ある日、1人の男がアパートの1室に入ろうとした。顎髭を生やし、紺系のダークスーツとボルサリーノ製のソフト帽を目が隠れるぐらい深く被った男。男はメモを見て部屋の前に止まると扉を開けた。
「あ、こんにちは!」
そこに時行がいた。時行が挨拶するも男は目を丸くして扉を閉めた。もう一度メモを確認する。
「ここで合ってるよな?」
男がまた扉を開ける。そこにはルパンがいた。
「お〜!次元!来たか!」
次元大介。ルパン三世の相棒であり凄腕のガンマンでもある。次元はさっきのは見間違いだと自分に言い聞かせてルパンの前に座る。そこに時行がコーヒーを出してくれた。
「どうぞ。」
「ああ…」
次元がコーヒーを飲む。そこで気付く。さっきのは見間違いじゃなかった。次元はコーヒーを吹く。時行はコーヒーを避けて下がった。次元は時行を指差しながらルパンに聞く。
「おいルパン!なんだこのガキ!?」
「こいつか?こいつは北条時行。聞いてびっくり南北朝の武将だぜ。」
「南北朝?」
次元が聞くとルパンは説明を始めた。
「足利尊氏によって鎌倉幕府が滅亡したのが1333年。それから2年後の1335年に起きた中先代の乱によって北朝と南朝に別れ南北朝時代の幕開けとなる。その中先代の乱の首謀者がこの北条時行だ。」
「なんでその首謀者がこんなところでコーヒー淹れているんだよ。」
「これも聞いてびっくり、これよこれ。」
ルパンが新聞を次元に見せる。『ルパン三世。アンドレ氏からフューチャールビーを盗む!』と大々的に載っていた。
「1986年のイギリス。ロンドンの新聞社に突如自身を2062年から来たという男が現れた。男は自身をベン•カーターと名乗った。ベンは新聞社に対して自分は以前1915年にもここに来て世界恐慌や世界大戦を予言したが誰にも信じてもらえなかったと主張。興味を持った新聞社の社長が未来で何が起きること聞いたところ2011年に日本で大地震が起きるのを皮切りに世界中で地震が多発すること。ロシアがウクライナに侵攻することなどを挙げた。」
「けっ。見事に当たってるじゃねぇか。」
「ところがこれも信憑性は薄いと結局誰も信じることはなかった。問題はその後だ。ベンは新聞社から出た直後に車に轢かれて死亡した。」
ルパンの説明に次元が笑う。
「世界の未来が見えてもてめぇの未来は見えてなかったのかよ。傑作だな。」
「その未来人ベンが持っていたのがフューチャールビーだ。テニスボールぐらいの大きさの機械にルビーが嵌め込まれている代物。どうやって使うのかすら分からんオーパーツ扱いだ。」
「それでそのオーパーツとこのガキがどういう関係なんだ?」
次元が時行の頭を叩く。
「それが大有りなんだなぁ。俺がそのフューチャールビーを盗んでる途中に突然時行に変身したんだよ。」
「未来じゃなく過去と交わったってか?」
「それがもっと複雑なようで時行は別の世界から来たらしい。」
次元はわけが分からず首を傾ける。
「この世界はいくつもある並行世界の1つであり時行は別の世界の過去から現代に蘇った偉人ということだ。つまり、もしもの世界の過去から来たってことだ。」
「全然分かりませ〜ん。」
次元がお手上げと言わんばかりに両手を上げる。今度は時行に次元のことを教える番だ。
「それでこっちが俺の相棒の次元大介。早撃ち0.3秒のプロフェッショナルでクールなガンマン。そのうえ義理堅く、頼りになる男。」
「くすぐったい説明だな。」
時行が次元を興味津々で見ている。次元は帽子を目深に被り顔を反らす。
「ということで今回は3人でお宝ゲットしちゃいましょう!」
ルパンの提案に次元が驚く。
「まさかルパン。こいつを連れて行く気か?」
「勿論!」
「こんなガキを連れて行ったところで足手まといだろ!」
「次元〜。時行は僅か10歳で中先代の乱を起こしたんだぞ。修羅場なら俺達と同じぐらいくぐってる。」
次元が信じられない顔で時行を見る。ルパンに押し切られその夜、ある屋敷に向かった。豪勢な屋敷だ。ルパンはここに予告状という物を既に出しているらしく警備員の数が凄いことになっていた。
「いっぱいいますね。」
「だからやる気が出てくるもんよ。じゃあ、俺が西から、次元と時行は東から潜入だ。」
次元はため息つきながらも時行と一緒に潜入する。誰にもバレないように言われたルートを静かに走る。
「そういや、お前は何が出来るんだ?」
「逃げることです!」
「はっ!ドロボーには必須のスキルだな。」
次元が笑う。ルパンからの合図を待つ。スマホが鳴る。それが合図らしく次元は部屋に入りパソコンを点け操作した。時行が後ろから見ていると次元がルパンに電話した。
「パスワードは…」
ルパンとの電話が終わり次元はパソコンの操作履歴を抹消して電源を消す。時行も後ろを着いて行こうとする。でも逃げるなら窓からの方がいいのではないかと思い窓に向かう。
「次元さん、窓からの方が逃げやすいですよ。」
「バカッ。窓に手をかけるな。」
次元が言うも遅く時行は窓に手をかけた。その瞬間、けたたましい警報音が屋敷中に鳴り響いた。
「窓にはセンサーが着いているんだよ!」
「すみません!」
『どうした次元!?』
「しくじった!先に逃げるから外で合流するぞ!」
『OK!』
時行と次元が部屋を出る。そこにマシンガンを装備した男達が現れた。マシンガンをこちらに向ける。それよりも早く次元がマグナムを抜き出し早撃ちでマシンガンを落としていった。硝煙を息を吹きかけて飛ばす次元に時行は拍手する。
(両さんみたい…)
「まぁ、こんなもんよ。」
2人は再び逃げる。今度は左右から狙われた。次元は左の方を全滅させるが右から撃ってきた。次元はすぐ壁に隠れる。時行は持ち前の逃げで弾丸を全て避けた。次元はそれを見て目を丸くする。
「驚いた。逃げが得意ってのはマジだったか。」
時行も壁に隠れる。久しぶりの命をかけた鬼ごっこに時行は興奮している。
「当たったら…やばかった…」
「今のお前の顔がヤバいぞ。」
次元はマグナムでマシンガンを撃ち落としていく。しかし、次から次へと相手が出て来る。これ以上は長居出来ないと別のルートを探す。中庭に出る。周りから現れた男達が2人を狙って撃ちまくる。それを2人は全て避けた。
「やるじゃねぇか!」
「ありがとうございます!」
次元は目の前にいる男達のマシンガンをマグナムで撃ち落とし突破する。時行もその後ろを追う。次元がバイクを見つけると乗っている男を倒しバイクを奪った。
「乗れ!」
「はい!」
時行が次元の後ろに乗る。次元はそのままバイクを走らせる。正面から門を破る。男達がマシンガンで撃ち続けるも2人には当たることはなかった。逃げ切ることが出来た次元は高らかに笑う。ルパンと予め示し合わせていた場所へと向かう。そこにはルパンが裸婦画を見てニヤニヤしていた。
「おいルパン。そんなもんのためにわざわざ俺を呼んだのか?」
「それだけじゃねぇよ。どうだい次元?初めて時行と組んでみて。」
ルパンが聞く。次元は時行をチラッと見る。
「泥棒としては三流…」
次元の厳しめの判定に時行はカラ笑いする。
「…が逃げ足なら俺達以上かもな。」
「さすが戦国時代を生き抜いた男。」
次元の評価にルパンは満足しているようだ。2人はクスクスと笑いだんだん大きく笑った。そこにさっきの男達が車で乗り込んできた。
「おっとバレたか。」
「おい。囲まれたぞ。」
「いつものように逃げるだけだろ。」
「ちげぇねぇ。」
ルパンはワルサー、次元はマグナムを構え男達を迎え撃つ。百発百中の早撃ちに時行は目をキラキラさせる。男の1人が時行を捕まえようとする。時行はそれをヒョイッと避ける。そこにルパンが蹴り飛ばす。
「まったく…お前といるといつもこうだ!」
「楽しいだろ!」
「そうだな!」
ルパンは車を奪い裸婦画を入れる。そこに時行が乗るも次元はまだ乗らない。
「先行ってろ。」
「大丈夫なのですか!?」
「大丈夫大丈夫。次元なら問題ないって。」
ルパンが車を走らせる。次元は1人になると煙草をふかした。
「これでも一匹狼だったんだがな。」
次元は笑っている。今の自分に不満はないようだ。
「折角だ。行くとこまで行くだけだ。」
まだまだ来る車を見て次元はマグナムに弾丸を装填させて笑った。翌日、ルパンと時行は隠れ家のアパートでテレビを見ていた。
『昨夜、バリン氏邸にルパンが侵入…』
「次元さん…」
時行が心配しているとドアが開いた。そこには次元がいた。時行は良かったと駆け寄る。
「次元さん!」
「時行。」
「はい?」
「煙草って知ってるか?」