逃げ上手の転生記 〜かぶき町のちゃらんぽらん侍と〜   作:虹武者

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第十五訓 ハードボイルドは静かに決めるものだカミュ

【俺には今、ハマっているものがあるッス。それは…】

 

「マスター、坊やにカミュを。」

「マスターじゃねぇ。親父だ旦那。それに坊主にカミュはまだ早え。ウーロン茶にしときな。」

 

【そう。ハードボイルドッス。】

 

 おでん屋の屋台でおでんを食べる弧次郎。その隣にいるのは小銭形平次。ハードボイルドを愛する岡っ引きだ。その小銭形を見ている弧次郎におでん屋の店主がウーロン茶とおでんを出す。

 

【この坊やは根津弧次郎。あの真選組の土方十四郎というハードボイルドな男の部下だ。そう、彼はハードボイルドの弟子というわけだカミュ。】

 

 小銭形はフッと笑う。弧次郎がウーロン茶をイッキ飲みする。

 

「俺もハードボイルドってやつを知りたいッス。」

「いいだろう。本来、J(ジャンプ)を愛読してそうな坊やだか特別だ。ハードボイルド同心の俺が教えてやるカミュ。」

 

 小銭形は焼酎(カミュ)を飲みながら語る。

 

「坊や、ハードボイルドの語源を知っているか?」

「知らないッス。」

「固ゆで卵だ。」

 

【そう。男は胸に固ゆで卵のような心を持つ。】

 

「はいよ。固ゆで卵だよ。」

 

 店主が2人におでんの卵を出す。

 

「ハードボイルドってどんな感じなんすか?」

「ハードボイルド…それはカミュを愛する生き物だ。」

 

【そう。男は酒と女に酔っていく生き物だがハードボイルドは酒と己に酔っていく生き物だ。】

 

「ついでにおでん屋に寄っていく生き物でもある。」

 

 店主がおでんの大根を出す。弧次郎は卵と大根を食べる。

 

「美味いッス。」

「だろうねぇ。旦那がいつも寄ってくれる店だからねぇ。」

 

 店主が笑いながら雁擬きを出す。

 

「旦那、坊主に経験談を語ってもいいんじゃないか。」

「聞きたいッス。」

「フッ。いいだろう。」

 

【ハードボイルド同心 小銭形平次】

 

第1話 ハードボイルドは驚かない

 

【俺はハードボイルド同心小銭形平次。決して平静は崩さな~い~♪】

 

「アニキ!大変でやんす!」

「落ち着けハジ。ハードボイルドは常に静かに決めるものだ。」

「駅前のコンビニで弁当半額セールやってるっすよ。」

「なんだとぉ!今すぐ行くぞハジ!」

「はいっす!」

 

第1話 完

 

第2話 己と向き合う時

 

【俺はハードボイルド同心小銭形平次。決して己を振り返ることはな~い~♪】

 

「マスター。俺は時に自分を恐れてしまう時がある。」

「旦那、自分が怖いなんて自分を知らないだけでさ。」

「自分の中に眠る恐怖がいつ、自分を飲み込むのか。」

「旦那、いい方法教えてやるよ。鏡でも見るんだな。」

 

第2話 完

 

第3話 ハードボイルドは屈さない

 

【俺はハードボイルド同心小銭形平次。決して力には屈しはしな~い~♪】

 

「小銭形平次、仲間の情報を吐いてもらうぞ。」

「残念だがハードボイルドは暴力には屈することはないのだよ坊や。」

「そうか。なら、このハードSビシビシパブの半額券は欲しくないのか?」

「欲しいです!なんでも話すのでそれください!」

 

第3話 完

 

「なんか、俺も分かったような気がするッス?」

 

 弧次郎は汗を流しながらおでんを食べる。

 

【男には酒でしか癒せない渇きがある。】

 

「はい。焼酎。」

「マスター。だからカミュと呼べ。」

「親父と呼びな旦那。」

 

 店主は弧次郎にウーロン茶を出す。

 

「坊主の渇きはこんなもんじゃ癒せないだろうねぇ。けど、たまには渇きを知るのもいいんじゃないか?」

「マスター…ありがとうッス!」

「親父と呼びな坊主。」

 

 弧次郎がウーロン茶をイッキ飲みする。

 

「そういや旦那。もう狐はいいんですかい?」

 

「狐…」

 

【そう。狐火の長五郎。あれからあの狐の面を見ることはもうなくなった。】

 

「もういいさ。狐に化かされるのももう慣れた。それに、今は狐じゃねぇ。狸だ。」

 

【狸小僧。江戸が…地球が危機から救われて数ヶ月後に突如現れた盗賊だ。狸の面を被りまるで狐火の長五郎みたいに悪党から金をまきあげ貧しき民にばらまく義賊。】

 

「玄蕃みたいな奴ッスね。」

「いつの時代も悪党が栄えれば義賊も産まれる。真の平和とは義賊やヒーローが居ない世界なのだろう。」

「ついでにツケなんかする奴が居ない世界が平和だね。」

 

 店主がまたおでんを出す。

 

「その狸小僧。嘘か真か頭を撃ち抜かれても死なないっていうじゃないですか。」

「ふっ。だから化かされているんだ。」

「昔から狐と狸は仲が悪い言われてやすが岡っ引きと盗賊ほどじゃねぇですな。」

「俺も見てみたいッスねその狸小僧。」

「土方十四郎といるならいずれ会うさ。」

 

 小銭形がおでんを食べ終える。そこに顔に傷のある少女が来た。彼女がハジだ。ハジは慌てて小銭形のところに走る。

 

「アニキ!大変なんです!また、狸小僧から予告状でやんす!」

「よし!行くぞハジ!」

「はい!」

 

 小銭形が立ち上がる。

 

「旦那、お勘定。」

「あ、すんません。」

「しまらないッスね。」

 

 小銭形が小銭で払う。それを店主は弧次郎にあげた。

 

「なんすか?」

「旦那が坊主に奢ってくれるだとよ。これで好きなもん頼みな。」

 

(カッケェェェ!)

 

 弧次郎が震える。

 

「行くぞハジ!弧次郎!」

「俺、決めたッス!」

 

 弧次郎が立ち上がる。

 

「俺にハードボイルドってやつを教えてくださいマスター!」

「マスターじゃねぇ。親父だ坊主。」

 

 店主に頭を下げてお願いする弧次郎とずっこけた拍子に川へ飛び込む小銭形だった。

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