The hunters story―狩人の奏でる旋律―   作:真っ黒セキセイインコ

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第二章 双子の円舞曲
プロローグ とある小さな村より


 山間にある村、『アルカ村』は小さくも人が賑わうことで有名な村である。

 数年前までは人の過疎化で寂れる一方の村だったが、最近山の一つ二つは離れたところにある村ユクモ村の影響を受け、温泉を引いたことで活気を取り戻した村であった。

 そして、そんな活気付く村の酒場にて怒気をはらんだ声は響いた。

 

「どうして駄目なんですの!?」

 

 そのクルペッコもびっくりな大声に、先程まで祝勝会と称してどんちゃん騒ぎを繰り広げていたハンター達も『何事だ』という目を騒ぎの方へ向ける。

 騒ぎの根源は一人の少女からだった。

 ストロベリーブロンドの髪をケルビテールにし、蒼い瞳をした彼女は他人に人形めいた印象を与えるであろう。

 しかし、そんな印象などとっくに吹き飛ぶくらい、彼女の瞳には疑問と怒りの炎がゆらゆらと揺れている。

 彼女が睨みつけていたのは竜人族の男性であった。

 竜人族。人間よりはるかに長く生きる種族であり、人間に沢山の英知を与える存在でもある。そして、彼は人間で言う初老という年頃ではあるが実際の年齢は、人間のそれよりさらに長いだろう。

 アルカ村の村長である彼は不承不承といった態度で白い髭を撫でながら口を開いた。

 

「さっきも言った通りじゃ。クルペッコの狩猟にお主らを行かせるわけにはいかん」

 

「だから何でそうなるんです! わたくしたちはもうロアルドロスを狩ったんですの。それがどうして駄目なのですか?」

 

 水獣ロアルドロス――――孤島や水没林に生息する水生の海竜種の大型モンスターである。

 体長はクルペッコを優に超えており、スタミナ・パワー共にクルペッコよりも格上であることは明らかだった。

 だからこそ少女はそれが納得ならなかった。なぜ同危険度とはいえ、他のモンスターを呼ぶことしか能の無い格下のモンスターのはずなのに許可されない。

 そこが彼女()の言い分だった。

 

「ほら貴方も何か言って下さい」

 

 彼女は後ろに振り向くと、自分によく似た顔立ちの少年へと弁護を求める。

 しかし、大人しそうという印象がぴったりと当てはまりそうな少年はというと、その印象通り『ええと、ううんと』と呻くばかりで弁護することは無かった。

 その様子を見てさらに少年を叱り立てる少女。

 

 そんな二人のやり取りに村長は深いため息をつく。

 

――――だから、それが駄目だと言うのに……。

 

 そんなとき、ふいに酒場の扉が開け放たれ一人の若者が駆けこんで来た。

 

「おお、どうしたハヨよ。そんなに息を切らして」

 

 ハヨと呼ばれた男は村長のもとへと駆けて行くと、手で握っていた紙を突き出す。

 

「この間のクルペッコのクエストのことです。大事な要件ですので村長にも見てもらいたくて……」

 

 それを聞いた村長が「ふむ」と受け取ろうと手を伸ばすと、それより早く少女の手が手紙をひったくった。

 そして、彼女は内容を掻い摘みながら読みあげて行く。

 

「ええとなになに、――――先日のクルペッコのクエストの件について。これを村の居着きハンターが受注し、クエストを達成。狩猟時アオアシラの乱入を受けるがこれも討伐。……別にこれぐらいなら――――」

 

 『わたくし達にもできます』そう言おうとして彼女は、言葉が止まった。

 理由は下の方に書いてあった文である。そこにはこう書いてある。

 

「――――さらに迅竜ナルガクルガ(下位個体)の謎の乱入を受けるも、これを……撃、退」

 

 それを聞いた後ろの少年や他のハンター達までもが息をのむ。林檎のような赤ら顔が一瞬にして青リンゴに。そうなるほど、ナルガクルガの名は畏怖の意味を含んでいるのだ。

 それにナルガクルガは彼女たちが狩猟したロアルドロスよりさらに強大だ。しかも、駆け出しのハンターなどでは太刀打ちなどできる訳が無いはずなのだ。

 そもそもにして、かなり強力なモンスターであり、第一級の危険なクエストぐらいでしかお目にもかかれないナルガクルガの名前が出ただけでも珍しい。

 少女は肩をわなわなと震わせながら、手紙の一番下の方へと視線を移していく。そこに記されるハンターの名をしっかりと目に焼き付け、次の行動を起こす。

 

「行きますわよ。ユクモ村へ」

 

「……へ? ちょっと待っ……」

 

 少女は驚く少年の腕をひっつかむと、言い終わらせるまでもなく、酒場から飛び出していった。

 

 

「一体何だったんだありゃあ……」

 

 閑散とした酒場の中、一人のハンターがポツリと呟いたが返す者など誰もいなかった。

 そして、唯一村長だけが手紙を眺めながら、一言だけ呟く。

 

「あの双子……、向こうで問題を起こさなければいいんじゃがなぁ……」

 

 彼の握る手紙に書いてあったハンターの名はこう書かれていた。

 ――――ユクモ村居着きハンター、アインと。

 

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