目が覚めたら大騒ぎだった聖杯です。おはようございます聖杯です。聖杯はあります。本体は聖杯です。本体の聖杯はあります聖杯ですよろしくお願いします。聖杯はありますお腹空きました聖です。聖杯です聖杯はありますよろしくお願いします。体のあらゆる箇所が痛みを訴えていますがそれ以上にお腹が空きました聖杯ですよろしくお願いします。
モノレールはちゃんと止まったみたいで、その後すぐに僕は病院に運ばれたみたい。魔石とか岳羽お姉ちゃんのペルソナによる回復もあったお蔭で回復が早まったようだ。まぁ、しかしそれでも起きたのは昼間な訳で。
(聖杯さん、僕、何か食べたよね?)
『そうだな。大型シャドウの力の結晶を喰らったようだ』
(大丈夫なの、それ)
『常人なら内側から膨張して肉片になるか、取り込まれてシャドウになっただろうが、貴様の中には私がいるからな。逆に取り込んでやった』
さすが聖杯さん。まさか大型シャドウが最後の抵抗? として「突撃! 私が晩御飯」してくるとは思わなかったけど、恐らく体に害はない。……ないよね?
『奴を取り込んだことで手にしたエネルギーは溜め込んでいるが、どうする?』
(どうするってどういうこと?)
『サマエルの強化にリソースを注ぎ込むか、新たなペルソナを生み出すリソースとするか……この二択が貴様には用意されている』
(ペルソナってそんな簡単に生み出せるの?)
『本来なら無理だろうな』
詳細は省くけど、とりあえず僕の中にペルソナを生み出せるくらいのリソースができているってことらしい。それだけあのシャドウが凄い力を持っていたってことなんだろうけど……
(じゃあサマエルの強化に回そう)
『いいのか?』
(うん。手札が多いことはいいことかもしれないけど……頭がこんがらがりそうで)
『ふむ……いいだろう』
聖杯さんがそう呟いた瞬間、サマエルの力が強まったような気がした。多分聖杯さんが大型シャドウを取り込んだリソースを使って、サマエルを強化したのだろう。どんな感じに強化されたのかちょっと楽しみ。
『強化したのは魔力……つまり、メギドラなどの威力を高める』
(……それ精神力大丈夫なの?)
『魔力を強化したのだ。同じ精神力の量であっても威力はけた違いとなっているはずだ』
おかしい、安定した火力じゃなくて一発一発の火力がとんでもなくなっていく……固定砲台への道が着々と舗装されている気がしてならない。それだけ聖杯さんの力は凄いんだって分かるんだけど、もうテクニカルな感じじゃなくて火力で全てを消し去る感じの構成になりそうで仕方がない。
『それと、新しい技を使えるようにした。フレイラだな』
(フレ?)
『核熱属性の単体技だ。炎上、凍結、感電の敵に対して威力が上がるぞ』
ということは……汐見お姉ちゃんのオルフェウス、ジャックフロスト、ピクシー、伊織お兄ちゃんのヘルメスの魔法で燃えたり凍ったり感電したりしたシャドウに撃てば凄く強いってこと? 後詰め要員としての役割が増えたみたいだ。
『あとは……スキルだな』
(スキル)
『名前は【歪曲の暴食】。まぁ、シャドウを撃破した際にそのシャドウから精神力を吸い取るものだな』
本来ならまだ渡すはずの無いスキルだったというそれは、今後大型シャドウだけではなく、シャドウが僕の中に入り込もうとした時対策として用意してくれたものだそうだ。ありがたいよね。
聖杯さんとぼんやり話をしつつ、ドタバタと慌ただしい病院の光景を眺めながら味の薄い病院食を食べていると、巌戸台寮のメンバーがお見舞いに来てくれたり、何か色々謝られたり、階段で躓いた子供を助けようとして階段から転げ落ちて入院したことにしたとか言われたり、二度とあんな無茶をするなと怒られたり────とにかく慌ただしいあれこれを超えた先、ちょっと眠くなってきたところで僕がいる病室に来客があった。
「あ、よかった。起きてた」
「風花お姉ちゃん! どうしてここに?」
「明日花君のお父さんとお母さんから、代わりにお見舞いに行ってきてほしいって言われたの」
果物持ってきたよ、と僕が使っているベッドの横にある小さなテーブルに果物の詰め合わせを置いた風花お姉ちゃんは、そのままリンゴを切り分けてくれた。うん、甘酸っぱい。
「子供を助けようとして階段から落ちたって聞いたけど……大丈夫?」
「うん、大丈夫だったよ。ほぼ経過観察中って感じだって」
うむむ……風花お姉ちゃんに話しても意味がないこととはいえ、嘘を吐くのは心苦しい。影時間のことは関係者にしか話ができないということは分かっているし、話したところで訳の分からないことを言っているとしか思われないだろう。
「よかった……でも、あんまり危ないことしちゃダメだよ?」
「行けると思ったんだけどね……」
「そういう思い込みが良くないんだよ」
そう言いながら、つん、と僕の頬を人差し指で突いてくる風花お姉ちゃん。僕が無茶なことをした後、よくこうして怒られてたなぁと思うと同時に、あの時風花お姉ちゃんをいじめていた男の子は、何をしたかったんだろうという疑問が浮かぶ。……まぁ、あの男の子のお蔭でこうして風花お姉ちゃんと一緒に遊びに行ったり、ご飯を食べたりしているから少しだけ感謝も────いやいじめはダメだよ感謝しないよ。
「善処します」
「もう……リンゴ食べる?」
「うん」
うん、シャクシャクと食感が素晴らしい。でもおばあちゃんのところで食べたリンゴの方が美味しく感じるのはどうしてだろう。うむむ、しかし風花お姉ちゃんが切り分けてくれているというところで美味しさが高まっている気がする。
「そういえば最近、行方不明だった人達が戻ってきたってニュース見たよ」
「ん? ああ、怖いよね。何も覚えてないんでしょ?」
「うん。何をしてたのか覚えてないって聞いたよ。でも、皆揃って、変な声が聞えたって言ってるらしいよ?」
十中八九シャドウの声なるものだろう。その声を聞いた人がタルタロスに迷い込むみたいだからね。なんでタルタロスに集まってしまうのかは分からないんだけど。
「行方不明になってた人は皆夜中にいなくなってるって聞くし、明日花君も気を付けてね?」
「風花お姉ちゃんこそ。お姉ちゃん可愛いから誘拐とかされそうだよ」
「ふふ、それ、明日花君もだよ」
「むっ、可愛い以外の表現をお願いしたいです」
「そういうところだよ」
むむむ……あ、リンゴは食べますありがとうございます美味しい。
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退院した5月13日水曜日、皆様いかがお過ごしでしょうか聖杯です。服の下は包帯だらけだけど、そこまで傷は残っていないし痛みも少ないです聖杯ですよろしくお願いします。放課後ぶらぶらとポロニアンモールを歩くのは、何度来てもワクワクします本体の聖杯はいます。聖杯ですルブランのコーヒーを飲みに行きたいですよろしくお願いします。
今日はポロニアンモールに来る予定が無かったんだけど、聖杯さんに言われてやってきた。ちょっと前から飛び回っている青い蝶の本体がこの近くにいるんだって。……こんな妖精とかとは全く縁が無さそうな場所に?
『そもそもあれらは妖精ではないぞ』
(そうなの?)
『貴様が勘違いしていただけだ。あれは妖精とは違う存在だ』
ふーん……そうなんだ。まぁ、よく分からないけど聖杯さんの知り合いみたいだし、ちょっとした手土産くらいは用意しておくべきかなと、シャガールでお茶菓子の詰め合わせを買っておいて正解だった。お菓子の詰め合わせは間違いがないよね。
「占めて100万円からスタートでございます」
「待って!? 違うよエリザベス!?」
「なるほど、ということは手を洗う場所ということですね?」
「テオドアも違うよ!!?」
……何か汐見お姉ちゃんが不思議な人達と一緒に居るように見えるけど、気のせいだと思う。うん、きっと気のせいだ。というか何だろうあの青い服。エレベーターガールとかベルボーイ的な感じの服だけど、あんな特徴的な服は見たことが無い。
『聖よ、貴様がこれから会いに行くのは、あの力を司る者の主だぞ』
(帰っていい?)
『構わんが、それはそれで面倒が起こるかもしれんぞ?』
そんなの二つに一つじゃないか。面倒なことは誰だって嫌なものだ。面倒事を回避できるというのならば、さっさと顔合わせを済ませてしまいたい。というか力を司る者って何? 神様的な何かなの? これから僕は神様のところに殴り込みに行く感じなの?
『神ではないな。まぁ、あれもまた人間の可能性を導く者達であることは間違いないだろう』
(聖杯さんと同じ人達ってこと?)
『それもまた違う。奴らの主とは……まぁ、賭け事をした仲、とでも言っておこう』
ギャンブルは良くないって言ってたような気がするけど、聖杯さんは賭け事やったことあるんだね。もしかして経験談から賭け事は良くないことって言ってたのかな?
『聖、そこを左に曲がれ』
(え? こっちには何もないはずだけど)
『いいや、ある。現に蝶が飛んでいるだろう』
(あ、本当だ)
僕の周りを飛んでいた蝶がこっちへ来いと言わんばかりに行ったり来たりを繰り返している。蝶とはホバリングをできる昆虫であっただろうか。ホバリングができるのはトンボじゃなかった? ……いや、もしかしたら蝶だってホバリングできる個体がいるのかもしれない。
そんなことを考えながら何もないはずの路地に入り、蝶と聖杯さんの導きに従っていくと、青い燐光を纏う扉があった。……明らかにこの世のものではないですよって感じだけど……
『ここが目的地だ』
「ええ……これって、入って大丈夫なやつ?」
『先に招待状を送りつけてきたのは向こうだ。問題ないだろう』
そうかな……そうかも……どうだろう……? でもここまで来て立ち去るのも何だかなぁ……このまま引き返したら、汐見お姉ちゃん達と鉢合わせになりそうな予感もするし……ううん……よし、行こう。
「お邪魔します」
ドアノブを捻り、扉を開いた先には何も見えない青い空間が広がっている。しかし聖杯さんが何も言わないということは、これが普通なのだろう。覚悟を決めて扉の先に足を踏み入れると────
「ようこそ、我がベルベットルームへ……」
何だか凄い人が迎えてくれた。燕尾服っていうんだっけ、ああいう服。とにかく品のいい服に身を包んだその人は、こう……凄い。目が血走っていて、鼻が長くて、全体的にひょろっとしているお爺さんだ。だけど、こう、老いぼれているという印象は全く感じなくて、貫禄を感じる。しかもとにかく強そうな気配もする。
そんなお爺さんの横には看守さんみたいな服を着た双子が立っているし、ちょっと離れたところには大きなピアノが鎮座していて、独りでに音楽が奏でられているピアノの傍にはちょっと変わった化粧をしたドレス姿の女性が立って歌を歌っていた。
「こ、こんにちは……あの、これつまらないものですが」
「おや、これはご丁寧に……すぐにお茶を淹れさせましょう」
お爺さんがパチン、と指を鳴らすと、凄く上品な紅茶の香りが漂い、ティーカップを乗せたトレーを持った大人の女性って感じの人が現れた。
「口に合うといいのだけれど」
「ありがとうございます?」
「あら、緊張してるのかしら?」
そりゃ、知らないところに来てお茶を出されたら緊張すると思うんだけど。……なんて言えるわけもなく。目の前に置かれたティーカップを手にして一口。……凄く美味しい。まさか、荒垣お兄ちゃんや末光お兄ちゃんに教えてもらったお店以上のクオリティ……!? なんてことだ、僕の中の紅茶の美味しさランキングがいきなり切り替わったぞ。
「さて、少し落ち着かれたご様子。話をさせていただいても?」
「あ、はい。どうぞ……あ、そうだ、僕は────」
「ああ、存じ上げておりますよ。聖明日花様でございますね?」
……なぜ僕の名前を知っているのだろうか。
「あなたのご友人から何度かお話を伺っておりますからね」
「友達?」
「ええ、汐見琴音様……エリザベスとテオドアの客人であり、このベルベットルームの客人でもある方です」
あ、汐見お姉ちゃんが僕のことを何度か話をしていたみたい。なら納得。……納得していいのかな、これ。まあ、納得していいか。
「さて、改めましてようこそ我がベルベットルームへ。私はイゴール……この部屋……夢と現実、精神と物質の狭間の場所……“ベルベットルーム”の主を致しております」
「じゃあ僕も、聖明日花です。巌戸台寮に住んでる月光館学園中等部一年です。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。そして……あなたから見て右に立っているのがマーガレット」
「よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「そして私の隣に立つこの双子がカロリーヌとジュスティーヌ」
イゴールさんの紹介の後に一歩前に出た双子。……えーと、どっちがカロリーヌでどっちがジュスティーヌなんだろう?
「あたしがカロリーヌで」
「私がジュスティーヌです」
「あ、ありがとう。右目眼帯がカロリーヌで、左目眼帯がジュスティーヌね」
性格もちょっと違うのかな。多分勝気な子がカロリーヌで、大人しそうな子がジュスティーヌ……うーん、年齢があんまり変わらない気がするんだけど、間違いなく僕よりも強い。多分あの警棒とボードで叩かれただけでノックアウトする気がする。
「それで、どうして僕はここに呼ばれたんですか?」
「普段通りの言葉遣いで結構ですよ。貴方は私達のお客様なのですから」
「え、あ、うん。じゃあ、いつも通りに話すね」
高級感のあるホテルのような、レストランのような、青い空間。ちょっと慣れてきたし、いつも通りの言葉遣いで問題ないと言われたので、その通りにする。イゴールさんは僕の様子に頷くと、大きな口を開いて言葉を紡ぎ始めた。
「ここに貴方を招いた理由、それは貴方に試練が迫っているからに他なりません」
「試練?」
「左様。その試練に挑むためのお手伝い……貴方が聖杯さんと呼ぶ者と同じように、私どももお手伝いをさせていただきます」
『貴様らが手伝いを買って出るとはな。今回の客人はあの娘だけだろうに』
……何か聖杯さんが不機嫌な感じ……どうして? というかこの声ベルベットルーム? っていうところの人達にも聞こえてるんだね。マーガレットさんとカロリーヌとジュスティーヌが何かちょっと驚いてるし。
「ベルベットルームはお客様を一人としてはいませんからな。しかし、貴方も中々酔狂なことをなさっているようだ」
『……人間の可能性。支配に抗い、自ら選択する意志。それを信じてみようと考えた。それだけだ』
「それはそれは……お互いに、何が起こるか分からないものですな」
ん? んんんん……? 何か、知り合い……なんだろうけど、因縁がありそうな感じがする……賭け事をした仲って言ってたけど、何かもっと強い因縁を感じるのは僕だけでしょうか。あ、紅茶のおかわりありがとうございます美味しいです。淹れ方教えてもらってもいいですか? ダメですかそうですか。
「それでは聖様。こちらをお持ちください」
しばらく意味ありげな会話を聖杯さんと繰り広げていたイゴールさんが取り出したそれを、ジュスティーヌが渡してくれる。これは……
「……鍵?」
「こちらをお持ちであれば、ベルベットルームへと入室が可能です」
ホテルのIDカードみたいなものってことかな。これを持っていれば、いつでもベルベットルームに訪れることができるらしい。とりあえず大事なものとして財布の中に入れておこう。何かお洒落だな、この鍵。もう少し小さかったらアクセサリーとして販売していそうなデザインだ。
「それと……貴方に待ち受ける試練のため、私どもがお手伝いさせていただくにあたり、一つ依頼を受けていただけますかな?」
「依頼?」
「左様。依頼を受けていただけるのであれば、私どもから報酬を支払わさせていただきます。こちらもまた、貴方の役に立つかと」
依頼……この人達からの依頼って、何をすることになるんだろう? 多分金銭的なものではないと思うんだけど……何をさせられるのかな。
「難しいことはありません。ただ、私達と戦ったり」
「タルタロスに現れるシャドウの討伐や、私達が指定した品物を納品してもらう!」
「……戦うの?」
「はい」
「君達と?」
「そうだが?」
「僕死なない? 大丈夫?」
「いきなり弱気だな貴様」
だって強そうじゃん。今の僕が戦って生きていられる確証が持てないくらいには、実力差があると思うんだけど。
「もちろん、最初から本気で戦うわけじゃないわ。少しずつ段階を踏んで戦ってもらうつもりよ」
「ううん……」
どうしよう。聖杯さんは黙り込んでいる……ということは、誰の意志でもなく、僕が決めなくちゃいけないことなんだろう。ペルソナの契約の時は僕がちょっと日和ったせいで聖杯さんが背中を押してくれたけど、聖杯さんは僕だけで決めないといけないことがある時、何を聞いても口を開かない。この先、僕が進む道がここで決まる…………きっと試練というのは、嫌でもやってくる。その時がいつになるのかは分からないけど……それがもし、僕以外の人達を巻き込んでしまうかもしれないなら……皆が傷付くかもしれない。なら、答えは決まっている。
「お願いします!」
「契約成立、ですな」
「何か聞こえた!?」
『気のせいだろう』
「気のせいでしょうな」
「気のせいよ」
「気のせいだ」
「気のせいでしょう」
「いや聞こえた! 聞こえたよ!? 絶対何か聞こえたって!」
「ごちゃごちゃと些事を気にするんじゃない!」
絶対些事じゃないよ!?
ベルベットルーム(聖明日花)
厨房が見える高級感のあるレストラン。多分夜にはバーとかやってる。独りでに音を奏でるグランドピアノとその伴奏に合わせて歌っている人がいる。
住人勢揃い。今回不在だったがエリザベスとテオドアもいる。
現在受注可能な依頼
・裏メニューが食べたい。
・フェロモンコーヒーを飲んでみたい。
・シャドウハントのススメ
・トレジャーハントのススメ
・骨董品を見てみたい