葉子ちゃんの弟は似ても似つかない。   作:バナハロ

10 / 13
人の金で食う飯はなんか遠慮しちゃうけど、ラーメンは遠慮なくいける。

 それは、真夏のクソ暑い季節。ボーダーでの活動も当然、暑苦しい時期になるわけだが、本部はクーラーが効いているしトリオン体に気温とかあまり関係ないので活動に問題はない。

 むしろ、しんどいのは生身での生活という季節なのだが……香取家に草太が戻って来るなり、クラッカーの音が耳に響いた。

 

「草太、正隊員昇格おめでと〜」

「……えっ、ビックリした。何で知ってんの?」

 

 いや、ビックリしてない。家の前に来た時点でサプライズの感情が入ってきていたので。でもビックリしておかないと、用意してくれた家族と華に悪い。

 

「そりゃ知ってるに決まってんでしょ? 華、ボーダーの特設サイトで常に草太が正隊員に上がったのかをチェッむぐっ」

「葉子、余計なこと言わなくて良い」

 

 何故そこまでするのだろう? もしかして華はボーダーのファンなのだろうか? ない話ではない気がする。割とミーハーなとこあるし。

 

「さ、早く上がりなさい。もうケーキとか用意してあるんだから」

「え、わざわざケーキまであんの?」

「お祝い事にはケーキだろ」

「早くしなさい。良いとこのなんだから」

「葉子は自分が食べたいだけでしょ」

「うるさい! 華が本気で選んでくれたんだから楽しみにすんのは仕方ないでしょ!」

「葉子、お願いだから余計なこと言わないで」

 

 なんて騒がしくしながら、全員でリビングに移動した。しかし、たかだか昇格くらいでケーキとは、本当にありがたいけど少し申し訳ない気もするものだ。

 何せ、元々親はボーダーに入ることを反対気味だった。特に母親が心配と言っていたが、父親が「やりたいならやれ!」と推してくれたことで何とか成立した話である。

 それの正隊員になったお祝いなんて、少し意外な気がした。

 ……と、それよりも、わざわざ来てくれた華には特にお礼をしなくては。

 

「華、来てくれてありがとう」

「別に気にしないで。おめでたい事だと思ったから。これから大変そうではあるけど、頑張って欲しいし」

「うん。頑張るよ俺」

「……っ」

 

 問題はこれからなのだ。何せ、ようやく訓練でなくトリオン兵と戦えるようになるし、スナイパーの訓練にも参加するようになる。まだまだやるべきことはたくさんだ。

 さて、リビングの席に座り、母親がケーキを切り分けてくれる。買ってくれたのは、抹茶チーズケーキだった。

 

「おお……抹茶」

「好きだったでしょ?」

 

 兄貴がそんな事を聞いてくるので、こちらも頷いて答える。抹茶は好きだ。スイーツは基本的に少し苦味が含まれているくらいが好みだ。

 

「でもこれ、どこに売ってたの? こんなんこの辺にあったっけ」

「や、だから華が見つけてくれたの。駅前で期間限定販売してるとこ」

「マジでか」

 

 と思ったら、なんか少しドキッとする感情。華の物だろうか? なんかこの子、照れている。

 いや、まぁ気持ちはわかる。人にそういうことしてあげたーとか、それ本人にバレると照れ臭くなるものだ。

 

「別に、たまたま見かけただけ」

 

 あ、これは嘘。多分、ネットとかで探してた。とはいえ、これを直で言うほど子供でもないが。

 

「じゃあ、いただきます」

「どうぞー」

 

 話しながら、抹茶のチーズケーキを食べた。美味い。なんかあんまり苦味ないけど、これはこれで美味いものだ。

 

「うおっ、美味っ」

「あ、ホントだ」

「これ美味しいわ。ありがとね、華ちゃん」

「いえ」

 

 なんて話しながら、もっさりもっさりとケーキを食べる。ボーダーの内部事情はあまり話せないので、そっち方面の話になることはなかったが、そのままのんびりとお喋りを続けた。

 で、そろそろ華は帰る時間。まぁ草太が家に戻ったのも夕方なのに、そこからケーキを食べていたらそれはそうなるだろう。

 

「じゃ、俺送ってくわ」

「うん。お願い」

「別に平気だけど……」

「いやいや、送るから」

「じゃあ私も行く」

 

 葉子も乗ってきたので、三人で華を送っていくことにした。

 そのまま家を出て、のんびりと華の家の方に向かう。

 

「あー、ケーキ美味しかった」

「それな。ああいうのもアリだな。ほんとサンキュー、華」

「……別にいい。私や葉子が正隊員になった時を楽しみにしておくだけだから」

「えっ」

「あ、良いこと言ったわ華。じゃあアタシあれが良い。なんだっけ、エ○メスのバッグ」

「せめて食い物にしろよバカ」

 

 こういう祝い事は消え物だろうに。……いや、でも入学祝いとかだと今後も使えるものを渡したりするし、その限りではないか……? 

 特に、まぁ葉子はさておき華は現在、居候。親戚がどんな人かは知らないが、何か物を買ってもらうのも憚られるだろう。

 ならば、華には何か役に立つものをあげた方が良いのではないだろうか? 

 

「華、お前何か欲しいもんある? 食べ物じゃなくても良いから」

「アタシと華でなんでそんなに扱いに差があるわけ!?」

「お前にはあれだ、ハムとかそんなんで良いだろ」

「お中元か!」

 

 葉子の怒りの感情が邪魔をして、華の感情を読み取れなかった。おかげで華は少し怪訝そうな顔をして眉間に皺を寄せる。

 

「……どうして私にそんなことを?」

「え? あー……」

 

 バカ正直に言えば「そんなの必要ない」と遠慮されてしまう。そんなにガメつい子ではないから「葉子と同じもので良い」となるのは明白だ。

 

「あー……あれだ。もし初任給出たら、今日の借りを返したいから。家族と華に。俺別にサプライズ好きとかそんなタチでもないし、何が良いかなって」

「別に、何でも良い。ご家族と同じものでも」

「いやいや、今日は俺一人をみんなで祝ってくれたから良いけど、俺から別々の相手に何かを渡すのは同じものって難しいでしょ。華、勉強あるしいつでも集まれるわけじゃないし。なら、学校で渡せるものが良いかなって」

 

 さりげなく学校で渡せるものと言って食べ物を回避した。これなら華も何かしら言うでしょ……と、思ったのだが、華は真顔で答えた。

 

「じゃあ、夏休みに一日、私と遊びに行って、その日全部草太くんの奢りで」

「えっ」

「どこに連れて行ってくれるかは任せる」

「……えっ」

 

 まさかの返答に、固まるしかなかった。少なくとも、葉子が「ひゃー……」とか呟きながら口元に手を当てているのをぶっ飛ばさなかった程度には固まってしまった。

 二人で出かける先を決める……それ、かなり難しいのではないだろうか? そんな事を思いながら、一先ず華を家の近くまで送った。

 

 ×××

 

 初の防衛任務が始まった。草太のトリガーは、メインにアステロイド、シールド、バッグワーム。サブにアステロイド、シールド、イーグレットである……が、イーグレットは練習中なので使えず、ほぼアステロイドだけの運用だ。

 さて、今日の防衛任務では、風間と木崎レイジと一緒の地区を担当。突如、ゲートから現れたモールモッドを前に、草太は走って移動しながら背後から迫ってくるモールモッドを引き付ける。

 その途中、後ろに振り向いて銃を4発撃つ。目には当たらなかったが、モールモッドの一匹が一瞬、足を止める。その隙に風間が急襲した。両腕を斬り落とした後、さらにバラバラに分解して倒した。

 

「良い陽動だ、香取」

「ありがとうございます」

 

 褒められたので、お礼を言う。防衛任務といっても、敵の出現は割と散発的でまとまりがない。敵は何体か出てくるが、すぐに倒せてしまう。

 

「良い脚してるな、香取」

「あ、はい。どうも」

 

 木崎にまで褒められ、軽く会釈した。足の速さもトリオン体の扱いの才能らしいが、それがあったのはラッキーだった。生身でも走るのは好きだったし、これは良かった。

 だが……今日は少し悩みがあった。足を褒められると、同じようによく足の事を褒めてくれた華のことを思い出す。

 

「……はぁ」

「何かあったのか?」

「はい?」

「何かため息が出てたぞ」

「……あー」

 

 あまりプライベートなことをボーダーで話すのは嫌なのだが……まぁ、風間はともかく、木崎には割と女性と出掛けた経験とか相談してみても良いかもしれない。

 

「いや実は昨日、家族と幼馴染が正隊員になったお祝いをしてくれまして」

「へぇ、そうなのか」

「何か食べたのか?」

「抹茶のチーズケーキです。これ、幼馴染が選んでくれてましてね。それで、俺も初任給が出たら何かお返ししないとなって思ってまして」

「良いことなんじゃないか?」

 

 風間も木崎もそう言ってくれるが、問題はここから先なのだ。

 

「いやそうなんですけど、家族にはまぁケーキで良いか、って感じなんですけど、幼馴染にはもっとこう……別の物をあげたくて、何が欲しいか聞いたんですよ」

「えっ、初任給入る前にか?」

「いやつい聞いちゃって」

 

 今思えば気が早過ぎたかもしれない。でも基本、何かある場合は早めに備えておきたいタチなので仕方ないと言えば仕方ない。

 

「それで、その幼馴染に夏休みに一緒に遊びに行くから、その日の費用を全て俺持ちで、とか言われましてね」

「それって……デートか?」

「えっ?」

 

 木崎に言われて、思わず間抜けな声が出てしまった。え、これデートなの? みたいな声なのだが、これはデートなのだろうか? しかも……華と? 

 

「デートだろう」

 

 風間にも言われてしまい、少しなんか頬が熱くなる。マジか、と思わざるを得ない。あ、ヤバい。なんかそう思うと少し照れが加速する。あまりそういうの慣れていないし、このお二方はそういったことで茶化してくる人達じゃないので、逆に気恥ずかしくなってしまう。

 

「これ……デートだったんですか」

「デートだろう」

「デートだ」

『デートじゃない?』

 

 オペレーターの林藤ゆりまで同意し始めた。女性にまで同意されたことで、さらに顔が熱くなっていくのを感じる。

 そして、何故か木崎の感情が一気に真っ赤に染まるように照れ上がったのも感じた。顔を見ると、顔色もなんか少し浮ついている。

 え、どうしたのこの人、なんて思っている間に、ゆりから声が聞こえた。

 

『付近にゲート発生。位置はマップに表示したから、三人ともお願いね』

「了解」

 

 この切り替えの速さは流石と言わざるを得ないだろう。まずはさっきまでと同じように草太から仕掛ける。

 足を使って移動しながら、目の前のバムスターと対峙。建物を足場にして顔を出すと、食い付いてきたので頭を飛び箱のように扱って背中に乗った。その背中から、近くにある電柱を撃って倒す。その電柱がバムスターの尻尾を踏み潰し、一瞬だけ重さと衝撃で動きが止まった。

 止まった所で、レイジと風間が遠距離からバムスターの口の中を斬り裂いた。

 

「ふぅ……」

「よくやった」

「次も行くぞ」

 

 どうやら別のゲートが発生しているらしいので、また足を使って囮役をしながら考える。

 まぁデートという話になってしまったが、それなら話が早い。風間も木崎もゆりも他人にべらべら話すタチではないだろうし、木崎なら何かしらアドバイスをくれそうだ。

 とりあえず、今ゲートから出て来ている敵を片付けてから、改めて聞いてみることにした。

 

「……」

「……」

「……」

『南西部、10メートル先。三門大学跡地に二匹』

「「「了解」」」

 

 驚くほど寡黙に討伐を続け、ようやくまた一息つける時間。少し一息つきながら、木崎に声を掛けた。

 

「それで、木崎さん」

「なんだ?」

「デートなら話が早いんで聞きたいんですけど、どこが良いとかありませんか?」

「えっ……なんで俺に聞く?」

「いやなんか割と女性と遊ぶのも男性と遊ぶのも慣れてそうな気がして」

 

 こういう人が、割と男女の友達が多くて安定してそうなイメージがある。クラスの学祭の打ち上げとかもしれっと参加してそうだし、割と力仕事とか引き受けて女子ウケも良さそうだ。

 

『あ、私も聞きたいわ。レイジくんならどんな所連れて行ってくれる?』

「ゆ、ゆりさんまで……!?」

 

 あ、また木崎の感情が大きく変化した。なんていうか……良いとこを見せようとしているというか、でも空回りしそうな感じ。

 しかも、ゆりが絡んだ時だけこうなる感じ……もしかしてこの人、ゆりのことが好きで、しかも好きな人の前だとダメなタイプなのだろうか? 

 あ、ヤバい。そう思うとこの人の答えを聞きたくない。だって絶対、失敗するから。

 案の定、照れた様子のまんま、木崎はすごいことを言い出した。

 

「そ、そうだな……れ、恋愛映画、とか……?」

『えー? レイジくん、恋愛映画とか好きなんだー?』

「えっ。い、いやそのっ……は、はい」

 

 あ、ウソだ。別に好きでも何でもない。ただロマンチックかなーと思って言ってみたらそんなリアクションをもらってしまっただけだ。

 なんかちょっと悪いことしたかも、なんて思いながら、とりあえずその場に参考になりそうな人がいない事を理解して……いや、風間がいた。このやたらとカッコ良い人なら、割とモテたりするかもしれない。

 

「風間さんは何処が良いと思いま」

「知らん」

 

 知らなかった。

 

 ×××

 

「と、いうわけで、どこが良いと思います?」

 

 防衛任務が終わり、スナイパーの訓練所に来た。そこで、草太は東に狙撃を教わりながら同じ相談をしてみた。

 

「ん、そうだな……とりあえず、右に2ミリ修正」

「2ミリ……はい」

 

 スコープを覗き込みながら、銃口を横に少しずらす。それから撃ってみると、的の左側に当たっていた弾が真ん中付近に当たった。

 

「良くなったな。若干、左側を見る癖があるから、少し右を意識すると良い」

「ありがとうございます」

「で、デートだっけ?」

「なんかそうみたいですね」

 

 話しながら、狙撃の練習を続行。東曰く「やればやるほど精度は上がる」そうなので、撃ち続けた。個人的にはハンドガンよりやりやすい。何せ、ハンドガンは立ったまま腕を伸ばして撃つので、じっくり狙うと腕がプルプル震え始めるのだが、スナイパーは銃にスタンドが付いてる上に、両腕を台の上に乗せて固定できる。

 

「そうだな……どこでも良いんじゃないか?」

「その心は?」

 

 適当な返しではなく、本当にそう思っているような意見……だと思う。この人、あまり一定以上に感情がぶれないから、草太の中に東の感情が入って来ることは滅多にない事もあって「多分」としか言えない。

 

「多分、その子は香取と出掛けられればどこでも良いんだろう。むしろ、香取ならどこに行くかとか、そういうのを知りたいんじゃないか?」

「俺なら、か……なるほど」

「特にお前あんまり自分のこと話すタイプじゃないし」

 

 確かにそうだ。サッカーがやりたい、というのを見抜いていたのも自分から言い出したことではない。華が見抜いたことだ。

 まぁ、そもそも自分の情報を他人にくれてやるのに少し抵抗があったりするものなのだが……華なら別に良いとも思える。

 

「でも、それだと尚更悩みますよねー。俺、自分がどこで遊びたいとかよく分かりませんし」

「ないのか? カラオケとか、遊園地とかそういうの」

「いや別にあんまり……」

 

 普段、遊びに行くときは、大抵葉子も一緒なのだが、それがすごく楽だ。草太の副作用は近くにいる中で一番、感情の強い人の感情が入って来るわけだが、葉子くらい波がある人の感情はそれはもう入ってきやすい。

 なので、割と葉子のそれはもう慣れた。だが、華くらい静かな人だと……。

 

「……」

 

 いや、なんかたまに落ち着いてない時がある。ポーカーフェイスなだけあって逆にこちらが混乱する事もあるほどだ。たまに葉子以上の感情を爆発させてくる。

 とはいえ、何にしても草太が行きたいと思う場所は屋久島とか北海道とか石垣島とか、そう言うところなのでやはり無理である。

 

「やっぱどこでも良いかなぁ……強いて言うなら美味いもの食べたい。ご当地とかの」

「良いじゃないか。ここから関東圏内ならそこそこ美味いものあるだろ」

「そんな遠出する金ないですよ。交通費も俺が出すんですよ?」

「月島とか良いんじゃないか? もんじゃ焼き」

「……あー、確かに」

 

 その発想はなかった……と、また弾が逸れ始めた。修正しながらまた撃っていると、東がそのまま言う。

 

「美味い飯屋は知ってるだけで得するぞ。今みたいに誰かに何かご馳走するとか、そういう時に知ってるだけで役に立つ」

「女の子の接待とか?」

「女の子に限らずだ。例えば、香取が高校に上がって友達の範囲が広がった時、軽く飯行くかって時とかな?」

「なるほど……」

 

 如何にも大学生らしい意見だ。確かに、基本的に人の武器は知っていることだ。何かしら知っていれば、その知識はどんなに小さなことでも役に立つ時が来るかもしれない。

 

「じゃあ、飯屋ですね。どこか良い場所探してみよう」

「せっかくなら、やっぱり少し遠出したいよな?」

「そうですね。鎌倉でしらす丼とか食べたいです」

「渋いなお前……」

 

 なんて話をしながら、訓練を続けた。

 

 ×××

 

 さて、いよいよ帰宅の時間。なんだかんだでまた夜まで訓練してしまった。親から「大概にしなさい」というメッセージが届いて、帰宅する事にした。

 しかし、美味い飯屋か……と、少し悩む。正直、あまり外食はしていない。食事に興味はあるが、それは旅行先のご当地グルメとかそういうので、家の近所の飯屋とか興味がなかった。

 だが……冷静に考えてみると、少しでも遠出して仕舞えばそこから先は観光になるだろう。その間、華の分も全て草太が出すのは不可能だ。絶対そんなに給料は出ない。

 なので、この近くの飯屋を奢ってついでにゲーセンなりなんなりに連れて行けば良いだろう。

 

「少し調べてみるか……」

 

 そう思いながら、基地から警戒区域外に繋がる通路でスマホをいじりながら歩いている時だった。

 

「ダメよ? ながらスマホは」

「あ……加古さん」

 

 後ろから人の気配がしたので特に驚くことはなかったが、加古望が後ろから声をかけて来ていた。

 

「今から帰り?」

「はい。加古さんもですか?」

「ええ。出口まで一緒に行きましょうか」

「はい」

 

 ちょうど良かった。まだ高校生とはいえ、この人もなんか人生経験豊富そうだし色々聞いてみたい。

 

「そういえば、加古さんはこの辺で美味い飯屋とか知ってます?」

「あら、どうして?」

「いや、近いうちに知り合いに飯奢ることになりまして。なんか良いとこないかなって」

「そうねぇ……外食はよくするけれど、私の場合は友達とマ○クとかスタバの方が多いから」

「あー、まぁそうですよね」

 

 女子高生なのだし、当然と言えば当然だ。チェーン店じゃないお店って割と高いイメージあるし、そうなってもおかしくはない。

 だが、加古はその草太の相槌を別の意味で受け取ったらしい。

 

「あら、私だってちゃんと女の子らしい所は女の子らしいのよ?」

「はい?」

 

 そうですよね、を「ボーダー隊員ですしね」と受け取ったらしい。この年で戦う職に就いている人が食事にこだわりが無い、と受け取ってしまったのかもしれない。

 悪いこと言ったかも、と弁解する前に、加古は続きを話した。

 

「自分で料理とかもしてるもの。炒飯とか」

「へぇ、炒飯」

「そう。奥が深いのよ? ただ炒めるだけってわけじゃないんだから」

「そうなんですか……まぁ、確かにべちゃべちゃしたのとパラパラしたのとか色々ありますよね」

「今度食べる?」

「え、良いんですか?」

 

 歳上のお姉さんの手作り炒飯……少し楽しみになってしまった。

 

「明日、土曜日でしょ? 防衛任務とかある?」

「無いですけど来ますよ。鍛錬しに」

「そう。じゃあ作って来てあげる」

「マジですか。じゃあ楽しみにしてます」

 

 炒飯……一体どんな味がするのだろう? なんかやたらと自信満々だし、加古のウキウキした感情が中に入ってくるし、こちらもウキウキして来てしまう。

 

「そういえば、作戦室といえば……香取くんは自分の部隊とか決めたの?」

「いえ、まだです。まぁ、正隊員がそもそもまだあまり多くないですし。加古さんは?」

「私、実は東さんに声を掛けられてて。部隊ってなんか良い響きじゃない?」

「そうですね、確かに。なんか軍隊っぽい」

 

 確か、加古は射手だった。それに東がスナイパー。どんな部隊を思い描いているのか知らないが、何となく遠距離気味なのかもしれない。

 

「香取くんも早めに考えておいた方が良いわよ?」

「まぁ、組む相手は大体、決めてます」

「あら、そうなの? 誰?」

「誰でしょうね」

 

 早く、華と葉子に入って来てほしい、そんなことを思いながら、そのまま帰宅した。

 勿論、翌日の昼間、加古にもらった炒飯で死んだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。