逃げ上手の転生記 〜かぶき町のちゃらんぽらん侍と〜 作:虹武者
「万事屋に新メンバー?」
翌日、銀時は時行を連れて下のスナックお登勢に向かった。銀時と時行を交互に見てしかめっ面をしているのがお登勢。スナックお登勢の店主でいつも銀時に家賃を請求している。
「銀時。あんた、うちの家賃もろくに払わないくせにメンバー増やすのかい?」
「いやぁ、成り行きというかなんというか…」
「オ前ガソンナンダカライツマデタッテモテンパナンダヨ。」
「天パ関係ねぇだろうが!」
突然割り込んできた老け顔と猫耳が特徴の女(?)はキャサリン。スナックお登勢で従業員として働いている。
「今ナゼ女ノ後ロニ?ヲ着ケタ?」
「妥当だろ。」
「銀時様、ちゃんと支払いは出来るのでしょうか?」
次に来たのはたま。彼女もスナックお登勢の従業員でアンドロイドだ。たまは時行をジーと見ている。
「あ、あの…」
「たまの言う通りだよ銀時。あんた、この子に払う金あるの?」
「住み込み食事付きの神楽と同じだ。」
「それタダ働きじゃねぇか!」
神楽が銀時をアッパーする。
「そもそもうちで働くには他にはねぇ特技ってのが必要だ。」
銀時が倒れた状態で話す。
「特技ですか?」
「そうだ。神楽は戦闘と大食い、新八には眼鏡という特技がある。お前には自慢出来る特技があるか?」
「眼鏡が特技ってなんだァァァ!?」
新八がツッコむ。
「特技はツッコミでいいでしょうがァァァ!」
「私の特技は…」
「無視!?僕の叫びは無視ですか!?」
「逃げることですね。」
時行が自慢気に話す。
「何?逃げ上手の若君だから逃げが得意?甘いな。このいちご牛乳より甘い。」
いつの間にか座っていた銀時がいちご牛乳を飲みながら話す。
「いいか?逃げなんて地味な特技で今のジャンプでトップなどやっていけん。やるなら腕を伸ばしたりかめはめ波を撃ったり卍解したり螺旋丸ぐらいできないと生き残れないぞ。」
「全部他所様の必殺技じゃねぇか!あんた何サラッと時行君に余計なこと教えてんの!?」
「そんな大層な特技なんていらないよ。だけど、せめて料理ぐらいはしたらどうだい?」
「料理ですか?」
お登勢が時行に提案する。
「やってみましょうか?」
「え?出来るの?」
銀時が目を丸くさせる。時行は早速、キッチンを借りて料理する。奥からトントントンという切る音、何かをかき混ぜる音、ジューと焼く音が聞こえる。そして、時行がキッチンから出て来た。
「お待たせしました。こちら…いろんな食材を焼いたものになります。」
時行が出したのは真っ黒焦げになった野菜や肉だった。全員が黙ってしまう。
「おいィィィ!全然ダメじゃねぇか!なんだったんださっきの音!?あれ、料理出来る奴の音だぞ!」
「その…料理とかは雫や両さんに任せていましたので…」
「これは料理を教えた方がいいかもね。」
お登勢が提案すると銀時が立ち上がった。
「仕方ねぇ。俺が教えてやる。」
「オ前ニ料理ガ出来ルノカヨ。」
「1人暮らし長かったんだぞ。」
銀時がキッチンに立つ。
「いいか?1人暮らしの男の料理はズバリ炒飯だ。まずは野菜とハムを切り、油をひいた鍋にご飯を入れ、切った野菜とハムを入れる。」
「銀ちゃん上手いネ。」
「そう言えば銀さん、料理は出来ましたね。」
銀時の料理を見て時行は驚いていた。銀時はそこからも胡椒などを加えて料理した。
「ほらっ。完成したぞ。」
そう言って銀時は時行にパフェを出した。
「なんでだァァァ!?なんでさっきまで炒飯だったのにいきなり変化したァァァ!?」
「男の料理と言ったらパフェだろ。」
「それはあんただけですよ!どこ行った野菜!?どこ行ったハム!?どっから来たアイスクリームゥゥゥ!?」
目を丸くさせる時行。
「次、私がやるネ。」
「え?神楽ちゃん大丈夫?」
「任せるネ。子供でも作れる料理やるネ。」
「お願いします!」
神楽がキッチンに立つ。
「まずご飯炊くネ。次に卵かけるネ。…これで出来上がりネ。」
そう言って神楽は炊飯器に卵かけて全部食べた。
「完成通り越して食事終わってるだろうがァァァ!」
「これなら誰でも出来るネ。」
「一瞬でご飯が消えた。」
あっという間に炊飯器のご飯を平らげた神楽に時行は驚いていた。次はたまがやると前に出た。
「では私が。」
「たまさんなら大丈夫ですね。」
「まず、材料の卵、牛乳、砂糖などを入れます。」
たまはそう言って材料を口に入れた。そして、コーンを出すとそこに口からソフトクリームを出した。
「…ソフトクリーム、完成です。」
「真似出来るかァァァ!」
「バニラがダメなら…チョコレートもあります。」
「ホントだ!チョコレートアル!」
たまはお尻からチョコレートソフトクリームを出す。
「止めてくださいたまさん!小説だからまだマシですけど漫画だと全部モザイクになってしまいます!」
「あら?何してるの?」
後ろから声が聞こえた。振り返ると女性がいた。彼女は志村妙。志村新八の姉でキャバ嬢。お妙とよく呼ばれている。お妙を見つけた新八が叫ぶ。
「姉上!」
「騒がしかったから来てみたら…」
お妙は時行を見る。
「この子は?」
「初めまして!北条時行と言います!」
「訳あって万事屋で働かせてる。」
「銀さんが!?実は私のとこも新しい子を採用したのよ。」
「姉上のところもですか!?」
新八が驚く。
「とても健気で可愛くて働き者でいい子なのよ。」
お妙がニコニコで答える。
「それで今は何をしているのかしら?」
「時行君に料理を教えていました。」
「なら、私が教えてあげる。」
その発言を聞いた銀時が逃げる。それをお妙が捕まえる。
「どこ行くのかしら銀さん?」
「ちょっとHUNTERXHUNTERが復活したという噂を確かめに。」
「後にしなさい。」
お妙がキッチンに立つ。銀時達は不安しかなかった。
「時行君。私が教えるのは卵焼きよ。まずは卵を混ぜる。この時、回してかき混ぜるよりも縦にきるようにかき混ぜる方がよく混ざるわ。続いてかき混ぜた卵に炭酸水を入れるの。こうすればふっくらとした卵焼きが出来るわ。最後に卵を焼けば…」
時行はお妙の動きを見て目をキラキラさせた。最後に焼いた卵焼きを皿に乗せる。お妙は時行に真っ黒焦げになった暗黒物質を出した。
「卵焼きの完成よ。」
「どこがだァァァ!?」
新八が叫ぶ。
「なんで!?さっきまでちゃんとした卵焼きだったよ!なんで皿に盛った瞬間に変身するんだ!?」
新八がひたすらツッコむ。すると、時行がお妙の
「時行君!?」
「なんでしょうかこれは?外はぬちゃぬちゃ、中はパサパサ、辛くもなく甘くも…」
「時行ー!」
時行が青ざめたまま倒れた。慌てて駆け寄る銀時達。
「おいィィィ!息してませんよ!」
「神楽!救急車呼べ!」
「救ー急ー車ャャャアア!」
「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったぁ!」
神楽が障子を開けて大声で叫ぶ。
「新八!LEDを持ってこい!」
「銀さん!これだと電球です!」
「それで殴って蘇生させる!」
「無理ですよね!」
なんとか時行の心肺蘇生を成功させた銀時達。時行は何事もなかったかのように起き上がる。
「え〜と…頼重殿は?」
「危ねえ。三途の川バタフライアウェイしてたぞ。」
後ろを振り向く時行。 新八が状況を説明する。
「とりあえずなんでも口にするのは止めておきましょう。」
「は、はい。」
「これじゃあ、料理もままならないね。」
「待ってください!あと1回だけやらせてください!」
時行がお登勢に物申す。いいよとお登勢は許可を出す。カウンターで銀時達が待っている。
「何作ると思う?」
「野菜トゴ飯ヲ混ゼタダケノテキトー料理ニ決マッテルネ。」
「意外と凄い料理が出てきたり…」
「無い。料理は他の奴に任せてる奴がまともな料理など…」
銀時達が考察していると時行が出てきた。今度は自信あるのかニコニコしている。時行が銀時達の前にその料理を出す。
「…時行君、これは?」
「私特製…イナゴ丼です!」
ご飯の上に醤油などで味付けしたイナゴがどっさりと乗っていた。ピクピクと脚が動いている。銀時達は青褪めながら時行特製イナゴ丼を見る。
「え?これ食うの?」
「美味しいですよ。」
「既に食ってる…」
モグモグとイナゴを食べる時行。神楽が銀時にイナゴ丼をスッと差し出す。それを合図に全員が銀時にイナゴ丼を差し出した。
「え?」
「銀ちゃんが責任持って食うネ。」
「何の責任だ!?これは責任じゃなくて理不尽だろ!」
「銀さん…そんなに嫌ですか…?」
時行がウルウルした目で銀時を見る。新八達が冷たい視線を送る…というより刺してくる。銀時は全身から汗を流すと一気にイナゴ丼を口の中にかき込んだ。そして、倒れた。
「銀さん!?」
「…頼重殿が見える。」
「あんた、頼重知らないでしょ!」
この結果、時行には卵かけご飯を教えることにした。