【完結】俺が通う高校は人外魔境だった   作:はるゆめ

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ep.final そして平成

 昭和のいつか。どこかにある高校。季節は初夏。 

 

 

 

 鬱陶しかった梅雨も明けて、衣替えの季節になった。

 

 あの出来事から三ヶ月。 

 

 

 

 俺は何してるかっていうと、俺の部屋でと勉強会やってるとこだ。

 

 もっぱらが俺に教える形。情けないことにの方が成績は上なんだよな。はぁ。

 

 

 

「黒瀬達は今頃どこにいるんだろうな……」

 

「隆晴、集中して」 

 

「はい。先生」

 

 

 

 ぐっと身を乗り出して顔を近づけてくる。

 

 思わずその胸元に目がいく。タンクトップにショートパンツ。

 

 最近のは目のやり場に困る服装が多い。本人によると『元々服を着ないから、こっちの方が楽なんだ』とのことだが、視線の行き場に困るんだよ。

 

 

 

「あのさ、ちょっと休憩しよう」

 

「もぅ。しょうがないなぁ」

 

「昨日別れの挨拶したばかりだし、黒瀬達のことを気にするなって無理があるぞ」

 

 

 

 俺は昨日のことを思い出す。

 

 

 

 黒瀬と佐藤優子が欠席だったので、俺はすぐに気がついた。

 

 あぁ。その日が来たんだなと。

 

 

 

 六限目が終わり、ホームルームにて担任が二人の転校を伝える。ざわざわするクラスメイト達。特に佐藤優子ファンの男子達はかなり動揺している。

 

 

 

 それよりさらに五日前。

 

 俺とが黒瀬の家に呼ばれた時のこと。

 

 

 

「山下、こっちでの後始末は終わったよ」

 

「そ、そうか」

 

「もう心配はいらない。完全に潰したから」

 

 

 

 さっぱりした笑いを浮かべた黒瀬は、どこか疲れて見えたんだ。

 

 

 

「あっちへ帰るのか?」 

 

「そうだ。しばらくは、な。またどこかの街へ行くことになると思う」

 

 

 

 こいつは、黒瀬はずっと異界の神が残した残党を処理していくのだろうか。

 

 

 

「寂しくなるな。たまにはこの街に寄ってくれよ」

 

「気が向いたらな」

 

「来るのは一瞬だろう?」

 

「おう。瑛子パワーでな。工藤、もう心配はないとは思うが、山下のこと頼むよ」

 

「う、うん」

 

 

 

 黒瀬がニヤリと笑う。

 

 

 

「二人揃って地元の国立大に行くんだろう?」

 

「まっ」

 

「そうだよ! 隆晴はこれから勉強頑張るから!」

 

「おい、」

 

「一緒に行くの!」

 

「……へいへい。には敵わないな」

 

「くくく。仲が良くてけっこう!」

 

 

 

 ふと真面目な顔つきになる黒瀬。

 

 

 

「山下、前にも言ったが、お前との縁で俺はこうやってここにいられるんだ。俺のこと忘れないでくれよ」

 

「わ、忘れるもんかよ。あんなびっくり体験させてくれたお前のこと、どうやって忘れるんだよ」

 

「だな。この世の裏側を知ったお前は、もう無関係じゃいられない。工藤と結婚まで行くかは知らないが、仲良くしろよ」

 

 

 

 黒瀬よ。なんつうこと言うんだ。の顔が真っ赤だぞ。

 

 

 

「わかったよ」

 

「達者でな。あ、これ」

 

 

 

 と言って黒瀬は数枚のLPレコードを俺に手渡す。ヘビーメタルの名盤だ。

 

 

 

「やるよ」

 

「え? いいのか。お前のお気に入りだろう」

 

「持っててくれ。いつか取りに来る」

 

「……ああ、そういうことなら」

 

「俺と佐藤さんが二人揃って休む日が来る。その時にはもう俺たちはこの街にはいない」

 

「え、そうなのか」

 

「湿っぽいのはごめんだし」

 

「そうか。なんと言っていいかわからんが、頑張れよ。無理はするな」 

 

「サンキュ。ほどほどにやっていくさ。多分先は長い」

 

 

 

 これが黒瀬との最後の会話となり、言った通り黒瀬達は転校という形でいなくなった。

 

 

 

 そして今は平成。

 

 大学を出た後、俺は地元の印刷会社に就職し、営業として一人前になった頃、と結婚した。

 

 

 

 のご両親には『猫は独り立ちした後、何しようと自由』と言われて、結婚式の段取りはスムーズにいった。

 

 

 

 娘二人に恵まれた。長女は人間、次女は猫だ。

 

 

 

 そんなある日のこと。

 

 

 

 会社の昼休憩で、外へ食べに行かず愛妻弁当を持参する俺ともう一人、定年が近い酒巻さん。

 

 

 

 酒巻さんはかつてバリバリやっていたが、今はのんびりしていて、俺達も気が楽なんで助かってる。

 

 

 

 そんな酒巻さん、食後はいつも自分のノートパソコンでネットを眺めるのが日課だが、今日はいつもと様子が違った。

 

 動画投稿サイトを見ていたと思うけど、突然驚いたように目を見開き、それからモニターをじっと見つめている。

 

 

 

 会社は国道沿いにあり、大型トラックがひっきりなしに通るので少々うるさいのだが、騒音に紛れて酒巻さんの独り言が聞こえてきた。

 

 

 

「◯◯じゃ…………。死ん……ないのか……。それに佐藤……も……。どうしてあの頃のまんま……」

 

「酒巻さん、何か言いました?」

 

「あ、すまないね、何でもないよ。ちょっとね、動画でさ、知り合いに似た顔を見つけたもんだから」

 

「へぇ。ちょっといいです?」

 

 

 

 俺は酒巻さんのデスクへ近寄ると、ノートパソコンのモニターに表示されている拡大画像を見て驚いた。

 

 

 

 場所は今なお封鎖区域となっているあの街だ。物々しい警告看板が設置されているのですぐにわかる。

 

 その警告看板の横に立つ、三人の若者。

 

 

 

 あの頃と全く変わらない容姿の黒瀬、佐藤優子、瑛子がそこにいた。見間違いようがない。

 

 

 

 酒巻さんは言う。

 

 

 

「この男の子、高校の時さ、仲良かったやつにすごく似てるんだ。隣の女の子達もね。すごい他人の空似だよ」

 

 

 

 俺は酒巻さんがこの街の出身だってことを知っている。

 

 

 

「へぇ、そうなんですか。世の中にはそっくりさんが三人はいるらしいですからね」

 

「そうそう。びっくりしたよ」

 

 

 

 懐かしそうにしている酒巻さん。

 

 俺は心の中でそっと呟く。 

 

 

 

『まだ戦っているのか? 黒瀬……』




ここまで読んでいただきありがとうございます。
世界線を同じくした物語は続きます。
後ろの席の美少女は……
https://syosetu.org/novel/370939/
次から次へと! 少年魔導士の受難は続く
https://syosetu.org/novel/366551/
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