逃げ上手の転生記 〜かぶき町のちゃらんぽらん侍と〜   作:虹武者

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第十四訓 ラーメンも蕎麦も饂飩も結局は麺

 ある日、時行はあるお店にいた。

 

「すみません!うどんを1杯お願いします!」

「坊や、ここはラーメン屋なんだ。うどんは置いてないよ。」

 

 時行がいるのは北斗心軒というラーメン屋だ。その店主である幾松が時行に話しかける。すると、いつの間にか隣にいた桂が時行に話しかけてきた。

 

「そうだぞ時行。ここはラーメン屋。ならば、注文するのは1つだろう。幾松殿、蕎麦を1つ。」

「ラーメン屋って言ってるだろうがぁ!」

 

 幾松は叫びながら蕎麦を桂の顔面にぶつけた。顔面が蕎麦まみれになりカウンターに倒れる桂。時行はそれを見ながらラーメンを頼む。

 

「そういえば、私と桂さん以外に誰も居ませんね。」

「この辺りはいろいろ競争が激しいし…」

 

 幾松の表情が険しくなる。時行はラーメンを食べながら聞いた。

 

「どうかされたのですか?」

「まぁ、最近この辺りの土地を買い取って天人専用のショッピングモールを建てようとしている不動産屋がいてね。嫌がらせが頻繁に来てるんだ。」

 

 幾松が話してくれた。

 

「そこからは俺が説明しよう!」

 

 その時、どこからともなく玄蕃が現れた。幾松は玄蕃と登場に驚くと同時に懐から見える下着を着目した。

 

「おい。なんだその下着?」

「え?ドラクエよろしく戸棚を開けたらあったから拝借した。」

「それ、あたしのじゃねぇかぁ!」

 

 幾松が下着を取り返し玄蕃を殴り飛ばす。

 

「っていうか誰だあんた!?」

「玄蕃~!」

「こいつは玄蕃。新しい俺の仲間だ。」

「あんたといいなんで下着ドロから出会いが始まるんだ。」

 

 幾松は呆れていた。

 

「それで、その不動産屋がどうした。」

「ちょっと叩けば埃だらけだぜ。部下を使って営業妨害に恐喝、賄賂とやりたい放題だ。」

「そのせいでこの辺りの店はほとんど閉めてしまったよ。」

「なんかやるせないですね。」

 

 時行がショボンとしていると桂が立ち上がった。

 

「任せろ。幾松殿の店を潰させはせん。この桂小太郎。天人に支配など絶対にさせん。」

「桂さん…」

 

 蕎麦をかぶっても凛々しい桂に幾松はドキッとする。すると、桂、時行、玄蕃はウェイターの格好をして厨房に立った。

 

「これより北斗心軒伝承を行う。」

「待てぇぇぇ!」

 

 幾松が叫ぶ

 

「何勝手に入ってんの!?ここうちの店!あんた達は客!」

「安心されよ幾松殿。俺達が来たからにはここを天下味と同じぐらいの人気店にしてみせる。」

「それ焼肉屋!それを言うなら天下一品だろ!じゃなくて!」

 

 幾松がツッコミするも桂達はいつの間にか料理を始めていた。

 

「まずはラーメンに必要な前菜を作る。」

 

 そう言って桂は炒飯を作った。

 

「だから、せめてラーメンを作れ!」

「こんなもん、麺茹でて入れたら終わりだろ。」

 

 玄蕃がテキトーにラーメンを作る。

 

「あんたは出てけ!」

「あとはトッピングというものをすればいいのですね!」

 

 時行がラーメンにイナゴをトッピングした。

 

「うちはゲテモノ店じゃねぇぇぇぇ!」

 

 幾松が叫ぶ。

 

「なんてものラーメンに入れてんだあんた!」

「美味しいのに。」

「この子、普通にイナゴ食べてるよ。」

 

 何の迷いもなくイナゴを食べる時行に幾松は引いている。そこに2人組の男が来た。幾松はその2人を睨む。

 

「おい。俺達は客だぞ。」

「さっさとラーメン持ってこい。」

 

 態度の悪い客に嫌気がさしながらも幾松はラーメンを作る。その間に桂が2人に炒飯を出した。

 

「あん?こんなもの頼んでねぇよ。」

「前菜の炒飯です。」

 

 2人は警戒しながらも炒飯を食べる。そこに幾松がラーメンを出した。2人はラーメンを食べる。幾松が食器を洗っていると突然、2人が騒ぎ始めた。

 

「おいおい!これはなんだ!」

 

 2人がラーメンを指差す。そこにはハエがスープに浮かんでいた。もちろん、幾松はハエなんてラーメンに入れるわけがない。しかし、2人は幾松を責め立てる。

 

「ここのラーメン屋は客に虫を食べさせるのですか~!」

「はい!こちらイナゴラーメンお待ちしましたー!」

「本当に食べさせようとするなー!」

「本当に?」

「「あっ…」」

 

 イナゴがどっさり入ったラーメンを出す時行に2人がツッコミしてしまう。その発言を聞いた幾松に睨まれ2人は冷や汗を搔いて黙ってしまう。

 

「やっぱりあんたら自分で入れただろ。」

「だ、だったら…」

 

 2人がカウンターを叩いて立ち上がる。その瞬間、急に腹が鳴り2人は腹を抑えた。

 

「きゅ、急に腹が…」

「ラーメンに何を入れた…」

「はぁ?何も入れてないよ。」

「どうぞ、食後の炒飯です。」

 

 桂が2人に炒飯を出した。

 

「今、それどころじゃねぇの見て分からねぇのか…」

「騒がしい迷惑客に桂特製炒飯を出したぢけだが。」

「まさか、炒飯に…」 

 

 2人は慌ててトイレに入ろうとするも扉が開かない。

 

「なんで開かねぇんだ!?」

「今入ってま~す。」

 

 トイレの中から玄蕃の声がした。2人が何度も扉を叩くも出る気配がない。

 

「くそ~!また来るからな~!」

「くそ~って言わないでください!」

 

 2人はお尻を抑えながら出て行った。

 

「見ただろ。あんな連中が毎日のように来るんだ。」

「地上げ屋という者だな。」

 

 桂が炒飯を食べる。

 

「あの、それは…」

「これは普通の炒飯だ。」

 

 炒飯を食べ終えた桂は店を出ようとする。

 

「あの…桂さん…」

「幾松殿のラーメン屋をこれ以上汚させるわけにはいかない。」

「私も行きます。」

「俺も行くぜ。」

 

 桂の後ろに時行と玄蕃がついて行く。

 

「あんた達…」

「待っていてください。必ずここを守ってみせます。」

「いや、まず金払え。」

 

 幾松に言われて時行は気付く。このまま出たら無銭飲食になってしまう。ちなみに、桂と玄蕃は無銭飲食する気満々だった。

 ちゃんと金を払って逃げた2人を追う時行達。どう見ても悪そうな奴がいそうな建物の前に到着した。そこにはエリザベスが桂達を待っていた。

 

『こっちです』

「よし。よくやったぞエリザベス。」

 

 エリザベスが2人の跡を着けていたようだ。時行達は地上げ屋を成敗するべく準備にかかった。

 その地上げ屋達のボスは戻って来た2人を怒鳴っていた。

 

「バカヤロー!そんな理由でおめおめと逃げ帰って来たというのか!」

「「す、すみません!」」

 

 ペコペコ頭を下げる2人。

 

「もうあそこだけだぞ。他は閉まるか追い出した。あそこさえ立ち退けば天人専用ショッピングモール計画が進むのだ。そのために賄賂もやった。天人達を迎える準備だって出来ている。」

「悪いがその計画は潰えてもらう。」

「誰だ!?」

 

 ボスが叫ぶ。障子の向こうに3人の人影が見える。

 

「ひとーつ!人の店のラーメンをすすり…」

「ふたーつ!再び炒飯を食べ…」

「みーっつ!醜い天人共を攘夷してみせよう。」

 

 障子が勢いよく開き時行、玄蕃、桂が現れる。

 

「饂飩担当北条時行!」

「ラーメン担当玄蕃!」

「蕎麦担当桂小太郎!」

「「「我ら!北斗心軒三銃士!!!」」」

「ラーメン1人しかいねぇじゃねぇか!」

 

 ボスがツッコミする。

 

「桂小太郎…まさか、2年前から消息不明となっていた伝説の攘夷志士か!」

 

 地上げ屋の部下達が刀や拳銃を取り出す。

 

「貴様ら天人に迎合する輩が増えたのでな。再びこの世に戻って来たのだ。」

「くそっ!だが仲間がガキ2人とは情けないな。」

 

 部下達が時行達を取り囲む。

 

「ばかもん。貴様ら程度、俺達で十分だ。」

「言ったな。殺れぇ!」

 

 ボスの命令で一斉に襲いかかる部下達。時行達は三方向に別れ応戦する。

 

「ラーメンお待ち!」

 

 玄蕃が次々と部下の顔面にラーメンを被せる。

 

「デザートの炒飯がまだですよぉ!」

 

 桂が次々と部下達の顔面に炒飯をぶつける。

 

「イナゴ餃子どうですかぁ!」

 

 時行が避けながら次々と部下達の口に餃子を突っ込む。圧倒的な強さの前に次々と倒れる部下達。ボスは震えながら拳銃を取り出す。

 

「これでも…」

「ラーメン一丁!」

 

 ボスが拳銃を向けた瞬間、玄蕃がラーメンをボスの顔面にぶつける。

 

「饂飩もどうですか!」

 

 次に時行が饂飩を食べさせる。

 

「シメに蕎麦はどうだ。」

 

 最後に桂が蕎麦をボスの口に突っ込んだ。ボスは顔中麺だらけになり倒れる。

 

「ラーメンも饂飩も蕎麦も同じ麺だ。」

 

 桂がボスを起こす。

 

「聞け。今後、北斗心軒に危害を加えようとするならこの狂乱の貴公子桂小太郎が貴様を地獄に送ると宣言しよう。」

 

 桂の気迫に圧されたボスはそのまま気絶する。桂はそれを確認すると時行と玄蕃をつれて去っていった。

 北斗心軒の前で待っている幾松の前に談笑しながら帰る3人がやってきた。

 

「これで安心だろう。」

「そうかい。じゃあ、うちで食っていきなよ。」

「よ~し!炒飯でも食うか!」

「いや、蕎麦だ。」

「私は饂飩がいいです。」

「ラーメンを頼めぇ!」

 

 幾松がまた叫んだ。そして、翌日。銀時が北斗心軒に立ち寄る。すると、蕎麦の隣のメニューにうどんがあった。

 

「あれ?ここラーメン屋だろ?なんでうどんがあるんだ?」

「ん?新メニューだよ。」

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