別小説にて特大スランプ中なので息抜きに書いた。後悔はしていないが公開はする。
この作品では第二位であるていとくんにマーベル世界で頑張って貰う予定です。
固く、冷たい感触に目が覚めた。コンクリートに覆われた部屋に、コードに繋がれた実験装置らしき物が視界に入る。
「どうなってやがる。俺は、あのクソッたれの第一位に……やられた筈だ」
最後の記憶は迫りくる漆黒に身体を潰される感触と、身体を寄せ合う白髪の少年と幼い少女の姿だった。その光景を思い出して思わず顔が歪んでしまう。
「いや、あの時からもっと時間が経ってるような……。クソ、分からねぇ」
苦い記憶を振り払い。状況の確認に努めようと周囲を見渡した。
「あ?NASAだと……?まさか学園都市じゃないってのか?いや、ありえねぇ。死んでるならともかく生きてる俺を研究者のクソ共が手放す訳がねぇ。そもそも何で俺が生きてるのかも分からねぇが……噂に聞く冥土帰しとか言う奴ならあるいは……」
思考しながら立ち上がり調子を確認する。ミンチと言っても差し支えない状態だったにも関わらず、身体は万全の状態だった。しかしほんの少しの違和感……違和感などない筈である程に絶好調の身体状況に垣根は違和感を感じていた。
「これは、まさか……。いや……今はそんな状況じゃねぇ。能力は……、問題なく使えるな」
背に出現した純白の翼に目をやり能力が問題なく機能している事を確認すると、未元物質をばら撒く。
すぐに強い反応が返ってくる。反応があった天井の吹き抜けを見ると、青白い光を放つプラズマの様なエネルギーの塊が今にも爆発しそうな程に不安定な状態で揺らめいていた。
「……は?」
その光景に呆気にとられる垣根。しかし瞬間、塊はその内包するエネルギーを吐き散らしながら爆発した。
―
「ヒル、救助隊はいつ到着する?」
痛む身体に鞭を打って、壊滅的な被害を受けたNASAの研究施設の現場指揮を執るフューリー。
「一番早い隊でも1時間半はかかります。救出と治療の両方を行うには今の人員では……」
「クソ……。この惨状ではどれだけの生存者がいるか分からん。生存者の治療と延命を優先、残りの人員で救出にあたれ」
「了解」
フューリーの言葉を受け無線で指示を飛ばすヒルを横目に治療を受ける。すると先程基地に戻る様に命令したコールソンから連絡が来る。
「どうしたコールソン。基地に戻る様に命令した筈だが?」
『いえ、基地には戻っている最中なのですが本部から連絡がありまして』
治療に一区切りついた所で、他の細かい傷にも取り掛かろうとした職員を手で制する。意図を察した職員は他の負傷者の治療に向かって行った。
「それで?用件はなんだ?」
『衛星からの映像で生存者を捜索させていた職員が人を発見したらしく、座標は爆心地の、四次元キューブを実験していたあの部屋です。発見した職員曰く、……天使の様な翼が生えていたと』
「爆発の直前まで私はあそこにいたぞ。誰もいなかった筈だ。翼……まさかアスガルドからまた刺客が送られでもしたか」
『分かりません。対象はまだそこにいるようなので、報告した次第です』
「分かった。こちらで対処する。念のためにキューブ捜索の人員を幾らかこちらに送ってくれ。穏便に済む保証がない」
『手配します』
無線を終え頭を抱えるフューリー。少しの間固まっていた後、無線を取り出した。
「まったく、次から次へと何なんだ。……ヒル、問題が起きた。手を貸せ」
―
「どこだか分からねぇ場所に放り出されて、その次は爆発とはな。ムカついた。もし俺をこんな所に放り出した奴がいるなら真っ先に殺してやる」
爆発を無傷で切り抜けた垣根は瓦礫に腰掛けながら舌打ちを零す。
「しかし、この様子だとマジで日本じゃないみたいだな。NASAって事はアメリカか?……で、コソコソしてるテメェらは何か知ってるって事でいいよな?」
翼を振るうと瓦礫が切り裂かれ。眼帯をした黒コートの男と、銃を構えた女が姿を現した。
「少なくとも君よりは、今の状況を分かってはいるだろうな。私はS.H.I.E.L.D.の長官ニック・フューリー。出来れば君の事も教えて欲しいのだがね」
脅しに欠片も怯みもしないフューリーに感心したように口笛を吹く垣根。話は通じる事が分かったので翼を消す。
「いいね。最初に会ったのがテメェみたいな話の通じる奴で助かったぜ。俺は垣根 帝督。学園都市の能力者って言えば通じるか?」
「学園都市?いいや、知らんな。どこの国だ」
ノータイムで返された答えに口を噤む。学園都市を知らないなどまず以て在り得ない。S.H.I.E.L.D.というのは分からないが、何らかの組織の長官であればなおさらだ。垣根は嫌な予感を覚えつつも会話を続ける。
「……日本の東京にある科学都市だよ。まさか日本も知らねぇなんて言わねぇよな?」
「そんな訳がないだろう。ただ、私の知る限り日本に学園都市と呼ばれる街は存在しない」
額に手を当て考え込む垣根にフューリーは口を開く。
「今度は此方が質問する番だ。ここは先程、大規模の爆発事故が起こった場所だ。君が何故こんな場所に居るのか、聞かせてもらいたいね」
「知らねぇよ。気が付いたらここにいた。おまけに速攻で爆発に巻き込まれるわでこちとらムカついてんだよ。一応聞くが俺をこんな所に連れて来たのはテメェらじゃねぇよな?」
「残念ながらな。もっと詳しく事情を聴きたいが、今は忙しいのでな。少々待ってもらえると助かる。ヒル、彼をもてなしてやれ」
女はフューリーと名乗った男に何か言いたそうにしながらも銃を下ろす。
「あぁ、彼方此方で埋まってる奴らの救助活動で忙しいだろうからな」
少し考える素振りを見せる垣根。しばらくした後にもう一度口を開く。
「そうだな。……埋まってる奴ら、俺が助けてやるって言ったらどうする?」
垣根の申し出に去ろうとしていたフューリーが足を止める。
「その言い方からして、タダで助けてくれるつもりはなさそうだな」
「思ってるよりも厄介な状況っぽいからな。アンタにはもう少し世話になりそうだ。っつー訳でこれは前払いだ」
垣根とフューリーの視線が交差する。しばしの交差の後、フューリーが息を大きく吐いた。
「良いだろう。本当にそれが可能であれば。S.H.I.E.L.D.で君を全面的にサポートする」
「オーケー。話が早くて助かる。アンタ出世するぜ」
「生憎、もう長官だ」
笑う垣根の背から今一度翼が出現する。純白の輝く翼。どこか異質さを感じさせるそれは、それでもこの世の物とは思えない美しさを放っている。
先程はじっくりと見る事が出来なかった故に、改めて見るそれに目を奪われるヒル。
「随分とメルヘンチックだが、似合わんな」
「ハッ。心配するな、自覚はある」
身体が宙に浮かび上がる程に翼が肥大化していく。一方通行にやられる直前に掴んだ未元物質の本質。理解が深くなれば、それだけ能力は強くなる。
「未元物質にはまだまだ先がある。何故かは知らねぇが俺はまだ生きてるんだ。掴み取ってやるよ。底の底までな」
翼を一振りすると各所から白色に染まった柱が瓦礫を押し退けせり上がる。柱が割れると中から生存者が出て来た。
「こんなもんか。で?どこに運べばいい?そこらに置いといていいならそうするが」
「……案内しよう。ヒル」
「了解。こちらへどうぞ」
能力を維持したまま女に着いて行く。必然、翼を維持したままの状態になって視線に晒されるが気にした様子もなく歩く垣根。
掌に未元物質を浮かべながら垣根は笑った。
―
「アスガルドに、ロキ、ソー。おいおい、いつから北米神話が現実になったんだ?おまけにアイアンマン?キャプテンアメリカ?……アイアンマンはともかく、キャプテンアメリカはねぇだろ。いくら何でもダサすぎる」
手元の資料に目を通しつつ。パソコンで様々な情報を検索していく。フューリーの言う様に学園都市など日本に存在しなかった。代わりに神などという骨董無形な存在にパワードスーツを着た金持ち、変なコスプレを来た兵士にガンマ線を浴びて怪物と化した緑の大男……垣根は思わず目頭を押さえた。
「そんな事はない。彼の存在は戦時中のアメリカにとっては希望の象徴だった。もちろん、今もね。まさにアメリカ合衆国の、キャプテンだよ」
「はいはい。アンタがキャプテンを大好きな事だけは分かったよコールソン。後、ここが俺のいた世界と違うって事もな」
何やら誰かを招集していたらしいコールソンが戻って来てキャプテンアメリカについて熱弁してくるのを軽く流す。
研究所での邂逅の後、やる事があるとフューリーはそのまま離脱。ヒルも基地に垣根を送り届けた後指揮に戻った。そして垣根はこの二日、基地で合流したコールソンに自身の事や学園都市の事を軽く説明した後は、世界についての情報をひたすら収集していた。
「学園都市……科学と超能力の街といったかな。……研究所のあの部屋では、とある実験が行われていた」
キャプテンの話から真面目な話に切り替わったようでコールソンに向き直る。
「四次元キューブと呼ばれる膨大なエネルギーを秘めた物だ。キューブは、ここではない何処かとこちらを繋ぐ力を持っていたという。君がこちらの世界に来る直前、ロキがキューブを使ってやってきた。可能性があるとすれば、その時の余波か、キューブが誤作動を起こしたか……、なんにせよ、君の出現に四次元キューブが絡んでいるのは間違いないだろう」
「四次元キューブ。11次元に干渉出来るエネルギー結晶って所か。ますますイカレてやがるな」
資料を眺めながら考える。
「神、神ねぇ。……『神ならぬ身にて天上の意思に到達する者』か」
「何かの詩かい?」
「まぁ、そんなとこだ」
垣根の零した言葉に反応したコールソン。適当に誤魔化して神とやらの資料を握りつぶす。
「おもしれぇじゃねぇか。こっちには”天上”が実際にいるって訳だ。是非見せてもらいてぇな」
「あの、それウチの資料……コピーだからいいか。……おっと、そろそろ行かなきゃ。特別ゲストを迎えに行くんでね」
「誰か招集する訳か。事が事だからな。で?役に立つのかそいつ」
端末を確認して立ち上がるコールソンは垣根の言葉に頷いた。
「間違いなく。なんたってキャプテンだからね」
「噂をすればってか。俺としてはハルクって奴に興味あるんだが」
「そんな君に朗報だ。バナー博士ももうじきこちらに来る手筈になっている。スタークにも連絡が行ってるが……こっちはいつ来るか分からないね」
そう言い残して部屋を去ったコールソン。情報収集に一区切りついた為、後を追う様に部屋から出る。初日は基地で過ごした垣根だったが、現在はS.H.I.E.L.D.が保有している巨大空母船に搭乗していた。
休憩室で飲み物を飲んでいるとフューリーがやって来た。コーヒーを片手に垣根の隣に腰を据える。
「君の話はコールソンから既に報告を受けている。今一度、契約を詰めたい」
足を組みながら目で続きを促す。
「現在我々は戦争中だ」
「らしいな。相手はロキとか言う神だろ?」
「あぁ、四次元キューブも敵の手に落ちた。アレを使われると何が起きるか分からん。早急に手を打たねばならない」
膨大なエネルギーに11次元に干渉する力。垣根は四次元キューブにも強い興味を抱いていた。
「そこでだ、協力して欲しい。奴に対抗するには必要だ。ヒーローと、チームが」
「チームね」
思い出すのは以前の自分が所属し、リーダーを務めていたチーム。チームと言うには少々殺伐とした雰囲気だったが。
「そうだ。科学と超能力の街で、頂点の内の一人であった君に地球を救ってほしい」
フューリーの深く、力強い眼光を見つめる。垣根は息を吐くと立ち上がった。
「地球を救うヒーロー様なんて寒気を覚えるが、三つ。条件を呑んでくれるなら協力してもいい」
「言ってみろ」
「一つ目、テメェらの犬になるつもりはない。気に入らねぇ指示は無視させてもらう。二つ目、一生S.H.I.E.L.D.の施設内は息が詰まって死んじまう。外で活動出来る身分が欲しい。三つ目、面白そうな事が起こったらとりあえず俺に教えろ。こっちは性能試験がしたくてうずうずしてんだ」
フューリーは小さく笑うと立ち上がり、手を差し出した。垣根も笑ってその手を取る。
「交渉成立だな。改めてよろしく頼むぜ、フューリー」
「S.H.I.E.L.D.へようこそ。垣根 帝督」
ていとくんって能力も、能力のビジュアルもMCUと相性いいのでは?という事で書いてみた。
続くかは未定。