主人公の名前決まりました。
名前だけで、私の一番好きなキャラが分かると思います。
全然ありえる名前だよね。多分。
あ、地下街の設定はあまりにも少ないんで適当に作ってます。
こんな感じだったよなーって。
違うところあったら教えてくれると助かります。これからちょくちょく出しますので。
無意識の内に目を細めてしまった。人生で初めて眩しいと思った。
青い空。白い雲。そして光り輝く太陽。
地下街の人工的に灯された灯りとは違う、身体中から生気が漲るような感覚。少年は不思議と高揚感に溢れていた。それと同時に、少年の世界は今目の前に広がる現実を理解し始める。地下街にいた頃には、街が賑わっている様子など見たことも無かった。あるのは道端に転がる人間と、醜く笑う有象無象たち。
しかし今はどうだ。
「お母さんだっこ!」
「はいはい。あら、いつも抱っこしてるのに。また大きくなったね」
「ほんと!? やったー!」
道端の出店でせっせと商いをする商人と、並べられた商品を見ている男女2人。
「それはリングネックレスだな。最近はよくこういうのが若者の間で流行っているらしい。なんでも、カップルで付けるんだと」
「これいいね。どうする?」
「う──ん、どうしよ」
地下で眠っていた頃には考えられない光景の連続だった。
ー凄い。こんな世界があったなんて。
少年は感動に胸を震わせる。幸せを象徴するようなこの世界に、ようやく出てこられた事がとても嬉しかった。しばらく辺りを見渡して歩いていると、前から歩いてくる人に気が付かず、ぶつかってしまい尻餅をついた。
「おっと、悪いな。立てるかい?」
背が高く体格のいい男が手を差し伸べてくる。小綺麗な身なりで、少年と違ってシワひとつないシルクのハンカチを胸ポケットから立てている。その少し下には角の生えた馬のような紋章。地下で見た事がある。少年は出された手を取り、力を入れて立ち上がる。
「……憲兵」
「そうだ。すまなかったな、ぶつかって。……その身なりはどうした? 随分とボロボロだが」
地下街から上がってきたばかりの少年は、土や泥、自身の汚れで汚くなったサーマルシャツを着ている。地下にいたころには気にしたことはなかったが、どうやらこの服は地上において汚らしい扱いらしい。
「服はこれしか持ってない」
「……家はどこかな。この壁の中は他と比べて安全だが、絶対とは言えない。送っていくよ」
「家は無い。俺は地下から来た」
そう口にした途端、憲兵の顔が酷く歪んだ。まるで、道に落ちている汚物を見るように。
「……どうりで汚いナリなわけだ。ちゃんと金は払って上がってきたんだろうな?」
「……あぁ」
少年は嘘をつく。
地下街から地上に上がるためには、階段の前にいる見張りの者にお金を渡す必要があった。だが、少年が上がろうとすると、お金を要求してくる者は1人もいなかった。
「本当か? 誰に渡した?」
疑問を持った憲兵は少年に質問をする。
「名前までは知らない」
再度少年は嘘をついた。
「そうか、それはおかしいな。上がる者から徴収する時は、徴収する奴が名乗ってから貰うことになってる」
疑問が確信に変わった憲兵は、辺りを見渡し少年の背をゆっくりと押す。
「大きな声を出すなよ。と言っても、出したところでお前みたいな汚らわしい奴は誰も助けちゃくれないがな。分かったら、目の前の路地を進め」
言われるがままに少年は、大通りから離れた薄暗い路地へと歩を進める。大通りから完全に見えなくなったところで、憲兵が待ったをかけた。
「ここで止まれ」
「…………」
「なぜここまで来たか、分かるな?」
「……まぁ、な」
憲兵は少年の肩を強く押す。その勢いのまま壁に肩がぶつかる。
「さぁ、徴収だ。きちんと金は払わないとな」
拳が少年の顔目掛けて振るわれる。拳が鼻に直撃しようというその瞬間。
男の手首より下は、もう無かった。
「っがァァァァァあぁぁぁぁあ!!!」
あるはずのモノが、ない。五指も掌も。滝のように溢れる出血が、たった今何が起こったのかを物語っている。
「ああああああああぁぁぁあぁぁぁぁあ!!」
「うるせえよ。人がこっちに来ちまうだろ」
明らかに変わった憲兵の態度を見て、少年は即座に自身にとって敵であると認識した。大通りで事を起こすには、少々面倒が過ぎる。ので、わざと相手の誘いに乗った。もう一度大通りを見たあと、少年は憲兵の後ろに立つ。
「シー」
喉仏にナイフを当てる。ピタリと憲兵の慟哭は止んだ。
「徴収ね。いつからお前らは自分が
顔色は蒼白に染まり、額に脂汗が滲み出る。ナイフは動かない。
「やっとあの息苦しい場所から解放されたんだ。自由を楽しませてくれたっていいだろ?」
口を動かそうとしても何故か動かない。それは少年への恐怖故か。ナイフはまだ動かない。
「……まぁいい。これ以上何か言ったところで、無意味だしな」
喉仏を掻っ切る。呻き声をあげる暇もなく、憲兵は糸が切れた人形のようにその場に倒れた。
「死人に口なし、だな」
ナイフを上下に振り、着いた血を払う。最後に服で拭いて綺麗にした後、足のホルダーに戻した。
「おーおー。すげーなアンタ」
聞こえてきたのは女の声。どうやら大通りからやって来たようだ。
「……どうも」
「ハハッ。最初に言う言葉がそれかよ。お前イカれてんな」
馴れ馴れしく話しかけてくる女。黒い髪の毛を肩まで伸ばしている。目付きは悪く、切れ長なその目はどこかミステリアスさを感じさせた。そのすぐ下にはソバカスがあった。
「なんでお前ソイツ殺したんだよ。なにかされたのか?」
「別に何も。強いて言うなら、俺の邪魔をしたからだな」
「やっぱりイカれてるよ。ま、私としてもコイツが死んでくれて良かったけどな」
既に事切れた死体を足蹴に、女はそう言った。
「……どういう」
「私は主に盗みで生計立ててんだけどさ。そこでコイツに見つかっちゃって。この街はカモだったけど、違う所に行こうかなーって思ってたとこなんだよ。そんな時に、アンタがコイツを殺してくれた」
「なるほど。そういう事か」
女は死体のポケットを弄り財布を見つけ出すと、金だけ抜いて元に戻した。
「おい、それは俺の金だ」
「はぁ? 私が最初に見つけたんだから、私のだろ。それともなんだ? お前のものだって証拠でもあるのかよ」
「……んの野郎」
1枚2枚3枚と紙幣を数えた後、女は口笛を吹いた。
「ま、タダで渡すのは無理だな。条件がある」
「条件?」
こちらに近づいてくる女。差し出してきた手の中には、幾らかの金。
「……あ?」
「金だよ金。分かるだろ」
ヒラヒラと紙幣を宙に漂わせる。まるで早く受け取れと言わんばかりのその仕草は、少年を誘った。出された金を受け取ると、女は口角を上げる。
「はい受けとったな。交渉成立」
「ちょっと待て。何の話だ」
「はぁ? ほんとに分かってねーのかよ。鈍感だな、お前」
金を差し出した左手とは違い、今度は右手を差し出す。親指と人差し指の間が少し開いた”それ”は、何を求めているか。さすがに少年でも理解が出来た。
「……組むってことか?」
「そうだ」
「悪いが無理な話だ。俺は他人を信用しない」
「私も同感だ。ただ、利害は一致してると思うんだけどな」
「利害の一致だと?」
「私を信用しなくてもいいが、私の盗みの腕は信用してもらっていい。ただ、1人だと盗む額にも限度があるからな。そこで、お前の出番って訳」
女は指を指す。その先には少年がいる。
「……用心棒をしろと?」
「そういう事だ」
「…………」
「悪い話じゃないハズだ。見たところお前、ここに来てまだ日が浅いんだろ? 私はある程度顔は利く。頼るツテが増えるのは良いことだろ」
コイツは信用に値するのか。少年は考える。
少なくとも、今ここで他の兵士を呼んでいないという点において、同職であることは信用できる。ただ、利用するだけされて裏切られるのはもうゴメンだ。
ーいや、ならこっちも利用し尽くせばいい。
簡単な話だ。一方的な搾取では無く、俺も何かを搾取すればいい。そうだ。簡単な事だったんだ。
「……分かった。乗ってやるよ、その誘い」
「決定だ。よろしくな」
少年も右手を差し出す。目の前に差し出された手を握り、2人は握手を交わした。
「で、具体的に何すんだよ」
「まずはお前の身なりからだな。その汚い服を変えろ。で髪を切れ」
「準備金」
「は?」
「準備金をよこせ。金が無い」
「はぁ!? 何言ってんだお前! 金くらい少しはあんだろ、今渡した金とかさ!」
金が無い、と言うのは真っ赤な嘘である。地下から全財産を持ってきたが、1度搾取すると決めたからには、とことん搾り取る。
「これじゃ足りない。俺が着まわせる量の服と、髪を切る金。早く寄越せ」
「……テメェは乞食かよ」
「まぁ、間違っちゃいないな」
「何笑ってんだよ。クソ、私の金からも少し出さないと……」
そう言って女は、自分のモノとみられる財布を出す。その中身を確認した後、元に戻した。
「ッチ。ほら行くぞ、早くしないと店が閉まるだろ」
「分かったよ」
薄暗い路地から出てきた2人は、また大通りへと戻る。
「お前、名前は?」
「私の名前か? 私は……ユミル。お前は?」
「……アスカ」
「アスカ? 女みたいな名前だな」
「うるせぇ。早く案内しろ」
「払うのは私なんだがな……」
先にユミル登場