逃げ上手の転生記 〜世界一有名な大泥棒と〜   作:虹武者

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執念のインターポール

 アメリカ•ニューヨーク

 時行がそこで買い物をしていた。ルパンに頼まれた食品を買っている。言葉は分からないがルパンが渡してくれたメモを見せるだけで買い物が終わった。

 

「全部買えましたね。」

 

 時行は食品を紙袋に入れてもらい店を出る。ルパンの隠れ家への近道にと裏路地を通る。その時、時行の前に2人組の男が現れた。言葉は分からないが持っているナイフから脅しているなと確信した。刀での殺し合いを何度も体験した時行にとっては全く怖くなかった。

 

「あの…」

「何をしておる貴様ら。」

 

 時行が退いてほしいとお願いしようとした時、後ろから男の声がした。振り返ると分厚いコートを着た中年男性がいた。男は時行の前に立ち2人を睨む。

 

「子供相手にナイフで脅しか。チンピラもここまでくると情けないな。」

 

 男はビビりながらもナイフを突き出した。それを避け背負投げで倒す。もう1人もナイフを出すが一瞬で詰め寄り掌底の一撃でノックダウンさせた。それを見た時行は感嘆している。

 

「大丈夫か?」

「あっ、はい!ありがとうございます!」

「日本人か。なんでこんなところに?」

 

 男に聞かれて時行は困った。ルパンと共に行動しているなんて言えるわけない。どうしようか悩んでいる姿を見た男は微笑んだ。

 

「何か言い辛いことがあるなら言わなくていい。」

「す、すみません。」

「いや、大丈夫だ。気を付けろよ。」

「あの!」

 

 時行の声に男が止まる。

 

「あなたは…」

「わしか?わしは銭形幸一。ICPOの警部だ。」

 

 そう言って銭形は時行に敬礼すると去って行った。その後ろ姿をかっこよく思った時行。時行は隠れ家に帰る。ルパンが次元、五エ門、不二子と一緒に何か計画していた。

 

「ただいま!」

「おかえり!」

「時行に買い物行かせてたのか。」

 

 時行がテーブルに紙袋を置く。ルパンはパンを取り出して食べる。次元がテレビを点ける。ちょうどルパンが予告状を出したことがニュースになっていた。

 

『ルパン三世が明後日、ニューヨークハイド美術館に展示されている天翼の女神像を盗むという予告状を受けてICPOからルパン捜査担当の銭形警部が…』

「え…」

 

 時行は目を丸くさせた。テレビにさっき出会った銭形が映っていたのだ。ルパンが時行に気付く。

 

「どうした?」

「この方、さっき会いましたよ。」

「マジか!?」

 

 次元が外を警戒する。今のところ誰もいない。

 

「この辺りにいたのか銭形のとっつぁん。」

「知り合い…みたいですね。」

「銭形幸一。俺達にはご存じ銭形平次の子孫。ICPO…国際刑事警察機構に所属する警視庁の敏腕警部。俺を捕まえるのを生き甲斐とする、俺の最も苦手なとっつあんだ。」

 

 ルパンが楽しそうに説明する。

 

「そんな人がいるのに予告状なんて出すのですか?」

「分かってないなぁ時行。俺はただ盗むのがすきかなわけじゃない。スリルを楽しみながら盗みたいのさ。」

 

 時行は理解出来ず首を傾げる。

 

「扉のない金庫から盗んでもちっとも面白くねぇんだ…。やっぱりとっつあんに追われてないと、一味違うんだよなぁ。これが楽しくて泥棒が辞められないのよ。」

「そんなものなのですか?」

「そんなものなのよ。」

 

 ルパン達が笑っている。時行は不思議な関係だとテレビに映る銭形を見ていた。その銭形は最新の対ルパン用金庫の状態を見ていた。

 

「これがルパンのために作った最新式金庫“ペンタゴン”だ!」

「これが…」

 

 銭形の隣にいるのは八咫烏吾郎。銭形の相棒のICPOだ。八咫烏のめの前には正五角形の金庫の設計図が映し出された。それぞれの面には扉と鍵を差す機械がある。

 

「警部。これはどんな金庫なんですか?」

「システム自体は簡単だ。わしらが持っているカードキーを差すと金庫の扉が開く。ただし、これをそれぞれ5カ所にあるロックに同時に差さないと開かない仕組みになっている。」

「5カ所?」

「そうだ。何故今まで考えなかったのか。ルパン達は4人。だったら5カ所用意すれば良かったのだ。」

 

 銭形が頷く。

 

「ペンタゴンは一辺が100mの正五角形の建物の中に一辺が25mの正五角形の金庫がある構造だ。それぞれ壁で5つに区切っているから簡単にはタイミングを合わせることは出来ないぞ。しかもペンタゴン内は電子機器が使えないよう特殊な電波を流している。これでスマホはもちろん、あらゆる通信機器が使えない。」

 

 銭形は八咫烏にペンタゴンの説明をする。ペンタゴンの中には警備員は1人もいない。ルパンの変装を防ぐためでもある。その代わりペンタゴンの外には大量の屈強な警備員達が配置されていた。

 

「ドローンやロボットを使っても無駄だ。常に動くレーザーがある。そのレーザーに触れた瞬間にペンタゴンの全ての扉にロックがかかり瞬く間に檻と化す。五エ門の斬鉄剣でも簡単には斬れないぞ。天井や壁は実際のペンタゴンに使われている素材が何層もありその厚さは500mmもあるからな。」

 

 銭形が笑う。八咫烏はモニターを見ておぉ!とガッツポーズしている。

 

「ルパンのことだ。どこかで聞いているのだろう。だが、情報ご分かった程度ではこのペンタゴンは破ることは出来んぞ!」

 

 がーハッハッハ!と笑う銭形。その声をちゃんと盗聴していたルパンが悩んでいた。

 

「面倒なシステム作っちゃったなとっつぁん。」

「どうするつもりだルパン。」

「やるに決まってるだろ。それに、さすがのとっつぁんも時行の存在までは分からないだろ。」

「これで5人の問題は解決ね。」

「残る問題はタイミングだ。」

 

 五エ門の言う通り5人揃ったところで同時にカードキーを差さないと開かない扉の問題があった。カードキーを5つ奪いペンタゴンに入りレーザーに触れないようにロックに近付き5人同時にカードキーを差さないといけないのだ。

 

「五エ門さんの斬鉄剣なら…」

「五エ門の斬鉄剣は脱出用に使う。構造を見てみたが確かに斬鉄剣じゃ斬るのに時間がかかる。特に天井の硬さは異常だ。」

 

 ルパンが盗聴で得た情報を共有させる。

 

「それでどんな作戦で行くの?」

「あっちがシンプルなシステムを使うならこっちもシンプルな方法で挑むのよ。」

「それで、どんな方法だ?」

「腕時計のタイマーを1時間に設定する。その時間がゼロになった瞬間に差す。」

 

 ルパンが全員にアナログの腕時計を渡した。

 

「もし、1秒でもズレたら作戦は失敗。俺達は捕まってしまう。」

「それって…」

「スリルあるだろ?」

 

 ルパンがニヤリと笑う。その顔を見て毎回こんな無茶なことしているんだと確信した。

 

「じゃあ、まずは合わせるところから行くか。」

 

 そうして、ルパン達は作戦決行までタイミングを合わせる練習をした。

 そして、予告当日。ルパン達はペンタゴンが見える立体駐車場の屋上にいた。時行は顔を隠すため大きめのマントを羽織っている。

 

「あれがペンタゴンね。実際に見ると壮観だわ。」

「なんかドキドキしますね。」

「楽しいだろ。」

「こんなスリルは普通の人生じゃ味わうことはないぞ。」

「時行殿は普通の人生ではなかろう。」

「ちげぇねぇ。」

 

 ルパン達は腕時計を確認する。全員同じ時間だ。予告の時間まであと数秒。

 

「行くぞ。」

 

 予告の時間になった。その瞬間、ルパンは車を走らせた。迷わず真っ直ぐ突撃する。警官隊がすぐに応戦するもルパン達は煙玉などで撹乱した。その隙に警官隊を眠らせカードキーを奪う。

 

「警部!」

「来たかルパン。作戦通り突破された風を装ってペンタゴンに入れろ!」

 

 ルパン達は難なくペンタゴンのそれぞれの入口から侵入する。入った瞬間、扉がロックされる。そんなこと気にせずルパン達は真っ直ぐ金庫の扉へと走る。

 

「おぉ〜!いっぱいあるぜ〜!」

 

 ルパンの目の前には物凄い数のレーザーがあった。その全てが動いているため鏡などで反射させることも出来ない。避けるしかないのだ。そんな中で時行は…

 

「す、凄い…」

 

 たくさんのレーザーを見て目をキラキラ輝かせていた。時行はこちらに来たレーザーを避ける。その様子を監視カメラが見ていた。

 

「どうだ!?」

『こちらA班!ルパンを確認!』

『こちらB班!次元大介を確認しました!』

『こちらC班!五エ門もペンタゴン内に入りました!』

『こちらD班!峰不二子が次々とレーザー発射口を破壊しています!』

「よし分かった。」

 

 銭形が各班からの報告を聞く。

 

『こちらE班!マントを羽織った謎の人物を発見!凄い動きでレーザーを避けています!』

「何!?」

「ルパン一味に5人目が…」

 

 八咫烏が驚いている。銭形が監視カメラを見ると時行が矢で監視カメラを破壊している映像が映った。

 

「あの体格は…子供!?」

「弓矢を使う子供?確かにルパン一味にはいないな。」

(新しく雇った?しかし、そんな急に雇って連携が出来るのか?)

 

 銭形は考えていた。幸い顔は見えていなかったので時行だとは気づいていない。その時行は楽しそうに逃げていた。腕時計を見る。時間まであと35分。しかし、レーザーの数が多くなかなか進めない。

 

「大変だったぜ。」

 

 ルパンが背伸びしていた。あの数のレーザーを全て避けきったのだ。ルパンが腕時計を確認する。時間まであと12分のところだ。

 一方の次元もマグナムでレーザーの発射口を撃ち抜き破壊する。

 

「あと8分か。思ったより時間がかかったか。」

 

 五エ門は斬鉄剣でレーザーを反射させていた。

 

「なんとか着いたでごさるな。」

 

 五エ門が腕時計を確認するとあと6分だった。不二子もなんとか避け切り扉の前まで来た。時間を確認するとあと3分だ。

 

「あとはこのカードキーを差すだけね。」

 

 残るは時行だけだ。ジャンプしたり壁を走ったり矢で発射口を破壊したりして進む。時行は楽しんでいた。少しでも当たれば終わり。時間が過ぎてしまっても終わり。その極限状態が時行を興奮させていた。

 

「楽しい!」

 

 時行が腕時計を見る。あと1分。ルパン達もカードキーを差す準備をしていた。銭形はこのままではまずいと八咫烏を連れてペンタゴンに向かう。

 

「5…」

 

 ルパンがカウントダウンを始める。

 

「4…」

 

 次元が腕時計を見ながらカードキーを差す直前まで動かす。

 

「3…」

 

 五エ門が準備する。

 

「2…」

 

 不二子が笑う。

 

「1…」

 

 銭形が周りをさらに固めるように指示する。時行がレーザーを避けジャンプしてカードキーを差す。

 

「0。」

 

 赤くなっていた表示が青くなる。その瞬間、扉が開きルパン達は合流することが出来た。ルパンは時行を見てウインクしながら親指を立てた。

 

「ナイスだったぜ時行。」

「ありがとうございます。」

「ではでは…天翼の女神像をいただきますか。」

「待てぇルパン!」

 

           令和鬼ごっこ

            鬼警部

           《銭形 幸一》

 

 ルパンが天翼の女神像を盗った瞬間、銭形がペンタゴンに入ってきた。全てのレーザーを切り全ての出入口を警官隊で固めた。

 

「まさか、5人目がいたとは。そいつの顔も見せてもらうぞ!」

「ル、ルパンさん…」

「じゃあ、用は済んだし五エ門ちゃ〜ん。」

 

 五エ門が天井を斬りまくる。ルパンは背中からロケット付きバルーンとロープを出し飛ぶ。次元達がロープに捕まる。時行もロープに捕まるが銭形が投げた手錠が時行の腕を捕らえた。

 

「え!?」

「逃がさんぞぉ!」

「警部!」

 

 八咫烏も銭形の足を掴もうとするも飛んで行ってしまう。

 

「あら〜、銭形のとっつぁんじゃないの!ここまでご苦労さん!」

「やかましい!さぁ!見せてもらうぞ!」

「悪いがそれは無しにしてくれ!」

 

 次元が手錠のロープを撃ち抜く。銭形はペンタゴンの屋根に落下した。

 

「それじゃあ、さいなら〜!」

「待てぇ!ルパン〜!」

 

 悔しそうに地団駄踏む銭形。時行はそんな銭形を見て目を輝かせていた。

 

「あの人との鬼ごっこ…楽しそうです。」

「だろ。時行も分かってきたか。」

「大変だぞ。銭形のとっつぁんから逃げるのは。」

「拙者達の天敵でござる。」

「ちょっとおっちょこちょいだけどね。」

 

 ルパン達が笑う。時行もクスクス笑う。まだ見ない世界にこんなに楽しい鬼ごっこがあるんだ。そう思いニューヨークの空を飛ぶ時行だった。

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