大西洋上
そこを航行する豪華客船があった。宿泊設備はもちろん複数のレストラン及びバー、ラウンジ、プール、フィットネスクラブ、スパ、美容室、ショップ、劇場、カジノ、医務室など様々な施設がある。
そのパーティー会場にルパン達がいた。タキシードに身を包みワイン片手に会場を見回していた。目を仮面で隠しているだけの状態を時行は気になって聞いた。
「ルパンさん。素顔で大丈夫なのでしょうか?」
「このリヴァイアサンは全長666mにもなる大型豪華客船。だがその実情は盗んだ宝を海外へ密輸するための密輸船。簡単に言えば犯罪者専用船ってところだ。だから顔を見られても誰も捕まえようなんて考えることはない。」
ルパンが軽く説明してくれる。そこに仮面を着けた小太りの男性が近付いてきた。
「もしや、あなたはルパン三世ではありませんか?」
「そういうあんたは絵画専門の泥棒ルノワールだろ。」
「お目にかかれて光栄ですぞルパン三世。実は今夜開かれる闇オークションに私の1品が出展されてまして。是非、あなたに買ってもらいたい。」
ルノワールはルパンと握手する。ルパンは腕時計を見るとフラフラとどこかへ行ってしまった。
一方、リヴァイアサンには銭形警部も乗船していた。隣には八咫烏もいる。
「先輩。指名手配されている犯罪者だらけですよ。」
「だろうな。この船は盗んだ美術品などを運搬する密輸船だ。」
「こんな船があるなんて。」
周りをキョロキョロ見回し睨む八咫烏。
「ヤタ、目的を見失うな。俺達の目的はあくまでルパンだ。ルパンがこの船に乗っているという情報を確かめるために来たんだ。こいつらはその後でいい。」
銭形は冷静に周りを見回しルパンを捜す。そのルパンはルノワールが言っていたオークションが開かれる場所へと歩いている。
「ルパンさん。そろそろ目的を教えてくれませんか?」
時行が聞く。
「まだまだ秘密だ。」
時行が訝しむ。次元と五エ門を見るも2人は知っているようで時行と目を合わせない。
「次元さん?五エ門さん?」
「気にするな!ルパンの秘密主義は今に始まったことじゃない!」
「左様。気にするだけ無駄でござる。」
「怪しい。」
ルパン達が会場に着く。まだ始まってないようだ。
「オークションまであと2時間ってところか。それまで自由行動ってことで。」
「さっさと始めねぇのか?」
「オークションが開かれる前は警備が厳重。666のメンバー以外は近付くことすら不可能。」
「666?」
時行が首を傾げる。
「犯罪結社666。ヨーロッパを中心に世界中で盗みや暗殺を仕事とする裏社会の何でも屋さ。構成人数が666人と幹部がソロモン72柱のコードネームを持つこと以外全てが闇に包まれている。」
ルパンが時行に教える。別れてオークションが始まるまで暇潰しすることにする。時行はルパンと一緒に行動している。プールで水着姿になり寛ぐ2人。ルパンが宝石を太陽に翳してニヤけている。
「それって…」
「この前盗んだラピスラズリハートだ。今回はこれを使う。」
ルパンがラピスラズリハートにキスしているとプールサイドには似合わない暑苦しいコートの男を見つけた。銭形だ。ルパンは銭形を見つけると慌てて隠れた。
「あの人は…」
「銭形のとっつぁん。来ていたのか。」
ルパンは時行を連れてコソコソ逃げる。
「ルパンのことだ。この辺りで猿顔晒して寝てると思ったのだがな。」
「ルパンさん…」
「言い方はともかく当たってるぜとっつぁん。」
2人は銭形を警戒している。銭形は暑さによって吹き出る汗を拭いながら室内へと入っていった。それを見てホッと一息着いて座る時行とルパン。
「銭形のとっつぁんまで来てるとは。これは面白いことになってきたぞ。」
「なんだか不安です。」
ニヒヒと笑うルパンに対し時行は安心出来ていない。すると、ルパンは奇妙な仮面を着けた男を見つけた。時行もその男を見る。タキシード姿の紳士的な見た目だが袖と手袋の間から見えた手首に不気味なカラスのタトゥーがあった。
「ルパンさん。あの人は?」
「あいつが666の幹部でリヴァイアサンのオーナー、ラウムだ。主に盗品の売買や商談を担当している。」
ルパンがラウムがどこか行くのを見届けると彼の後を追った。時行も同行する。ラウムは掌紋認証付きの扉の奥に消えていく。
「あそこねぇ。」
「ルパンさん?」
「条件は整った。後はオークションを待つだけだ。」
ルパンはニヤリと笑っていた。
そして、オークションが始まった。出品されているのは全て盗品だ。絵画、宝石、骨董品に彫刻。どうやって盗んだのか分からない物まである。仮面を着けたバイヤー達が会場にいる。
「では、早速始めていきましょう!エントリーNo.1番!とあるドイツの美術館からやって来た…」
「あれも盗まれた物なのですよね?」
「そうだ。」
会場の後ろの席で落札される盗品を見て険しい顔になる時行。次々と落札されていく盗品。盛り上がっていくオークション会場。そこだと判断したルパンはだんだんと階段を下りていく。周りの客達もルパンを見てヒソヒソと会話している。
「おや?あなたは…」
司会者が気付くとルパンは仮面を取った。それを見て会場は大騒ぎだ。
「ルパン三世!」
「ルパン三世だ。」
「おぉ!あの有名なルパン三世でほありませんか!」
「なぁ、飛び入りで悪いんだけども。」
ルパンは司会者にラピスラズリハートを見せた。
「こいつ、今から競売にエントリーできるか?」
「あれは…先月盗まれたラピスラズリハート。」
「さすがルパン三世。」
ルパンの行動に会場はどよめき立つ。
「実はこれ、女に貢ごうとしたけどその女がいつの間にか他の男とできてしまってもう使うことがないんだ。」
会場が笑いに包まれる。
「も、もちろんですよMr.ルパン!」
会場が盛り上がることに気分をよくした司会者はルパンの頼みを快く承諾した。司会者がルパンからラピスラズリハートを受け取るところを別室で監視カメラの映像を通して見ている男がいる。ラウムだ。
「ルパン三世。ただクルーズに参加しただけとは思えんが…」
ルパンを怪しむラウム。そこに部下からの報告が入った。
「何…!?」
ラウムは慌てて部屋を出た。そんなこと気付かずルパンはテーブルに着く。そこに時行も来る。司会者はラピスラズリハートのオークションを始めた。ルパン三世が盗んだ宝石という箔も付いたことであなりの値打ちだ。ルパンのところにルノワールが来る。
「まさか、あなたも参加するとは。」
「よぉ、ルノワール。さっきぶりか?」
「そうですな。ところでその少年は?」
ルノワールが時行を見る。時行は咄嗟に隠れた。
「気にすんな。」
「そうですか。」
ルパンとルノワールが会話している。その時、扉が開き銭形が現れた。後ろには武装した警察官もいる。
「ルパ~ン!逮捕だぁ!」
「おっと銭形のとっつぁん。」
「この船にいる奴全員逮捕だ!」
「「「ハッ!」」」
銭形に号令で警察官達が次々と逮捕していく。ルパンと時行は騒ぎに乗じてステージの奥へと逃げる。それを追いかける銭形。
「ルパンさん。もしかして、これを狙って…」
「いや。とっつぁんが来たのは偶然だ。だけど、こっちの方が上手く進む。」
ルパンと時行は銭形から逃げながらラウムが入っていった扉の前に来た。既に斬られてバラバラになっている。2人はその奥へと進む。一番奥の部屋に着くと壁に金庫が嵌められた部屋に次元と五エ門がいた。
「遅かったなルパン。」
「待ちくたびれたぞ。」
「悪ぃ。銭形のとっつぁんから逃げてた。」
ルパンはズラリと並べられた金庫を手当たり次第に探す。そして、何か見つけたようで喜ぶルパン。そこに別の扉からラウムが現れた発砲した。
「ルパン!貴様、これが狙いだったか。」
「悪いねラウム。銭形のとっつぁんは偶然だ。」
「我ら666を敵に回して生きていられると思うなよ。」
ラウムが撃ちまくる。ルパン達は物陰に隠れながら反撃の隙を伺う。そこにラウムの部下が来る。
「ラウム様!準備が出来ました。」
「分かった。…覚えていろよルパン三世。」
ラウムは拳銃をしまい去っていく。
「ルパン!俺達もずらかった方がいいぞ!」
「よし!」
ルパン達も部金庫室を出る。リヴァイアサンは銭形が呼んだICPOや地元警察による大規模な逮捕劇が繰り広げられていた。ルパン達も警察の追手から逃げる。
「ルパン!どうする!?予め用意していたボートはもう使えないぞ!」
「分かってる!」
五エ門が警察官達の拳銃や服を切り刻み倒していく。
「また、つまらぬ物を斬ってしまった。」
「急ぎましょう五エ門さん!」
ルパン達はリヴァイアサンの後部にあるヘリポートに到着する。そこには既に銭形と警官隊がいた。
「フッフッフッ。ルパン。貴様のことだ。海がダメなら空を選ぶだろう。」
「あらら。さすがとっつぁん。」
時行は次元の後ろに隠れる。ルパンは両手を後ろに回して隠していたリモコンのボタンを押した。その瞬間、リヴァイアサンの至るところから煙幕が噴出した。
「これは?」
「本来はこれで騒ぎを起こす予定だったんだぜ。」
「何も見えんが…え~い!かかれぇ!」
煙幕がヘリポートを包む。応援の警官隊がヘリポートに突撃する。煙幕が晴れる。そこには縛られ猿轡をされたルパンとその上で高笑いしている銭形がいた。
「どうだルパン!その程度の煙幕でわしの目を欺くことなど出来ん!」
銭形が高笑いしているとICPOの上司と思われる男が来た。
「銭形君!よくやってくれた!これで150人以上を逮捕することが出来た!何よりあのルパン三世を逮捕することが出来たのはICPOとしても鼻が高い!」
「いえいえ!」
上司と握手する銭形。ルパン達を連行するためボートに乗せる。銭形達は別のボートに乗る。そこにコソコソ入る時行。銭形達を乗せたボートはそのまま発進する。
一方、ルパンは喚いていた。上司はそれを不審に思うも無視する。すると、ルパンの顔が捲れかけた。それを驚いた上司が剥がすと銭形に顔が出てきた。
「銭形君!?」
上司が叫ぶ。それとほぼ同時刻に銭形達の変装をといてルパン達が出てきた。
「やりましたねルパンさん。」
「まぁ、俺様にかかればこんなもんよ。」
ルパン達が笑う。時行はその手にある物が気になった。
「皆さん。それは何ですか?」
「こいつか?こいつは1881年に射殺されたガンマン、ビリー・ザ・キッドの死因となった弾丸だ。」
「巌流島で佐々木小次郎が捨てたとされる備前長船長光の鞘に候う。」
「そして、これがオードリー・ヘプバーンが『ティファニーで朝食を』で着用していたジバンシィドレスだ。」
各々が手に入れた物を見て満面の笑みを浮かべている。それを見て時行は唖然としていた。
「まさか、ルパンさん達…それのためにあんなところに行ったのですか?」
時行はルパン達を見て呆れていた。
一方、ラウム達は潜水艦で逃走していた。
「あの方になんて報告すれば…おのれルパン三世。この恨み。必ず晴らしてやる…」
ラウムは手袋を脱ぎ不気味なカラスのタトゥーを見てルパンへの復讐を誓っていた。