【完結】俺が通う高校は人外魔境だった   作:はるゆめ

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ep.56 一日目 十三時五十五分まで

 昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬。

 

 ◼️十三時五分

 三学期が始まって最初の土曜日。

 みさえさんの妖術によって、告白ショーを披露した俺は、佐藤、飯田、瑛子の三人と少しギクシャクした日々を送る羽目になった。

 

 特に隣の席の飯田とは毎日顔を合わせるので気まずい。

 

「◯◯、お前さぁ、飯田とケンカでもしたのか?」

 

 酒巻にこんなこと訊かれるぐらい。

 

「してないしてない。する理由もないぞ」

「そうなのかぁ?」 

「そう言うお前は、仁科とどこまで進んだ?」

「露骨に話を逸らしたな。毎日電話を一時間してたらさ、親父にゲンコツくらったわ」

「ほうほう。進展ありか」

「おうよ。今日は商店街の喫茶店じゃなく、マルガリータへ行くんだ」

「な、なにい! カップルしか行かないというあそこか!」

 

 ───敗北感。

 相手が仁科亜矢子とはいえ、酒巻に置いていかれた気がして落ち込む。

 

「酒巻君」 

 

 仁科亜矢子が教室に入ってきた。

 まだ教室に残っていた女子達も耳打ちで何やら囁きながら、冷やかすような視線を酒巻と仁科に向ける。

 

「◯◯君とお話し中だったかな?」

 

 首を傾けて酒巻を覗きこむ仁科。中身を知らなけりゃ大抵の男はコロッといきそうだ。

 

「仁科、◯◯」

 

 俺と仁科は手首を掴まれる、酒巻に。

 

「ん? どした……がっ!」

 

 腰のあたりに激痛。 

 立っていられない。 

 目に入ったのは仁科のうなじにナイフを突き立てる女子。

 

「あぐっ」 

 

 仰向けに倒れた俺は思わず声が出る。俺にナイフを振り下ろそうとする女子。

 だめだ!

 反応出来ない!

 耳鳴り。

 俺に振り下ろされるナイフが止まった。

 

「やれやれ、やってくれたな」

 

 仁科亜矢子は後ろの女子を肘で突きとばすと、ゆっくりと後ろへ下がっていく。

 

「時間の流れを少しばかり遅らせてる。お前さん、このままだと死ぬぜ?」

 

 ああ。寒気がしてきてる。

 

「まぁあの時の礼もしてないしな。そら」

 

 仁科亜矢子は俺の腹に手を置いたのと痛みが消えたのはほぼ同時だった。

 

「致命傷は消した。あまり動くなよ」

 

 全身のだるさはそのままだ。

 

「な、何が、起きた」

「酒巻に俺様さえ気づかない仕掛けがされてた」

 

 酒巻はうなだれたまま止まってる。心ここにあらずって顔。

 仁科は俺を刺した女子を蹴り飛ばす。

 

「女二人はもう人間じゃねぇな。いいか? 時間の流れを戻すぜ」

 

 机がぶつかり合う激突音。

 仁科が肘打ちと蹴りを入れた女子達が机を次々に薙ぎ倒しながら吹き飛んでいく。

 

「大丈夫?」

 

 みさえさんが現れた。

 緊急時には俺を瑛子のところへ運んでくれる担当だ。

 

「あ……なんとか」

 

 仁科とみさえさんはそれぞれ女子にとどめを刺した。

 女子達の首が転がる。

 血は流れない。

 首? 違う。カカシみたいな顔、不出来な人形だ。

 

 俺のカバンとみさえさんのポケットから電子音。

 ポケベルだ。

 緊急集合を告げる数字の列。

 

「行くよ! あんたは?」

「俺様も行っていいのか?」

「敵の敵は味方! 急ごう」

 

 ◼️十三時三十三分

 目の前が瑛子の家に変わる。

 

「瑛子ちゃん! ◯◯君を!」

「お兄ちゃん!」

 

 驚いた瑛子の顔。すぐに俺の腰に手を当てる。

 

「正確に肝臓を……」

 

 身体からだるさが消え、気分もかなり良くなった。 

 

「瑛子、助かった。仁科、お前は平気なのか?」

 

 顔色悪いぞ。  

 

「へっ。心配してくれんのかい」

 

 そのまま倒れる。

 

「この子! 首を刺されてる」

 

 みさえさんが叫ぶ。

 瑛子はすぐに手を当てた。

 

「あとは私がやります」 

 

 柚木だ。彼女の制服にも血がついている。

 

「ゆ、柚木、怪我は?」

「すぐに修復しました。大丈夫です」

 

 続けて佐藤さん、王戸ちゃんがやってきた。

 彼女らの制服も血まみれだ。

 王戸ちゃん、表情が優れない。

 

「私はもう平気。王戸さんを診てあげて」

「服、剥ぐわよ」

 

 瑛子が王戸ちゃんの制服に手をかけたので俺は慌てて目を背けた。

 飯田とみさおさん、遅いな。

 

「黒瀬さん、王戸さんは任せても?」 

「大丈夫よ」

「先輩、みさえ先輩、飯田さんとみさお先輩のところへ行きましょう。多勢に囲まれてます」

「わかった」

 

 風景が変わる。

 グランドだ。

 

 倒れている生徒も含めたら、ざっと五十人が飯田とみさお先輩を襲ってた。

 飯田は西洋甲冑風の姿だが、動きがいつもより遅い。

 それを庇うようにみさお先輩が奮闘しているが、数で来られてやりにくそう。

 隙をつかれ、飯田が囲まれた。

 それを見た俺は頭に血が昇る。

 やめろ!

 お前ら飯田に何をする!

 

 デアソードを両手に握りしめて、片っ端から斬りつける。 

 ナイフを持つ腕を狙う。

 くそっこいつら!  

 どけっ!

 腕や足を斬り落としてもわらわらと縋ってきやがる。

 幼稚園児がでたらめに弄り回した粘土細工のような顔。これ作ったやつ、美術は赤点だろ!

 

「首を落とさないとだめだよっ!」

 

 みさえさんの言葉に従う。 

 斬る。突く。横に薙ぐ。

 

 みさえさん、柚木の静止衛星の攻撃で完全に無力化できた。

 

「飯田っ!」

 

 胸の下あたりから血を流している。

 

「すぐに連れて行く」

「頼みます!」

 

 飯田とみさおさんの姿が透明な布に覆われるように消える。

 

「またあの結界だよ。前のより強く広くなってる」

 

 空を見上げてみさえさんが言う。

 

「この人達、いえ人形ですね、人の肉体の一部だけ使ってます。この前の操られた死体より随分と手抜きです」

 

 柚木が転がってる人形をつついたり、持ち上げたりして調べてる。

 

「みさえさん、瑛子のところへ戻りましょう」

「賛成ですね。飯田先輩には輸血が必要かもしれません」

 

 

 思ったよりずっと早くその時が来た。

 俺たちが同時に狙われ、少なからず被害を受けたことに俺は動揺している。

 平常心なんて身につかない。

 ◼️十三時五十五分

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