逃げ上手の転生記 〜世界一有名な大泥棒と〜   作:虹武者

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少年は覚悟する

 イギリス•バーミンガム

 そこにあるアパートの1室にルパン達がいた。テレビを見ながらピザを食べている。ちなみに、時行と五エ門は蕎麦を食べている。

 

「美味しいですね。」

「時行もすっかり現代に馴染んだか。」

「既にかなり馴染んでいる気が…」

 

 みんなで仲良く食事している。すると、時行が何かに気付いたのかドアを見た。小さい足音がコツンッ…コツンッと聞こえてくる。その音は次第に大きくなっていた。ルパン達も警戒してワルサーやマグナムを取り出す。

 

「気付いたか。」

「はい。」

「この足音…1人や2人ではないな。」

「不二子の足音でもねぇ。」

 

 足音の主は黒いコートに身を包んだ集団だった。ルパン達がいるアパートのドアの前に立つ。その瞬間、真ん中にいた男が手を前に出して指示した。それと同時に周りにいた男達がドアに向かってマシンガンを連射した。ドアが穴だらけになるまで撃つと男の1人がドアを蹴破り突入した。しかし、誰も居ない。

 

「い、いません!」

「探せ。」

 

 男達はドアをマシンガンで穴だらけにして部屋に突入する。そのうちの1人は脱衣所を捜していた。ドアに穴空け突入する。脱衣所には誰も居ない。そう判断した瞬間、こめかみにマグナムが突き付けられた。

 

「ノックはもう少し静かにするもんだぜ。」

 

 次元はマグナムの引鉄を引き男の頭を吹き飛ばす。その音に反応した他の男が寝室から出ようとした瞬間、クローゼットから五エ門が出て来た。男は慌てて構えるもそれより早く五エ門が男の腕ごとマシンガンを斬った。

 

「ぎゃあっ!」

「そこか。」

 

 残った男達が五エ門がいる寝室へ向かう。その時、トイレから出て来たルパンが後ろから男の胸を撃ち抜く。残った2人が振り向くと今度はキッチンから時行が出て来た。それに男達は驚く。

 

「ガキだと!?」

 

 男がマシンガンを向けるも時行は冷静にマシンガンの銃口に矢を当てて破壊した。最後のリーダーと思われる男がルパンに向けて手榴弾を投げる。

 

「あら〜!」

 

 ルパンは爆発から避けると時行と一緒に窓を突き破り川に飛び込んだ。その隙に次元と五エ門も別の窓から逃走する。残った男達は被害を確認していた。

 

「どうだ?」

「アンディとボロアは即死。ケニルは…」

 

 男がケニルを見る。腕を斬り落とされ出血が酷い状況だ。それを見た男はケニルの頭を拳銃で撃ち抜いた。

 

「ずらかるぞ。」

「はい!」

 

 残った2人はそのまま出て行った。ルパン達は次元達と合流してパソコンがある図書館に向かう。そこで襲ってきた連中を調べる。

 

「あの殺り方はマフィアだ。この辺りを根城にするマフィアなんて…ビンゴ!」

 

 ルパンが喜びながら検索結果を見せる。

 

「カローネファミリー。イギリス南部のカジノを仕切るマフィアだ。」

「カローネファミリーと言えば武闘派がほとんどいない穏健なマフィアと聞いたが?」

「そこのボスだったビルゾ•カローネが1ヶ月前に自殺したらしい。そこからカローネファミリーが変わっていった。ボスは遺書に3人の息子達のうち、俺達を殺せた奴を次のカローネファミリーのボスにするって書いてあったらしいぜ。」

 

 ルパンがビルゾの自殺が報じられた記事を見せる。

 

「ルパンさん、そのカローネって方に恨まれるようなことをしたのですか?」

「う〜ん…どうだったかなぁ?」

「ルパン。カローネと言えぁ3年前、10億相当の金塊を盗んだろ。」

「あ、そうだった。」

「バッチリ恨まれてるじゃないですか!?」

 

 時行が叫ぶ。ルパン達や周りの人達がシーと指を立てて静かにするように言ったので時行は謝って縮こまる。

 

「でも、3年経ってから今更俺達に復讐なんて…それもこの温厚なビルゾが?」

「ルパン。その前にその3人の息子を教えろ。」

「OK。…まずは長男アンドルフ•カローネ24歳。10月18日産まれ。病に伏したビルゾの代わりにカローネファミリーを取り仕切っている。実質こいつがカローネファミリーのボスみたいなところだ。」

 

 キツネ目の男の写真を出す。

 

「次が次男のゲーリック•カローネ20歳。8月27日産まれ。こいつが俺達を襲った張本人よ。カローネファミリーじゃ珍しい武闘派のリーダー。」

 

 次に見せたのは確かにさっきルパン達を襲った男達のリーダー的存在だった男だ。

 

「そして、フランシェル•カローネ18歳。12月3日産まれ。あのケンブリッジ大学を飛び級し首席で卒業した天才君。だけど気弱でいつもオドオドしている。」

「いい意味でマフィア向きじゃねぇな。」

 

 3人の息子の情報を得たルパン達は図書館を出る。いつもと雰囲気の違うルパン達に時行が聞く。

 

「ルパンさん。もしかして、今から殺しに行くのですか?」

「売られた喧嘩を買わなきゃルパンの名が廃るってもんよ。」

「なら、私は協力しません。」

 

 時行の回答に内心驚くルパン。

 

「珍しいな。」

「私は…鎌倉奪還のため多くの人の命を奪ってきました。それはいつか鎌倉を取り返すことが出来ると信じてきたからです。でも今の私に殺す理由はありません。なのでこれからは何があっても殺さないと私は心に誓いました。だから、私は絶対に人を殺しません!」

 

 時行がルパン達を真っ直ぐ見て宣言する。それを聞いたルパン達は笑い始めた。自分の覚悟を馬鹿にされていると思った時行はムッとする。

 

「時行、何当たり前のことを言ってるんだ?」

 

 しかし、次元の発言が思ってたのと違い動揺する。

 

「左様。拙者達も好き好んで人を殺したりはせん。」

「俺達が殺す時は殺しに来た相手を返り討ちにする時か…殺すと心に決めた時だけだ。」

「死は結果だ。俺達と相手との殺し合いの末に起きた結果なんだよ。」

 

 ルパン達の言葉に時行はキョトンとする。

 

「かっこいいじゃねぇか時行。」

「だが俺達の世界にいるからには簡単じゃねぇぞそれ。」

「殺し殺されの世界で殺さずは相当な覚悟がいるぞ。」

「分かっています。」

 

 時行の目を見たルパン達は微笑む。

 

「じゃあ、まずは情報収集だ。この事件、裏があるぜ。」

 

 その日の夕方、カローネの屋敷にゲーリックがいた。イライラした様子で歩いていると後ろからアンドルフが肩を叩いて声をかけた。

 

「部下を失って誰も殺せずに帰ってきたのかい?」

「嫌味を言いに来たのか兄貴?」

「いや、手を組もう。俺達2人でルパンを追い詰めるんだ。その後は早い者勝ちだ。」

 

 アンドルフが提案する。

 

「2人?フランはどうするんだ?」

「あいつは腰抜けだよ。周りは穏健派などと言ってるがマフィアになる覚悟のない役立たずさ。俺はお前の行動力を買っているんだ。俺達2人でカローネファミリーを支えようじゃないか。」

「分かった。好きにしろ。」

「これで同盟締結だ。」

 

 アンドルフが去って行く。その後ろ姿を見たゲーリックは睨みながらも笑っていた。

 

「何が同盟だ。面倒事全部俺に押し付けて自分は甘い汁だけ啜ろうってか。…丁度いい。この機に兄貴も始末しよう。罪は全部ルパンが被ってくれる。」

 

 ゲーリックが笑う。それを陰からフランシェルが聞いていた。フランシェルは書斎に入ると引き出しからベレッタを取り出す。それを悲しい目で見ている。フランシェルが出て行った後に天井裏から彼を見ていたルパンが降りてきた。書斎を探していると金庫を見つけた。4桁のパスワードが必要みたいだ。

 

「俺様にかかれば…」

 

 ルパンはチョチョイのちょいと金庫を開けた。中には手紙がある。ルパンはそれを見るとパスワードを確認した。

 

「なるほどねぇ。」

 

 ルパンはニヤリと笑うと天井裏へと逃げて行った。その夜、根城にしていた廃墟に時行達がいた。そこにルパンがやってくる。

 

「来たぜ〜。」

「やっとか。で、どうだった?」

「成果は?」

「いろいろと分かったよ。この事件の裏もな。」

「じゃあ…」

 

 次元が口を開いた直後、気配がした。それと同時に車が停まる音もした。ルパン達はすぐに壁に背中を当て外を見る。マシンガンが持ったマフィア達が次々と出て来た。その中心にアンドルフとゲーリックもいる。

 

「奴ら、ここが分かったのか。」

「あいつらにとってバーミンガムは庭みたいなもんよ。俺達の居場所なんてすぐ分かる。」

 

 ルパン達が拳銃を構える。時行も深呼吸して弓矢を構えた。

 

「いつでもいいぞ。」

 

 ルパン達が別れる。マフィア達が廃墟に入ろうとした瞬間、二階から次元が1人を撃った。それが開戦の合図となる。マフィア達が一斉に次元を狙って撃つ。次元はすぐに逃げる。次々と突入するマフィア達。

 

「殺せ!全員殺せ!」

 

 ゲーリックも拳銃を持って突入する。その後ろ姿をアンドルフはニヤリと笑いながら見ていた。

 マフィア達が別れる。階段を登ろうとしたところにルパンが一発撃ち一番前にいるマフィアを倒す。廊下を走っているマフィア達の上かろ天井を斬った五エ門が降りて来てマフィア達を斬り倒す。

 

「どこだルパン!」

 

 ゲーリックがルパンを捜して階段を登っている。すると、ゲーリックの前に時行が現れた。

 

「てめぇ、あの時ルパンと一緒にいたガキか。」

 

 ゲーリックが撃つ。時行は弾丸を避けると矢をゲーリックの拳銃に当てた。

 

「あのガキ!」

 

 逃げる時行をゲーリックが追う。時行の前にマフィア達が来る。後ろにはゲーリック達。すると、時行は部屋に入った。追いかけるマフィア。部屋に入ろうとした瞬間、時行が矢でマフィアのサングラスを吹き飛ばした。驚くマフィア。ゲーリックはそのマフィアを突き飛ばして時行を撃つ。時行は避けながら窓から飛び降りる。

 

「くそ!ルパンを捜せ!」

 

 各所で激戦が繰り広げられる。しかし、百戦練磨のルパン達ではマフィアじゃ刃が立たない。ルパンが次々とマフィアを倒していく。そこにゲーリックが現れた。

 

「見つけたぞルパン。」

「来たがゲーリック。」

「お前を殺して親父の仇討たせてもらうぞ!」

「可哀想に。」

「はぁ!?」

 

 ルパンが哀れむ。

 

「お前、利用されてるぜ。」

「アンドルフだろ。心配するな。お前を殺した後に兄貴も殺してカローネファミリーのボスに俺がなる。」

「そこからだよ。お前が騙されているのは。」

「はぁ!?」

 

 ゲーリックが拳銃を向けた瞬間、銃声がなった。ゲーリックは震え拳銃を落とし血で染まる胸を抑えた。そのまま後ろを振り向き撃った奴の名前を喋る。

 

「アン…ド…ル…」

「最後までピエロご苦労さん。」

 

 倒れるゲーリック。アンドルフは拳銃をルパンに向ける。

 

「やっぱりあんたか。ビルゾを自殺に見せかけて殺したのは。」

「そこまで分かってたのか。さすがルパン。その通りだ。親父じゃもうカローネファミリーを従わせることは不可能だ。」

「だからビルゾを殺し俺を殺せば次のボスにするという偽の遺書をでっち上げ邪魔なゲーリックを消すと共に大義名分引っ提げて俺を殺し次のボスになろうとした。」

「大正解だよルパン。」

「お前に俺な殺せるか?」

「殺せるさ。それにここで逃げられてもお前は親父殺しの罪を背負ってもらう。どうせ俺が殺した証拠はない。ファミリーは全員俺の言うことを信じるさ。」

「それがそうでもないんだよなぁ。」

 

 ルパンはそう言って封筒を出した。

 

「なんだそれは?」

「本物の遺書。」

「なんだと!?そんなものがどこに!?」

「ビルゾの書斎に隠してあった金庫の中だ。その金庫のパスワード知ってるか?1203…フランシェルの誕生日だ。」

 

 アンドルフが驚く。

 

「ビルゾはあんたに殺されると予期してたんだろうよ。だから、もしものためにこれを残した。ここには俺を殺せなんて一言も書いてないぜ。ここにはただ一言、『フランシェルよ。私の跡を継ぐのもよし。ファミリーではなくフランシェルとして生きていくのもよし。好きに生きなさい。ただし、どちらにも覚悟が必要だ。』とだけ書いてあった。」

 

 ルパンが読んだ遺書にアンドルフが震えている。

 

「そ、そんなもの…それこそが偽物だ!」

 

 アンドルフが拳銃を向ける。そこに時行が来て矢を射る。その時、銃声が鳴った。アンドルフの拳銃は時行が弾き飛ばしたため撃っていない。ルパンも撃っていない。アンドルフは胸が血で染まるのを見ると後ろを振り向いた。そこにはベレッタを持ったフランシェルがいた。

 

「父さんの…仇です。」

「お前に…そんな覚悟があったのか…」

 

 アンドルフが倒れる。

 

「いいのか?」

「もう決めました。僕は…私はカローネファミリー3代目として父親の跡を継ぎます。」

 

 フランシェルはルパンから遺書を受け取る。

 

「確かに父親の字です。父親はいつも私をあの書斎に招いてはいろんな本を読んでくれました。」

「その道は俺達と同じ蛇の道だぜ。」

「望むところです。もう覚悟は出来ています。」

 

 フランシェルが去る。

 

「そうだ。ルパンさん、今度うちから何か盗む時は一度私のところに来てください。紅茶ぐらいなら出しますよ。」

「じゃあ、お言葉に甘えていつか。」

 

 フランシェルは微笑むと生き残った部下達を連れて去って行った。その車を時行が見送る。

 

「時行、お前が殺さないことを覚悟したようにフランシェルは殺すことを覚悟したんだ。それを…」

「分かっています。」

 

 ルパンは時行の真っ直ぐな目を見ると笑った。それを次元と五エ門が見ている。

 数日後、ルパン達はいつものようにピザや蕎麦を食べている。ルパンがテレビを点ける。

 

『内部争いが勃発したカローネファミリーですが新たに3代目としてフランシェル•カローネが継ぐことが決定しました。これにより…』

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