャットならぬスペースドッグになってるよ。

 

「にしても、荒垣先輩って化粧もイケる口だったんすね」

 

「ああ……深夜に出歩いてラーメン食った後の顔色を誤魔化すのにも使えるからな」

 

「あー……桐条先輩そこら辺厳しそうですしね」

 

 多分そういうことじゃないと思うんだけど、荒垣お兄ちゃんの化粧術も中々のものだ。どこを目指しているんだろうと思うくらいには、見事な化粧をしてくれる。しかも擦らず落とせる化粧品だけでここまで綺麗に仕上げてくれるとは。

 

『それでいいのか貴様』

 

(楽しいよ?)

 

『そうか……なら私は何も言わん』

 

 さすがに外を出歩くとかはしないけど、こういうのはやってみると結構楽しい。どういう意図でこんな服になっているのか、どんな思いを込めて作られたのかとか……考えながら着てみると、なんだか楽しいのだ。

 

 今僕が着ているゴスロリ系メイド服もフリフリのレースがたくさんついているけど、色んなところにポケットが隠されていて、機能性がある。詰め込み過ぎると形が崩れてしまいそうだけど、ハンカチとか、ティッシュとか、軽い化粧品だったりをこういうポケットに入れておけるのは中々の機能美というやつじゃないだろうか。

 

「ところで伊織お兄ちゃんと真田お兄ちゃんは出ないの? 女装コンテスト」

 

「「出ない」」

 

「そうなんだ」

 

 文化祭前に出ていた女装コンテスト優勝候補のオッズ? に伊織お兄ちゃんと真田お兄ちゃんの名前が書いてあったから出るのかなって思っていたけど、出ないんだね。まぁ、出る出ないは本人の自由だし、それはいいか。

 

「皆は出し物って何になるのか決まった?」

 

「あー……それなんだけどね」

 

「今年から部活ごとになる。もちろん初等部、中等部、高等部で出し物は違うがな」

 

 ? ……あ、汐見お姉ちゃんって生徒会にも入ってたもんね。兼部するわ生徒会の仕事をするわで忙しくしてるよね、汐見お姉ちゃん。もっと休んでもいいと思うんだけど……それをしないのが汐見琴音というお姉ちゃんなのである。他校の早瀬お兄ちゃんとも知り合いみたいだし、びっくりしたよ。ちょっと前に特売日で協力してたらその話になったんだもん。

 

「だから話し合いとか無かったんだね」

 

「うん? そうか、聖は部活に所属していなかったな」

 

「そういえば先輩達もあんなに運動できるのにもったいないって言ってたわね……」

 

 運動神経の問題かな、弓道って。あれって一種の精神修行的なところもあるんだし、運動神経の問題じゃないような……あ、でも弓での狩猟って考えると運動神経の問題でもあるのかな?

 

「実際どうして部活に参加していないのですか?」

 

「うーん……あんまり興味が湧かないからかなぁ……走るならコロマルとか真田お兄ちゃんと一緒に走るだけで事足りるし……」

 

 本当に興味が湧かないから部活に所属していないって感じなのだ。部活見学とかも一通りしたけれど、これだって思えるようなものがなかった。裁縫部とかはちょっといいかもって思ったけど、べべお兄ちゃんと一緒にやってると、熱が入って着物方面に進んでいきそうで怖い。反物って高いんだよね……

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 女装コンテストの服選びや文化祭の準備が順調に進む中でも影時間は終わらない。9月5日、満月の日が今日もやってきた。作戦室の中ではルキアを召喚してシャドウを探している風花お姉ちゃんがいる。その周囲にはいつでも出撃できるように待機している特別課外活動部の皆。

 

「…………反応がない、わけじゃない。でも……?」

 

 ブツブツと呟く風花お姉ちゃんの声を聞く限り、シャドウの反応があるけどどこにいるのか分からないって感じのようだ。うーん……? あのホテル街? にいたシャドウと似たようなやつなら強い反応が一つあって、もう一つ別のものがあるって感じになりそうなんだけれど……そういうわけでもなさそうだね、これは。

 

「妙だな……反応があるのにいないだと?」

 

「はい……どういうわけか、いろんなところに反応があるんです。まるで薄い膜のように広がっているような……?」

 

「ううん……シャドウの力も多種多様だ。分裂している可能性もあるかもしれないね」

 

 あ、珍しく幾月理事長が嘘ついてない。嘘をついてないというか、分からないことを知っている風に言っても意味がないから嘘をついていないってだけな気がするけど。

 それにしても風花お姉ちゃんがシャドウを見つけることができないって、珍しいことな気がする。そもそも、これが初めてかも。それだけ隠れることに特化したシャドウだったりするのかな? だとしたら別の方向で探す必要性があるのかな?

 

「久しぶりに足を使うか? 何、影時間が終わるまでに探し出して倒せばいいんだ。楽勝だろう」

 

「アキ、それは最終手段だろうが。足を使うとしても斥候で何人かが動く程度だろうな」

 

「お二人共どうしてもう動く前提なんですか……山岸先輩が探し出すのを待った方が確実ですよ」

 

 真田お兄ちゃんと荒垣お兄ちゃんの脳筋思考にツッコミを入れる天田君。ぶっちゃけそれもアリかなって思ってはいる。探すことに関して間違いなくずば抜けた力を持っている風花お姉ちゃんが探し当てることができないってなると、人海戦術? が有効な可能性が高いから。

 

(むむむ……)

 

『………………聖、山岸風花の手を掴め』

 

(へ?)

 

 風花お姉ちゃんの手を握るって……どうしていきなりそんなことを聖杯さんが提案してくるのか分からないけれど……聖杯さんが無駄なことを提案するとは思えない。というわけで、聖杯さんの言っている通りにしてみることにした。

 

「風花お姉ちゃん、ちょっと手握るね」

 

「え?」

 

 聖杯さんの言う通り、ルキアの中でシャドウを探していた風花お姉ちゃんの手を握る。いつもと変わらない、優しくて温かい、僕が知っている風花お姉ちゃんの手。怪盗服の手袋を付けていても伝わってくる熱を感じながら、聖杯さんの声に耳を傾ける。

 

『今から言う言葉を復唱しろ。キーワードは────』

 

「キーワードは────」

 

『満月』

 

「満月」

 

『影時間』

 

「影時間」

 

 ガチ、カチリ……と何かが噛み合うような音が聞えた気がした。皆が何をしているのか分からないと言わんばかりの顔でこっちを見ているような気がするけど、それすら今の僕にはどうでもいいものになっている。

 

「『タルタロス』」

 

「サマエル……?」

 

 汐見お姉ちゃんの呟きが聞こえた。真っ黒な仮面が青い炎と共に消え、ペルソナが勝手に召喚されたのだ。多分これは僕の意志ではなく、聖杯さんによる召喚。僕の制御から離れて、誰かの意志を汲み取っているような気配がするから。

 

 現れたサマエルはルキアの周囲をグルグルと飛び回り続ける。まるで何かに導くようにも、祈りを捧げる巫女を唆す蛇のようにも見える。

 

 そんな不思議な状態から数分後。僕や風花お姉ちゃんに変化が現れるわけでもなく、作戦室に設置されたモニターの画面が真っ赤に染まり────星を宿した瞳がこちらを見た。

 

 

 

 

────ヒット。ナビゲーション開始

 

 

 

 

 その声が作戦室に響き渡った後、僕達のコンタクトレンズ型のデバイスにルキアから送られたデータが飛んでくる。内容はもちろん、大型シャドウの位置情報だ。ご丁寧にここからどう進めば最短で到着するかも表示されていた。

 

「……これは」

 

「マジか……聖、お前そんなこともできたのか!?」

 

「んん……なんか、できそうな気がしたんだ。できるかは分からなかったけど、できてよかった。でも、これ疲れるね……」

 

『アーリーアクセス版だからな。山岸風花の演算能力を借りても負担は大きい』

 

 アーリーアクセス版って何、聖杯さん。さっきのあれこれってぶっつけ本番でやったってことなの? 一か八かでやって成功しただけってこと? ……というか風花お姉ちゃんは大丈夫なの?

 

「何だかよく分からないけど……ありがとう、明日花君。お蔭で見つけられたよ」

 

 ペルソナを引っ込めた風花お姉ちゃんはちょっと疲れた顔で笑っていた。疲れているのは僕と聖杯さんがルキアを使って何かやっちゃったからなのか、それとも、ずっと集中していたからなのか。

 

「とにかく場所は分かりました! データはさっき送った通りです!」

 

 風花お姉ちゃんの言葉に皆が顔を見合わせて、頷く。大型シャドウが見つかったんだからあとは倒すだけだ。……倒して、その後どうなるのかとかは分からないけど。




多分この世界線のペルソナならこの辺りから『聖君実はラスボスか黒幕説』的なのが掲示板で出る。そしてペルソナ5でイセカイナビが出て『やっぱり黒幕じゃねぇかお前!!』って皆が騒ぐんだ。そして全員が手のひらドリルすることになるんだ。悔しいだろうが仕方がないんだ。
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