【完結】俺が通う高校は人外魔境だった   作:はるゆめ

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ep.26 決着

 昭和のいつか。季節は晩秋。

 

 ⬛️二十時五分。

 機動隊が入っていく。

 地上にのぞいている校舎の屋上から。

 

 テレビ中継で見たことある機動隊員とヘルメットの形が全くの別物だった。

 手にしているのはお馴染みのジュラルミンの盾だが、ライフルを持っている隊員もいる。俺は知っている。あれは六四式小銃。自衛隊が使ってるやつだ。

 

 俺は現地本部と呼ばれるテントの中に座っている。佐藤、アンネさん、飯田、瑛子に囲まれて。

 

 町は完全に封鎖された。住民は避難を命じられ、俺たちの高校以外は無人地帯だ。

 報道は完全にシャットアウト。警察がハイジャック事件を起こした過激派が海外組織の支援を受け武装し、人質を取って立て篭もったと発表。

 

 出発前、瑛子が機動隊全員にあの不思議神様パワーをかけている。

 

「あの寄生虫は入り込めないし、心に何かされることもない」

 

 瑛子は言い切った。

 また彼女は例の童女を数人、機動隊に同行させる。

 現場の映像が俺の視界に映し出され、何が起きてるかがわかるようにしてくれた。

 

 投光器の白い光に照らされた校舎の屋上部分はまるで悪魔の城だ。

 

 とうとう始まる。

 

 

 ⬛️二十時二十五分。

 

 機動隊のライトに照らされた先。洞穴の奥からすごい数のウサギもどきが殺到。口には刃物を咥えて。

 盾で防ぐ機動隊員。

 首を狙ってきて飛びついてる。

 六四式小銃を乱射する隊員もいるが、数が多すぎる。後から後から押し寄せるウサギもどき達。

 よく見ると鈴木瑠美子の記憶にあったものより、体格が大きい。

 前に語っていた同胞の複製なんだろう。

 地球じゃ長く生きられないって他ならぬ本人が言ってたのに……。

 

 機動隊が悪戦苦闘していると、突然ウサギもどき達が吹き飛んだ。よく見ると見えない何かが追い払ってるようだ。ウサギもどき達の血があちこちで噴き出す。

 

 最前列の機動隊員がウサギもどき達の突撃を防ぎつつ、ゆっくりと前へ進み始めた。

 

 

 ⬛️二十時五十五分。

 

 大きな広場に出る。そこに立っているのは鈴木瑠美子。

 何一つ纏っていない。

 生まれたままの姿。

 おかしい。

 遠近感が狂ってる。

 広場の奥に立っているはずだが手前にいる機動隊員よりずっと大きい。

 巨人だ。

 どんな術を使ったのかわからないが、五メートルぐらいはある。

 

 走り出す。

 機動隊員はすぐに射撃を開始。

 巨人とは思えない素早い動きで機動隊員を蹴散らす。

 幼児のグループに大人が殴り込みに入ったような光景。機動隊員達は、蹴られ、掴んで投げられ、踏まれる。一方的な蹂躙だ。

 

 六四式小銃が当たってるはずだが、鈴木瑠美子の身体には傷ひとつない。

 そこに赤い横一文字が浮き出た。

 アンネさんのお父さんだ!

 剣で次々と俺の目では追えない動きで鈴木瑠美子を切り刻んでいく。

 

 そこに加わる金髪女性。

 この人も長身だ。

 彼女が手刀を突き立てると、鈴木瑠美子は初めて苦しそうな顔になり、金髪女性を振り払おうと腕をでたらめに振り回す。

 

 その隙にアンネさんのお父さんが回り込む。

 鈴木瑠美子の足首に斬撃。

 が、跳ね返される。

 そのまま後ろに跳躍。

 

 鈴木瑠美子の腹が弾けた。飛び出す大量の血と何か。

 手を伸ばしたままの男が空中にいる。髭が立派な初老の男性。

 

 鈴木瑠美子は破裂した腹を抑えながら男に右手を伸ばした。

 また破裂。

 彼女の手首から先が弾け飛んだ。 

 

 一歩下がる鈴木瑠美子。

 どこか虚ろな目つき。

 

 次の瞬間、俺が見ているモニター画面は光で見えなくなる。

 白い光。

 何も見えない。

 

 ⬛️二十一時十五分。

 

 同時に校舎の屋上から大きな音がしたので、俺は校舎を仰ぎ見る。そこに冗談みたいな大きさの人の手が突き出ていた。

 粉塵が舞う中、続いて頭が現れる。

 鈴木瑠美子だ。

 軽自動車サイズの頭。

 次に現れた肢体は十メートルを軽く越えていて、校舎を瓦礫に変えながら立ち上がり、全身が見えてきた。

 三階建の校舎と同じぐらいの背丈。

 足元のパトカーを踏み潰し、こっちに向かって歩き始める。高すぎて顔の表情までは見えない。

 

 俺は瑛子に引っ張られ後ろへ。

 飯田は飛び出した。

 佐藤アンネペアは大きく跳躍。

 

 やめろ。やめてくれ。

 

 鈴木瑠美子は無表情のまま俺を見つめている。めんどくさそうに佐藤アンネペアと飯田を振り払ったかと思うと、しゃがんでこちらに手を伸ばしてきた。

 

 倒れたまま動かない三人。

 血が沸騰して頭に上るのがわかる。

 

 耳元で『ごめん。お兄ちゃん、奥の手』と瑛子が囁いた。

 頭の中が暗転。

 

 ……斬っている。

 

 木刀で。

 俺が握る淡い光を放つ木刀で。

 鈴木瑠美子のブルドーザーみたいな手を。

 二の腕を足場にして頭を飛び越す。

 

 首の後ろを斬りつける。

 噴き出す大量の血。

 

 肩を足場に下へ。

 巨大な乳房の下辺り。

 

 心臓を狙って上へ抉るように一突き。

 肋骨で止められた。

 狙いをずらして更に突く。

 奥まで。

心臓に達した手応えを感じ、脇腹を足場に離れるように飛ぶ。

 自分がしていることをどこか他人事のように見ている俺。

 

 ゆっくりと現地本部のテントを押し潰しながら倒れ込む鈴木瑠美子。

 目が合う。

 その瞳には色々な感情が混ざってるように見えた。

 

 怒り。

 悔しさ。

 驚き。

 諦め。

 

 そして……。

 巨大な鈴木瑠美子の身体はまず青銅色に変わり、次に緑青錆が広がるように色を変える。

 そして闇よりも黒くなったかと思うと、形を維持できなくなり、最後には黒い粉の山へと変わった。

 その後の記憶がない。

 

 ⬛️二十一時二十八分

 

 遠く離れた場所。

 つまらなそうな嘆息。

 何かの気配。

 

「芽吹いた種は他にもある。それを使えば良い」

 

 やがて気配も消える。

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