葉子ちゃんの弟は似ても似つかない。   作:バナハロ

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なんか描きたいところに至るまでじっくりやろうと思ってたらわけわかんないことになっていたので、予定を少し早めました。すみません、ゴミカス人間で。
あと二宮さんと太刀川は当然、原作より色々と若いです。


しばらくはデュオで。
知らない環境に知ってる人がいてくれるだけでホッとする。


 さて、ボーダーが発足して一年が経過した。隊員の人数も増えて来て、トリガーの性能も上がってきて、街も復興してきて、少しずつ防衛任務も安定して来た。

 警戒区域にて、南側を担当している太刀川と二宮がのんびりと表を見張る。

 

「良い天気だなー、二宮。こんな日は昼寝とかしたくならない?」

「なるか」

「いやなるでしょ。ほら、なんかこう……気持ち良いじゃん」

「語彙力ゼロだなバカめ。良いから集中しろ」

 

 なんて話していると、門が東西南北に二つずつ複数発生する。その後に続いて、モールモッドやバムスターがトータルで33体這い出てくる。

 それを見て、太刀川はニヤリと薄ら笑い、二宮は真顔のままトリオンキューブを手元に呼び出して動き出す。

 

「おいでなすったな。しかもまぁまぁの数」

「俺は右に出る。お前は左に広がれ」

「はいはい。……あ、じゃあ二宮。どっちが多くトリオン兵を片付けられるか勝負しない? 負けた方がラーメン奢りで」

「しない。遊びじゃないんだから集中を……」

「自信ないのか?」

「……良いだろう。チャーハンも付けてやる」

「良いね」

 

 と、手早く役割分担とルールを決めた。各々、展開して片っ端から切り刻み始めた。南の敵を二人で秒殺。しかし、南側の敵の数は8つ。二人で4体ずつなのでまだドローだ。

 ……なので、さらに二人で東へ展開し、担当ではない区域に突撃し始めた。

 二人がまず狙いを定めたのはバムスター。装甲が固く、急所を狙わないと簡単には倒せない大型のトリオン兵だ。

 それを、東側担当の諏訪と柿崎が撃ち続ける。

 

「ちっ、硬ぇなやっぱこいつ!」

「弾丸を集中させ続けりゃいつか落ちるだろ!」

 

 柿崎と諏訪がそんなことを言いかけた直後だった。そのバムスターの顔面に弾丸と斬撃が直撃し、一撃で崩壊させる。

 

「「えっ」」

「今のは俺のだからな!」

「月見、どっちの方が早かった?」

『記録ではけ……太刀川くんのになってる』

「ちっ」

「ほら見ろ!」

 

 無視して二宮が次の獲物に行ったので、太刀川も負けじと追い始める。ボーダー本部を一周しかねない勢いで走り続ける中、二人はふと気がつく。少しずつトリオン兵が少なくなっている。所々、倒されたトリオン兵の残骸が見えているので、他の隊員が倒した後だろう。

 お互いのスコアが9体ずつになった所で、西側に到着して足を止める。トリオン兵が一体もいなくなっているからだ。

 

「あら? 敵は?」

「反応はない。……こちら側の隊員が仕留めたか」

『反応は消失したわ』

 

 バカな、と二宮は心の中で舌打ちする。……それにしても、自分も太刀川も全速力でここまで来たはずだ。他の隊員のテリトリーなど無視して救助を狙って即殺してきたのに、随分と早く他の場所も殲滅させたものだと思ってしまう。

 そんな中、二人の通信機に音声が入る。

 

『もしもーし、太刀川さんと二宮さん?』

「……香取か?」

「何の用だ」

 

 香取草太、ボーダー二人目のスナイパーであり、ガンナーでもある中学生の少年だ。

 

『俺、10体倒したから俺にラーメンと炒飯奢りでお願いします』

「……」

「……」

 

 この手の勝負に遠距離から狙撃出来る奴が入ってきたらダメだろ、と思いつつも、まぁ中坊の可愛い後輩の言う事だし、良いか、と思ってやることにした。

 

 ×××

 

 翌日、草太はご機嫌でボーダー本部内を歩く。昨日はラッキーだった。ボーダーにスナイパーはまだ少ないので、防衛任務の時は本部の屋上に配置される。

 なので、本気を出せばトリオン兵の掃討に一番有利に働くのだ。もちろん、射程は割とギリギリなのだが。

 で、二人がアホな賭けをしているのが聞こえてきたので、思わず乗って奢ってもらってしまった。

 そのことにご機嫌で歩いていると、目の前にその奢ってくれた先輩の片方が歩いているのが見えた。

 

「あ、二宮さん」

「? ……香取か」

「お疲れ様です。昨日はごちそうさまです」

「黙れ」

 

 悔しさがまだ残っている感情がモロに入ってきて、挨拶したら怒られた。まぁ気持ちは文字通りわかるけれども。

 それよりも二宮の進行方向が気になる。

 

「どこ行くんですか? そっちスナイパーの訓練場ですよ」

「今後、ボーダーも部隊を組んだりすることになるだろう。昨日のお前の働きを見て、スナイパーが一人はチームにいた方が良いと判断したから、誰か良い奴がいないかを探しに行く」

「なるほど」

 

 その考えは草太もいずれそうなるだろうと踏んでいた。だから葉子と華と組もうと思っているのだから。

 

「俺も訓練したいんでついていきますね」

「好きにしろ」

 

 なんて話しながら、スナイパーの訓練場に向かう。この人のことはもう理解している。ぶっきらぼうだし口も悪いが、中身は普通に良い人で面倒見も良い。

 だからこそ、最初は敬意を持って接した。で、少し打ち解けてきたと思ったら、多少の生意気さも実力とやる気さえあれば許容してくれる。

 到着して中に入ると、白い隊服の人間が何人か目に入った。そういえば、またボーダーに隊員が入ったらしい。

 現在、ボーダーのスナイパーは草太、東、木崎の三人なので、二宮は訓練生から選ぶつもりなのかもしれない。

 

「……」

 

 と言っても……昨日のテリトリー侵犯は割と忍田本部長も怒っていたので、草太的には「これ二宮が部隊を組む前に二宮がどこかの部隊に放り込まれそうだな」と思わないでもなかったりする。ちなみに本部長の弟子である太刀川は今頃、ペナルティとして忍田本部長と千本ノックのようにタイマンを張らされていることだろう。

 さて、そんなことはさておき、草太も訓練をすることにした。

 

「じゃあ、二宮さん。俺も訓練するんで。失礼します」

「……ああ」

 

 そんなわけで、適当な席についた時だった。隣の席がC級であることに気が付いた。

 スナイパーの後輩が出来るのは割と珍しいので、思わずまじまじ眺めていると……その顔はどこかで見たことある顔だった。黒い髪、眠たげな瞳と頬のそばかす。

 ……そして、その顔と自分はバッチリ目が合ってしまった。

 

「あ……あなた、確か……」

 

 どこで見たんだっけ、何て思っていると、その草太の感情が「知ってる人いた!」と言わんばかりの安心感に包まれていく。

 

「あなた、この前助けてくれた人だよね!?」

「えっ、こ、この前……?」

「ほ、ほら……近界民の大規模侵攻の時に」

「……ああ」

 

 思い出した。確か、弟が食われたとかで絶望していた人だ。何とか逃がせたが、まさか入隊してくるとは。あの時のことがトラウマになっていなかったのだろうか? 

 目の前の気弱そうな女性は、少しハッとした様子でわ草太から離れ、頬を掻きながら謝る。

 

「あ、ごめんなさい、急に。私、鳩原未来です。この前は本当にありがとう。おかげで助かりました」

「香取草太です。中一。その件は気にしないで下さい」

 

 走れなくなった、とかは言わない方が良いだろう。多分、この人の感じ的にすごく気にされてしまう気がする。

 自己紹介をすると、少し嬉しそうに未来は両手を胸前で合わせた。

 

「中一……じゃあ、私の方がお姉さんだ」

 

 少し微笑まれる。入ってくる感情が少し穏やかになった。そのまま矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

 

「草太くんもボーダーに入ってたんだね」

「ええ、まぁ……スカウトされたので」

「スカウト! すごいなぁ……ということは、トリオン能力とか高いの?」

「どうでしょうね……まぁ、ガンナーとスナイパーでやっていけてるので他の人より少し高めなのかも」

 

 だが、そんな自分よりも太刀川、東、二宮、風間などの方が実力は上なので、やはり上には上がいるものだと思い知らされた。

 すると、未来は少し不思議そうな顔で小首を傾げる。

 

「? ポジションでトリオン能力に差とかあるの?」

「いや、大抵好みでしょうけど、基本的にアタッカーはトリオン能力低い人がやるものでもありますよ。トリオンを弾丸にして飛ばすわけじゃないので、トリオンの消費が少ない」

「あ、なるほどね! すごい、草太くん詳しいんだ!」

 

 いやこれくらい少しボーダーにいれば誰でも分かることだ。というか、入ってくる感情も本当に感心しているというよりも「褒めてあげたい!」という母性本能にも等しいものだ。

 ……いや、なんでそんなにやたらと褒めようとしてくれるのか。命の恩人だからだろうか? それとも、スカウトされたと知ったから? 

 どちらにしても……まぁ、嫌われていないのはありがたい。サイドエフェクトを好かれるために乱用する必要がないから。

 

「まぁ、一応もう10ヶ月弱ボーダーにいるので」

「そんなに前から戦ってたんだ! すごいね。……あ、ごめん。少し話し込み過ぎちゃったね」

「いえ、全然」

「じゃあ、後でご飯食べに行かない? その時に、もっとお話聞かせて欲しいな」

 

 距離の縮め方早過ぎない? と少し思わないでもない。いや、まぁボーダーに知り合いとかいないだろうから、そんな中で顔だけでも知っている人と仲良くなろうと思う気持ちは分からないでもないが。

 

「じゃあ、また後で」

「うん。また後でね」

 

 まぁ、後でとか言いながらもその場で狙撃の訓練をするわけだが。

 その場でとりあえず訓練を始めた。

 

 ×××

 

 狙撃トリガーや銃手トリガーのような銃を使うトリガーは、練習すればするほど上手くなることに気が付いた。

 離れた場所から的に当てる、という技術は実戦以上にまず練習だから、とにかくまずは弾が当たるようにならないと話にならない。

 故に、草太はボーダー本部に来れる日は可能な限り来て練習した。それも、誰よりも早く来て誰よりも長く。

 そして、知らない間に熱中し過ぎて帰りが遅くなることもあったりする。

 ……だが、今日はそうはならなかった。

 

「ーっ!?」

 

 突如、感情が隣から自分の中に入って来て、思わず集中力も途切れてしまった。

 しかもこの感情……「今日はこのくらいで良いかな」という疲労感と「じゃあご飯食べに行こう!」というワクワク感が入り混じった、やたらと力が抜ける感情だ。

 思わず冷や汗を流しながら、その感情の主と思われる隣の席を見てしまうと、同じタイミングで顔を覗き込ませてきた。

 

「香取く……わっ、もしかして同じこと考えてた?」

「え、いや考えてないと思いますけど」

「嘘だぁ。そろそろ切り上げてご飯行こうって言おうとしてくれてたんじゃないの?」

 

 ……いや、本当に全然違うのだが、未来の感情は「そうなんでしょ?」と言わんばかりにニヤニヤした感じが出ている。

 まぁ……本当は違うけれど、少ないスナイパー同士の仲で変に喧嘩したくないし、もうそういう事で良いだろう。

 

「バレました?」

「ふふ、すぐ分かるよ。じゃあ行こっか」

 

 との事で、食事に行くことにした。女の人と二人で食事とか少し緊張してしまうが、まぁ普段から華や葉子と一緒にいるのであまり気にしなくても良い気がする。

 で、食事の場所はボーダー内の食堂。食券の券売機で未来がきつねそばを頼んだを眺めつつ、草太は面倒なのでうどんで良いかと思い、たぬきうどんを選択。

 そのまま二人で席に座った。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきまーす」

 

 二人で食べ始める。美味しい。なんて思いつつも、目の前の未来はそのまま声をかけてきた。

 

「香取くんは、どこの中学なの?」

「三門中学です」

「あ、そうなんだ。じゃあ私の後輩なんだ」

「同じなんですか?」

「もう卒業しちゃうけどね」

 

 二個上なんだ、と思いつつも、まぁそんなもんか、と理解しておく。次からは高校生らしいけれど、この時期にボーダーに入っているという事は市内の高校なのだろう。

 

「やっぱり勉強とボーダーの両立って大変?」

「いえ、別に。やろうと思えるなら全然平気です。給料出るし」

「そうなんだ。じゃあ私も頑張らないと」

「……」

 

 あ、少し感情が変わった、と理解してしまう。この人がボーダーに入った理由は何となく察しがついている。一年ほど前に助けた時、弟が連れ去られて号泣していたのを見ているから。

 自分が軽はずみに「多分だけど鹵獲されたんじゃね?」なんて言ってしまったから、今こうして本当にこうして取り返しに行くつもりになってしまったらしい。

 

「ボーダーで頑張るなら、何より自主練が大事だと思いますよ」

「現状、ボーダーの育成方針は自主性ですから。特にスナイパーは練習すればするだけ上手くなります」

「そうなんだ……香取くんも練習はたくさんしたの?」

「そうですね。割と朝から晩まで。最近は姉と会話しない日とかも結構……」

「え?」

「え?」

 

 何だろう、急に。入ってくる感情もなんか少し驚いている感じでこちらも驚いてしまう。変なこと言っただろうか? 

 

「香取くん……弟なの?」

「え、なんすかその確認の仕方。兄と姉がいます。姉は双子だけど」

 

 ……あ、マズイ、と冷や汗を流す。言うべきじゃなかったかもしれない、と思わせられるような感情が自分の中に入ってくる。

 この感情……なんか生温かくて、それでいて変に慈愛を感じさせるような感じ……そう、それこそ弟でも見ているような感覚だろう。

 だが、その感じはすぐに引っ込んだ。そしてその後に入ってきたのは、どこか複雑そうな重苦しい感情。

 未来はどこか薄っぺらい作り笑いを作ると、口を開いた。

 

「そっか。良かったね、みんな無事で」

「……」

 

 しまった、と少し冷や汗を流す。下手に家族の話とかするべきではなかったのかもしれない。

 今後、同じスナイパー同士だし、お互いに顔を合わせて会話することもあるだろうから、下手に傷口を広げるような真似はやめた方が良いだろう。

 そういう会話は得意だ。可能な限り相手が望むような受け答えを考えつつも、家族の話題は避けるように言葉を選んだ方が良い。

 慎重に考えつつも、こういう時に「気を使わせている」と思わせたら余計に暗くなるので、間を空けずに話す。

 

「うん。だから、これからは俺が戦わないとって思ってます。次に同じことが起きた時、今度は誰も何も失わなくて済むように」

 

 少しくさい台詞だが、本音だ。実際、幼馴染の両親は亡くなっている。

 過去にあったことを踏まえて本音を言いつつ、明るい方向に話を持っていくと、目の前の未来は少し目を見開く。

 そこに、さらに畳み掛ける。

 

「だから、鳩原さんも協力して下さい。頼りになる方は何人でもいた方が良いと思うので」

「……う、うん!」

 

 どうやら、しっかりと当たりを引いたらしい。未来の中に芽生えていた暗い感情が一時的とはいえ払拭された。どうやら、少し頼りにしてあげた方が良いタイプらしい。誰かの姉や兄というのはそういうところがある。

 

「ね、香取くん」

「はい?」

「私のこと、未来でも良いよ。その代わり私も、草太くんって呼びたいな」

 

 あれ、なんだろう。少し寒気がした。思った以上の距離の詰められ方に、少し違和感を抱いてしまったからだろうか? 

 でもまぁ、向こうがそうしたいというなら、今後の関係のことを考慮しても構わないだろう。

 

「良いですよ」

「ありがとう。よろしくね、草太くん」

「はい。未来さん」

 

 ……なんか華以外の相手を下の名前で呼ぶのは照れ臭かったが、まぁ一先ず受け入れておくことにした。

 

「じゃあ、そろそろうどん食べちゃわないと。伸びちゃうね」

「そうですね」

「あ、そうだ。今度、狙撃のコツとか教えてよ」

「一日10時間撃ってください」

「えっ」

 

 なんて話しながら、その日の夕食を食べ終えた。

 

 




鳩原さんのキャラも入隊時期も捏造です。ふざけんなと思った方は控えることをお勧めします。
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