逃げ上手の転生記 〜かぶき町のちゃらんぽらん侍と〜 作:虹武者
ある日、万事屋の鏡に細工している女がいた。彼女は猿飛あやめ。御庭番衆の忍者だ。彼女はマジックミラーを取り付けその後ろに隠れる。
「あの時は騙されたけど今度こそは銀さんのあんなところやこんなところを見てやるんだから。」
猿飛が待っていると時行が入ってきた。それを見た猿飛は目を丸くする。
「…誰なのかしら?え?本当に誰?」
初めて時行と会う猿飛は困惑している。
「今日は弧次郎のところに泊まるって銀さんに連絡はしましたけどちゃんと受け取ってくれたのでしょうか?」
「え?もしかして普段はここに住んでるとか言う?」
時行は鏡を見ながら身嗜みを整える。
「え?そもそもこの子、凄い美形なんだけど。私やツッキーにはないタイプの清楚系美形なんだけど。」
猿飛が狼狽える。時行はお風呂に入ろうと服を脱いだ。時行の股間を見てしまった猿飛はさらに困惑する。
「嘘でしょ…あの子、男の子なの!?あの美貌で男!?九兵衛の真逆なんだけど!?」
猿飛が狼狽えていると時行が戻って来た。その色気に絶望する。
「なんなのよあの子…こうなったら…」
「ん?誰かいます…」
時行が気配に気付く。しかし、もう遅く猿飛が意を決して鏡から飛び出す。目にも止まらぬ速さで苦無を突き刺す。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、久しぶりの口上を表す。あなたな勘もいいみたいだけど相手が悪かったわね。」
「あの…誰と話してますか?」
時行が驚きながら話しかける。猿飛は割れた鏡に写る自分に苦無を立てていた。よく見ると眼鏡が外れている。時行が眼鏡を渡す。それを受け取り掛ける。
「あなた、何者?」
「え、えっと…私はここで奉公している北条時行と申します。」
「奉公!?」
猿飛が白目を剥いて驚く。
「えっと…あなたは?」
「銀さんのセフレの猿飛あやめよ。」
「セフレ?」
「セフレっていうのはね…」
「何教えてんだてめぇー!」
時行にセフレを教えようとした猿飛に銀時が飛び蹴りする。
「あぁ銀さん!この小説で初登場の私に対して容赦ないツッコミ!それこそ私の銀さんよ!」
「いつお前のものになったぁ!?」
銀時がツッコむ。時行はノリについて来れずあたふたしている。
「あ、あの…この方は?」
「…変態忍者。」
「そんな説明でいいのですか!?」
時行がツッコむ。
「私は公儀御庭番衆猿飛あやめ。さっちゃんと呼びなさい。」
「分かりました。さっちゃんさん。」
「違うわね。でもまぁいいわ。」
猿飛は改めて時行を見る。女の子にも見える中性的だが端正な顔立ち。華奢に見えるがそこそこある筋肉。将来将軍級になるポテンシャルのある…
「時行、早く服着ろ。」
「あ…」
銀時に言われて気付いた。時行は風呂に入ろうとしたため全裸だ。それに気付いた時行は顔を赤面させ急いで着替える。そんな時行を見て猿飛は思い付いた。
「彼を…時行君を私と銀さんの子供にしましょう。」
「何とんでもないことを言い出すんだこいつ!?」
猿飛の提案を即却下する。
「そもそも俺とお前が結婚したことないだろうが!」
「何言ってるの銀さん?この通りちゃんと証拠があるじゃない。」
そう言って出したのは結婚報告の年賀状と自分と銀時の顔を張り付けたゴシップ誌の一面だった。
「ただの捏造だろうがぁ!ってかまだそれ持ってたの!?」
銀時がツッコむ。しかし、時行は信じていた。
「おめでとうございます!」
「違うからね!こんな雑な捏造信じないでくれる!?」
「じゃあ、練習しましょう!銀さんと私のこれからを!」
「しねぇよ!本編でもファイナルファンタジーにはならなかったんだ!なってたまるかぁ!」
銀時が叫ぶ。猿飛は時行を可愛がっていた。
「さぁ、銀さんの子供として立派なメスブタに成りましょうね。」
「何にするつもりだぁ!」
銀時がかかと落としする。
「そもそも俺は子育てなんかやりたくねぇんだよ!」
「まずは授乳ね!」
「無理だろうがぁ!」
銀時が猿飛を蹴り飛ばす。時行はドン引きしていた。
「何から始めようとした!?もうこいつそんな歳じゃねぇだろうが!」
「じゃあ次は…」
「帰れ!」
銀時が猿飛を追い出す。静かになったと戻ると時行も居なくなっていることに気付いた。その時行は猿飛と一緒にいる。
「あの…何故私を連れて?」
「あなたから感じたのよ。私と同じ波動を。」
「…わ、私は変態じゃありませんよ。…た、多分…」
「いろいろとツッコミたいところはあるけど。」
猿飛は時行を連れてある屋敷の前に来た。
「ここは?」
「今からここに潜入して悪徳高利貸しを始末するのが今回の私達の仕事よ。」
「殺し屋ですか?」
「始末屋よ。」
時行は猿飛が用意した服を着る。
「あの…何故私の体とぴったりなのでしょうか?」
「気にしたら負けよ。」
2人は屋敷に潜入する。
「あなた、潜入の経験があるのかしら?」
「まぁ…一応。」
屋根裏を匍匐前進する。
「その人、どんな人なんですか?」
「頭以外毛むくじゃらの出っ歯よ。」
「想像しにくいです。」
潜入を続け遂に悪徳高利貸しがいる部屋の天井裏に到着した。穴を開けて覗く。そこには頭が禿げているネズミの天人がいた。
「あれが今回のターゲット、
「酷い名前ですね。」
裸毛男ともう1人男が酌をしている。
「解放軍との戦争が終わりまた仕事がしやすくなりやしたね裸毛男の旦那。」
「まったくじゃ。黒田屋もそれを利用したのだから余程のワルじゃのぉ~。」
「いえいえ、禿げの旦那ほどではありませんよ~。」
「ねぇ。今禿げって言わなかった?」
2人のゲスな会話が聞こえてくる。
「聞いてていい気分にはなりませんね。」
「ああいう外道を排除するのが始末屋の仕事よ。」
猿飛がクナイを構える。時行にもクナイと笛を渡す。
「行くわよ。」
「なんですかこの笛?」
「あなた、笛吹ける?」
「吹けますよ。」
「じゃあ…」
猿飛が時行に教える。天井裏でそんなことをしていると気付いていない2人は笑いながら酒を飲む。すると、笛の音が聞こえてきた。
「なんだ!?」
「何奴!?」
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、外道必殺の理を表す。」
天井を破り出て来る猿飛と笛を吹いている時行。
「さぁ、覚悟しなさい!」
「…あの、あなたが見ているは私です。」
眼鏡が外れた猿飛が時行に向かってクナイを向ける。
「く、曲者だぁ!」
「出合え!出合え~!」
続々と出て来る刀を持った男達。時行は慌てて眼鏡を猿飛に渡す。
「いいわね?ここからが正念場よ。」
「かっこ良く言ってもダメですよ。」
囲まれる2人。裸毛男と黒田屋の2人は逃げようとした。それを見つける時行。
「さっちゃんさん!逃げますよ!」
「殺れぇ!」
裸毛男の号令で襲いかかる男達。それを時行は華麗に避けた。時行にとってこの状況は南北朝と何も変わらない。楽しそうに避けていた。一方の猿飛はクナイを相手の手に突き刺し刀を落とす。
「やるじゃない!あなた、私の弟子といい勝負出来るわよ!」
「ありがとうございます!」
「でも…あなた、なんでそんなに興奮しているのよ?」
命の危険に晒されているのに興奮して紅潮させている時行に若干引く男達。猿飛は時行にシンパシーを感じている。
「あなたも私の弟子にならないかしら?共にドMの道を制覇しましょう。」
「すみません。もうその道からは外れてしまってますので。」
時行が即断った。再び襲いかかる男達。時行はそれを避けながら2人を追いかけた。猿飛が時行の援護をして男達の足止めをする。時行が捜しているとヘリで逃げようとする2人がいた。
「見つけました!」
「こ、ここまで来やがったか!」
黒田屋が拳銃を向ける。が、今更拳銃程度で止まる時行ではない。黒田屋が撃つも全てを躱して接近する。そのまま黒田屋に猫騙しをした。黒田屋は後ろに転け頭をぶつけて気絶した。
「は、早く…」
「どこへ逃げようというのかしら?」
ヘリには既に猿飛がいた。仲間は全員倒されている。猿飛はクナイを構える。
「ま、待て!金ならいくらでもやる!だから…」
「頭だけって中途半端だと思わない?」
そう言って猿飛は裸毛男の毛を全てクナイで剃った。その腕前に時行は拍手した。
「見事です。」
猿飛は嬉しそうに決める。外からパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「仕事は終了よ。後は警察が片付けてくれるわ。」
「本当に殺し屋じゃないのですね。」
「始末=殺しなんて昔の時代の考えよ。平和になれば方法は問わないわ。」
猿飛の言う昔の時代の人間である時行は今の考えに共感した。2人は屋敷から去る。そのまま猿飛が走るのでその後を追う。
「あの…」
「次の仕事よ。」
さっき終わったばかりなのに次の仕事に行くと言う猿飛。時行は忙しい人だなと思った。猿飛が走る先に男が歩いている。
「次のターゲットはあの男よ。」
「はい!」
2人は男に近付く。そのまま同時にジャンプして飛び付こうとした。
「銀さ~ん!」
「えぇ~!?」
そこにいたのは時行を捜していた銀時だった。銀時は即座に反応し木刀で猿飛を殴り飛ばした。それと同時に時行も飛ばされる。
「あっ。」
飛ばされながら時行は思った。この人とは距離をとろう。