スペイン・バルセロナ
そこに時行達はいた。ルパンや次元、五ェ門と一緒にカフェで寛いでいる。ルパンが次元に写真を見せていた。
「エヴィッチ大佐か。こいつがどうした?」
「エヴィッチ・マルコゲータ大佐。今回俺達が狙うアイロスの涙の現所有者だ。」
「現?」
「元々はアルジェリアの資産家の物だったが紛争のどさくさに紛れてエヴィッチが掠め取ったのさ。」
ルパンが時行に写真を見せる。THE軍人っていう感じの厳ついオッサンだった。
「アイロスの涙。大粒のサファイアが付いたイヤリングだ。元の所有者はマイオという資産家の婆さん。だが、アルジェリアで紛争が起きるとエヴィッチ率いるスペイン軍が武力介入。マイオは紛争に巻き込まれて死亡。その財産をゴタゴタに紛れてエヴィッチが奪っちゃったのさ。」
「エヴィッチといやぁ、用心深い男として有名だろ。」
「ああ、自宅は四方を50mの塀に囲まれ中には私兵が100人。アイロスの涙がある金庫は地下にあり指紋、声紋、光彩認証、パスワードがないと開かないときた。」
「さらに、本人は自宅に人を招かないし出歩く時も私兵か軍の部下を複数連れている。本人も強いから誘拐すら不可能。」
「どうするのですか?」
時行が聞く。すると、ルパンはチラシを見せた。
「これは?」
「闘牛のイベント告知さ。エヴィッチは大の闘牛好きで過去に闘牛で気に入った人間を自宅に招いたことがある。」
「それに出てエヴィッチに気に入られようというわけか。」
五ェ門が聞く。
「その通り。だが闘牛に出るのは俺じゃねぇ。時行だ。」
「私ですか!?」
時行が驚く。
「そうだ。既にエヴィッチには予告状を送り付けている。警戒はしているだろう。しかし、闘牛で活躍。しかもお前のような見た目のいい子供ならその警戒を解き近付くことができる。」
「そこからどうするつもりだ?」
「それは闘牛に出てからよ。」
ルパン達は闘牛場に向かう。闘牛場に着くと既に闘牛が始まっていた。かなり盛り上がってある。しかし、ルパンは闘牛じゃなく観客席を見ていた。時行達もルパンが見る方向を見るとエヴィッチがいた。周りには護衛の兵士達もいる。
「あいつがエヴィッチか。」
「やっぱり来ていた。」
ルパン達がエヴィッチを見ていと闘牛が出場者を突き飛ばした。次は俺だと観客席から降りる男達。
「どうだ時行?闘牛から逃げ切れる自信があるか?」
「楽しそう…」
「聞くまでもなかったな。」
闘牛を見て興奮している時行。ルパン達はニヤリと笑う。出場者達が次々と観客席へ逃げて行く。
「今日もつまらんゲームだ。」
エヴィッチが帰ろうとした。その時、時行が闘牛の前に降りてきた。周りがざわつく。エヴィッチが振り返る。
「子供?迷い混んだか現実を見ていないか…」
闘牛が時行に突進してくる。それを時行はジャンプして避けた。その際、体を回転させて芸術点も稼ぐ。その動きにエヴィッチは見とれた。観客達も歓声をあげる。闘牛は再び時行に突進する。それを今度は下に滑り込んで避けた。
「いいぞ!」
「やるじゃねぇか坊主!」
「さすがだな。」
「あんなもん、戦国時代に比べればお遊び同然さ。」
会場が盛り上がる。それからも時行は闘牛の突進を華麗に避けた。時には跳び箱のように、時には壁を使って大ジャンプして避けた。会場は大盛り上がりだ。
「ヌフフフ。エヴィッチも時行に見入ってらぁ。」
「大丈夫かルパン。エヴィッチに屋敷に呼ばれたからと言って問題はそこからだぞ。」
双眼鏡でエヴィッチを見て笑っているルパンに五ェ門が話しかける。
「安心しろって。そこからもちゃんと考えてある。」
ルパンが次元と五エ門に作戦を説明していると闘牛が終わった。観客達は時行に拍手喝采だ。エヴィッチも拍手していた。時行が闘牛場を出てルパンに会う。
「どうでした?」
「グッド。あれならエヴィッチもお前を誘うだろう。そこで…」
ルパンは時行にイヤホンを渡す。
「それは英語、中国語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、シュメール語の日本語翻訳が出来るイヤホンだ。」
「なんか凄いですね。」
「それでこれを歯に着ければイヤホンと連動してお前の言葉をその国の言葉に変換することが出来る。」
ルパンのとんでも発明品を受け取った時行は驚いていた。ルパン達はすぐ時行から離れた。時行が気配を感じて振り向くとエヴィッチがいた。
「見ていたよ。素晴らしい闘牛だった。あそこまで興奮したことはない。」
「あ、ありがとうございます。」
時行は会釈した。ルパンがくれた発明品はちゃんと機能しているようだ。
「君、ご両親は?」
エヴィッチが聞くとルパンが変装した男が現れた。
「私の息子です。昔から怖いもの知らずで。」
「そうなのか。君達を是非我が屋敷に招待したい。よいかな?」
「あ、ありがとうございます!」
ルパンは内心予定通りとほくそ笑んでいる。車に乗りエヴィッチの屋敷に入る。広い応接間に案内されソファに座った。時行がルパンにコソコソ話しかける。
「あの、ルパンさん?これからどうするつもりですか?」
「まずはこれを付けろ。小型カメラだ。これが撮った映像は俺ご掛けてる眼鏡に送られる。そこからイヤホンに指示を出す。まずはトイレに行きたいと言え。」
時行は深呼吸する。
「すみません。おトイレに行きたいのですが。」
「構わんよ。」
エヴィッチは私兵に時行を案内させる。時行はルパンから渡された小型カメラを胸に付けて歩いていた。すると、気になる通路があった。どうやら地下へと続く階段のようだ。ルパンはそれを見てクスッと笑う。
「どうかされました?」
「いえいえ。私の息子があなたのような有名人に声をかけられるなど思いもしませんでしたから。」
ルパンはエヴィッチと談笑する。その間もルパンはメールで時行に指示を出す。時行は私兵の目を掻い潜り地下へと続く階段を下る。厳重に鍵が掛けられているようだ。
(虹彩認証、指紋認証、声紋認証…生体認証のオンパレードだな。予想通り。)
ルパンは時行に指示を出した。しばらくして時行が戻って来た。ルパンはしばらく談笑すると時行と一緒に帰って行った。その後、エヴィッチは例の扉に行く。虹彩認証と指紋認証を済ませる。
「全ての情熱は私の物。」
声紋認証が解除された。扉が開きエヴィッチが入って行った。それからしばらくしてルパン達はエヴィッチの屋敷に潜入した。
「声紋認証もこれでバッチリ。」
ルパンは時行に扉の近くに隠しカメラを設置させていた。それで合言葉を入手した。ルパンはすぐにエヴィッチに変装する。次元と五エ門は私兵に変装する。時行は見つからないようにルパン達の後を追った。扉の前に行き全ての認証を突破した。
「さてと、アイロスの涙とご対面~。」
ルパン達が入った場所は地下闘牛場だった。ルパン達がぽかーんとしていると照明がルパン達を照らした。
「やっぱり来たかルパン。」
客席にはアイロスの涙を持ったエヴィッチがいた。次元が撃つも目の前だ弾かれた。
「防弾ガラスか。」
「ご名答。わざわざ怪しい奴を連れて捕らえるつもりだったがまさか君が子供を使うとはね。」
エヴィッチが手を挙げる。すると、闘牛場に数頭の牛が現れた。凄く興奮している様子だ。
「私は逆らう奴をここに入れて闘牛させるのが好きでね。今回は君達で楽しませてくれ。」
「いい趣味してるぜ。」
ルパン達は構えた。牛達が襲ってくる。それをルパン達は華麗に避けた。次元が何度も撃つ。エヴィッチは笑いながらも移動した。
「何か企んでいるのかな?」
「でなきゃ、こんな無駄なことしねぇよ。」
五エ門が牛の角を切る。ルパンは牛から逃げている。時行も牛から逃げることを楽しんでいる。
「時行!」
「はい!」
ルパンと五エ門の腕に乗り次元が撃ったところへとジャンプする。時行が体当たりするも少しヒビが入るだけだった。
「残念だったね。あとちょっと。あとちょっと力があれば…」
「あるだろ。その力。」
ルパンが牛を指差す。牛は時行目掛けて突進している。そして、牛もジャンプした。時行が避けると牛は防弾ガラスを突き破り客席に乗り込んだ。
「まずい!」
エヴィッチ達が逃げようとするもルパンがワイヤーでアイロスの涙を奪い取った。
「予告通りアイロスの涙はいただいたぜ!」
「待てルパン!」
エヴィッチが撃つもルパン達は牛が入って来たところから逃げた。エヴィッチが私兵に連絡しルパンを追う。そこに牛に乗ったルパン達が現れた。
「はいよー!」
「ルパン。それは馬だ。」
獰猛な牛の突進に逃げる私兵達。そのままルパン達はエヴィッチの屋敷から逃走することが出来た。時行は闘牛が気に入ったのかまたやりたいと思っていた。