ネットミーム・アーカイブ   作:一酒の過ち

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いやまぁ、なにがとは言わないけど


14.ユズもウイも甲乙つけがたいよね

『―――諸君は、情報収集と言えば何処だと思う?』

 

「やっぱりネットだろ。情報の母数がちげぇからな。」

 

『確かに、現代ではそれが一番だろうね。でも、今から探そうとしてるのは公にはできない情報も混じってるわけだ。惜しいね、ワトソン君。』

 

「・・・今日は何時にもまして調子に乗ってやがんな。」

 

へへ、照れるわい。

 

「褒めてねえけどな。」

 

 

 

「やはり酒場ではないですか?王女もよく言っていますし。」

 

『良いねぇ、ケイちゃん。いい具合に毒されてるよ。』

 

しれっと混ざっている彼女はミレニアムにいたケイちゃんだ。

どうせ暇そうだから調べものを手伝ってもらおうという魂胆だ。

こういう時に身体を持たない電子生命体は便利だよね。

ユウカを呼ぼうとしたら、数時間はかかる訳だし。

 

「こう見えても私は忙しいんですが?今日はまだFA〇Eとモン〇トのスタミナ消化が残っているんですよ?」

 

『モモイは1度、お説教するべきだったのかもしれないね・・・』

 

人にソシャゲの周回を任せるタイプのカスだ、アカウント凍結されねえかな・・・

 

「で、勿体ぶってないで何処で調べものするつもりなんだよ、おい。」

 

『それは勿論・・・図書館だよ!』

 

目星・聞き耳・図書館は情報収集の三種の神器だからね!

 

「・・・おい、熱でもあるのか?お前から建設的な意見が出てくるなんて・・・」

 

「体調が悪いなら、モモイ辺りを呼び出しますけど・・・」

 

『ひどくないかな!?』

 

三人寄れば文殊の知恵と言うし、この三人が一緒ならもう何も怖くない・・・

まあ、ケイちゃんとアロナちゃんには別口で調べものしてもらうから一人なんだけど。

 

 

「全く・・・図書委員が居ないからってどうして私が受付を・・・そもそも全員出払ってるなんて図書委員としての自覚は無いんですか自覚は・・・もう帰っても良いですかね?どうせ人なんて来やしませんよ。」

 

『あ、あの~探してる本が・・・』

 

「えぁっ!?どどどっ、何処から入って来たんですか・・・!」

 

『いや、普通に入り口からだけど・・・』

 

ふーん、面白れぇ女。

あまり周りにはいなかったタイプだから、少し新鮮だね。

 

「それで図書館に一体何の用が・・・本を傷つけようって言うなら、たっ、ただじゃおきませんけど・・・!」

 

私が調べなきゃいけないのは主に3つ。

 

1つ目は、テスト範囲でもあるキヴォトス・・・しいてはトリニティの歴史について学ぶ事。

 

2つ目は、浦和ハナコについて。

彼女が今何を抱えているのか探る必要がある。

 

3つ目はアズサが助けた生徒・・・もっと言えばトリニティの学習環境について。

 

2と3の目的についてほ聞き込みをしようと思ったのだが、生憎この図書館には図書委員らしき彼女しかいない。

ただおしゃべりが好きな様にも見えないし、今回は見送るしかなさそうだ。

 

『トリニティの歴史について知りたくてきたんだけど・・・』

 

「外部の方・・・それも先生ですよね?一応規則ですから、案内はしますけど・・・」

 

『自己紹介を忘れてた、シャーレから来た先生!胡桃沢アリサだよ。よろしくね?』

 

「ひぇっ、陽のオーラがします。図書委員の小関(こぜき)ウイです。歴史といって色々ありますけど?」

 

 

こう言う時こそ、三種の神器の出番って訳よ。

まずは、目星でアタリをつける・・・!

 

『テスト範囲の復習も兼ねてね、この本棚にある気がするな。』

 

「そこ、料理本のコーナーですけど。」

 

図書館で有用そうな本を見つけ・・・

 

『これ・・・かな?』

 

「そんな古い時代のトリニティの事なんてテストには出ないと思いますけど。」

 

最後に聞き耳・・・聞き耳?何を聞けばいいの?

 

『ふむ、紙とインクの匂い、それとこれは芳醇な―――』

 

ひやぁっ!?何で今嗅いだんですか!?

 

『ほら、聞き耳には匂いの判定も含まれるから・・・』

 

「その匂いは忘れてください!さっ、さもないと追い出しますから!?」

 

これは私にとってのクリティカルなのか、彼女にとってのファンブルだったのかは紙ならぬ神のみぞしるというやつだろう。

 

 

にしても、随分と古い本だ。

どちらかと言えば、古書に分類されるような・・・

 

「この子、第一回公会議の前のものですね。おそらく整理したときに誰かが間違えてこちらにおいてしまったんでしょう。全く、ちゃんと保管場所を確認するように徹底しないといけませんね・・・」

 

『そんなに古いものなの?』

 

「えぇ、そうです。トリニティの始まりは3つの学校を主とした連合であったことは先生もご存知ですよね?」

 

『パテル・フィリウス・サンクトゥスだったよね?』

 

「その通りです。でも、今のトリニティになる前にはもう1つ大きな勢力があったんです。」

 

ぺらり、と頁をめくる音だけが静かな図書館に染み渡る。

そして、とある校章を指さして彼女は言った。

 

名を、アリウス分派。

 

頭蓋骨に冠、そして白い薔薇。

 

連合の結成に反対の立場を取って迫害され―――闇に葬られたもう一つの学園です。

 

その校章、何処かで見た事があるような・・・

 

「彼女達に()()()があれば、また()()()になったのかもしれませんがね。」

 

その時、ふと閃いた!

このアイディアは問題の解決に活かせるかもしれない!

 

「うぇっ!?そっ、その豆電球は何処から出したんですか・・・?」

 

 

 

少し脱線しながらも、目当ての歴史の本を見つけて読み進める事、数時間。

古関ウイと言う少女は、人と話すのが嫌いだったり苦手だったりするのかと思っていたが・・・本の話になると結構話すのが好きらしい、と言うか結構饒舌だ。

 

「近代のトリニティ史なら、こちらの本がオススメです。監修してるのが非常にわかりやすい解説を書く人なんですよね。BDなんかよりずっと分かりやすいですよ。」

 

『ん、ありがと。』

 

お昼のチャイムが鳴る、来たときはまだ朝だったのに。

本を読み始めてから体感30分程だと思っていたが、随分と時間が経っていたらしい。

 

「・・・意外と、()()()()ときちんと向き合ってくれるんですね。」

 

『意外は余計じゃない?まあ、集中できたのはここの空気が良いって言うのもあると思うけど。』

 

「匂いの話をしたら問答無用で追い出すって言いましたよね!?」

 

『や、違う違う!雰囲気が良いって話ね!?』

 

蔵書を守るために太陽光が直接当たらないように調節されているし、数少ない窓にも遮光の加工がされている。

休日と言うのもあって人は少なく、静かで集中しやすい環境だったと言えるだろう。

 

『程良い静寂と暗さ。こういう落ち着いた雰囲気、私は好きだなぁ。』

 

「へぇ、意外と・・・話が分かる人がいるものですね。」

 

『そろそろお昼ごはんだから、そろそろお暇させてもらおうかな。』

 

「・・・・・・普段は、古書館の方にいるので用があればそちらまで。」

 

『うん、また来るね。』

 

どうやら、読書友達くらいには私を認めてくれたらしい。

こういう子の、些細なデレからしか摂取できない栄養素があるんだよね。

 

 

「えっと、これは私の独り言なので聞き流して欲しいんですけど。」

 

『・・・分かった、聞き流すね。』

 

「この図書館にも良く足を運んでいた彼女ですが。噂を聞く限り、一年の頃はもっと静かで・・・次代のティーパーティーの筆頭とも言われるほどの傑物だったそうです。それこそ、1を聞いて10を知るような。それが変わったのは、二年生になってから。」

 

真剣そうな表情で、明後日の方向を見ながら続けるウイ。

人づきあいが得意ではなさそうな彼女が、勇気を振り絞って教えてくれているのだろう。

 

「ハナコさんと私はあまり親しくはないので、その理由までは分かりませんが・・・彼女が周囲への態度を変えたのには何か理由があるんだと思います。」

 

人と関わるのが苦手だからこそ、人の目や噂を人一倍気にしているのかもしれない。

 

『・・・今、何か言った?』

 

うぇっ!?今の流れで本当に聞き流す人っているんですか!?

 

 

図書館を後にした私だったが、いつの間にかアロナちゃんが帰ってきていた。

 

 

「そっちも上々そうだな。うちらでも少し調べてみたが中々妙なもんが出てきたぜ。」

 

『流石アロナちゃん!ここじゃなんだから、情報交換は夜にでも行おうか。』

 

「私も頑張ったんですけど!?」

 

 

 

 

 

今日の補習を終えて、辺りがすっかり暗くなっていた。

この様子なら、ハナコ以外は合格するだろうなと次の試験に思いを馳せていて―――

ふと、思い出した。あの校章を見たのはアビドスだ。

ユメと名乗っていた少女*1が身に着けていた。

そんな彼女の事が気になって、アビドスに連絡してみたところ。

 

「ん~今は居ないよ?しばらく前から行くべきところがあるって言ったっきり帰ってきてないなぁ・・・」

 

とのことで、アビドスにはいないらしい。

幸い、ホシノが予備の携帯を渡していたらしく連絡は取れるそうだが・・・

えっ、今更だけどもしかしてあいつ(ホシノ)他校の生徒を拉致してきてたの?????

 

 

電話のコール音が、3度ほど響いてからあちらの音が聞こえてくる。

 

『もしもし、聞こえるかな?』

 

「あっ、その声は先生ですか!?リーダーが捜してて・・・今どこにいるんですか?」

 

『リーダーが?捜してる?何の事か分からないけど、今はトリニティにいるよ。』

 

「道理でシャーレに出入りした様子が無いはずですね・・・えっと、トリニティ郊外の廃墟まで来れますか?座標は後でお送りしますので!」

 

『構わないけど、用事は―――うっ、通話切れてるし。』

 

おっちょこちょいというか、意外と図々しいというか。

私も聞きたいことがあったのに、気づけば誰かと会うことになっていた。

結局リーダーって誰だったんだ、お前の彼か?

 

 

 

 

月明かりを頼りに、校舎から離れた郊外の廃ビルにやってきた私。

たがお相手の方はまだ現地にはついていないらしい。

まあ、シャーレからは遠いし当然と言えば当然なんだろうけど。

 

「すまない、待たせただろうか。」

 

『ううん、今着たとこ。』

 

一度は言ってみたかった台詞を順調に消化できているじゃないか。

・・・で、誰なんだろう?ユメじゃないし会った覚えもないが?

白いコートに黒いマスクの長身の彼女。

アームバンドがアリウスの校章であることから、アリウスの生徒ではあるのだろうが・・・そもそもアリウスという学校がまだ存在しているという情報すら何処からも得られなかった。

 

「・・・護衛はいないのか?」

 

『えっ、必要なの?』

 

ユメ(他称)の友達の学生に会うだけだよね?

 

「なっ・・・!いや、そうだな・・・必要ない。その信頼に応えよう。」

 

そうだよね?必要ないんだよね?

私本人の戦闘力なんてほんとノミ以下だから、襲われたらどうしようもないぞこれ。

 

「自己紹介がまだだったな。()アリウス所属の錠前サオリだ、よろしく頼む。」

 

『シャーレの所属の、胡桃沢アリサだよ。よろしくね?』

 

 

月明かりが照らす廃墟群で、秘密の密会が―――始まった。

 

 

「まずは礼を言わせて欲しい、アビドスではヒヨリが世話になった。」

 

『いや、大したことはしてないよ。』

 

なるほどね?他称ユメちゃんの正体はヒヨリと言うらしい。

身バレのリスクを嫌って、偽名を名乗っていたのだろうか?*2

 

「あれだけの事をしてもらって、大したことはないと来たか。マダムの情報はやはり欺瞞だらけだったと言う訳か・・・」

 

なっ、何かしたっけとは言えない雰囲気だ。

本当に、ヒヨリちゃん?を特別扱いした覚えは無いんだけど。

 

『アリウス所属だって言ってたけど、()とも言ってたよね?その辺りが私を呼び出した理由かな?』

 

「・・・その通りだ。流石は先生、お見通しというわけか。」

 

なんか凄い私への好感度が高いぞこの子、本当に初対面だよね?

これが噂のちょろいんちゃんですか?

それとも一目惚れ?まあ私、顔が良いからな・・・

 

「先生は既に知っているとは思うが、アリウスでは内戦後ベアトリーチェと名乗った大人がトップに立って生徒に人殺しの術を教え込んでいる。トリニティの襲撃、しいてはこの虚しい世界を無に返すために。」

 

多分ちょろいんじゃない、背景が物凄く重い。

そして、またしても何も知らない胡桃沢アリサさん(15)。

ぜんぜんわからない、私は雰囲気でストーリーらしきものを進めている。

 

「だが、その思想に賛同しなかった人間と、ロイヤルブラッドを守ろうという一部がベアトリーチェに反旗を翻した。これは、先生とアビドスがいがなければ成し遂げられなかったことだ。総員を代表して感謝させて欲しい。」

 

あっ?あー?そう言えば銀行強盗したあの日・・・

 

<それじゃ、ユメちゃんに預けようか。>

<その代わり、このお金は誰かを幸せにするために使って欲しい。>

 

あの時の一億円の使い道か・・・!

そんな大事になってたなんて・・・読めなかった、このアリサの目をもってしても。

 

『あっ、頭を上げて?ほら、最終的に選択したのはヒヨリだから!』

 

「噂に聞いた通りの人なんだな、先生は。不快に思われるのは百も承知だが、ここに呼び出したのは礼を言う以外にももう一つ目的があったんだ。」

 

噂されてるのか、変な噂が広がってないと良いんだけど。

 

「それは先生、貴方と言う人間がどんな人物なのかを見極め・・・交渉をするためだった。」

 

 

 

「私たちのような人間に、表の世界の居場所が無いのは分かっている。未だに、私たちの中には|vanitas vanitatum et omnia vanitas《全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいものだ》。それこそがこの世の唯一にして絶対の真実であるという考えが根深く染み付いているのは否定しない。」

 

 

「今だって少なくない追手がさし向けられているし、私達を受け入れてくれるような場所にも見当がついていない。でも、ロイヤルブラッドを・・・姫を守るためにはあそこを抜け出すしかなかったんだ。」

 

成程、つまりお願い事とは・・・

 

「虫の良いことを言っているのは重々も承知だ、このお願いを聞いても、先生に得なんて何も無い。その代わり、私に出来ることならなんでもする!だから、姫を・・・皆を助けてはくれないか!?もう頼れるのは、先生しか・・・いないんだ。」

 

なんでもするって・・・なんて言っていたが。

本当に何でもするつもりなのだろう、サオリはきっとそれだけの覚悟を持ってここに立っている。

 

『分かった、なんとかしてみせるよ。』

 

「ほっ、本当にいいのか?私に差し出せるものなんて―――」

 

『大丈夫、それにサオリをどうこうしようとも思ってないよ。』

 

「それじゃあ何故・・・」

 

 

―――だって、可愛い私の生徒のお願いなんだよ?

 

 

それに、子供が楽しそうに笑える世界を作るのは先生のやるべき事だから。

 

 

 

 

アリウスの子達の今後についての対応をしたり、補習授業を行ったり。

それと、アリウスに残った子達への対応を考えたり。

そんな忙しい日々を過ごすうちに迎えた、二回目の追試。

 

合宿の最中に、試験をやるとは随分と変なスケジュールだとは思うが。

試験の終了予定時刻から30分ほど、やや乱暴に部屋のドアが開かれる。

 

「どういうことですか・・・先生!」

 

『どういうことって・・・何が?』

 

ノックもなしに部屋に入ってきたのは、ハナコだ。

採点にかかる時間などを考えるに、おそらくここまで走ってきたのだろう。

 

「その様子だと先生は知らなかった?いや、しかしブラフの可能性も・・・もしこんなことが出来るとしたら、それはトリニティでも一部に限られるでしょうし。」

 

『一体何があったって言うの?他の皆は何処に?』

 

 

差し出された紙に書かれていたのは、試験結果。

 


 

第二回試験結果

 

ーーー不合格ーーー

浦和ハナコ 59点

阿慈谷ヒフミ 20点

白洲アズサ 13点

花江コハル 8点

 


 

結果は、補習授業部の皆の頑張りを否定するかのような有様で。

 

「皆さんは、テストの出題側に問い合わせを行っています。結論から言うと―――今回私達が受けたテストは本来、3年生用の問題です。」

 

『なっ、そんな話聞いてないけど・・・』

 

「・・・どうやら、私達の邪魔がしたい誰かがいるみたいですね。」

 

 

残るテストは、あと1度のみ。

 

 

「問い合わせてみたんですが・・・信じられません、そんな・・・」

 

「だが、嘘を言っている様子は無かった。」

 

「そんな・・・こんなの一体どうしろって言うのよ!?」

 

 

告げられた事実は、考えたくなかった最悪の可能性。

 

 

今回の指示はティーパーティのホスト・・・桐藤ナギサの直接の命令でした。

 

 

*1
なっ、名乗った覚えは無いんですけどっ!?

*2
違う




次回、トリニティ編最終回を予定しています

作中のミームってどこまで把握してますか・・・?

  • 0-19%そのままの君で居て欲しい
  • 20-39%一般人の範疇
  • 40-59%オタク君さぁ・・・
  • 60-79%マジで危機感持った方が良い
  • 80-100%キッショなんで分かるんだよ
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