逃げ上手の転生記 〜かぶき町のちゃらんぽらん侍と〜 作:虹武者
ある日、時行が公園を走っていると自販機の下で寝転がっている男を見つけた。近づいて見ると自販機の下に手を伸ばして何かを取ろうとしていた。
「あの、私が代わりに取りましょうか?」
「あ、ごめんね。じゃあ、お願いしようかな?」
サングラスを掛けた髭面の男が時行にお願いする。時行が腕を伸ばして取る。
「はい、どうぞ!」
「ありがとう。」
男が受け取る。よく見るとゲームに使うコインだった。
「チクショー!」
男はコインを投げて悔しがる。それを哀れに思った時行が声をかけた。
「どうしたのですか?」
「もう金がない。」
「そうなのですか?」
「ああ。俺は…金も仕事も無い無職だ。こうやってしか生きていくしかないのだよ。」
男が愚痴る。すると、時行は閃いたと男に提案した。
「では、私が仕事を紹介します!」
「え?出来るの?」
「はい!実はそういうところに詳しい人を知っていますので!」
時行は善意で男に提案した。男は2つ返事でOKする。そして、時行は男を銀時に紹介した。しかし、銀時達は男を冷たい目で見る。男もここなのと呟きながら時行を見た。
「時行。説明しろ。」
「この方が仕事を探しているというのでここを紹介しました!」
「不採用。」
「早すぎませんか!?」
時行がびっくりする。
「そもそもなんでこいつなんだ?」
「お知り合いですか?」
「まるでダメなおっさん。略してマダオネ。」
「マダオさんですね!」
「違うよ!」
神楽の説明を聞いた時行が納得する。それをマダオが否定する。
「その前に以前履歴書出したよね!?あれどうなったの!?」
「履歴書?…ああ、あれか…定春のケツに吸い込まれていったぞ。」
「トイレットペーパーにしてんじゃねぇ!」
銀時の後ろにいる定春が欠伸する。
「っていうか、この子誰!?」
「初めまして!この度、万事屋のメンバーとしてここに住むことになりました!北条時行です!」
「なんでこの子はOKで俺はダメなの!?」
「よく考えろ。採用するならおっさんよりショタだろ。」
「納得したよチクショー!」
マダオが悔しがる。
「話ぐらい聞いてみたらどうでしょうか?」
「…分かったよ。それじゃあ…」
銀時は仕方ないと眼鏡を掛けた。それに続いて神楽、定春、時行も眼鏡を掛けた。全員、マダオの前に座る。
「今から不採用前提の面接を始めます。」
「採用する気ゼロじゃねぇかぁ!」
このまま叫んでも仕方ない。こうなったら何がなんでも採用してもらおうとマダオは決心した。
「それじゃあ、簡単に自己紹介してくれ。」
「長谷川泰三。38歳。元入国管理局局長。ここには新しい自分を探しに来ました。」
「マダオ。無職。童貞。」
「テキトー過ぎるだろぉ!そもそも無職になったのはあんた達のせいでもあるからね!それと、まだ童貞って言ってないよ!」
「顔が童貞アル。」
「どんな顔!?」
長谷川がツッコむ。次は新八が質問する番だ。何故かスカウターみたいな眼鏡を掛けている。
「え〜、ツッコミスカウターでさっきから審査していましたがあなたのツッコミ力は5です。ゴミです。」
「ラディッツしなくていいから!というかツッコミ力って何!?」
「あなたはここでツッコミ役としてどんな役に立ちますか?」
「どんな質問だよ!?」
長谷川がツッコむも新八はツッコミしか審査していない。次は神楽が質問する。
「私に財産全部寄越すアル。」
「質問じゃないんだけど!?ただの脅迫なんだけど!?そもそも俺ホームレスだから財産なんてほとんどないよ!」
「マダオと…」
「何の評価!?」
長谷川のツッコミも虚しくマダオ判定される。次は定春だ。長谷川は定春に面接なんて出来るのか不安に思っていた。
「ワンッ!」
「え?」
「答えなさい。」
「無理だろぉ!」
銀時の発言に長谷川が叫ぶ。
「質問の意図どころか質問内容すら分からないんだけど!」
長谷川がツッコんでいると定春が筆を口で咥えて半紙にマダオと書いた。
「結局マダオォォォ!?何やってもマダオじゃん!?」
長谷川がツッコむもマダオ判定は変わらない。次は時行が質問する番だ。長谷川はどんな質問が来るのか身構えている。
「では…あなたが今までの人生で何を成してきたか教えてください。」
「一番まともな質問きたぁ!なんで小学生の質問が一番まともなんだよ!?それと質問が重すぎる!」
長谷川がツッコむ。しかし、ここで好感度を上げておけばもしかしてと思い質問に答え始めた。
「私、長谷川泰三は入国管理局局長として江戸と天人との外交に携わっていました。しかし、あるミスが原因で仕事をクビになり無職となりました。それでも、日々前を向いて生きてきました。時には下を向いたり後ろを向いたりしましたが周りの方々の助力のおかげでここまでこれました。2年前の戦争では再び入国管理局局長として解放軍と地球との和解に尽力し双方の危機を救いました。」
「分かりました。…マダオと。」
「結局マダオォォォ!?俺の人生マダオかよ!」
「真にダンディーなおっさん。略してマダオです。」
「良かった。まだマシだった。」
長谷川がホッとする。
「では次の質問です。あなたは故郷を滅ぼした相手と笑顔で手を繋ぐことが出来ますか?」
「重いよ!さっきから質問が重いよ!どんな人生歩んだらそんな質問になるの!?」
長谷川はまたツッコむも質問に答えようと考えた。チラッと銀時を見る。
「故郷を滅ぼしたとかは分かりませんが職を失った原因とは今でも仲良く出来ています。」
「まったくだらしないおっさん…マダオと。」
「何言ってもマダオじゃん!さっきよりも酷くなってるよ!」
時行の無慈悲な評価に納得出来ない長谷川。
「長谷川さんよぉ、笑顔は大事だよ。面接の時も恨みある相手との握手の時も笑顔じゃないと相手からの印象最悪よ。」
「その2つを比べるな!」
「次で私からの質問は終わりです。」
長谷川がツッコむも時行は無視して次の質問に移る。最後の質問と聞いて長谷川は身構えた。
「その…どんな時に興奮しますか?」
「質問の趣旨が変わったァァァ!」
長谷川が叫ぶ。
「なんで!?さっきまでまともで重い質問ばっかだったじゃん!なんでいきなり変態な質問になったの!?」
「ちなみに私は命を賭けた鬼ごっこに興奮します。」
「知らないよ!上級者過ぎるよその性癖!見ろ!銀さん達もドン引きしているよ!」
顔を赤らめ息を荒くさせる時行に銀時達がドン引きしている。よだれすら垂らしていた。長谷川は悩みながらも恥ずかしそうに答えた。
「え、えっと…どちらかというとMなんで罵りとかだと興奮します。」
「マジでダメなおっさん…マダオと。」
「いい加減にしろぉ!」
我慢出来なくなった長谷川が叫んだ。
「さっきから評価全部マダオじゃねぇか!あんたらやっぱり最初から採用する気ゼロでしょ!」
「何言ってんだ。ちゃんと評価はしているよ。」
そう言って銀時達は長谷川に紙を見せた。そこには優しいや面白い、誠実などさっきまでの評価とは違うことが書いてあった。それを見た長谷川は驚く。
「な…」
「俺達はどんだけあんたと一緒にいたと思ってんだ?」
「僕達は長谷川さんのことならよく知ってますよ。」
「そうアル。」
「ワンッ!」
「私も初めてお会いした時から一緒にいて楽しそうな人だと思いました。」
「みんな…」
長谷川はグラサンの下から涙を流す。
「総評して俺が判定を出そう。…次の面接では的確なツッコミと常に笑顔を忘れないことを心がけましょう。」
「結局不採用じゃねぇかァァァ!」
万事屋に長谷川の叫び声が響いた。