時行の前には宙に浮いているパイカルがいた。月明かりに照らされ影が怪しく揺らめく。パイカルが時行に指を向け炎を放出した。
(来た!)
時行は咄嗟に避ける。炎が草原を焼く。その光景は故郷の鎌倉が足利尊氏に滅ぼされた時を彷彿とさせる。それでも時行は足を止めず弓矢を構えた。
「私は…あの時の私ではない。」
時行はそう自分に言い聞かせる。パイカルを向かって矢を射る。パイカルは炎で矢を焼き尽くす。時行はそれでも攻撃を止めない。矢を放ち挑発する。
「無駄だ。」
パイカルはテレポーテーションで時行の前に移動すると再び炎を放った。滑りながら避けパイカルの股下を抜けた。
「こっちです!」
「小癪な。」
パイカルは再び浮く。時行はパイカルを観察しながら逃げる。パイカルは炎を放出させ時行を追いかけた。
一方、ルパン達は暗い場所にいた。ヘルメットに着けたライトが照らす範囲しか見えない。そんな場所でルパン達は作業していた。
「おいルパン。これで大丈夫なのかよ?」
「今は腕を動かせ。」
「ルパ〜ン。もう疲れたわ。」
「そんなこと言わないでよふ〜じこちゃ〜ん!」
ルパンはツルハシを杖のようにして一休みする。
「作戦は分かったが時行とのタイミングが重要だぞ。」
「分かってる。これは逃げ上手と言われた時行にしか出来ない芸当だ。」
ルパンは休憩を終わらせて再びツルハシを振るう。それに合わせて次元達も作業を再開させた。
「頼んだぞ時行。」
その時行はパイカルから逃げ続けていた。パイカルは炎の他に岩石などを浮かせて攻撃する。それを時行は華麗に躱している。その顔はまさに南北朝時代に戦場を駆け抜けた頃の顔だった。
「楽しいです!」
「なんだ?」
パイカルは時行を理解出来ておらず首を傾げる。テレポーテーションで時行の真上に移動するも時行はパイカルの後ろへと逃げる。
「お〜にさ〜ん、こ〜ち〜ら〜、手〜の鳴〜るほ〜うへ〜。」
「何がしたい?」
パイカルはだんだんイライラしてきた。時行の生け捕りを諦め攻撃を激しくさせた。時行はパイカルの動きが変わったことを察し険しい表情になる。
「死ねぇ!」
(来た!)
パイカルが炎を放射する。その威力はさっきまでとは全然違っていた。時行はさっきよりも大きく避ける。パイカルは時行を追って草原を焼き尽くす。
「これ以上は…」
時行は草原での被害を抑えるため街の方へと逃げた。市民に被害がこないように人がいない方を選んで逃げる。パイカルは空中を浮遊しながら時行を追いかける。
「どこへ逃げても無駄だ。」
裏路地へ逃げる時行を追いかける。曲がった瞬間、待ち構えていた時行が矢を放った。矢はパイカルに肩に命中するも刺さることなく落ちた。
「あれがルパンさんが言っていた超…超…硬くなる薬。」
名前が思い出せない時行。パイカルは炎を放って攻撃した。時行ほ逃げるも狭い路地ではすぐに炎が迫ってくる。路地裏が炎で焼かれる。
「他愛もない。」
パイカルはルパンを捜そうとする。その時、時行がパイカルに乗りかかった。
「なに!?」
「多少の煙に気を付ければ上に逃げることは可能です!」
時行は炎が迫る瞬間、パルクールの要領で壁を登り回避していたのだ。パイカルは炎を出そうと指を向ける。
「いくら炎に強くても煙を吸うのは危険じゃないですか?」
パイカルの動きが止まる。
「あなたの瞬間移動というのは触れてるものならなんでも一緒に移動してしまうようですね。」
「だからどうした?」
パイカルは炎の中へとテレポーテーションする。時行は炎が迫る前にパイカルから離れた。パイカルは再び時行の上へと移動する。
「確かに炎から出る煙は危険だがお前は炎そのものが危険だろう。」
裏路地から逃げる時行にパイカルは近くの店に置いてあったイスやテーブルを浮かせ飛ばしてきた。時行はイスやテーブルを避ける。今度は車を浮かせてきた。
「あ、あの…それはさすがに…」
さすがの時行も冷や汗が出る。パイカルは車を時行目掛けて飛ばした。時行は慌てて逃げる。地面に激突した車は爆発を起こし燃えた。
「このままだと…」
『時行!聞こえるか!?』
イヤホンからルパンの声が聞こえた。
「はい!聞こえます!」
『こっちの準備は出来た。これより例の作戦を決行する。指定した場所に来てくれ。』
「分かりました!」
時行はパイカルの攻撃を避けながら地下鉄駅に入って行く。パイカルは警戒するも時行を追いかけた。未明の地下鉄。まだ、人は居ない。時行は改札機を飛び越える。
「ちょっと君!」
駅員が追いかけようとするも後から来たパイカルの炎に驚き逃げる。炎に反応したスプリンクラーが作動し非常ベルが鳴り響く。時行はホームから飛び降り線路上を逃げて行く。
「確か…」
時行は周りをキョロキョロしながら探している。そこにパイカルの炎が襲ってきた。時行は咄嗟に避ける。
「あ、あった!」
時行はトンネルの壁に出来た横穴を見つける。そこへ走る。パイカルも時行を追いかけ横穴へと進む。しばらく走り続ける時行。すると、突然足を止めた。
「諦めたか。」
パイカルが近付く。
「ここに逃げたのは間違いだった。俺の皮膚は太陽光に弱い。朝まで外で逃げるのが正解だったな。」
「やっ~ぱりまだ太陽光が弱点だったか。」
パイカルの動きが止まる。時行の向こうからルパンが現れた。
「ルパン!」
「まったく、しつこいんだよお前は。銭形のとっつぁんか。」
「貴様を殺して俺は再び魔術師となる!」
「止めときな。」
ルパンが手を上に挙げる。
「何の真似だ?」
「なんで態々時行がここまで逃げたと思う?」
ルパンが指袖から出したリモコンを押した瞬間、天井が爆発した。パイカルが見上げるとそこから太陽光が射し込んできた。パイカルは顔を抑え悶絶する。
「ここは時行が逃げている間に掘った穴だ。パイカル、お前はおびき出されたんだよ。」
地上では作業員の服装をした次元、五エ門、不二子がいた。
「次だ!」
コンクリートミキサー車に乗っていた次元が穴にコンクリートを流し込む。ルパンはさらにパイカルの周りも爆発させ深く落とした。
「沈めてダメなら埋めてやるよパイカル。さらに、暗い地の底で眠ってな。」
時行は目を瞑ってしまう。パイカルはテレポーテーションを使う暇もなく土やコンクリートで埋められてしまった。五エ門が垂らしてくれたロープに捕まり地上に出るルパンと時行。そこは工事現場だった。
「ここは?」
「元マンション建設予定地。財政難で工事が中断されて以来そのままだったのを利用したのさ。」
ルパン達が帰ろうとする。時行は出てきた穴を見つめる。
「時行、俺達といるとこういう時もある。」
「分かっています。」
時行は両手を合わせお辞儀するとルパン達について行った。