線路の上を歩くなんて体験、中々できないのではないかと思う今日この頃。棺桶になった皆様はどうお過ごしでしょうか。お過ごしもへったくれもないですね。まぁそれはそれとして聖杯です。聖杯はあります。本体は聖杯だと思うので聖杯はありますよろしくお願いします。挨拶は大事だって聖杯さんも言ってたのでこんばんは、聖です。
線路の上は結構風が強い。まぁ、海が近いせいだろうけど。初めて知った。
満月に照らされて妖しく聳え立つタルタロスを横目に線路を走っていると、目の前にドアを開けたまま停車しているモノレールが見えてきた。ううむ、あれが桐条お姉ちゃんが言っていたモノレールだろう。
『あれだ。あそこからシャドウの反応がする。乗客に被害が出ると不味い。急行してくれ』
桐条お姉ちゃんの声を聞きながら、不自然な停車をしているモノレールの前に立つ。……あれ?
「どうしてここだけドアが開いてるの?」
「……確かに」
僕達から見て手前側、最後尾の車両のドアが開いているのが凄く違和感だ。どうしてこんな駅も無い場所でどうしてドアが開いているんだ。まるでやってくる者を招いているかのような────
「行こう」
「汐見お姉ちゃん?」
「罠かもしれないけど……中にシャドウがいるなら、入らないと戦えないよ」
シャドウが罠を仕掛けるなんてことがあるのかと思いつつ、汐見お姉ちゃんの言う通りこの中にシャドウがいるのなら、僕達に与えられた選択肢は一つだけ。罠であろうがなかろうが、敵の懐に飛び込むしかないのだ。
伊織お兄ちゃんを先頭に、僕達はドアに備え付けられていた梯子を使ってモノレールの中に入っていく。モノレールの中には、象徴化して棺桶になっている一般人であろう人達がいた。いたというか、ある? でも人な訳だし、いたという表現が正しいのだろう。不気味な空間に、狭い車内。そして象徴化した棺桶が立ち並ぶ光景は、下手なホラー映画よりも怖い。
「これ、全部人……だよな?」
「これが象徴化ってやつ……? 不気味だな……」
家の外ではいっつもこんな感じで棺桶が散乱していたけど……うん、これが人だとは誰も分からないだろうなぁ。なんて思いながら象徴化した人達を眺めつつ、警戒を解かずにいると、突然開けられていたドアが勝手に閉まった。……勝手に閉まった?
「んな!?」
「ちょっ……ハメられた!?」
「桐条先輩! 閉じ込められました!?」
『何!? くっ……罠だったか……!』
むぅ……聖杯さんから教えてもらったけど、この服を着ている状態の僕は荒垣お兄ちゃん以上の怪力を得ているはずなのに、ドアが開かない。ううん……やっぱり罠だったみたい。それを冷静に判断できているのは、聖杯さんが僕の中にいるからなのか、それとも慌てている人が近くにいると冷静になれるという人間の心理に基づいたものなのか……多分六割後者で、四割前者だ。
『仕方ない……こうなれば大元を叩くしかないだろう。四人共、注意して進んでくれ』
桐条お姉ちゃんからの通信が途切れ、僕達は大型シャドウの反応があるという最前列の先頭車両へ向けて歩みを進めていく。
一つ目の車両にはシャドウはいない。二つ目も……うん、いなかった。三つ目の車両も象徴化している人がいるだけで、それ以外は代り映えのない不気味な車両の中だ。ただ、静かすぎるせいで不気味さがさらに引き出されている。四人の足音だけが空気を揺らしている。
「なんか、拍子抜けって感じだな……?」
「ううん……でも、何か嫌な感じはするよ?」
「まぁな……」
伊織お兄ちゃんが呟いた言葉にそうやって返すと、伊織お兄ちゃんも警戒自体は解いていないのか大剣を握る力を強めた────その時。
『聖、来るぞ』
「聖君、上ッ!!」
「ッ!?」
上から降ってきた炎を回避するように後ろに飛ぶと、ティアラの形で宙に浮いているシャドウが現れた。……こいつが大型シャドウ……ってわけじゃないよね? 多分こいつ自体は大型シャドウから生み出された子分のシャドウみたいなやつなんだろう。
早速攻撃しようとナイフと銃を構えるが、そのシャドウは戦う構えを見せることなく、先頭車両へ逃げるように逃げていく。
「あ、逃げた!?」
「おい逃げるんじゃねぇ!?」
「あ、ちょっと琴音!? 順平も!」
シャドウの行動に対して呆気に取られてしまった僕を置いていく形で、汐見お姉ちゃんと伊織お兄ちゃんが駆け出して行ってしまった。え、これは……まぁ、うん。呆気に取られていた僕が悪いわけだし……追いかけなくちゃ。
「ごめん岳羽お姉ちゃん! 僕も行く!」
『おい、何を考えている!?』
「桐条お姉ちゃんもごめん! でもあの二人心配だから!」
「ちょっと聖君まで!? ああ、もう!」
岳羽お姉ちゃんが文句を言いつつ追いかけてきていることを足音で確認しつつ、先に走っていった二人を追いかける。幸い、走るだけのスペースはあるし、距離もそこまで離れてはいないからすぐに追いつける距離だ。シャドウとの追いかけっこを無視して慎重に進むこともできたかもしれないけど、このモノレールに乗った時からずっと嫌な予感がしている。まるで早く進まないと間に合わなくなると言われているかのような焦燥感が気持ち悪い。
そんな気持ちの悪い焦燥感を振り切るように車両を二つばかり越えた辺りで、伊織お兄ちゃんが大剣を振りかぶり、汐見お姉ちゃんが伊織お兄ちゃんの後方から攻撃しようとしていたシャドウをペルソナで受け止めていた。……汐見お姉ちゃん、新しいペルソナ持ってる。前まで二体じゃなかったっけ? オルフェウスっていうペルソナと……ジャックフロストってペルソナ。ペルソナってポンポン増やせるものなの?
『やつがそういった素質を持っている……それだけだ』
(ふーん……トランプのジョーカーみたいだね)
『言い得て妙だな』
どんなカードにもなれて、どんな状況であってもそのカードがあれば覆せる可能性がある……そんなワイルドカードと呼ばれるジョーカーのカード。汐見お姉ちゃんはまるでワイルドカードのような力を持っているみたい。凄い、と思うと同時に、ちょっと怖いと感じる。
『怖い? なぜだ』
(だって、汐見お姉ちゃんがいれば何とかなるって思っちゃう気がして……)
凄い力を持っているのなら、今回だって汐見お姉ちゃんが何とかしてくれるだろう……そんな考えをしそうになりそうで、怖い。誰かに頼ることが悪いことってわけじゃないんだけど、過度に頼ってしまったら、その人がいなくなった時、どうすればいいのか分からなくなってしまう。これは聖杯さんにも当てはまることだ。だから、ある程度のことは聖杯さんに頼らなくてもできるようにして、話し相手になってもらう程度にしようって努力を重ねているのだ。
『なるほどな、そういう考え方もあるか』
(うん。そういう考え方をするのが僕なのです)
聖杯さんと話をしながら、汐見お姉ちゃんがペルソナで受け止めているシャドウに向かってハンドガンを発砲。3発の弾丸がシャドウに命中し、シャドウは怯んだものの、仕留めるまでには至らない。もう一発────撃ち込む前に、僕の後ろから矢が飛来してシャドウの頭っぽいところに命中して消滅した。
「これで……ホームラン!」
伊織お兄ちゃんは逃げたティアラっぽいシャドウを袈裟掛けに斬りつけてから上段から叩き付け、野球のバッターのように大剣をフルスイングしてシャドウを消滅させた。本当に伊織お兄ちゃんは動きを束縛されないように斬り込ませたら止まらないタイプの人だよね。ペルソナはヘルメスっていう魔術師っぽいペルソナだけど、伊織お兄ちゃん自身は戦車みたい。
『二人……いや、三人共、無謀すぎるぞ! 今回は無事だったが、何かあったらどうする!』
「うっ……ごめんなさい」
「すいません……」
「本当よ……心配したんだから」
女性陣────汐見お姉ちゃんも女の子だけど────のお叱りが飛び交う中、僕の足元で小刻みな振動が起こる。
「ねぇ、桐条お姉ちゃん」
『大体リーダーの君が先走り────どうした、聖』
「モノレール、動いてる気がするんだけど」
『何!?』
桐条お姉ちゃんだけじゃなく、汐見お姉ちゃんも岳羽お姉ちゃんも伊織お兄ちゃんも気付いた時にはもう時すでに遅く、誰にでも分かるくらいはっきりとモノレールが前に向かって進み始めた。
「う、動いてる!? 影時間って機械は動かないんじゃ……!?」
『まさかシャドウが動かしているのか……!? クソッ! イレギュラーばかりだ……!!』
「ど、どうするよ!?」
「どうするも何も……進むしかない……!!」
そう言い切って、汐見お姉ちゃんが先頭車両に向かって走り出した。……あ、そっか運転室! モノレールが動いてるなら、ブレーキをかければ止まるんだし、運転室に行けばどうにかなるかもしれない!
「行こう伊織お兄ちゃん、岳羽お姉ちゃん!」
呆気に取られていた二人に声をかけて僕も走り出すが、それと同時に僕達の行く手を阻むかのように、隠れていたらしいシャドウ達がわらわらと現れる。この数のシャドウを相手にしてたら時間が足りない!!
「サマエルッ!! マハスクンダ!!」
ガリガリガリッ、と僕の中で何かが削られるような感覚を味わいながら、サマエルが覚えている技の一つであるマハスクンダを発動する。タルタロスで現れたシャドウ相手に調べてみたところ、マハスクンダは相手の動きを鈍らせるだけではなく、判断力も低下させているみたいだった。その結果動きは鈍るし、攻撃も大振りになって避けやすくなるようだ。
攻撃に繋げるための行動ではなく、突き進むための作戦は上手くいったようで、大量に現れたシャドウの動きが大きく鈍った。今の僕達に雑魚を相手取る時間は無いのだ。
「走って! 後ろは気にしないで! ポイズンミスト!!」
サマエルの口から毒々しい霧が吐き出され、シャドウ達を蝕む。タルタロスのように広い空間であれば毒になる確率が低くなったかもしれないけど、幸いなことにここは閉所。ほぼ全部のシャドウが毒に蝕まれている。毒にならなかったシャドウは────
「聖ばっかりにカッコつけさせるかよ!! 退きやがれ!!」
「ジャックフロスト! ピクシー! オルフェウス!」
切り込み隊長の伊織お兄ちゃんが蹴り飛ばしていたり、汐見お姉ちゃんがペルソナを切り替えながら吹き飛ばしている。
「聖君、これ!」
「ありがと!」
岳羽お姉ちゃんは僕にソウルドロップという精神力を回復させる不思議な飴玉?飴玉かなこれ。まぁ、とにかく精神力を回復させるものを渡してくれている。お蔭で尽きかけた精神力が一気に回復する。そうすればマハスクンダやポイズンミストをもう一度使える。
『次の車両から、大きなシャドウの反応がある! 注意してくれ!』
モノレールの先頭車両に向かう強行軍作戦を決行して数分。先頭車両に繋がる二両目の一番奥まで到達したところで、桐条お姉ちゃんの通信が入った。ああ良かった……そろそろソウルドロップとかジュースが無くなるところだったよ……無くなったら三人の分をちょっと貰わないといけないところだった。
「ここまで来るまでに聖君の負担が大きすぎた……短期決戦で行こう!」
「おうよ! 聖は後ろで休んでていいぜ! 俺達がちゃちゃっとやっつけちまうからサ!」
「順平じゃないけど、休んでて。顔色、凄く悪いわよ」
「あ、いや……これ……ペルソナ召喚の影響じゃなくて……ちょっと襟元がキツくて……」
「「「紛らわしい!!?」」」
『ふむ、キツすぎたか? あとでデザインを少し変えてみるか……』
ごめんなさい。
襟元をちょっとだけ緩めてから息を整えた僕を確認した汐見お姉ちゃんは、車両を仕切る扉に手をかけて勢いよく開ける。開かれた扉の先には、異様に長い髪の毛が車両中に張り巡らされているという異様な光景が広がっていた。よく見ると運転室の方に伸びている髪もある。その髪の毛で作られた蜘蛛の巣のような場所の中心には、体が半分白くて半分黒いという不思議な見た目をしている、女性型の怪物が鎮座していた。
「何か……凄えことになってんな?」
うん、まぁ確かに……運転室とこの部屋を仕切るガラス窓に頭を預けるようにして座っている大型シャドウの姿は、凄く異様だ。座っているのだ。あの巨体で立ち上がったら、天井にぶつかるだろうからか、床に座っているのだ。こう……両足を思い切り広げた状態で。…………あれだよね、出産する時の妊婦さんみたいな開き方してるよね。
「とにかく倒すよ! ゆかりは回復を優先! 順平はガンガン攻撃して! 聖君は攪乱に────」
「メギドラッ!!」
「────────―ッッッッ!!?」
汐見お姉ちゃんが作戦を言い切る前に忍び寄っていた髪の毛ごとメギドラで吹っ飛ばす。まぁ、それでも多少削れた程度に留まっているのは、さすが大物って感じ。
「ごめん、何か攻撃来てたから撃っちゃった」
「助かったけど、今度は先に言ってね!」
「善処します!」
文句はこの戦いが終わったらたっぷりと聞くから、今はあの大物を撃破することに集中しよう。そんな思いを込めて武器を構えると、皆も続いて武器を構える。今日までやってきた戦闘の中で一番の死闘であろう戦闘が今、幕を開けた。
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「行くぜ、ヘルメス!!」
咆哮する大型シャドウに向かっていくのはペルソナであるヘルメスを呼び出した伊織お兄ちゃん。ヘルメスが大型シャドウに激突し、怯ませたところで伊織お兄ちゃんが大剣を叩き付ける。ただ、結構硬いのか鈍い音を鳴らすだけに留まっている。
「岳羽お姉ちゃん、回復できるようにしておいてね!」
「もうしてる! お願い、イオ!!」
伊織お兄ちゃんの攻撃を耐えた大型シャドウが、伊織お兄ちゃんを無視するかのように汐見お姉ちゃんのことを標的にする。小さな吹雪が車両を支配する中、汐見お姉ちゃんの体のいたるところに霜が降りて凍傷になりかけるが、岳羽お姉ちゃんがペルソナを召喚して回復させた。
「ありがとう! ────ピクシー!!」
汐見お姉ちゃんが呼び出したペルソナの雷が大型シャドウに直撃する。雷が弱点なのか、大型シャドウは感電してしまったかのように痙攣させる。
『聖よ、この先にあるモノレールにこのモノレールが激突するまで残り二十分もないぞ』
(まだ余裕があるって考えていいのかな、それ!?)
『いや、もう猶予は少ないと考えるべきだな』
だよね、現実逃避したかっただけだから分かってるよ聖杯さん。おっと、感電から復帰したらしい大型シャドウが、うちの回復担当である岳羽お姉ちゃんを狙ってきた。しかし、それを易々と放っておくような僕でもないのだ。
「サマエル!」
『ペルソナ使いの荒い契約者だな、貴様は』
岳羽お姉ちゃんに伸びてきた髪をサマエルを召喚することで防ぐ。具体的に表現するなら、伸びてきた髪をサマエルの大きな口で捕まえて、こっちに引っ張ることで大型シャドウの体を大きく傾かせる。すると天井に頭を激突させた大型シャドウ。無理な姿勢で引っ張られたせいで思い切り頭を打ったのか、悲鳴にも聞こえる叫びをあげて頭を抑え、仰け反る。
「そのまま……締め付けろ!!」
仰け反った大型シャドウの体に巨大な蛇が絡みつく。右腕と首を締め上げるように巻き付いたサマエルに抵抗して大型シャドウが暴れるが、その程度ではサマエルの拘束から抜けることは不可能。全身が筋肉でできている蛇が巻き付いているんだ。苦しいだろう。
「──────ッッ!!」
「ぐぎっ……! まだまだああああああ……!!」
「聖君!?」
「シャドウを締め上げてんのか!? ペルソナってそんなこともできんのか……!!」
だが、苦しいのは僕も同じ。サマエルは聖杯さんだとはいえ、呼び出しているのは僕だ。だから、サマエルがダメージを受ければ僕にもダメージが行く。今のダメージは恐らく、サマエルの拘束を逃れようとして左手から放った吹雪や光の柱だろう。だが、その程度では拘束は解かないぞ……!!
「ぅぐっ……! 僕がこのまま抑えるから、一気に叩いて!!」
「待って、その前に回復……!」
「いいから! がっ……! 時間がもう無い!!」
ミシミシと骨が砕けるのではないかという力で大型シャドウの首と右腕を締め上げるサマエル。その拘束から抜け出そうとして暴れる大型シャドウ。これはほぼ根競べのようなものだ。僕の体が限界を迎えてサマエルを召喚できなくなるのが先か、大型シャドウが拘束から抜け出す前に汐見お姉ちゃん達が大型シャドウを撃破するかの。
『聖の言う通りだ! もう時間が少ない! 急いでくれ!!』
「うおおおおおおお!! さっさと倒れやがれぇええええええ!!!」
「ピクシー! ジオ!! ジオ!!」
「ッ!! このおおおお!!」
僕が大型シャドウと根競べをする中、三人がペルソナを召喚しながら大型シャドウに向かっていった。攻撃の余波が若干、サマエルにぶつかるけど、何とか耐えて大型シャドウの首を引きちぎるくらいの力を込めて締め上げ続ける。不意に、バキョッ、と何かが砕ける音が響き、くぐもった悲鳴が聞こえた。恐らく大型シャドウの右腕が砕けたのだ。だが、それで拘束を緩めるような油断はしない。
汐見お姉ちゃんが渾身の叫びと共に呼び出したペルソナが雷撃や灼熱を叩き込み、伊織お兄ちゃんがヘルメスと共に大型シャドウを滅多切りにして、岳羽お姉ちゃんがイオの風を纏わせた矢を至近距離で撃ち続ける。時間にすれば数分くらい。体の自由が利かないシャドウをほぼほぼ集団リンチの状態にして殴り続けていると、大型シャドウの体が不自然に硬直し────黒い霧に飲み込まれ、消滅した────と思ったその時。
「もがっ!!?」
消滅しかけているのを見て油断した僕が拘束を緩めたのもあったのか、ありえない速度で僕の口の中に大型シャドウだった霧が大量に流れ込んできた。
「もごごごごごごごおぉ!!?」
突然のことに誰もが動けずにいる中、その霧は僕の中に入り続け────そして全ての霧が僕の中に入ったところで、何かが見えた。
満月
ムーンライトブリッジ
金の機械人形
泣くことすらできずに呆然と立ち尽くす誰か
月が近くて高い所
満月
黒の機械人形
誰かが泣いている
誰かの叫び
満月
白い機械人形
エレベーター
よく分からない大きな翼を広げたみょうちくりんな何か
黒い、怖い何かが、こちらを見て────
『この人間を蝕むとは、いい度胸をしているな』
『たかが無意識の産物たる貴様程度が、この人間を、私を取り込めると思うなよ』
様々なものが見えた後、聖杯さんの声が聞えた気がした。……でも、それを確かめる前に意識が朦朧として、べちゃりと床に倒れ込む。
「聖!?」
「聖君!?」
「桐条先輩! 聖君が倒れました!」
『聖!? クソ! 聖を助けるためにも、まずそのモノレールを止めてくれ!』
皆が心配している声が聞える。ああ、これ……また病院送り……かも……
Q. 何が起きたの?
A.食べた。
Q.何で食べられるの?
A.暴食だから。