全ての幸は箱の中   作:眠り狐のK

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※観覧注意
かもしれない

9話で「謎の箱について調べてみる」を選択したルート
9話から分岐になるので、見たい方のルートを読んでください


10-A.夢

 セリカを救出した日、その夜。既に日は変わり、時刻は4時を迎えようとしていた。

 あれから気を失ったセリカは車まで運び、ついでにカタカタヘルメット団が使用していた戦車の部品もいくつか回収してアビドスに戻った。

 戦車の部品を回収した理由は、カタカタヘルメット団がどうして改造した戦車を使っていたのか、どうしてその部品を手に入れられたのかを調べるためである。

 破壊された戦車の部品を現地で簡単に調べてみると、その部品は現在では製造が中止されている違法なものだということが判明した。唯の不良であれば、普通の戦車を手に入れることですら難しい。その理由は、単純にお金がかかるから。ブラックマーケットや廃墟等に住み着いているような不良では戦車一台手に入れるのでさえかなり難易度が高い。それが改造された戦車であれば尚更のこと。違法な部品なんか、通常売りに出されていることなんてないので、手に入れられるとしたらブラックマーケットしかない。それも、製造中止されているようなものであれば、当然その分値も張る。その上ブラックマーケットで売られているものが適正価格であることも稀なこと、そんなものを唯の不良が何台も手に入れられる筈がないのだ。となれば、残された可能性は裏に誰かがいる可能性、つまり誰かに雇われているという可能性くらいだろう。もし、そうであれば執拗にアビドスを襲撃していたことも、それが可能なほどに物資を所持していたことにも納得がいく。そのため、この戦車の入手ルートを調べ上げれば、その繋がりから裏に潜む人物まで特定することができるかもしれない。そのために一部の部品を持ち帰ることにしたのだ。

 アビドスに戻ってからはそれぞれのことを始めた。ノノミとホシノはシルとセリカの様子を見て、アヤネと先生は持ち帰った部品について調べ、シロコは武器やドローンのメンテナンス。それぞれがそれぞれのことをしながらも、全員がそのままアビドスに泊まることとなった。

 きっかけはホシノとシル。治療の甲斐もあり、セリカは夜になればある程度動けるレベルには回復した。しかし、シルはずっと眠っていた。朝に比べれば熱は下がってきているものの、まだ完全に下がっている訳ではなく、ここまで一度も目覚めていない。これに関しては、現状病気という感じではないので、熱が下がるまで様子を見てみるということになった。その間、シルをまたホシノの家まで連れて帰るというのはシルの身体に負担になってしまう可能性がある。そこを考慮し、シルはこのままアビドスの保健室に寝かせ、ホシノは泊まり込みで看病をすることにした。ついでにセリカも一日安静ということでそのまま同じように保健室に寝かされ、他のみんなも泊まることになり、今に至る。

 皆がそれぞれ眠りにつく中、ホシノはこの時間に目が覚めた。それは、いつもの習慣故か、シルのことが心配だからこそあまり寝付けなかった故かはわからない。ただ、このまま二度寝しようという気にはならなかった。

 ホシノは顔を上げ、眠っているシルに目を向ける。その眠っている表情に今朝のような苦痛の色はない。それを感じ取ったホシノはほっと一息つく。

 目も冴えてしまい、これからどうしようかとホシノは悩む。

 ふと目に入る黒い箱。シルの首に常に下げられているその箱は現在は今朝のような光は収まっており、いつもの唯の黒い箱に戻っていた。

 ホシノは、この空いた時間でその箱について考えることにした。

 

 一体、この箱は何なのだろうか?

 セリカが拉致されたその朝、そしてシルが風邪で倒れた日のその朝、その箱は不気味に紫色の光を放っていた。その光は長い間続いていたものの、セリカの救出が終わって帰ってきた時には元の状態に戻っていた。そこだけで見てみれば、セリカの危険を知らせてくれたとも言える。シルが苦しむ必要があったのかは疑問でしかないが。だが、その他に反応を示した場面がある。それが、シルに銃をプレゼントしたときのこと。射撃場でどの武器に適性があるか調べようとした、その際にシルはどこからか銃を取り出し、そこから的どころか壁まで破壊するほどの規格外の銃撃を見せた。そのとき、その銃を取り出す時に似たように箱から光が放たれていたのだ。

 やはり、この箱はシルの願いに反応を示すのかもしれない。それは、射撃場での件のときに一度考察したことだった。射撃場の件では的に銃を当てられるように、その願いを叶えるかのように極端に威力も範囲も大きい銃が出現した。それなら今回は、何らかの要因でシルがセリカの危機を察知し、それを助けることを祈ったからこそ、アヤネは早期にこの異変に気づき、セリカの救出が間に合ったと考えることができる。それなら辻褄が合う。今のシルのこの姿を除けば。

 最後に疑問に残るのはシルが何故タイミング良く熱を出して倒れたのかということ。偶々なのか、それとも箱が光った影響なのか。しかし、それが影響しているなら何故射撃場での時には何ともなかったのか。いや、反動で壁に叩きつけられた印象が大きかっただけで、実はその時も影響を受けていた? だとしても、現状丸一日寝たままだというのに、あの時は壁に叩きつけられた痛みの方が大きいなんてことも考えづらい。もしかしたら、セリカが拉致されたことを知った要因の方になにかがあるのかもしれない。

 結局、どう考察しても検証のしようがないのであれば確認もできない。そんなことを考えながらホシノは箱を見つめる。

 黒く、それでいて宝石のような輝きを持つ不思議な箱。いつの間にか、その吸い込まれるような黒い輝きにホシノは目を奪われていた。こんなに綺麗でありながら、その力が発揮される際には不気味な紫色の光を放つ。

 

 

 そう、こんなふうに、不気味で、きれいな、むらさきいろに

 

 

 

 

 

―――願いは?―――

 

 

 

 

「……え?」

 

 何処からか聞こえる声。知らない筈なのに、何故か聞いたことのあるような声。

 

 

 

 

―――ホシノちゃんの、願いは?―――

 

 

 

 

「ねが……い……」

 

 その正体が何なのか、シルと何か関係があるのか、願いを聞いてどうするつもりなのか。普通であれば考えつくような疑問さえ、今のホシノにとってはどうでもいいこととなっていた。

 今のホシノの頭の中には、その紫色の光の美しさと、その声に対する欲望の解放だけしかなかった。そして―――

 

 

 

 

―――そう、ホシノちゃんの願い―――

 

 

 

 

「わ……たしのねがい……は…………『ユメ先輩にもう一度会いたい』」

 

 

 

 

 持っていた筈の警戒心も忘れ、その欲望を口にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――わかった、その願い、叶えてあげるね―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声と共に、この部屋は、ホシノの視界は紫色の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 目が覚めると、目の前ではシルが心地よさそうに眠っていた。どうやら、シルのベッドの横で眠ってしまっていたらしい。

 昨日の苦しんでいたシルの表情は一変して気持ちよさそうな寝顔を浮かべている。その表情を見たホシノは安心したように表情を緩める。これなら安心だと感じながら少し乱れた布団を綺麗に直してあげる。

 周りを見ると、他の対策委員会の姿は見えない。時刻を見れば既に8時に差し掛かりそうだった。もうみんないつもの教室にいるのだろうと、ホシノはシルの表情を見て改めて安心感を得ながら保健室を出る。

 

「うへ、おはよ〜…………え?」

 

 そしていつものように眠そうな表情のまま教室に入ると、ホシノは衝撃の光景を見た。

 見覚えのある水色の長い髪、もう二度と見ることは叶わないと思っていたその姿。その人物はゆっくりと振り向き、ホシノに笑顔を見せる。

 

「おはよう、ホシノちゃん!」

「……ユメ…………先輩……?」

 

 見間違える訳が無い、その声を忘れる筈がない。自分の知っているその姿、声、まるで夢のようだった。

 

「ユメ先輩!!」

「わわっ! どうしたのホシノちゃん? もしかして、悪い夢でも見ちゃった?」

 

 あぁ、本物だ。夢じゃなかった。こんなにはっきりとした意識で、はっきりと声を聞いて、抱きしめればその温もりが伝わってくる。

 

「ごめんなさい!! 私が酷いことを言ったから!! ユメ先輩が……あんな……!!」

「もう、何言ってるのホシノちゃん、私はちゃんとここにいるよ?」

 

 そうしてユメ先輩は包み込むようにホシノを抱きしめる。

 あの時は、その性格もあって抱擁なんてしたことはなかった。でも、今なら遠慮なくその温もりに触れることができる。あぁ、やっぱりこれは夢じゃなかったんだ。夢であれば、こんなにはっきりと温もりを感じられる筈がない、声が、匂いが、その認識が、ここまではっきりとしている筈がない。ユメ先輩と喧嘩をして、それが原因で砂漠の中でヘイローが壊れた状態で見つかったなんて、あれこそが悪夢だったのだ。

 

「うへへ、そうですよね……。あ、そういえばみんなは?」

「みんな?」

 

 そう、保健室ではシルが眠っているのだから、当然可愛い後輩達も居るはずだ。なのに、ユメ先輩が首を傾げているのを見ると、この教室にユメ先輩ただ一人しかいないこの状況を見ていると、何故か嫌な予感が頭から離れなかった。

 

「みんなですよ……、シロコちゃんに、ノノミちゃんに、セリカちゃんにアヤネちゃん、みんな出掛けているんですよね?」

 

 ホシノが大切な後輩達の名前を連ねていくごとにユメ先輩の笑顔は消え、寂しそうな表情へと変わる。ホシノを抱きしめる力が強くなり、優しく撫でる。

 

「うへへ、どうしたんですかユメ先輩?」

「まだ……受け入れられてなかったんだ。ごめんね、ダメダメな先輩で……」

「な、何を言ってるんですか?」

 

 優しく撫でるユメ先輩の手にホシノは心地よさを覚える。しかし、嫌な予感が薄まることはなかった。そして、ユメ先輩は言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……みんな、半年前に死んじゃったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…………?」

 

 何を言っているのか、分からなかった。

 死んだ? 

 誰が? 

 みんなが?

 シロコちゃんが?

 ノノミちゃんが?

 セリカちゃんが?

 アヤネちゃんが?

 そんなこと、信じられるはずがない。

 

「じょ、冗談ですよね? やだなぁ、ユメ先輩、いつからそんな意地悪なこと言うようになっちゃったんですか?」

「……うん、ごめんね、意地悪なこと言っちゃったよね。ほんとはみんなちょっと旅行に行ってるだけなの。だから、大丈夫だよ。」

「そ、そうですよね……!」

 

 ホシノは安心したようにほっと息をつく。やっぱり、そんなことある筈がなかったんだ。

 

「……うん、今日はお休みにしよっか」

「え、急にどうしたんですか、ユメ先輩?」

「ホシノちゃんも、毎日頑張ってて疲れてるでしょ? あまり無理してると倒れちゃうよ?」

 

 それはユメ先輩の優しさだった。ホシノはこれまでアビドスを守るために身を削って戦ってきた。だからこそ、こういう精神が疲弊しているときくらい休もうと、ユメ先輩は言っているのだ。

 その原因の何割かはユメ先輩のせいですが……なんてことも思ったが、今で自分がユメ先輩に強く当たってきたことも考えれば自分にも否はあるのだろう。ホシノは素直に受け入れることにした。

 

「じゃあ、私は買い物に行ってくるから、ホシノちゃんは休んでて」

「え、それなら私も……」

「ううん、今日は休むって言ったでしょ? 危険なことをするわけじゃないし、私一人で大丈夫だよ」

「わ、わかりました……」

 

 ホシノは久しぶりにユメ先輩が頼りに感じられた。それは、疲弊による影響か、それとも新しい後輩達が出来たことで成長していたのか。

 

「あ、いつもの教室には入らないようにしてね?」

 

 そう言い残してはユメ先輩は教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、暫く時間が経った。

 ユメ先輩が死んだ夢を見ていたせいなのか、どうしても不安が抜けない。あの夢の通りに、このまま帰ってこないんじゃないか。そんな不安がずっとホシノの中に渦巻いている。

 少し気分転換に散歩をすることにした。

 ふと、ホシノは最後にユメ先輩が言ったことを思い出した。『いつもの教室に入ってはいけない』と。

 いつもの教室とは? 

 そう言えば、人の気配がして無意識に入ったが、ここはいつも対策委員会で活動していた教室兼会議室とは違う教室だということを思い出した。それなら、いつもの教室とはそこのことを言っているのだろうか?

 ホシノは、そこに行ってみることにした。本当は良くないことは分かっている。ユメ先輩が入ったら駄目と行っていた場所に入ろうというのだから、当然のこと。しかし、それでもホシノは気になって仕方がなかった。それは、好奇心によるもの……というよりも、ユメ先輩が初めて自分に隠し事をしたことによるものが大きかった。

 ユメ先輩は、その天然で素直な性格故に嘘をついたり、隠し事をするのが苦手だ。その上、元々はたった二人でアビドスを守ってきた。その中でこういうことにおいて隠し事をするようなことなんてあり得ないことだった。そんな先輩が隠していること、それは確認しておかないといけないとホシノは思った。

 

 足を進める度に、いつもの教室が近づいていく。みんなと青春を過ごしたあの教室が。近づいていく度に、何故か嫌な予感が強まっていく。確認するべきだと思っていたのに、もう一人の自分が行ってはいけないと言っているかのように、胸がざわついていく。

 そして、とうとうその教室の扉は開かれる。

 

 そこは、砂で汚れた教室だった。他の全く使われていない教室に比べればある程度の掃除はされていて綺麗ではある。しかし、部屋の隅や、所々一部には砂が入り込んでいる。

 これはおかしい。ここはみんなで会議をするためにも、しっかりと掃除されていた筈だ。少なくとも、昨日までは綺麗だった筈だ。

 ふと、ホシノの視界にあるものが映り込む。机の上にまとめて置かれている。

 

 

 

 ノノミのゴールドカード

 

 

 アヤネの眼鏡

 

 

 セリカのリボン

 

 

 シロコのマフラー

 

 

 そして、それぞれの愛銃と学生証。そのどれもが砂で汚れ、ボロボロになっていた。

 

「な……に……これ……」

 

 

 

 

 

―――……みんな、半年前に死んじゃったんだよ―――

 

 

 

 

 

 ユメ先輩の言葉が頭をよぎる。あれは嘘ではなかったのだ。

 いや、あの言葉を聞いた時点でどこかそれが本当のことだということは感じていたのかもしれない。そもそも、あの時のユメ先輩の瞳は嘘を言っているように見えなかった。嘘をつくのが苦手なユメ先輩があんな顔で嘘をつけるなんて思えなかった。だから、ずっと嫌な予感が離れなかったのだ。それが事実であると理解しながら、それでも信じたくなかった。だから、その事実を頭の隅に追いやって、みんなは生きているのだと自分に言い聞かせた。

 ふと、ホシノの身体は温もりに包まれた。

 

「ホシノちゃん、見ちゃったんだ……。どう、みんなのこと、思い出せた?」

 

 その温もりは、帰ってきたユメ先輩のものだった。ユメ先輩の温もりが、優しい声が、ホシノに伝わっていく。しかし、それはホシノの心にまでは届いていなかった。目の前の信じ難い現実に頭が追いついていなかった。

 

「……はい、思い出せました」

 

 嘘だ。思い出せてなんていない。いや、そもそも皆が死んだなんていう事実自体、ホシノの中には存在しない。

 

「みんなね、借金返済のために何かしてくれてたんだと思う。でも、ある日からみんな帰ってこなくなって、最後にはアビドスの砂漠の中でヘイローが壊れた状態でみんな倒れてたの……」

 

 泣きそうな声でユメ先輩はそう語る。ホシノは、その状況に覚えがあった。夢の中でヘイローの壊れたユメ先輩を見つけたときの話。そのときの状況と同じだった。

 

「…………少し、外の空気を吸ってきますね」

「……うん、気をつけてね」

 

 ホシノはその場から逃げ出すかのように外に出ていった。

 

 

 

 

 

 

「……嘘だ」

 

 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 

 なんでこんな状況になっているのか、ホシノには理解できなかった。理解できるはずもなかった。ホシノにはちゃんと昨日の記憶がある。シルが風邪で倒れ、セリカがカタカタヘルメット団に拉致され、先生やみんなと力を合わせてセリカを救出した。その記憶がしっかりとあるのに、半年前からみんな死んでいた? そんなこと信じられるはずがなかった。しかし、あの教室にあった物がそれが現実なのだと語りかけてくる。

 セリカを助けた後は確か、そのまま夜まで休んで、セリカは無事に元気になって、シルの看病の為にみんなで学校に泊まって……それで……

 

「ぁ……」

 

 ホシノは思い出した。思い出してしまった。あの後の話を。今朝、目覚める前に起こった出来事のことを。

 シルの持つ黒い箱を調べようと、箱を見つめながら考えを巡らせていると、吸い込まれるようにその輝きに惹かれて、声が聞こえて、それで、願いを聞かれて……その声に心からの願いを告げた。そうしたら、目の前が紫色の光に染め上げられて……目が覚めたらこうなっていた。

 あれは、あの声は、悪魔の契約だったのだ。最早、それしかこの状況の説明が付かなかった。ホシノは、欲望のままに悪魔の契約に手を出してしまったのだ。 

 その結果がこれだ。手放したもの(ユメ先輩)の為に、手に入れたもの(対策委員会)を捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が、みんなを殺したんだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が、シロコちゃんを殺した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が、ノノミちゃんを殺した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が、セリカちゃんを殺した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が、アヤネちゃんを殺した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――全て、私が殺したんだ…………私が…………私が、私が、私が、私が、私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノは絶望した。(ホシノの神秘は恐怖となった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BADEND「夢だった現実、現実だった夢」




あーあ、ホシノは触れてはいけないものに触れてしまいましたね
前回同様にこの世界線の続きはご想像におまかせしますが、ユメ先輩とホシノの二人だけのアビドスでホシノがテラー化してしまったとなれば考えるまでもないかもしれませんね

この話は特大バッドエンドですが、逆にこの話を読んだあなたは一足早くにシルの持つ箱について少し理解が深まったのではないでしょうか?
ホシノはあれを『悪魔の契約』と呼んでいましたが、正確には少し違います。

いや、今回に関してはあながち間違ってないかもしれませんね。
だって、大切な後輩を生贄に捧げたことで、ユメ先輩はちゃんと生き返ったのですから。
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