昭和のいつか。どこかにある高校。季節は冬。
「減ったな」
「ああ。寂しくなった」
放課後。例によって酒巻とグランド見ながらだべりタイム。
ちなみに生徒数が減ったため、俺たちのクラスは隣のクラスと統合された。
「佐藤優子ってやっぱ可愛いよな」
「そんなこと言ったら、仁科に聞かれるぞ、酒巻」
「亜矢子はそんなことぐらいは気にしないよ」
おお! 名前呼びに変わってる。
仲が進展したのか?
「ほ、ほう。それはそれは」
「◯◯もさ、いい加減はっきりさせろよ」
「まーたその話か」
「そうすればさ、ダブルデートも出来るじゃねぇかよ」
ダブルデート。
そんなものはマンガの中にのみ存在する事象。あくまでも空想上の産物でしかないはずだ。
「そんな日が来たらいいな」
「思わなきゃ実現しないぞ。◯◯、最近飯田といい感じだろ」
「それは酒巻にはそう見えてるだけだよ」
その実、酒巻の指摘は当たってる。
もっとも飯田が仁科を俺に近づけまいとして、結果的に飯田と俺の距離が近くなってるだけなんだが。
「さて、彼女を待たせてもしかたない。俺は帰るぜ」
「ああまたな」
酒巻は仁科のそばへ行き、一緒に教室を出て行った。その時、仁科が意味ありげに俺の方を見るが、知らん顔してやり過ごす。
飯田は視線こそ送ってないが、張り詰めた殺気を仁科にむけているのが俺にもわかる。
気持ちはわかるがな。
そこまでせんでもとは思うが、もう彼女たちの間で仁科はそういう扱いになってしまってる。
しかたない。
「今日は病院行くよね?」
「飯田も行くだろ?」
「あら私は仲間はずれかしら」
「そんなこと言ってまへんがな」
「◯◯君と飯田さん、佐藤さんは仲が良いんですね」
誰? あー転校生の山本由紀子か。
「えっと山本さんだよね?」
「そうです」
「……関係者だよね?」
「何のですか?」
「その……普通の人間じゃないよね?」
小声で尋ねる。
今のこの街に越してくる人間はいないという確信持っての発言だが、もしそうでなかったら我ながらヤバい質問だな。
「あ、そういう意味ですか。はい、私は猫です」
山本由紀子の瞳が縦長になる。
良かった。予想通りだ。
「俺たちはチーム組んでるから、これが普通なんだよ。そこのところよろしく」
「そうなんですね。ふふっ。何かあれば協力しますよ」
「その時はよろしく。じゃ俺たちは行くとこあるから」
別れを告げて早々に俺たちは教室を出てアンネさんがいる病院へ向かう。
病院の駐車場へ自転車をとめ、目的の病室へ。
「あ! 優子! ◯◯君! 飯田さん!
アンネさんがベッドで上半身を起こしているじゃないか。
「アンネ!」
アンネさんに抱きつくという、これまた珍しい佐藤優子。
「心配かけたね」
二人の間には俺たちに想像もつかない絆があるんだな。
「もう大丈夫なんですか?」
「◯◯君や飯田さんにも心配かけてごめんね。もう大丈夫」
笑顔が少しやつれているものの、元気そうなので安心する。
「聞いたよ。君たちの活躍」
「何とか出来たって感じです。後で被害はかなり出ましたけど」
「相手が相手だし、上出来だよ。私たちじゃ敵わなかったもの」
「トーマスさん達は?」
「私の意識が戻ったらすぐに東京へ行ったよ。今後のことで政府と色々話し合うみたい」
「えっとそれは」
「詳しくは父さんから話があると思うよ」
しばらく俺たちは四人で談笑し、そして病院を後にした。
帰宅後一人つぶやく。
「このまま何もなければいいんだけどな……」
鈴木留美子の時と違い、すっきりと終わった感じがしない。
のほほんと暮らせる日々は再び来るのだろうか。