【完結】俺が通う高校は人外魔境だった   作:はるゆめ

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ep.81 騒乱の結婚式

 昭和のいつか。どこかの次元にある大陸。季節は乾季。

 

 工藤(みどり)

 俺の幼馴染……という認識を植え付けてた、正体は猫。

 だが今目の前にいる(みどり)は誰が見ても美人だ。さらさらで細くふわっとした髪は流れるように肩まで届いて、キラキラとした装飾のベールをかぶっている。

 特徴的な大きな目は潤んだ感じで俺を見てる。しかもうっすらと化粧された顔はいつもと全然違う。

 色々な端切れを無理やり縫い付けたような花嫁衣装。まるで虹みたいな配色で彩りを添えている。この大陸の花嫁衣装は白ってわけではないらしい。

 

「なんだ山下、工藤に見惚れたか?」

「い、いつもと違うと思っただけだよ」

 

 朝っぱらから衣装やら化粧道具を持ち込んだ黒瀬兄妹に叩き起こされた俺と(みどり)

 髪やら顔やら弄られてそれなりに整えられた。

 

 日本へ帰るための作戦。転移術式というのを発動させるために、俺と(みどり)は、結婚式を挙げる。芝居だけどな。

 

「隆晴……かっこいいよ」

 

 潤んだ瞳で見つめてくる(みどり)

 

「うん。素敵な新郎新婦ね」

 

 瑛子も微笑みながら俺たちを見つめてる。

 

「おい黒瀬、早いとこ行かなきゃいけないんだろ?」

「慌てるな。ゆっくり行っても間に合うさ」

「ジャバのおっさんに別れを言わなくてもいいのか?」

「悟られるわけにはいかない。このままお別れだよ。夢で会った、そんな感じでいい」

 

 日本へ帰ったら二度と会うことはない。そう考えるとわずか三日ほどの付き合いとはいえ、多少は寂しくなる。

 

 大神殿には四人乗りの馬車で向かった。

 引くのはやはりケンタウロスだ。俺たちはケンタウロスと呼んではいるが、ここでは違う名前らしい。

 

 近づくにつれ大神殿の大きさがわかる。修学旅行で見た大阪城ぐらいの高さ。

 墨で塗りつぶしたように真っ黒。四角だが、近くで見ると石垣のように見える。窓らしきものは一切ない異様な建物。

 

 入り口に向かう人々と一緒に中へ入る。

 

 案内された部屋は天井が高く、円形の大広間だった。高校の体育館よりずっと広い。

 

 床には複雑な模様が描かれていて、壁には篝火が幾つも取り付けられている。現代日本で生まれ育った俺にとっては少し暗い。

 

 俺と腕を組む翠(みどり)、その腕から彼女の体温が伝わり、俺も少し変な気分になった。

 

 新郎新婦は俺たちを入れて四組が、横一列に並ぶ。ここでは合同で式を挙げるのが普通らしい。

 

 それぞれのカップルを見てみると……。

 

 複眼。腕が六本。まるで蜘蛛。

 黒い羽根。まるで蝙蝠。

 尖った尻尾と手に鋏。まるで蠍。

 

 失礼だとは思うけど、子どもの頃に夢中で見てた特撮ヒーロー番組。それに登場した敵組織の怪人っぽいと思った。

 

 参列者が五十人ほど。俺たちを囲むように立っている。そうか。ここじゃ全員立ってるもんなんだ。

 

 お芝居とはいえ緊張してきたな。

 耳元で「大丈夫だから」と(みどり)が囁いたので、少し落ち着く。

 

「今日、神に誓いを立て、夫婦となる者達よ。我が神はお喜びだ」

 

 奥の方からカマキリみたいなおっさんが出てきた。顔と肘から先がそのまんま。神父か牧師ってとこか。じゃカマキリ神父だ。

 

「まずは我が神に誓いなさい」

 

 昨晩、黒瀬に教わった通りに跪く。

 

 カマキリ神父は葉のついた木の枝を取り出し、足元に置かれた器にそれを浸す。

 おもむろに俺たちに向け振り上げるもんだから、水飛沫が飛んできて濡れる。冷たい。

 

「さあ! 祈りなさい! 我が神がいらっしゃるこの場所で」

 

 沈黙が流れる。

 

 床に刻まれている模様がうっすらと光を放ち始めると、耳鳴りがしてきた。

 

 な、なんだ?

 

「その前に!」

 

 カマキリ神父が叫び出した。

 

「神を冒涜する不届者を排除なさい!」

 

 なに?

 

 俺の隣にいた蜘蛛男が俺たちに掴みかかろうとしてきたのを、(みどり)が爪で切り飛ばす。

 蝙蝠女の胸から光る剣が生えた。黒瀬だ!

 そこからは黒瀬と(みどり)があっという間に他のカップルを倒していく。

 

 まるで早送り映像を見ているようだった。

 俺はただ見ているしか出来なかった。足が小刻みに震えているのがわかる。

 

 物音がしたので振り返ると、参列者達が全員地面に寝ていて、そこに瑛子が立っている。

 

 たちまち一人になったカマキリ神父。

 

「お前たちは何が狙いだ!」

 

 黒瀬が歩み寄る。

 

「ちょっと異界へ渡るのに、あんたとここの術式、そして奴の力を借りたいのさ」

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