【完結】俺が通う高校は人外魔境だった   作:はるゆめ

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ep.35 全校集会

 昭和のいつか。どこかにある高校。季節は初冬。

 

 翌日。

 午前中の授業を潰しての全校集会。

 商業高校の体育館に全校生徒四百人あまり。

 校長の長話を聞いている。

 

 先日の傷害事件に始まり、男女ペアで家出した生徒が複数出たこと、風紀の乱れがとか、学生の本分は学業だとか、要は長い説教だ。

 

 折り畳み椅子ぐらい用意しとけっての。倒れるやつ絶対出るぞ。

 

 ほら! 一人倒れたじゃないか。

 また一人。

 いや何人も倒れてるぞ。

 ……多いんじゃないか?

 

 あ、校長も倒れた。

 何かおかしくないか?

 生徒たちが騒ぎ出す。

 

 ん?

 

 あれは何だ?

 校長が立ってた場所。

 そこに黒っぽいモヤが渦巻いている。

 

 何だあれは。

 背景が歪んでる。

 音が聞こえる。

 

 低音の、遠くで何かが呻いているような。

 喜んでいるような。悲しんでいるような。

 遺伝子レベルで拒絶したくなる不快な音声。

 

「お兄ちゃん!」

 

 瑛子が来た。

 

「あれ……良くないものだよ」

 

 黒いモヤが球状になり、その奥に……光……黒い光としか言いようがないものが……そんなものあるのか?

 

「見ちゃダメ」

 

 瑛子が俺の目を手のひらで塞ぐ。

 

「瑛子、あれ何かわかるか?」

「こことは違うところと繋がってる、門みたいなもの」

 

 

「きゃあっ」

 

 女子生徒の悲鳴。

 

「扉が開かないぞ!」

 

 誰かの叫び声。

 

「あっあれ!」

「なんだ!」

「きゃあぁっ!」

 

 人が倒れる音。

 

「瑛子!」

 

 彼女の手を振り解き、正面を見据える。

 体育館のステージはもはや原型をとどめていない。

 黒いモヤが球体となって鎮座している。

 

 そこから……まるでタコやイカの足みたいな触手が生徒たちに向かってる。何本も。

 触手が触れた途端、崩れ落ちる生徒たち。

 

 阿鼻叫喚。

 

 デアソードを取り出す。

 こっちに来た!

 

 斬りつける。

 床に落ちた触手。

 

 やがて黒くなり崩れ落ちる。

 飯田は?

 身体を変化させずに、周囲の人間を守りながら触手を防いでる。

 

 佐藤優子は?

 巧みな動きで触手を避けてる。

 

 確認できた顔見知りはこの二人だけ。

 

 他にも何人かの生徒が触手とやり合ってるが、倒れる生徒の方がはるかに多い。

 

 不意に死角から触手が迫る。

 が、弾かれた。

 王戸ちゃんナイス!

 

「せっ先輩はお守りします!」

「無理はするなよ!」

 

 デアソードが通用するなら、狙うはあそこ。

 ステージに向かって走る。

 走る。

 

 折り重なるように倒れている生徒たちを飛び越え。

 ただ走る。

 次々と迫る触手を片っ端からデアソードで斬り捨てて。

 

 ステージに飛び上がり、触手をまとめて横薙ぎ。

 おぞましい感覚。

 この世のものじゃないってのは俺でもわかる。

 

 なんだ?

 腹に衝撃。熱い。

 

「お兄ちゃん!」

 

 瑛子が叫ぶ。

 触手が俺の腹に刺さってる。

 

「てめえ!」

 

 痛みを堪えてデアソードを振り下ろし斬った。

 呻き声が大きくなる。

 俺は立つのがやっと。

 

 こみあげる痛み。

 地面が傾く。

 違う。

 俺がふらついてるだけだ。

 

 冷や汗が全身から噴き出す。

 焼け付くような痛み。

 腹を中心に広がっていく。

 とうとう膝をつく。

 

「◯◯君!」

 

 佐藤優子に抱えられる。

 腹が熱い。

 痛くて熱い。

 

 また触手。黒っぽい色だ。

 それを掴む異形の手。

 飯田奈美だ。

 

 彼女はそのまま触手を握り潰す。

 そのまま次から次へと潰していく飯田。

 足が、足が動かせない。

 

「お兄ちゃん!」

 

 瑛子が駆けつけ、黒い球体に手を翳す。

 顔色が悪い。

 身体がデアソードと同じように光っている。

 黒い球体の奥から響いてくる呻き声が一層大きくなった。

 球体自体も形が怪しくなり始めてる。

 

「さ、佐藤さん、俺を瑛子の隣に」

「その怪我で?無茶よ」

「あれ、やらないと俺たち全滅」

「ちょっと待って」

 

 寝かされた。

 腹の傷に顔を近づける佐藤優子。

 彼女はその形の良い唇を傷口にあてる。

 まるでキスするように。

 

 痛みが引いていく。

 どんどん痛みが引いていく。

 動きが弱っていた心臓が復活する。

 

 痛みさえなければいける!

 何とか立つ。

 佐藤優子に抱えられたまま瑛子の隣に。

 

「瑛子、俺も、手伝う」

 

 瑛子は動けない。

 苦しそうな瑛子。

 俺の妹分をいじめるな。

 貴重な戦闘員役だぞ。

 

 あ。

 ダメだ。

 バランスを崩す俺。

 支えられた。小さな手。

 王戸ちゃんか。

 

「◯◯様を支えますっ!」

 

 彼女と佐藤優子に支えられながら、黒い球体へ一歩一歩近づく。

 

「くらえや、この野郎」

 

 残る力を込めてデアソードを球体に突き刺す。

 同時に感電したような痺れ。

 

「うっ」

 

 三人とも吹き飛ばされる。

 誰かに優しく受け止められた。

 飯田姉妹だ。

 

「サンキュー」

 

 飯田奈美と飯田由美、二人で俺たち三人を受け止めてくれた。

 佐藤優子と王戸めぐみは気を失ってる。

 

 黒い球体は小さくなり、今にも消えようとしていた。

 

 あ、視界がぼやけてきた。

 瑛子が倒れるのが見えた、そこから記憶が無い。

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