デクの上位者アカデミア   作:ヤマカワ

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 B組は回原君が不在です。士傑にでも行ったんじゃないですかね(適当)
 騎馬戦、細かく描写するのはダルい長くなりすぎるので大胆に端折(はしょ)ります。悪しからず。




雄英体育祭 破

 

 

 

 雄英体育祭。

 

 かつてのオリンピックに代わる、日本のビッグイベント。

 僕たちのヒーローとしての将来を左右する、重大なイベント。

 

 第一種目の障害物競争が終わって、第二種目。

 

 騎馬戦である。

 

 騎馬戦では、参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作る。ボッチに厳しいやつだ。

 これだけなら普通の騎馬戦なんだけど、ちょっと違うのがポイント制な点。

 

 第一種目の障害物競争での順位に応じて、順位が高かった者ほど高い点数が割り振られる。

 予選通過者最下位の42位から順に、5ポイント、10ポイント……と5ポイントずつ増していって、2位のかっちゃんが205ポイント、一位の僕は一千万ポイントだ。バカだね。

 

 ハチマキには騎馬全員のポイントを合計した数値が記され、騎手たちはこれを奪い合う。

 制限時間は15分。終了時点でより多くのポイントを保持していた騎馬が次へと駒を進める。

 

 もう一つ、この騎馬戦の特異な点として、ハチマキを獲られても、騎馬が崩れても、失格にはならないってのがある。

 制限時間の15分間、十数の騎馬が常にフィールドにいて、ずっとハチマキを奪い合うワケだ。しんどいね。

 だから、いろんな戦略が考えられる。普通にハチマキを奪いに行くも良し、一度敢えてハチマキを奪われ、身軽な状態で立ち回って終盤での逆転を狙うも良し。

 10000000ポイント(いっぱつだいぎゃくてん)がある以上、最後まで勝負は分からない。競技とエンタメを両立させる素晴らしいアイデアだと思う。……追われる立場としてはたまったもんじゃないけどね。

 

「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

 さて、ここからは原作崩壊(アドリブ)多めだ。頑張ろう。

 

 

 

 いろいろ考えたんだけど、誘うメンツはある程度決めてある。

 まずは……――――

 

「心操君」

 

「あん?……アンタか。何の用だ?」

 

「何の用って、やだなぁ、決まってるじゃないか」

 

「……お前とは組まねぇ」

 

「まあそう言わずに」

 

 瞬間、頭に靄がかかったようになる。頭が回らないし、体も動かせない。……なるほど、こういう感じか。

 心操君の【洗脳】だね、確かにこれなら、普通の人じゃ抵抗できなくて詰みだろう。

 

「……じゃーな」

 

「そう慌てないでよ、せっかちだなぁ」

 

「お前っ……!?」

 

 でも、残念ながら、僕は普通じゃない。僕には脳が複数あるし、そもそも【液化】を発動している間、僕は無数の僕の集合体になる。どれか一つを支配下に置いたところで無意味だ。

 何より、僕の中身はヒトじゃない。当たってほしい予想が当たったね。僕なら簡単に【洗脳】をレジストできる。

 

「残念だけど、僕にソレは効かないよ。タネは秘密なんだけどね」

 

「……ああそうかい。で?自慢か?」

 

「とんでもない、スカウトしてるんだってば。僕と騎馬を組んでよ、心操君」

 

「……俺、名乗ったっけ?」

 

「素敵な宣戦布告を頂いたからさ。興味が湧いて、ちょっとだけ調べた」

 

「あっそ。断る」

 

「まあ待ちなって。君にとっても悪い話じゃない」

 

「詐欺師はみんなそう言うんだ」

 

「ひどいなあ。心操君は要するに、手の内を明かしたくないんだろう?任せてくれよ、君には頼らない」

 

「……じゃあなんで誘うんだよ?」

 

「……ほら、ボッチ仲間として?」

 

「じゃーな」

 

「ああ待って待って、冗談だってば」

 

 心操君、予想はしてたけど手強いなぁ。どうしよっか。

 

 あ、発目さん発見。こっちに向かってツカツカ速足で歩いてくるね。丁度いいや。

 

「私と組みましょ一位の人!!」

 

「いいよ!!」

 

 はつめさん が なかまになった!

 

「えーっと、あと一人だね」

 

「おい、なんで俺が入るの確定みたいになってるんだよ」

 

「まあまあ、余りもの同士仲良くしようよ」

 

「誰がっ……!」

 

「でもほら、みんなもう大体固まってるよ?」

 

「お前のせいだろ!」

 

「見てくださいよ私のベイビー!ドッ可愛いでしょ!?」

 

「あっ、ねえねえ常闇君……――――」

 

「聞けよ!」

 

 

 

 〇

 

 

 

「15分経ったわ。それじゃあ、いよいよ始めるわよ」

 

『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て……フィールドに12組の騎馬が並び立った‼』

 

『……なかなか、面白ぇ組が揃ったな』

 

 ハチマキの締まり具合を確認する。

 体調は万全。予選では思いのほか消耗させられちゃったけど、騎馬戦ではラクをするつもりでいるので無問題(モーマンタイ)

 前騎馬は常闇君。右翼が発目さんで、左翼が心操君だ。心操君は最後までゴネてたけど、最終的には折れてくれた。

 

『さァ上げてけ鬨の声‼』

『血で血を洗う雄英の合戦が今‼ 狼煙を上げる‼‼』

 

「それじゃ、作戦は伝えた通りに。よろしくね、皆」

 

「フフフ‼」

 

「ああ……」

 

「……仕方ねぇ」

 

 この騎馬戦、ルール的にはいろんな戦略が考えられるけど、基本はみんな他騎馬のハチマキを奪取しようと動く。

 

『よォーし組み終わったな‼?準備はいいかなんて聞かねぇぞ‼』

『さあいくぜ‼ 残虐バトルロワイヤル、カウントダウン‼』

 

 だけど、はじめから一千万ポイントを持つ僕としては、当然、逃げの一手。アピールは難しくなっちゃうけど、どうせ混戦になれば個人で注目を集めるのは難しい。勝ち進んでトーナメントに出れば勝手に注目されるから、それで十分だろう。

 

『3!!!』

 

 心操君にも言ったけど、今回は僕一人の力でなんとかする予定だ。このメンツにしたのは原作に沿うため。もちろん、もしもの時には頼りにさせてもらうけどね。

 

『2‼』

 

 体内の12の脳をフル稼働させ、斥力場展開の準備。同時に、日光を全力で吸収して気持ち程度に常闇君を強化する。

 

『1……!』

 

 今回、僕に与えられた役回りはメタルスライムのようなもの。

 

「START!」

 

 せいぜい、素早く逃げ回って見せよう。

 

 

 

 ……なんて、カッコつけてはみたけど、やることは結構ダサい。

 

『緑谷、上空へ脱出~~!ズリィ!!』

 

 作戦は単純明快。騎馬ごと上空に逃げて、守りを固める。以上。

 

『さあ、早くも地上じゃ混戦模様!個性が飛び交い、ハチマキを奪い合う熾烈な戦い!!……の他騎馬を差し置いて、文字通り高みの見物を決め込んだァ!!ウゼェ!』

 

『教師としてどうなんだその発言は』

 

 騎馬の周りを球状に覆い、地面ごと持ち上げて滞空。頭上に一応空気穴を空けてはあるんだけど、結構蒸す。土と汗の臭いが芳しいね、空気を吸収して換気し続けておこう。

 諸々の配慮から、高さは15mくらいに抑えている。ので、下からはいろいろ飛んでくる。峰田君のもぎもぎボールとか、轟君の炎とか、青山君のネビルレーザーとかね。

 青山君のネビルレーザー、前は防げなかったんだよなぁ。僕の斥力場は電磁場を断つことなんてできないし、ネビルレーザーは光だと思っていたから。

 だけど、これもここ2週間の成果で、ネビルレーザーを光と区別して、選択的に遮断することができるようになった。おかげで悠々と浮いていられる。

 将来的には電磁波を遮断できるようになりたいんだけど、なかなか難航している。できるようになれば、光に関係する個性を防げるのはもちろん、電波妨害なんかもできるだろうから早く習得したいんだけどね。

 

「ちょっと緑谷さん!これじゃあ私のベイビーが見せられないじゃないですか!」

 

「ごめんね発目さん。だけど説明した通り、これが最善なんだ」

 

「最善ねぇ……。お前がすべてを担って、何が最善だよ。俺らはアンタの踏み台か?」

 

「騎馬戦だけにね。さっきも言ったけど、アピールなら混戦に参加するより最終種目に勝ち進む方が確実だし、現状、僕らは十分目立ってる。それに皆なら活躍の機会はきっとあるさ」

 

「騎馬を組む時、己に無いものを持つ者に声を掛けたと言っていたな。我らに何を望む?」

 

「皆が活躍するってことはピンチってことだから、現状はやってもらうこともないし、その方が良いようにも思うけど……。えっと、僕の個性ってね、便利ではあるけどそんなに強くはないんだ。防御力には自信があるけど、他は微妙。特にパワーは自信ない」

 

「……障害物競走でロボを地面ごと吹っ飛ばしてなかったか?」

 

「そうだな。授業や訓練の様子を鑑みても、お前にひ弱なイメージは無い」

 

「ありがとう、がんばったからね。僕の個性は応用が利くから、その一環だよ。個性の応用は小さい頃から磨いていたから、()()()()()もある程度は心得てるんだ。あくまで誤魔化しているだけなんだけどね」

 

「フフフ……なるほど、そこで私のベイビーによって補強を図ると!そういうことですね緑谷さん!」

 

「そんな感じ。常闇君は攻撃力があって射程も長く、防御力もなかなか。発目さんのメカは幅が広くて、僕にはできないことだってたくさんできる。心操君も、今はちょっと秘密なんだけど、強力だ。総じて、皆には僕の欠点を補ってほしい。僕は意外と欠点が多いからね」

 

「承知した。そこまで買ってくれていたのなら、応えてみせよう」

 

「フフフ!そういうことであれば緑谷さん!この子なんて……」

 

「危ない!」

 

 心操君の鋭い警告。

 反射的に左を向けば、夜嵐君が迫ってきている。

 

「上空に逃げたって安全とは限らないっすよ!」

 

『おーっと夜嵐!高みの見物は許さない!上空の緑谷に仕掛けたァ!騎馬から離れてっけどいいのかアレ!?』

 

「テクニカルなのでオッケー!地面に足着いたらダメだけど!」

 

「一千万ポイント、貰ったぁ!!」

 

 個性で自分を飛ばし、猛烈な勢いで迫る夜嵐君。すごい迫力だ。

 ……けど、うん。大丈夫。

 

「ふごっ!?」

 

 多少勢いをつけて衝突したくらいじゃ、僕の斥力場は破れない。

 夜嵐君は僕の個性を移動系の何かだと思っていたんだろう。斥力場に思いっきり顔面を打ちつけ、鼻血を噴きながら落ちていった。

 

「……飛んで火に入る夏の虫」

 

「ねぇ緑谷さん、これじゃベイビーが活躍できないです!やっぱり今からでも下に降りましょうよ!」

 

「うーん、そうは言ってもね。最終種目に出られなかったら本末転倒だよ?」

 

「チッ」

 

 白目を剥いて落下していく夜嵐君。あわや失格かというところで、伸びてきた塩崎さんのツルに巻かれて回収されていく。失格にならなくて何より。

 

 あっ。

 

「敵を見誤ったなタコ野郎!落ちとけオラ!」

 

「ぬおっ!?クソッ、返せ!!」

 

『おお~っとぉ!爆豪、漁夫の利!緑谷に撃退されて無防備な姿を晒した夜嵐!すかさずハチマキを奪われたァ!!』

 

『爆豪の奴、こうなるのをわかっていて機を伺っていたな。さすがの狡猾さ、と言うべきか』

 

 すっ飛んで来たかっちゃんが、夜嵐君のハチマキを奪い去った。

 

 この競技、騎手は裸足だから、かっちゃんは空中機動がやりやすい。

 足の裏を爆破して推進力を得つつ、器用に両手を爆破させてかなり高度な空中機動をやってのけている。

 かっちゃんの騎馬には麗日さんがいるから、たぶん浮かせてもらっているんだろう。いつにも増して高機動だ。

 障害物競走で体も温まっていただろうから、余計に好調なんだろうね。さすがかっちゃん。

 

 かっちゃんに落とされかけた夜嵐君はなんとか地面スレスレで踏み留まって、そのままかっちゃんに反撃。

 かっちゃんも応戦し、騎馬も僕らも差し置いて、二人で高度な空中戦が始まった。

 

『COOOOL!喜べマスメディア!お前ら好みのド派手な空中戦だぜ!YEAHHHHH!!』

 

 いやぁ、すごい迫力だ。見応えあるなぁ。

 

 かっちゃんの空中戦闘能力は凄まじい。特に機動力が凄くって、全身を爆破させることによる変幻自在の軌道は容易に相手を惑わせる。

 開けた所ならまだ最高速度の差でカバーできるんだけど、ある程度狭い所なんかだと本当に手が出ない。

 僕はあんまり機動力のある方ではないから、かっちゃんと組手するときは動きの起こりを潰すか、相打ち覚悟で抑え込むしかない。回復力任せの作戦で、全然スマートじゃない。

 

 夜嵐君はそれに食らい付いて見せている。

 夜嵐君自身は恐らく僕と同じ、最高速はあっても機動力は程々なタイプ。

 だけど、風で巧みにかっちゃんを妨害し、うまいこと立ち回っている。……かっちゃんの高速機動は、ああ見えてかなり繊細なバランスの上に成り立っている。理解してやっているんじゃないだろうけど、結果的に機動力の差をカバーできている感じだね。

 

「ハチマキ返せ!俺のだぞ!」

 

「取り返してみろよタコ!」

 

 二人は罵り合いながら、下から飛んでくる妨害を避けたり利用したりしつつ、仲良く飛び回っている。いいなあ。

 ただ、機動力はかっちゃんの方が勝っている上、麗日さんに浮かせてもらっているので余裕があるんだろう、夜嵐君とやり合いながらも地上の騎馬にちょっかい掛けたり、時折僕に向かって中指を立ててみせたりしている。さすがかっちゃん、そこに痺れる憧れる。

 ……普通、いきなり無重力状態になったら姿勢制御すらままならないと思うんだけど。アドリブでもすぐに適応して飛び回る……どころか蜻蛉(トンボ)も真っ青な変態機動を見せつけてるなんてね。つくづくセンスの塊だよ。

 

「……なあ緑谷」

 

「どうしたの、心操君?」

 

「俺ら、空気じゃねぇか?」

 

「……うーん、否定できない」

 

『ド派手な空中戦を繰り広げる爆豪と夜嵐!高みの見物を決め込む緑谷チーム!地上でも激しい戦いが繰り広げられてるぞ!さあさあ誰が勝ち残るのか!?目が離せないぜ!!』

 

 

 

 〇

 

 

 

『TIME UP!』

 

『早速上位4チーム見てみよか‼』

 

『1位 緑谷チーム‼』

『2位 爆豪チーム‼』

『3位  轟チーム‼』

『4位 夜嵐チーム‼』

 

『以上4組が最終種目へ……進出だああ――――‼』

 

 騎馬戦は無事終了。

 僕らは何事もなく、最終種目への進出を果たした。

 かっちゃんと夜嵐君は最後までやり合っていたけど、他騎馬にちょっかいを掛ける余裕があったかっちゃんと、最後までかっちゃんに翻弄されていた夜嵐君の差が出た形だ。

 轟君は二人が空中でよろしくしている間に地上を制圧してしまっていて、5位以下は全員0ptだった。

 最後はかっちゃん、夜嵐君、轟君の三つ巴で、激しくやり合っている間に時間が来てしまった感じ。いやぁ、すごい迫力だったね。

 

「……俺ら、結局最後まで空気だったな」

 

「……虚しい勝利」

 

「恨みますよ緑谷さん。結局一度たりともベイビーを見せられなかったじゃないですか!」

 

「ごめんってば。ほら、約束通り最終種目には出られたから、ね?」

 

 うーん、もっとヘイトを買うつもりでいたんだけど、かっちゃん達が派手に立ち回ったおかげで僕ら空気になっちゃった。さすがかっちゃんだけど、ちょっと予定外。

 ま、いっか。このまま優勝すればいい話だ。それでいい感じにヘイトが集まるはず。たぶん。

 

『一時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな‼オイイレイザーヘッド飯行こうぜ!

 

 

 

「悔しいわ、お茶子ちゃんおめでとう」

 

「うーん、樺月ちゃん浮かしてただけだったし、実力に見合ってるのかわかんないけど……」

 

「なーに言ってんだよ麗日。お前頑張ってたぜ、自信持ちな!なあ切島!」

 

「おう!ナイスガッツ、ナイス漢気だぜ!」

 

「瀬呂君、切島君……。うん!ありがとう!」

 

「けどマァ、爆豪すごかったよなー、実際。俺ちょっとビビったもん」

 

「何が凄いもんか、結局2位だぞ。1位じゃない」

 

「いやいや、2位でも十分すごいって!」

 

「ストイックね、樺月ちゃん」

 

「……爆豪」

 

「轟か。なんだ?」

 

「次は負けねぇ」

 

「……ハッ、次もアタシが勝つさ」

 

 さっきまで激しくやり合っていたのがウソみたいに、皆和気藹々と引き上げていく。

 勝ち進んだ人、敗退した人、各々胸の内にはいろいろと秘めているだろうに、皆明るく朗らかだ。

 

 

 

 一方、僕はというと。

 

「あ、オールマイト」

 

「ム、緑谷少年か!先程の騎馬戦、それから障害物競走も。見事だったぞ!午後も頑張ってくれ!応援してるぜ!!」

 

「ありがとうございます、がんばります。……あの、そちらの方は?」

 

「ああ、彼は……」

 

「初めまして!僕は透形ミリオ!雄英の3年生さ!今日はオールマイトと一緒にこちらのレディをご案内しているんだ!ほらエリちゃん、自己紹介だよ」

 

「え、えっと……壊理っていいます。初めまして……」

 

「初めまして、緑谷です。どうぞよろしく。……オールマイトの隠し子とかですか?」

 

「ゴフッ……ち、違うよ!?いや、まあ、えーっと、そこらへん難しいというか私が養子に迎えようかとも言ったんだけど……」

 

「えっとね、この子、今雄英で預かっている子なんだ。諸事情あってね」

 

「あー、えっと、あんまり聞かない方がいい感じです?」

 

「いやっ、決してそんなことは……。ただ、ちょっと説明が難しいというかなんというか」

 

「彼女は雄英で預かっているから、いつか君達と交流する機会もあるかもしれないね。その時はよろしく頼むよ」

 

「ええ、喜んで。3年生とは交流したりしているんですか?」

 

「もちろん!去年は僕らの文化祭に招待して、楽しんでもらったりもしたんだよ!」

 

「素敵ですね。エリちゃん、僕らの体育祭も楽しんでってね。ちょっと刺激が強すぎるかもだけど……」

 

「……大丈夫、です。楽しいです」

 

「よかった。見ててねエリちゃん、僕優勝するから」

 

「緑谷少年、彼女のことは内緒にしておいてもらってもいいかい?別に知られて困るような事でもないんだけど、あまり騒がれたくはないから……」

 

「あはは、確かにオールマイトが女の子連れてたら、『オールマイトに隠し子!?』みたいな感じですっぱ抜かれそうですね」

 

「う、まあ、そうだね。今日はエリ少女にとって少し刺激が強いから、なるべく雑音は排除しておきたいんだ。協力してくれるかな?」

 

「もちろん。心得ました」

 

「オールマイト、そろそろ……」

 

「ああ、そうだね。それじゃ、我々はこれで失礼するよ。改めて、午後も頑張ってくれ」

 

「ありがとうございます。またね、エリちゃん」

 

 エリちゃんに手を振れば、ぎこちなくも手を振り返してくれた。かわいらしいね。

 

 

 

 最初に疑問に思ったのは、戦闘訓練の時。

 原作じゃ制限時間ギリギリで、授業が終わるなり走って帰っていたオールマイトが、授業後も少し話すなどして余裕を見せていた。……その時点では、制限時間が長めに残ってるんだなぁ程度にしか思わなかったんだけどね。

 それからUSJの時。原作と違って、オールマイトは最初からUSJにいて、僕らは敵の脅威に晒されることなく守られたし、脳無撃退後もオールマイトは多少の余裕を見せていた。

 体育祭までの2週間でも、オールマイトは割と頻繁に校内をうろついていて、僕の見た限り常にマッスルフォームでいたし、話しかけても特に焦ったりするような様子は見せなかった。まぁ、忙しそうにしてはいたけど……。

 それで、明らかに何か改変が起きていると思って、僕にできる範囲でいろいろと調べた。

 

 ……調べて分かったんだけど、この世界、既に死穢八斎會は壊滅している。

 事件があったのは去年の秋ごろ。ちょうど原作よりも一年早いタイミングだ。

 原因は恐らく、というか間違いなく死柄木。原作よりも早い段階で事を起こして、個性破壊薬を手に入れようとしたんだろう。

 事件を早めただけじゃ薬は手に入らないだろうから、何らかの手段で研究の支援とかもしてたんだと思う。

 たぶんそれで足が付いて、原作よりも一年早くガサ入れが入った。僕らが受験に向けて準備をしていた頃だね。

 

 死穢八斎會壊滅のニュースを見落としたのは、今世でも1,2を争うくらいの大失態だ。……ホント、何やってんだろうね。

 言い訳になっちゃうけど、当時は受験と【液化】の習熟に集中していて、ニュースチェックとかは疎かにしちゃってたんだよね。

 それにニュースでは「オールマイトまたもや快挙!ヤクザ壊滅!」くらいの書かれ方で、死壊八斎會の名前も無ければ扱いも軽かったから、「ああまたか」くらいに流しちゃっていたんだ。

 

 エリちゃんの件とか個性破壊薬の存在とか、いろいろセンシティブだから情報統制が布かれているんだろう、調べても大した情報は得られなかった。

 だけど、原作知識と統合して考えれば、ある程度は見えてくる。

 推測だけど、オールマイトは原作での僕の立ち位置にいた。たぶん、雄英で校長にミリオ先輩を紹介されて、後継者を見極めるだとかの理由でナイトアイとも復縁して、流れで一緒にガサ入れすることになったんだと思う。

 そして、原作よりも軽い被害でエリちゃんを救い出した。……衰えていたとはいえ、原作の僕よりはオールマイトの方がずっと上だ。

 調べた限りでは、被害は原作よりもずっと少なかった。怪我人も少なくて、敵含め死者は一人も出なかったみたいだ。

 サー・ナイトアイ事務所は無期限の活動休止を発表しているものの、ナイトアイの訃報は無かった。なんなら入院すらしなかったみたい。

 無期限の活動休止は……たぶん、復活したオールマイトのサイドキックに戻るつもりでいるんだろう。元サヤだね。

 

 オールマイトの活動時間が延びているように見えたのも、原作の僕同様にエリちゃんの個性を受けて、傷が完治していたと考えれば辻褄が合う。

 原作の僕は絶えず全身を破壊し続けることで対抗したけれど、既に深すぎるほど深い傷を負っていて、かつ年齢的にも老境に差し掛かっていたオールマイトならば、多少の巻き戻しはむしろプラスに働いたはずだ。

 全盛期の力を取り戻したオールマイトならば、オーバーホールなんて一瞬で畳んでしまえただろうね。

 

 ……そして、原作と同様に、ミリオ先輩は無事では済まなかったんだろう。

 

 ビッグ3について少し調べたんだけど、ミリオ先輩は去年の秋ごろに短期間休学していて、撃ち込まれた薬品の影響で元々【透過】だった個性が謎の変化を遂げてしまったらしい。

 まず間違いなく、【OFA(ワン・フォー・オール)】を受け継いでいる。

 考えればわかる話だ。復活したとは言えもう長くはない体、恩師から勧められた将来有望な青年。そして彼は、自分が居ながら敵に個性を破壊されてしまった……。

 オールマイトが個性の譲渡を決意しても、何ら不思議ではない。

 

 ……いやぁ、ホント、これを予め知っていればなぁ。

 でも、いい。今のうちに知っておけただけでも収穫だ。

 プランの修正は必要だろうけど、根本的な問題は生じていない。

 大丈夫、なんとかなる。僕ならうまくやれるさ。

 

 さて、もうひと踏ん張り。

 がんばろう。

 

 

 

 

 

 

 





 何度か感想で疑問を呈して頂いていた「ミリオ先輩にOFA譲渡したらマズくね?」問題。
 本作では死壊八斎會編を一年前倒すことで解決しました。個性破壊されてるならOFA入るやろ。
 このルートならオールマイト復活とサー・ナイトアイ救済も兼ねられてお得!死柄木君は余計なことしましたねぇ。
 ちなみに、USJの時にオールマイトが「老いは残酷」とかなんとかボヤいてたのは、若返りを誤魔化すため=オールマイト復活の伏線でした。誰が気付くねん。

 ちょっと時系列補足すると、昨年春に校長がミリオを紹介→ナイトアイがインターンを申し出、オールマイトと復縁→ミリオ、約半年の鍛錬@ナイトアイ事務所→死壊八斎會編 という流れです。
 ミリオがビッグ3に数えられたのはナイトアイ事務所で鍛えられてからの事なので「ビッグ3」という呼び名自体存在しない可能性がありましたが、呼ばれ始めた詳しい時期は不明だったので“ビッグ3”は存在していることにしました。ややこしや。



Q:エリちゃんに体育祭観戦は刺激強すぎ。雄英無能か?
A:ミリオ先輩たちによる半年間のメンケアにより、エリちゃんの精神状態は大分改善しています。今回の体育祭観戦はリハビリも兼ねていて、比較的刺激弱めな一年生ステージを観戦の上、少しでも調子が悪くなるようならすぐに引き上げる予定です。なお、エリちゃんは結構普通に楽しんでいる模様。かわいいね。

Q:オールマイト、復活したなら“平和の象徴”続投したがりそう
A:めっっっっっっちゃゴネました。主人公の予想は大体正解なんですが、かな~~り紆余曲折ありました。あとがきに書ききれないくらいには色々あったんですが(そしてそれを一度書いてボツにしたりしていたので投稿が遅れたのですが)、最終的にはミリオ先輩がOFAを受け継ぎました。詳しくは、まぁ、機会があれば。こういう細々とした裏話、全部描いてたらキリないけど全く書かなかったら説明不足になっちゃうジレンマ。難しす。


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