The hunters story―狩人の奏でる旋律―   作:真っ黒セキセイインコ

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第二話 彩鳥の呼び声―1

 エンとポップが村を出発したころ、とあるモンスターが渓流を闊歩していた。

 

 そのモンスターの姿は百人に聞けば、まず間違いなく百人全員が派手と答えるであろう姿で辺りが新緑に囲まれる渓流では特に浮いて見える。

 まず、とにかく目を引いたのは特徴的なクチバシだ。異常なほど大きく、ラッパのような印象が見る者に与えるであろう。

 次に目がとまるとしたら、鳥のように羽毛に覆われた姿だった。色は黄緑色で背中には薄い紫色の毛もあり、所々に羽毛と同じような色の鱗に覆われている場所もある。

 大きな翼もあり、鳥のような印象があるが翼には羽毛はなく、代わりに黄緑色の皮膜があるのみだ。

 そして、もっともこれが異質なもので、それはクチバシの下から胸にかけて赤い皮が大きく垂れ下がっているのだ。

 そう、コイツこそが件のモンスター【彩鳥――クルペッコ】だ。

 現在は、エリア6で大好物の魚を捕るために川を覗き込んでいる。

 

 

 そんなクルペッコを身を隠しながら、観察している者がいた。

 それは三度笠がトレードマークの道着と袴の装備――ユクモノ装備に身を包んだ一人の少女と、これまた同じような装備をしている一匹のアイルーである。

 黒くつややかな長い髪を、地面に付けてしまうほど身をかがめ、黒曜石を思わせる瞳で魚をとるのに夢中なクルペッコを観察する彼女の名は『アイン』。今年で十七となったばかりの若い女ハンターだ。

 一応曲がりなくも彼女はハンターであるが、何分幼さの残る顔ではそれを感じさせない。ハンターの集まる集会所で看板娘をしていてもおかしくはない容姿だ。しかし、その小さな背中にあるものが異彩を放っていた。

 それは、鈍い光を放っている巨大な剣だった。大剣と呼ばれるハンターの武器である。

 鋭さで斬るというよりその重みによって叩き斬るように作られたそれは、普通のハンターの背丈と同じぐらいの大きさになっており、力の強い男性が使うことの多い武器となっていた。

 つまりそれは、小柄な少女であるアインより頭一つ分ぐらい大きく、はっきり言って、この少女が本当に扱えるのかとても心配になるほどなのだ。

 ただ、狩猟に持ってくるということは扱えるということであり、曲がりなくもアインはこれで、下位ではあるがモンスターを狩ってきた。

 

「あれがクルペッコ……、ドスジャギィなんかよりずっと大きい」

 

 クルペッコの体長は大体10Mかそこそこで、大型のモンスターとしては小さいほうだ。

 しかし、それでも経験の浅いアインたちにとっては、大きな獲物なのである。

 

「大丈夫だにゃ、旦にゃさん。ボクたちなら狩れるはずだにゃ」

 

 となりのアイルー――――トトがアインを諭すように話しかける。

 アインは静かに息を吐くと、小さな声でトトに話しかけた。

 

「ありがとう。それじゃあ、さっきの打ち合わせ通りに」

 

「了解にゃ」

 

 「1」、「2の」、「3!」それを合図にアインとトトは駆けていく。

 アインはまず、ピンク色のたまをクルペッコに向かって投げつける。当たった瞬間、クルペッコの極彩色の羽にピンク色のペイントが付き、辺りに独特な匂いが漂いだしていく。

 これはペイントボールといってモンスターが移動してしまっても、暫くの間はどこにいるかを特定でき、狩りの必需品の一つである。

 

(――――ペイント成功っ)

 

 クルペッコはアイン達の存在に気付き、威嚇の鳴き声を上げる。

 何かが来た。まるでそう言っているかのようだ。

 程なくしてアインを外敵と認識したクルペッコは突進を開始した。

 小さいとは言っても当たったら、大怪我は免れない。しかし、これをアインは難なく避けると、クルペッコの背に大剣――――【荒くれの大剣】を振り下ろす。

 しかしこの程度ではダメージはそこまで無い。アインが後ろにいると知覚した。クルペッコはそのまま尻尾を回転させる。

 クルペッコの尻尾が横からアインめがけて向かってくきた。単調な突進はよけれても、今度は避けきれない。

 咄嗟に大剣の腹を構えたが、それでもガリガリッという耳障りななるだけ、当たったらどうなるかなの想像も容易い。

 

(でも、動きはそこまで速くない……これならいける!)

 

 さらに追撃しようとアインは肉薄したところで、クルペッコはバックジャンプをするように飛びあがった。風圧をモロにくらったアインは体勢を崩し、そこにすかさずクルペッコは口から粘液玉を3方向に吐き出す。

 この粘液は腐食作用があり、その上かかったものを燃えやすくする性質があるのだ。狡猾と言われるだけのことはある。

 それをまともに当たってしまったアインはひどく不快な顔をした。体中にベタベタする粘液が付き、髪までベタベタになってしまっている。

 それを見たクルペッコは嬉しそうに遠くで踊り、こっちらを小馬鹿にでもしているかのようだ。

 ベタベタした不快な感触と、クルペッコの腹が立つ行動に、アインは顔をしかめながら追いかけようとすると、クルペッコは急に喉元の袋を膨らませ大声で鳴き出した。

 

 

――――ウォーゥ! ウォゥッ、ウォゥッ、ウォゥッ、ウォゥッ、ウォーゥッ!

 

 

 どこかで聞いたことのある声だ。アインがそう考えていると、洞窟の方からジャギィが三匹現れる。

 その行動がなんだったのか、すぐに答えが出た。

 

「まさか、これが声マネ!?」

 

 気づいたときには遅い。クルペッコは、追い討ちとばかりにまた鳴きはじめる。

 今度は狩場での厄介者の鳴き声だ。

 

――――ニャオ―ン! ニャオ―ン! ニャオ―ン! ニャオ―ン!

 

 手をポーチに伸ばした時にはもう遅かった。厄介な黒猫メラルーが5匹も現れる。

 クルペッコは上機嫌でダンスをしている。どう見てもチャンスだったが、アイン達それどころでは無い。ジャギィが連携を組んで襲いかかり、油断しているとメラルーが来てにゃんにゃん棒で殴ってくる。

 メラルーの攻撃はそこまで痛くはない。しかし彼らからの攻撃を受ければ、その隙をついてアイテムポーチから道具を盗まれてしまうのだ。

 道具はハンターにとっての必需品ばかりで、それを取られるということは非常に危険なことなのである。

 

 不意に三匹のメラルーの攻撃がアインへと当たる。盗まれたのは他のモンスターを呼ばれたら使おうとしていたこやし玉と辺りに高音を撒き散らす音爆弾だ。

 どちらもクルペッコの狩猟では重要な道具であり、それを盗まれのは痛手でしかない。

 とにかくこれじゃ埒が明かないとアインは円筒形の物体を取り出し放り投げた。すぐにアインとトトは目を閉じると、次の瞬間、辺りに真っ白な閃光が迸る。

 

 アインが投げたのは閃光玉というモンスターの目を眩ませるための物で、それをくらったモンスターはしばらくの間、動きが鈍くなる。

 それをモロにくらったジャギィ、メラルー、クルペッコも例外なくフラフラと動けなくなっており、アインはこのチャンスを逃すことなくジャギィを狩りメラルーを無力化していく。

 これにより、エリア6にいるのはクルペッコとアイン達のみとなった。

 そして、アインがまだ目が眩んで動けないクルペッコに攻撃をしようと近づくと、クルペッコはまた体を横に回転しはじめ、アインを近寄らせない。

 止まったところを狙い攻撃すると今度は翼の翼爪部分の黒い石にぶつかってしまった。どうやら翼爪はかなりの硬度のようだ。

 それでアインは体勢を崩してしまい、その間にクルペッコの視野は治り遠くへ離れていく。

 そして、離れた先でクルペッコの様子が変貌した。

 鼻から白い吐息が漏れ始め、ギュワワァーと小さな咆哮を上げこちらを睨みはじめたのである。

 どうやら完璧にアインを外敵と判断したらしく、排除しようと躍起になってきているようだ。

 こうなったモンスターは非常に厄介だ。なんせ生物にある体を壊さないためのリミッターを外し、尋常ではない力を振るうようになる。一撃でも当たったらシャレにもならない。

 アイン達が様子をうかがっているとクルペッコはおもいきり喉を膨らませ、身体をぴんと伸ばし、片足立ちで右から左へ、左から右へと鳴きはじめた。

 声マネだと気付いて、ポーチに手を伸ばしたところで舌打ちする。

 音爆弾は先ほどメラルーに盗られてしまっていたからだ。もう止めるには攻撃して止めるしかないのだがここからは遠すぎた。

 

 

――グルルォォー! グルルォォォォォオォォォォゥ!

 

 

 やがて声は周りの森へ広がっていき、どこからか木の枝を踏みしめる音が聞こえ、獣の嫌な匂いが近づいてくる。

 

 そしてアイン達の目の前に青い巨体が姿を現した。

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