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一旦ヒロインとかは考えずに書きます。
ごめんなさい。
入団式が明け、訓練兵達は朝早くから訓練地に集合していた。教官達に叩き起され、不満を隠しきれない者を多々いる。
集められた訓練兵達の前に出てきたのは、照らされた頭が記憶に新しいキース教官であった。陽の光に照らされても、彫りの深さによって目元に光が届いていない。彼が前に出てきたことによって、訓練兵達の間に緊張が走った。そして教官の後ろには、おおよそ見たことの無い装置。三本の支柱に支えられ、2本のワイヤーのようなものが吊るされている。立体機動訓練装置である。訓練兵達の意識がそちらに向き始めた頃、キース教官はその重たい口を開く。
「まずは貴様らの適性を見る。これが出来ん奴は囮にも使えん、開拓地に移ってもらう!心して訓練に臨むように!」
『ハッ!!!!』
今訓練兵達は凡そこのふたつに分けられる。
巨人を倒す術を身につけようと気合いが入る者。ここで良い成績を残して教官の記憶に残ろうとする者。
ー茶番だな。
だが彼は違う。
こうしたいこうなりたい、という希望を胸に訓練兵団に入団した訳ではなく、漠然としたただ一つの目標のために入団した。地下で自由気ままに生きてきた彼が、突然集団生活の中に溶け込もうとしているのだ。
気怠げな態度を隠さないアスカの姿を、キース教官は視界の端に捉えていた。
10人程度のグループに分けられた彼らは、それぞれの教官に連れられて立体機動訓練装置へと向かう。アスカが振り分けられたグループは、キース教官直々のグループであり、他とは違う緊張感に包まれていた。たった1人を除いて。
キース教官は1人の訓練兵に近づく。それは止まることなく、額が付くのではないかという距離まで近づいた。
「…なんだよ」
別の緊張感が訓練兵達に走る。全員がこう思った。余計な刺激をしないでくれ、と。しかしその心配は杞憂に終わる。
「貴様からだ。アスカ訓練兵」
「どうやるんだよ?何も説明されてないけど」
「特にどうということはない。その2つのワイヤーを腰に付けろ」
言われた通り、腰の装置に吊るされたワイヤーを付ける。
「よし、上げろ」
「あ?……あー、なるほど」
キース教官の合図で、ワイヤーが巻き上げられ身体が浮き始める。何も伝えられず始まった立体機動訓練であったが、アスカは何が起こるかを身体で感じていた。
腰巻きと足裏のベルトに即座に体重を乗せ、前後のバランスに重きを置く。自分が今どの辺にいるかを把握し、あとはリラックス。
「………」
キースは食い入る様に宙に吊られたアスカを見る。突然空中に吊るされても微動だにしないその精神。そして特筆すべきはそのバランス感覚。全くブレがない。まるで宙で静止しているような、それを何食わぬ顔でやってのけている目の前の訓練兵に、驚きを隠せないでいた。
「なぁ、まだやるのかよ」
「…いや、もういい。降ろせ」
当の本人は何処吹く風。呆気にとられてしまっていたキースは合図をし、アスカを降ろした。
「このように、貴様らには立体機動の適性があるかをこの装置で見極める。気合いを入れろ、これが出来なければ先程も言ったように、開拓地行きだ」
立体機動装置の訓練は、人間という二次元的な動きをする生物を、三次元に適応させるためのかこくなものである。強靭な体力と脚力、加えて空間把握能力、そしてパニックに陥らない為の精神力が必要になる。
突然だが、人には素質というものがある。それは成長していく段階で自ずと気がついていくか、生きていく中で誰かに指摘され気がついていくものである。12歳で右も左も分からぬまま、自分の目的だけを見据えた少年達が分かるはずもない。
「何をやっている エレン・イェーガー!上体を起こせ!」
だから、エレンが素質があるかどうかなど、誰にも分からなかったのだ。この瞬間までは。
ーこれの何がそんなに難しい?
アスカは純粋に疑問に思っていた。それと同時に少し気の毒な気持ちにもなった。自分で食糧も調達出来ない子供を見ているようで。
「(何だこれ…こんなのどうやって…)」
エレンの目に映るのは目と口が上下反対になってこちらを見ている訓練兵達の姿。信じられないものを見る目でこちらを見ている者や、気の毒で仕方がないといった顔で見る者。笑っている者さえいた。その事に怒りを覚えながらも、今自身が置かれている体勢を思い出し、その感情はどこかに消え去ってしまった。あるのはただ1つ。
「(ウソだろ…)」
自身への失望だった。
☆☆☆
本日の訓練は立体機動の適性訓練のみであり、それが終わった後各々は食堂に集まっていた。堅苦しい服を脱ぎ、普段着を身にまとい配給された食事を口に運ぶ。その中にアスカとユミル、クリスタとサシャの姿もあった。
「にしても、今日はラッキーだったな。どんな訓練をさせられるのかとヒヤヒヤしてたが、まさか適性訓練だけとは」
「やめなよユミル。出来なかった人達もいるんだよ?」
「そうですよ」
「出来ない奴が悪いんだろ。だから教官は言ったんだ。適性を見るってな」
「…それは」
アスカの指摘に対し、何も言えなくなってしまうクリスタ。そんな二人をよそに、ユミルはキョロキョロと辺りを見回していた。
「ユミル、何してるんですか?」
「シー。…ほら、見てみろアイツだ」
人差し指を縦にし静かにの合図。ユミルの視線の先を見ると、何故か包帯を頭に巻いたエレンの姿があった。周りは既にそのことに気がついているらしく、ひそひそと何かを話していた。
『あいつ確か、昨日巨人を皆殺しにしてやるとか言ってた奴だよな』
『まぁ、明日には開拓地行きだろ。役立たずに食わせる飯はねぇからよ』
『つか、何がそんなに難しいんだ?』
『さぁ?ホントに出来ない奴の気持ちなんて、分からないもんだろ』
『ハッ、違いねえ』
注目の的になってしまっているテーブルには、エレン以外にも二人いた。金髪の中性的な男と黒髪の女。その二人は元気の無い男を励ましている。
「…汚ぇな」
「え?」
ぼそりと口に出した言葉。隣に座っていたクリスタには聞こえていた。視線をこちらに向けてくるクリスタに、アスカは小さく溜息を吐く。
「なんだよ。言いたい事があるならハッキリ言えよ」
そんなアスカの態度が気に食わなかったのか、ユミルは少し語尾を強めて返した。
「別に。ただこういう状況になった時の人間は汚ぇなと。再認識しただけだ」
「はぁ?…お前さ、さっきから何言ってるか全然分からないんだが。お前の中に留めておく分には良いが、言葉にするのなら私達にも分かるように、しっかり言語化してくれよ?」
先程とは打って変わって、ユミルはニヤニヤしながらそう言った。馬鹿がまた変なことを言い出したぞ、と。
「明確に自分より劣っている存在に対して、人間は潜在的に攻撃してもいいと思う生き物だ。ましてやここは訓練兵団。ここから兵士を排出している以上、役立たずと排斥し仲間内で石を投げても大丈夫だと思ってる。結局どこに行っても人間なんてこんなもんだ。だから汚ぇと言ったんだ」
「……それは私の事も含めて言ってるんだよな?」
「当たり前だろ」
テーブル内の空気が何度か下がったように感じた。クリスタはいつの間にか危機感を感じてどこかに逃げたサシャを恨んだ。
「じゃあお前はどうなんだよ。私みたいな汚い人間と違って、崇高な人間なのか?あぁ?」
「そうは言ってないだろ」
「私にはそう聞こえるんだよ。達観した目線で物事語りやがって。何様だよお前」
普段から軽口を言い合う仲だと認識していたアスカだが、ユミルはどこか過度に怒りを表していると感じていた。何か地雷原を踏み抜いてしまったか。
ーまさか
「なぁ、何をそんなに怒ってんだよ?別に俺もお前も汚い人間だ。それでいいだろ?」
試しに”汚い”というワードをもう一度入れてアスカは話した。眉間が少し動いた。アスカは確信する。間違いない、コイツはこの言葉に反応していると。
「…クリスタ」
「え?な、何?」
ここでユミルに話しかけられると思っていなかったクリスタは、少し声が裏返ってしまう。
「満腹だ。悪いが、残りはお前が食べてくれないか?」
「う、うん。いいけど…」
「じゃあ、私は一足先に戻ってる」
カチャン、とスプーンをトレーに置き、ユミルは食堂を後にした。どうすればいいかとオロオロしているクリスタに、アスカはもう一度溜息を吐く。
「食えよ。それともなんだ、食べれないか?」
「いや、そんな事ないけど…」
カンカンカン。食事の終了を告げる鐘の音が響き渡る。談笑を続けていた訓練兵達もぞろぞろとその場を後にしだした。
「パンだけ貰う。じゃあなクリスタ、また明日」
既に目の前の食事を片付けていたアスカは、ユミルのトレーからパンを取り、人混みの中に紛れて行った。
「……パンしか残ってなかったのに」
「姿勢制御のコツだって?悪ぃけど俺天才だから、感じろとしか言えん」
「俺は逆に教えて欲しいね。あんな無様な姿をさらしておいて、正気を保っていられる秘訣とかをよ」
「お前ら…人が頭下げて頼んでんのに」
訓練兵の宿舎は共用となっており、自分のベットで壁内についての本を読んでいたアスカにも、エレン達の会話は耳に入った。
「でもさ、お前昨日『力の無い者はさればいい』って言ってなかったっけ?」
コニーに痛いところを付かれてしまったエレンは、そんな事を言ってしまった昨日の自分を恨んだ。
「あっ違ったか。『才能の無い奴は去るしかない』だっけどっちだったっけ?」
なんて煽りが上手いやつだと、アスカは少し目線をコニーにやる。しかし、本気の困惑顔を浮かべており、ただのバカだと目線を本に戻した。
その後もエレンのお願いは多数にわたり繰り広げられたが、まともに話を聞いてくれたのはアスカの上のベットにいる2人だけだった。アスカの上にいるのは、ライナーとベルトルトだった。意識的に聞こえてくる会話を遮断し、本に集中していると上から覗いてくる顔が1つ。
「なぁアンタ、アスカだったか?1番上手かったって聞いたぞ!頼む、教えてくれよ!」
わざわざ気配を消していたのに、上の二人が下にいることを教えたのだろう。本を閉じ、包帯男の目を見る。
「あれにコツが必要とは思えん」
「お前まで…」
「お前の場合、もっと初歩的な問題だな。立体機動をやるとかやらないとか、その前にだ」
「……アスカ、そこまで言わなくても」
上からもうひとつ金髪の頭が伸びてきた。どこか項垂れているように見えるエレンを慰めるように、アルミンはエレンの背中をさする。
「お前こそ意地が悪いな。今日の訓練中に言ってやれば、コイツはあんな恥を晒さずに済んだ」
「…んだよ」
「あ?」
「なんだよ!!そこまで俺に兵士の適性が無いって言いたいのかよ!」
目に涙を貯めながらそう訴えるエレン。アスカはまたまた溜息を吐き、そのエレンの目を真っ直ぐに見つめる。
「そんな事一言も言ってねぇだろ」
「じゃあそれ以前ってどういう意味だよ!」
半ばヤケクソのような状態になっているエレン。もう失うものは無いと、アスカを問い詰める。
「装備だよ装備。お前の腰巻、どう見ても右と左のバランスがおかしかっただろ。故障にしか思えない」
「…え?」
「俺の装備を貸す。それでも出来なかったら、大人しく開拓地に行け」
「…ほ、ほんとか!?ありがとうアスカ!よし、よし…。俺はやる!やってやるぞ!!」
自身の適正の無さが確定した訳ではないと、喜びを露わにしようとするエレン。だが場所は2階であり、頭をぶつけてしまう。
ー俺は、あまり喋りすぎない方がいいのかもしれない。
真剣にそう考え、アスカは視線を本に戻した。
後日、エレンは無事に立体機動の適性訓練をクリアした。その後、エレンには謎に懐かれる事態になってしまった。
書き方忘れちゃった
ユミルさんの地雷ここらへんかなーと
書き直しと前どちらが好きですか
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書き直し
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